ビジネス変革:デジタル変革(DX)とビジネス変革:今理解すべき3つの視点
このコラムはビジネスパーソンの方々を対象に書いています。
デジタル技術を活用したビジネス変革(DX デジタル・トランスフォーメーション)の必要性が毎日のように言われています。
私もビジネス変革について、何本かのコラムを書いています。一方、ビジネス変革を実現するための議論プロセスについて、わかりやすく見える化した形では紹介していませんでした。
このコラムでは、ビジネス変革を実現するための議論プロセスを説明し、一例としてその議論プロセスを活用して自分たちのテレワークのルールを作る、という例を解説します。なお、ビジネス変革を実現するための議論プロセスはこのコラムで紹介する方法だけではありません。このコラムで紹介するものは一例です。
私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。
ファシリテーション(Facilitation)。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。
このコラムでは、次の3点について考えてみます。10分程度で読める内容です。
1. このコラムで紹介する議論プロセス
この章では、このコラムで紹介するビジネス変革を実現するための議論プロセスを解説します。
議論を活性化するためにはファシリテーションを活用することが必要です。ファシリテーターが必要です。
会議やワークショップでファシリテーションを活用する場合、私がお勧めするファシリテーションでは下記の4つのステップで合意を形成します。
『場を作る』というコラムの1章で議論プロセスを設計することを説明しています。この章で紹介するビジネス変革を実現するための議論プロセスは『場を作る』で説明している議論プロセスの設計にあたります。
このコラムでは、下図のビジネス変革を実現するための議論プロセスを用います。(画像のタップやクリックで拡大します)
「1 発見する」、「2 戦略を練る」、「3 作る」、「4 進化させる」の4つのステップがビジネス変革に使う議論プロセスです。ファシリテーションの「場を作る」、「意見を引き出す」、「意見をかみ合わせる」、「意見をまとめる」は、上図の各々のステップに活用されます。つまり、「1 発見する」は「場を作る」、「意見を引き出す」、「意見をかみ合わせる」、「意見をまとめる」で構成されます。「2 戦略を練る」、「3 作る」、「4 進化させる」も同様です。
【1 発見する】
現状を知り、「こうなったらいいな」という要望を聴き出します。
従業員に聴くことも必要でしょう。
また、お客様の声を掴むことも大切です。どうやって掴むのか、悩ましいですよね。営業がお客様から聞いていること。アンケート。インタビュー。できるだけ正確な声を掴むことが大切です。
このコラムの2章では共感マップを活用します。具体例は2章で説明しますが、ここではお客様の声を掴むための一案を示したいと思います。
共感マップというのは、XPLANE という会社が開発したものです。英語では、エンパシー・マップ(Empathy Map)と言います。お客様を理解するために活用できるフレームワークです。
ある1人の利害関係者あるいは1つのグループについて考えるものです。
ペルソナ(persona)を見える化するフレームワークといえます。ペルソナとは、商品やサービスの典型的なお客様像のことです。商品やサービスを利用するお客様の中でも特に重要なお客様像をモデル化したものといえます。
共感マップは、①頭で何を考え・感じ、②目で何を見て、③耳で何を聞き、④口で何を言い体で何を行動するのか、を見える化するためのものです。さらに、⑤苦痛なこと、⑥獲得すること、も見える化します。
最初にやることは、「誰について書くのかを決める」ことです。ペルソナを決めるということです。
次にやることは、「その人の視点に立って想像する」ことです。
その次にやることは、「実際に確かめる(精度を上げる)」ことです。インタビューして聴いたり観察したりしながら確かめていきます。
お客様は、彼ら彼女らのお客様(あなたから見るとお客様のお客様)のことを見て、ビジネスをしています。お客様の共感マップを作っているのですから、この視点はとても大切です。営業が聞いてきたお客様の声をベースに、お客様の視点に立って、想像してみることは、とても重要です。何故かというと、みんなで想像することで、精度を上げるためには、何を確かめればいいのか、どのように確かめられるのか、等々も話し合われるからです。アンケートやインタビューをするのであれば、何を聴くのか、確かめる戦略がわかってきます。
