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小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(おがわよしお) / ファシリテーター

BTFコンサルティング

コラム

ビジネス変革:デジタル変革(DX)とビジネス変革:今理解すべき3つの視点

2020年4月26日 公開 / 2022年1月31日更新

テーマ:ビジネス変革

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 組織マネジメント業務改革働き方改革

このコラムはビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション(Facilitation)。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。

知り合いとの会話。「小川さんのビジネスって最近流行のDXですか?」と聞かれました。「関係はありますが、イコールではありません」と答えました。
あれ以上このトピックについて話す時間的余裕がありませんでした。彼の頭には「???」とハテナが並んでしまったかな、と思っています。

このエピソードが、このコラムを書いている動機です。

このコラムでは、DXとビジネス変革の関係について私の考えを書きます。


今理解すべき3つの視点として、次の3点を書きます。10分程度で読める内容です。


1. DXとは?

ウィキペディアによると、
『デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation; DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。デジタルシフトも同様の意味である。2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる。ビジネス用語としては定義・解釈が多義的ではあるものの、おおむね「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という意味合いで用いられる。』
とあります。

Digital Transformationですから、DTと略したかったかもしれません。でも、DTは別の意味で既に使われてしまっていました。DTで検索すると沢山出てきます。例は、Data Technology(データ技術)やDesign Thinking(デザイン思考)です。
同様の例は、XAI(Explainable AI:説明可能なAI)です。EAIという略語がEnterprise Application Integrationの略語として使われていたのでXAIになったと思われます。

さて、トランスフォーメーションとは「変革」ですから、DXをデジタル変革としている方もいらっしゃいます。

主なデジタル技術を列挙してみます。(下記が全てではありません)

  • RPA:Robotic Process Automationの略で、主にホワイトカラーがパソコンで作業する定型作業を自動化するための技術。
  • AI:Artificial Intelligenceの略で、人工知能の技術。また、Augmented Intelligenceの略で、拡張知能とする人もいます。
  • ブロックチェーン:ネットワーク上を流れるデータの信頼性・透明性を確保する技術。例えば、複数社でやりとりされる書類データについて、関係する企業すべての情報のやりとりを共通のプラットフォームに乗せ、電子化できるようになる。(例:ブロックチェーンの商用化で見えてきた、ビジネス変革の未来像
  • IoT:Internet of Thingsの略で、モノのインターネットと呼ばれている。機器がインタネットに接続され、何かのデータを送り、例えばAIがそのデータを分析して、必要な行動を促すことができる。(例:全国初!学校現場におけるIoT技術を活用した暑熱対策
  • 5G:これはみなさん既にご存知ですよね。


これらのデジタル技術を活用して、ビジネスの再構築をすること、ビジネスを変革すること。これがデジタル変革(DX)です。例えば、新規事業(新規価値)の創出だったりします。これは2章で説明するビジネス変革そのものです。
ITを活用した業務改善や改善活動は、デジタル変革(DX)ではありません。言い換えると、改善は変革ではないのです。改善は自分たちのチームだけでできる部分最適です。ビジネス変革は全社で取り組む全体最適です。

新型コロナウイルスで最初にテレワークが強く求められた時、紙と印鑑での承認ワークフローを回す必要があり出社する、ということが話題になりました。紙と印鑑ではなく、ITシステムで承認ワークフローが回るようにすることは、デジタル変革(DX)ではありません。同様に、児童・生徒・学生が自宅にいても、タブレットなどを利用して学習の機会を持てるような仕組み。これもデジタル変革(DX)ではありません。これらは諸外国では、DXという言葉がよく聞かれるようになるよりも、かなり前に実現されていることです。「ICT(Information and Communication Technology)を活用する」くらいは言えると思いますが、デジタル変革(DX)ではありません。
ただし、例えば、ICTを活用した承認ワークフローにRPAやAIを活用して、人間が目検でチェックできる程度のことは自動化して、本当に人間が考えて審査すべきものを人間に回す、というデジタル技術を活用したビジネス変革ならば、DXと言えると思います。

DXは攻めの経営に活用することができる、と言われています。
現行のものを創造的に破壊したり、共創による価値創造により、基幹業務の再構築や新規事業(新規価値)の創出を狙うことができると言われています。