なお、インタビューの注意点を3つあげるとしたら、「想定外を楽しむこと」、「先入観を捨てること」、「誘導しないこと」でしょう。傾聴がキーポイントになると思います。
【2 戦略を練る】
現状を知り、「こうなったらいいな」という要望がわかったら、「こうなったらいいな」を実現するための打ち手を考える段階に入ります。
チーム全員で会議やワークショップを開催して議論することになります。キーポイントを3つ上げるとしたら、①どんな発言も否定されない安心安全な場にすること、②チームメンバー間の信頼を醸成すること、③そういう組織文化であること、だと考えます。
安心安全な場。反対は不安危険な場でしょう。
不安危険な場の一例です。ある会社の営業部での話し合いの場面という想定。
従業員Aは若手、従業員Bと従業員Cは先輩従業員という設定です。
話し合いのテーマは、「あまり売れ行きの芳しくない清涼飲料水をどう売り出していくか」です。
- 部長:それでは、何でもいいからアイデアあれば言ってくれ。
- 一同:・・・
- 課長:ここは意見があれば何でも自由に言える場だから遠慮せずに、さあ。
- 従業員A:こういうのはどうですか?2本か3本まとめて買った場合には、1本サービスとか。
- 従業員B:それじゃあ、利益が上がらないじゃないか。
- 部長:そうだな、ちょっと無理があるかな。
- 従業員A:それじゃあ、5本以上では?
- 従業員C:そんなに買う奴なんて、あまりいないんじゃぁないかなぁ。
- 部長:そもそも、そんなやり方したら、中身には自信がありませんと言っているようなものじゃないか。
- 課長:そうそう、安売りのスーパーじゃないんだから。さあ、他にはないかな?
(参照:カウンセラーの「聴く力」 ISBN978-4569772608)
若手の従業員Aさんは、「何でも自由に言える場って言ったよね?何でみんなから否定されなくっちゃいけないの?もう、この人たちの前で発言するのは止めようかな。」と思ってしまうかもしれません。
安心安全な場にする案として、『会議における「安心安全な場」とは?』というコラムを参考にしていただけると思います。
チームメンバー間の信頼醸成についての私の提案は、ファシリタティブなリーダーシップを持った人をチームに入れることです。
ファシリタティブ(facilitative)は、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。ファシリタティブなリーダーシップとは、ファシリテーションを中核に置きながら、チームに働きかけチームを目指す目標に到達するようリードするリーダーシップです。
リーダーシップとは、職場のチームで目標に向かって協働し、目標を達成することを成し遂げる力です。目標を達成するよう働きかける力とも言えます。
リーダーとは、役割や職責であり、具体的には主任、課長、部長などです。
リーダーシップは、リーダーの職責を担う人だけに求められる能力ではなく、チームの目標を達成するために活動している従業員一人ひとりに必要な力といえます。
先が見通せない激変しているビジネス環境にいる今、課題への対応スピードを上げることが必要です。能動的に行動し、周囲に働きかける力を持つ人材が求められています。在籍年数や年齢は関係ありません。従業員一人ひとりがリーダーシップを身につけることは、会社の成長に大きく貢献します。
ファシリタティブなリーダーシップについて、お知りになりたい方は、『組織力強化:withコロナのリーダーシップ:ファシリタティブなリーダーシップとは』というコラムをご参照いただきたいと思います。
組織文化について。上記の「安心安全な場」や「ファシリタティブなリーダーシップ」は、昔ながらの「命令と管理・監視」型の組織には合いません。もし、あなたが所属する組織がピラミッド型の「命令と管理・監視」を続けている組織であれば、ビジネス変革を実現するための議論プロセスを適用することは困難でしょう。
ここはトップやリーダーがマインドを変えて、組織文化を変えないと厳しい、と私は考えます。
組織文化については、『組織力強化:コロナによる組織の変化:ファシリテーションが果たす役割を考える』と『組織力強化:迅速に組織変革する9つの方法:ファシリテーターの観点で考察する』の2つのコラムを参考にしていただけると考えます。
【3 作る】
まず、プロトタイプを作ります。プロトタイプというと、何か形あるハードウェアをイメージする方がいらっしゃると思います。ソフトウェアのように形がないものでもプロトタイプが作れます。ハードウェアでもソフトウェアでもないもの、例えば2章で説明する「自分たちのテレワークのルール」でもプロトタイプは作れます。
ビジネス変革のためのプロトタイプは、紙上のスケッチであってもOKです。まずは、どんな感じかを掴むことが大切です。特にwithコロナの今はスピードが求められますので、例えば何かのアプリのプロトタイプを作るのに1週間かかってしまうのであれば、ユーザーが使う画面の遷移を手書きで紙上にスケッチして、ユーザーの体験はどのようなものなのか、それは顧客体験価値があるのか、裏ではどんなロジックが動くのか、そもそもそのスケッチしたものは実現可能なのか、等々をクイックに議論する方が良いです。
プロトタイプしたものを実際に作ろうということになったら、作成プロジェクトが始まります。ここでの肝は、小さな成功を積み重ねることです。そのためにはプロジェクトのマイルストーン毎に進捗がうまくいっていることを測定できる指標が必要です。いつまでに誰が何の役割で何をするのか、それは何を持ってうまくいっていると判断できるのか、ここまで決めましょう。
作ったら、作ったものを試し結果を振り返り、作りなおす、また試し結果を振り返る、こういう繰り返しを頻繁に回しながら作ることが必要です。
ところで、いつまでに誰が何の役割で何をするのか。私は、RACI(レイシー)というフレームワークを使って整理することが多いです。RACIについては『会社の会議:会議の変革:RACIを活用して実施可能なTo Doを合意しよう』というコラムを参考にしていただけると思います。
【4 進化させる】
作成が完了し、商品やサービスが世に出たら、次はその商品やサービスを進化させる段階に入ります。
まずは、商品やサービスが世に出たことをチーム全員で祝ってください。ひと区切りをつけることが大切です。
商品やサービスをお客様が使うと、何かの反応が返ってきます。そのお客様の声をもとに振り返りを実施することが大切です。私は KPT というフレームワークを活用して振り返ることが多いです。振り返りは、世に出した商品やサービスを進化させるために必須です。KPT の K は Keep の略です。P は Problem、T は Try の略です。何を続けるのか(K)、どんな課題があるのか(P)、K と P を踏まえて商品やサービスを進化させるためにどんな試み(T)をするのか、これを見える化するフレームワークです。
小さな失敗を重ねることも大切です。小さな失敗を積み重ね続けると大きな失敗になってしまいます。小さな失敗(課題)を KPT で振り返り、次の打ち手を考え、その打ち手を実施し、進化を続ける。小さな失敗(課題)を、小さな学びと捉え、商品やサービスを進化させる。そんなイメージです。
「4 進化させる」から、「1 発見する」へ矢印が出ていることに着目してください。ビジネス変革は変革し続けるということを表しています。
2. 議論プロセスを適用して自分たちのテレワークのルールを作る
この章では、1章で解説したビジネス変革を実現するための議論プロセスを適用して、一例として自分たちのテレワークのルールを作る、ということをやってみましょう。
「テレワークのルールを作ろう」となったときに、あなたのチームの何人かは既にテレワークを経験しているかもしれませんね。下表はリアル会議とオンライン会議を使うツールの観点で比較した表です。(タップやクリックで拡大します)オンライン会議では、クラウド上のホワイトボードを使う必要があります。ビジネス変革を実現するための議論プロセスにおいては必須です。
1章で、共感マップ、プロトタイプの紙上スケッチ、RACI、KPT を説明しました。リアルな会議であれば、ホワイトボードやフリップチャートに書きます。オンライン会議では、クラウド上のホワイトボードに書きます。
【1 発見する】
私のアイデアは、共感マップを活用して、テレワークについて、現状と目標を洗い出すことです。
共感マップ(Empathy Map)は、下図のように、何を考え・感じるのか、何を見るのか、何を聞くのか、何を言い・何を行動するのか、どんな苦痛があるのか、何を獲得するのか、について洗い出すためのフレームワークです。
下図は、「あなたのチームのメンバーの方々が現状テレワークをどう捉えているのか」を見える化したもの、とお考えください。下図は私が色々なメディアなどから取ってきたメッセージをもとに私の観点で作ったものです。タップやクリックで拡大します。