DXをデジタル変革と表現すると、「デジタルって技術的なことでしょ。IT部門に任せよう。」とお考えの方がおられるかもしれません。
その考えは間違っています。何故か。
狙うべきは、デジタル技術を使ってどんなビジネスを創出するのか、デジタル技術を使ってどんなビジネス変革を実現するのか、ということだからです。ビジネス側が全面的に関わることが必須なのです。単なる現行プロセスをシステム化するためのツールの導入プロジェクトではありません。

じゃあ、「要件をまとめて、IT部門やITベンダーに任せよう。」でいいだろう、とお考えの方がおられるかもしれません。
この考えも間違っています。古いです。何故か。
過去に、こんなご経験お持ちではありませんか?
ビジネス要件を定義し、要件定義書という分厚い文書を作り、IT部門・ベンダーに説明し、彼らは(彼らの解釈で)システムを開発した。要件を出したビジネス部門と、IT部門・ベンダーとの意思疎通(コミュニケーション)は疎だった。開発中にビジネスを取り巻く状況が変化したので、要件を変更したら、その要件を満足させるシステムは作られなかった。そのため期待された効果は出なかった。
いわゆるウォーターフォール型の失敗パターンです。さらに今現在は先が見えない不確実な時です。機敏さが求められます。「走りながら考える」という表現がありますよね。まさにそんな感じでないと先に進めないのではないか、と私は強く思います。

そもそも、分厚い要件定義書に書かれた全てを間違いなく伝達するということは、とても難しいことだと思います。完璧な人間でチームが構成されていたら出来るのかもしれませんが、私はそんなチームは見たことがありません。人間は不完全なものです。

デジタル変革(DX)では、アジャイルなアプローチが不可欠だと言われています。
開発側は、開発手法としてアジャイル開発という手法を用います。
要件を出すビジネス側も、アジャイルな働き方に変わると、両者共にとても協働しやすくなります。
目指す目標、「攻めの経営:現行のものを創造的に破壊したり、共創による価値創造により、基幹業務の再構築や新規事業(新規価値)を創出する」に向けて、要件を出すビジネス側と開発側がチームとなって、共にこの目標に到達することにチャレンジすることが必要なのです。XX業務がなくなり、◯◯業務が生まれる、などが起こります。人の再教育や配置転換が必要となるかもしれません。スピードが大切です。手戻りは最小にしたいですよね。効率的に実現したいですよね。開発側もビジネス側も、機動的な組織であることが必要です。


共創(co-creation)とは、異なるグループ(例えば、あなたの組織とお客様)で協働して、今までになかった価値を創出することを目標に活動することです。

上の段落で、いきなり「アジャイル」という言葉を使ってしまいました。
アジャイルとは、英語のagileで「機敏な」という意味の形容詞です。

上の段落中のアジャイルな働き方という言葉を聞いたことはありますか?機敏な働き方って何でしょう。
私は『働き方:アジャイルな働き方とは?:今理解すべき3つの視点』というコラムを書きました。アジャイルな働き方ってなんだろう、という方には、是非お読みいただきたい内容となっています。

少し上の段落で「走りながら考える」と書きました。ティール組織という本を読んだ方がいらっしゃると思います。著者のフレデリック・ラルーは、ティール組織の運営を自転車の運転に例えています。自転車を運転するとき、小石を踏んでバランスを崩すかもしれないし、脇道からクルマが飛び出して来るかもしれないし、それでもなんとか進みますよね。私はこの話を読んだ時に、アジャイルな組織運営をイメージしました。
『ティール組織とファシリテーション』というテーマで、ファシリテーターの視点からティール組織を考察したブログを書いています。ご興味をお持ちの方は、是非お読みください。
なお、本をお持ちの方は、第II部第6章「存在目的に耳を傾ける」の352〜354ページあたりに書いてあります。
本をお持ちでない方は、上のブログにフレデリック・ラルーのビデオへのリンクを貼ってありますので、そちらをご視聴ください。言語は英語ですが、日本語字幕が秀逸でわかりやすいです。