下図は、「あなたのチームのメンバーの方々がテレワークがこうなったらいいな」という目標を見える化したもの、とお考えください。下図は私の観点で作成したものです。タップやクリックで拡大します。
空白の共感マップを miro や MURAL のホワイトボードに貼り付けて、チームのみんなで協働して共感マップを作り上げることが大切です。
リアル会議の場合、会議室に集まってフリップチャートとかホワイトボードの前に集まって、物理的な距離を密にして、ポストイットを貼ったりしながらアイデアを集め、議論する形式になります。1時間なら1時間という時間の中でアイデアを出し、話し合う形式になりますよね。ウォールームでもない限り、会議室は会議の終了時点でホワイトボードを消さなくてはいけません。フリップチャートは撤収しなくてはなりません。後で誰でもいつでも「見れる」ようにするためには写真を撮って共有するということになります。この形のコミュニケーションを同期コミュニケーションという場合があります。みんなの時間を合わせて(同期させて)コミュニケーションするという意味です。
オンライン会議では、チームの全員が miro や MURAL の使い方に慣れていれば、アイデア出しの段階はみんなで集まらなくてもOKです。クラウド上のホワイトボードにブランクの共感マップを貼っておけば、みんなが同じ時間に集まらなくても、アイデア出しができます。そもそも、ブレスト的に時間に追われてアイデアを出すよりも、沈思黙考して出したアイデアの方が良いアイデアが出やすい、という Google Venture の SPRINT のような考えもあります。事前にアイデア出しをしておいて、みんなで集まった時に、事前に出されたアイデアに対して質疑応答しながら、チームとして洗練するということが可能です。このやり方の方が、みんなで集まって会議をする時間が短くなる可能性が高いです。クラウド上のホワイトボードは、アクセス許可された人なら、誰でもいつでも「見て追加・修正できる」ので、リアル会議のように、会議室をきれいに元に戻す必要がありません。この形のコミュニケーションを非同期コミュニケーションという場合があります。みんなの時間を合わせずに(同期させずに)コミュニケーションするという意味です。
テレワークと出社のハイブリッドな働き方が定着したwithコロナの時代には、オンライン会議のITツールを使い倒すくらいの姿勢で取り組むことも必要なのではないか、と私は思います。
ちなみに、私は上表でリストしたITツールはwithコロナの時代の「読み書き算盤」だと思っています。
クラウド上のホワイトボードを活用したブレインストーミングについて、ミロ・ジャパンのサイトに『ブレインストーミングとは?ブレストのやり方と4つのルール(4原則)について解説』という具体的なイメージが掴みやすい記事が載っていますので、ご紹介します。非同期コミュニケーションの具体的なイメージを掴んでいただけるのではないかと思います。この節では共感マップをフレームワークの例として説明しました。効率よく議論を進めるためには、真っさらなホワイトボードで議論を始めるのではなく、例えば空白の共感マップをホワイトボードに用意しておいて、共感マップに書き込むことで議論を進めることが大切です。上記のミロ・ジャパンのサイトには、ブレインストーミングで活用できるフレームワークが紹介されています。miro では「テンプレート」と呼んでいます。
【2 戦略を練る】
【1 発見する】で、現状と目標を洗い出し見える化しました。
【2 戦略を練る】では、現状から目標に移るための戦略を練ります。
下図は一例です。(タップやクリックで拡大します)
左上のポストイット「自分たちのテレワークのルール決め」は、「現状から目標に映るためには、自分たちのルールが必要だ、とみんなで決めた」ということを表しています。
個々の打ち手の一例として、「会議にはファシリテーターを入れる」を見てみます。
現状「聞く」こととして、下記の3点が洗い出されています。
- 議論を聞いている
- 雑談を聞いている
- ディベート的な言い合いを聞くことがある
現状の「苦痛」としては、下記があります。
- ブレストや喧々諤々の議論が出来なければ仕事にならない
打ち手として、「会議にはファシリテーターを入れる」ことで、何を「聞く」かというと、下記の2点。
- アジェンダに則った議論
- 前向きな喧々諤々の議論(ディベート的な言い合いと前向きな喧々諤々な議論は全く異なります)
何を「見る」かというと、「リアルな会議と同じようにホワイトボードを使って議論する」様子を miro や MURAL のホワイトボードで見るということになります。