デジタル技術に強い会社であることが、世界と国内で競争する上で必須と言われています。そんな中、新型コロナウイルスが蔓延しました。
新型コロナウイルスは、オンラインでできることと、できないことを区別してしまった、と私は思います。

不確実な混沌とした状況です。カットされるもの。カットされる人。棚卸しと優先順位付けが必須となりました。このことは、限られた資源(ヒト・モノ・カネ)で、効率的にデジタル変革(DX)ビジネス変革をしなくてはならない、という推進力になる可能性がある、と私は思っています。

ここで、ピーター・ドラッカーの次の言葉を参照したいと思います。
『混沌とした時代に最も危険なのは、混沌そのものではなく、昨日と同じ論理で行動することだ。(The greatest danger in times of turbulence is not the turbulence - it is to act with yesterday's logic.)』

2020年6月5日の日経電子版に、下記2本の記事が載りました。


新型コロナウイルス対策を巡って、最新のデジタル技術やデータ活用を取り入れる動きが世界で広がる。先進事例からは、まず走り出す迅速さ(スピード)、官と民の連携(シェア)、使う手段や情報の臨機応変な代用(サブスティチュート)という「3つのS」の重要性が浮かぶ。危機対応で各国政府のIT(情報技術)競争力が試されるなか、日本の出遅れは際立つ。』とあります。

また、『日本では新型コロナウイルス対策に必要なデータが先進国で大きく見劣りする。情報収集・開示のスピードや幅広さを欠き、データ形式もばらばらだ。このままでは政策、経済活動、医療が場当たり的となり、民間の創意工夫も引き出せない。貧困なデータ環境がコロナ対策の足かせになっている。「自治体に問い合わせたり、ネットで調べたりしてデータを集めている」。厚生労働省クラスター対策班にいる北海道大の西浦博教授は2020年5月12日、動画サイトを通じた「緊急勉強会」でこんな実態を明らかにした。』ともあります。

明らかになったのは、日本の国はITではなく「紙の文化」の上に立って設計されている、ということだと思います。紙と人海戦術。昭和時代から何も手をつけて来なかった、ともいえるのではないでしょうか?人々の生活様式もテクノロジーも大きく変わったのに。

給付金のオンライン申請が、結局役所の人が申請内容を紙に印刷して目検でチェックしているという驚愕というか呆れるようなことが、人々に広く知られるようになりました。
民間の会社にお勤めの方であれば、許されるようなクオリティではありませんよね。控えめに言っても日本はITが進んでいません。(私は国が入ると日本はIT後進国だと感じています)

国には、これからは、海外のように、実績のある優秀な民間会社と協働して、人々の役に立つDXを進めて欲しいと願うものです。キーワードは「優秀な民間会社」です。
(給付金のオンライン申請のシステムにいくら投資したのか私は知りませんが、その後の人件費も含めて、無駄な金を浪費してしまいました。これを教訓にしていただきたいです。日本がDX後進国になると、日本の将来は暗いと思うからです。)

さらに、『DXは「デジタル革命を前提にした変革」、お花畑のままでは国も企業も滅びるぞ』という2021年11月4日の日経ビジネスのコラムでは、現状の日本のDXについて苦言を呈しています。

課題山積み状態のようです。見方を変えると、課題が多いということは 、その課題を解決する機会が沢山あるということです。
うまく回せば、日本はDXが急速に進むかもしれないと思います。期待したいです。


次に、2020年6月16日付けの日経ビジネスの記事『「変革へ最後のチャンス デジタル化急げ」経営共創基盤の冨山氏』を参照します。

インタビューの最後を、
『これまで日本企業はリーマン・ショックでも東日本大震災でも変われなかった。ただ日本も、75年前の戦後や約150年前の明治維新では大変革をやってのけた。追い込まれると変革できる。コロナ・ショックで最後のチャンスが巡ってきたと考えるべきだ。
という言葉で閉めています。

是非、1社でも多くの企業にデジタル変革(DX)を実現していただきたい、と私は願っています。


2. ビジネス変革とは?

ビジネス変革。現状の仕事の仕方や事業を変革することです。
部門横断や全社規模での変革です。自社の変革が他社に影響を与えることもありますので、他社も巻き込む場合があります。


改善活動。みなさん会社で改善活動を経験したことがあるかと思います。自分が所属する組織の課題について、基本自分たちだけでできる範囲で改善する活動です。全社の視点で見ると、自分が所属する組織内の部分最適と言えます。
ビジネス変革は、会社のビジネスそのものを変革するので全社規模になります。全体最適と言えます。
変化する規模。ビジネス変革と改善活動はこれが違います。

ビジネス変革は1回で終わりません。ビジネス環境は変化し続けます。適宜振り返りを実施し変革し続けようとすることが必要です。
こうすることで、自律的な変革実現能力を身に着けることができます。結果、組織として会社として強くなれます


ところで、ビジネス変革を英語にすると、Business Transformation ビジネス・トランスフォーメーションです。私はファシリテーションを核としたコンサルティングを提供するために、個人事業を起こしました。
ファシリテーションをいつも活用していただきたい、ビジネス変革を実現できるようになっていただきたい、そのお手伝いをしたい、そういった思いから、Business Transformation with Facilitationの頭文字をとってBTF、BTFコンサルティングという屋号にしました。

トランスフォーマーという映画がありました。ロボットになったりクルマになったりする映画です。トランスフォームとは、外観・性質・機能などを変える程度の規模の大きな変革といえます。

1章で、デジタル変革(DX)の目指す目標は「攻めの経営:現行のものを創造的に破壊したり、共創による価値創造により、基幹業務の再構築や新規事業(新規価値)の創出する」である、と書きました。
これはまさにビジネス変革です。


McKinsey & Companyが2020年5月に出した 『The future of work in Japan ポスト・コロナにおける「New Normal」の加速とその意味合い』 というレポートがあります。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの調査による「未来の日本の働き方」への示唆です。

『日本は反復型のルーチンワークが占める時間が56%に達しており、そのうち67%が自動化できる可能性がある。』と分析し、『そもそものビジネスのやり方や、現場での進め方といった実業の部分を変えないと、実際にビジネスで価値を生むことにならない』と提言されています。

改善ではもはや立ち行かない。ビジネス変革をしないと立ち行かないということだ、と私は考えます。私はDXを「デジタル変革」ではなく、「デジタル技術を活用したビジネス変革」と表現しています。ビジネスを変革することを強調したいと考え、このように表現しています。

RPA(Robotic Process Automation)やAI(Artificial Intelligence または Augmented Intelligence)などのデジタル技術を使って、定型業務は人手を介さないものになり、人の介在は最小化されるでしょう。
そして、従業員は「新しい価値を生み出す仕事」に向かうことが求められる、と私は考えます。


全社規模のビジネス変革を実現するためには、事業部門、業務部門、デジタル技術を活用するならIT部門など、多くの部門の参画が必要となります。多くの部門の専門家が参加する会議やワークショップを開催することが多くなります。

改善活動であれば、いつも協働している人たちの活動なので、会議やワークショップもうまくいくでしょう。

全社規模のビジネス変革の場合は、初めて会う人たちと協働する必要があります。組織文化も異なることでしょう。話す用語が通じないかもしれません。集まっただけでは協働することは簡単なことではありません。事業部門、業務部門、IT部門などの間に入って、これらの部門の人たちをつなぐ役割を担う人が必要になります。ファシリテーターがこの役割を担うべきだ、と私は考えています。

デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)が、ビジネスで価値を生む変革となるよう、ファシリテーションを活用していただきたいと思います。


3. DXとビジネス変革との関係

1章と2章で書いたことをまとめ、デジタル変革(DX)とビジネス変革の違いを考え、このコラムを閉じたいと思います。

デジタル変革(DX)はデジタル技術を活用してビジネス変革を実現するものです。

ビジネス変革はデジタル技術を活用するか否かに関わりません。デジタル技術を使っても良いし、使わなくても良いのです。ただ、今の時代デジタル技術を活用する場合が多いとは思います。

私がいうビジネス変革はデジタル変革(DX)を含む変革である、と言えます。ビジネス変革はデジタル変革を包含します。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 

この記事を書いたプロ

小川芳夫

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小川芳夫(BTFコンサルティング)

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