【3 作る】
自分たちのテレワークのルールを作ります。
【2 戦略を練る】で話し合った打ち手をルールとします。
肝は、小さな成功を積み重ねることです。ここでは、打ち手「会議にはファシリテーターを入れる」を例として取り上げます。
会議の最後の5分程度を使って、KPT を活用してその会議の振り返りをするのです。T(Try)に書かれた事を次回の会議でチャレンジするようにします。進捗がうまくいっていることを測定できる指標も T のトライ項目に入れましょう。KPT の K(Keep)が増え、P(Problem)が減っていけば、うまくいっていることが見えます。
ただし、一直線にうまく進捗することは稀で、多くの場合は紆余曲折しながら、何とか目標に到達できる、という感じだと思います。ですから、小さな成功を積み重ねることが大切なのです。そうしないとチームのメンバーの心が折れてしまいます。
会議にファシリテーターを入れるという打ち手を決めたのであれば、RACI を活用して、誰がファシリテーターを担うのか(R)、どのように研鑽するのか誰がアドバイスするのか(C)、誰がこの打ち手を実施することに責任を持つのか(A)を決めることが大切です。打ち手を合意した時点でファシリテーターが育っていない場合もあるでしょう。その場合は、アドバイスしたりトレーニングしたりする C の役割を担う人が鍵を握ります。担当者(R)に丸投げするのではなく、どうやって育成するのか、みんなで当事者意識を持って対応することが肝です。
自分たちのテレワークのルールが一旦出来上がったら、それをプロトタイプとして実際の会議やワークショップで使って確かめることが重要です。KPT を使って振り返り、RACI を活用して、「次どうするのか」を見える化しましょう。
小さな成功を積み重ねることが大切です。KPT の K が一つもなかったらちょっと悲しいかもしれませんが、それでも T を思いつくのなら、あなたのチームは成長できる可能性があります。
作ったものを試し、また作る、こういう繰り返しを頻繁に回しながら、あなたのチームのテレワークのルールを作ることが必要です。
【4 進化させる】
自分たちのテレワークのルールが出来て、そのルールを運用していくと、うまくいかないことも出てくるでしょう。つまり課題が出てくるのです。
大切なことは課題を放置しないことです。放置すると課題は失敗になってしまいます。課題に対して、みんなで打ち手を考えて、都度対応すれば、チームで学びを重ねることになるのです。
テレワークのルールも進化するでしょうし、チームワークも進化するに違いない、と私は考えます。
【3 作る】では例として「会議にはファシリテーターを入れる」を取り上げて、KPT で振り返ることを説明しました。全体として、「何かテレワークがうまくいっていないような気がするなぁ」と感じたら、全体について KPT で振り返り、そして【1 発見する】に戻って、今何が起きているのかを見える化し、そして見える化した現状がどうなったらいいのか、真剣に議論していただきたいと思います。
3. 議論プロセスを活用してビジネス変革に挑戦しよう
ビジネス変革とは、今あるビジネスを他の形に変えることです。多くの場合、ビジネスモデルを変えることになります。
2章では、自分たちの働き方を変革するために自分たちのテレワークのルールを作る、という例を説明しました。
顧客体験価値を高めるためにはどのような打ち手があるのか、従業員体験価値を高めるにはどうしたら良いのだろうか。是非、課題に合った議論プロセスを活用して、あなたのチームのみんなでビジネス変革に挑戦していただきたい、と私は考えている者です。
昔は「1年かけてビジネス変革しよう」とか「5年かけて◯◯のビジネス変革をしよう。初年度はフェーズ1として△△を目標にしよう。」などと言っていられたかもしれません。
今、大切なことはスピードです。何年もかかるようなプランは良くない、と私は考えます。既にビジネス変革中であれば、その流れの中でお客様視点で顧客体験価値を考えてみることは大切である、と私は思います。
withコロナの今、大切なことは、状況の変化に合わせて、打ち手を変えることができる機敏性と柔軟性だと思います。アジャイルに対応することが求められると思います。
アジャイルな対応に関しては『働き方:アジャイルな働き方とは:アジャイルな働き方を導入するには』というコラムをご参考にしていただけると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。