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小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(おがわよしお) / ファシリテーター

BTFコンサルティング

コラム

組織力強化:コロナによる組織の変化:ファシリテーションが果たす役割を考える

2020年7月12日 公開 / 2023年10月23日更新

テーマ:ファシリテーション

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 組織開発チームビルディング働き方改革

このコラムは、ビジネスパーソンの方々、とりわけ主任・課長・部長クラス以上の組織開発や組織の見直しにご関心のある方々を対象に書いています。

withコロナの時代になり、いろいろな変化が起きています。
このコラムは「コロナによる組織の変化を捉えて、ファシリテーションが果す役割を考える」という内容です。

このコラムは次の3つの章で構成します。10分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。

ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。


1. コロナによる組織の変化

組織の構造は、ピラミッド型からネットワーク型へシフトする、と言われて久しいですよね。一例として、『withコロナ時代に、ビジネスを成長させられる新しいマネジャーの条件3つ』というPRESIDENT Onlineの記事をご紹介します。

下図はピラミッド型とネットワーク型の2つの組織構造の模式図です。(画像のタップやクリックで拡大します)
組織構造:ピラミッド型とネットワーク型

この章では、下記3つの資料を参照します。ティール組織そのものについて参照するのではなく、コロナが組織の変化のスピードを上げているという立場で参照します。

  • 参照資料1:書籍 ティール組織 フレデリック・ラルー (Frederic Laloux) 著 ISBN978-4-86276-226-9
  • 参照資料2:書籍 [イラスト解説] ティール組織 フレデリック・ラルー著 ISBN978-4-297-10257-9
  • 参照資料3:ウェブサイト REINVENTING ORGANIZATIONS (https://www.reinventingorganizations.com/)


参照資料1と2によれば、ピラミッド型の組織が作られたのは、紀元前4000年前にメソポタミアで生まれた、とされています。順応型組織(アンバー組織)と呼んでいます。
灌漑システム、ピラミッド、万里の長城をつくり出し、船を動かし、交易所を運営し、植民地に大規模農場をつくりあげました。産業革命初期の大企業はこの枠組みだったそうです。現在では、大半の政府機関、公立学校、宗教団体、軍隊が、アンバー組織であると、ティール組織(Reinventing Organizations)の著者のフレデリック・ラルー(Frederic Laloux)は書いています。


安定した且つあまり複雑でない環境ならば、ピラミッド型はうまく機能します。上層部の少数の人たちで、あまり複雑でない状況を理解し、良い意思決定ができます。

複雑性が増すと、ピラミッド型の組織ではムリになります。どんなに頭が良くても、トップの少数の人が迅速にすべてを把握し、複雑な問題に完璧に対処する十分な力量などないからです。キーワードは「どんなに頭が良くても」だと思います。

下図は、「知らないこと」の氷山です。(出所:The Iceberg of Ignorance
問題が発生した際に、トップには伝わらずに、途中で揉み消されてしまうということを表した模式図です。最下部のスタッフが問題を認識した時に、どの程度のマグニチュードの課題なのか判断がつけば良いのでしょうが、それは困難な時もあります。悪気はないと思います。また、上まで上がったとしても1週間もかかったらどうでしょう?層が厚ければ厚いほど、時間がかかることを、私たちは知っていますよね。(画像のタップやクリックで拡大します)
知らないことの氷山

先が見通せない複雑な今日の環境では、ピラミッド型はもはやムリなのです。
そこで、ネットワーク型が出てきました。一人ひとりが生命体のように個別の意志を持って仕事する「ネットワーク型組織」になっていく。このネットワーク型の組織はうまく運営しなければ組織として機能しない、と私は思います。


私のコラム『組織力強化:これから起こる変化を考える:今ファシリテーターになろう』で、メンバーシップ型からジョブ型へのシフトが進むという話を書きました。ジョブ型とネットワーク型組織構造は相性が良い、と私は考えます。

また、ピラミッド型・メンバーシップ型へ戻ることはない、と私は考えます。

変化を楽しむことが大切だと思います。ダーウィンが言ったとされている「この世に生き残る生物は、激しい変化にいち早く対応できたもの」という言葉。これは予測困難な不確実な今こそ生きてくる言葉だと思います。恐竜は環境の変化に耐えられずに滅びました。私たちは恐竜になってはいけないのです。

次章では、ネットワーク型組織について考えます。


2. ネットワーク型組織

私のコラム『組織力強化:これから起こる変化を考える:今ファシリテーターになろう』では、デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)が加速することが予想されている、と書きました。

また、マッキンゼーの ”The future of work in Japan”(ポスト・コロナにおける「New Normal」の加速とその意味合い) という調査レポートを紹介し、『そもそものビジネスのやり方や、現場での進め方といった実業の部分を変えないと、実際にビジネスで価値を生むことにならない』と提言されている、と書きました。

改善活動ではもはや立ち行かない。ビジネス変革(顧客体験価値にフォーカスした変革)をしないと立ち行かない。こんな感じだと私は思うのです。

DX(Digital Transformation)。デジタル変革と訳される場合が多いです。DXの本質はビジネスそのものを変身させてしまうビジネス変革です。この考えの下、私は「デジタル技術を活用したビジネス変革」と訳しています。デジタル技術は道具です。ツールです。

この章では、今後会社が生き残る上で外すことはできない「デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)」を考えながら、ネットワーク型の組織について考えます。

イメージとしては、1章の模式図の右側です。黒丸は個を表しています。線はつながりを表しています。三角は社内を表しています。社内にネットワークでつながった個がある。社外の個ともつながっている。こんな感じです。

さて、デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)を成し遂げるために、外してはいけないことは何でしょう?
私は、会社の存在意義を再考することだと考えます。あなたの会社の存在意義は何ですか?
そして、会社のお客様が体験することの価値にフォーカスすることだと考えます。あなたの会社がお客様に提供する顧客体験価値は何ですか?


顧客体験価値。例えば、あなたが服を購入するという行為。その服を購入することによって、どんな体験をしますか?その体験は、あなたにとってどんな価値がありますか?

さて、お客様が感動するような顧客体験価値を提供するために、営業、マーケティング、経営企画、業務、IT部門などの人を巻き込んで、ビジネス変革を実現することが大切です。可能ならば、お客様の何人かにも参画していただき、共創することも有効かもしれません。この観点で1章のネットワーク型の模式図は三角の外にもネットワークを出しました。

ネットワーク型は部門横断型になります。
MIT Sloan Management Reviewの "How to Lead Effective Cross-Functional Teams" をご紹介したいと思います。2019年4月9日のものです。
翻訳したサイトを見つけました。こちらもご紹介したいと思います。『クロスファンクショナルチームを成功に導く3つのコツ』です。
3つのコツは下記です。

  1. 部門間で共通の課題について賛同を得る
  2. 部門間でリソースの配分を公平に取り決める
  3. 部門間で共通の「成功のための基盤」を見つける


デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)はクロス・ファンクション(機能横断)でないと達成できません。クロス・ファンクショナル・マネージャー(機能横断チームのマネージャー)の登場が必要になる、と私は考えています。

1章では、ピラミッド型の組織では、今の環境に対応することはムリだと書きました。あがいても難しいと思います。紀元前4000年前に基本設計された組織構造では立ち行かないということです。

2章では、ネットワーク型組織について、デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)も合わせて考えました。クロス・ファンクショナル・マネージャーの登場を提案しました。

次章では、ファシリテーションはどんな貢献ができるのかファシリテーションが果たす役割を考えます。


3. ファシリテーションが果たす役割

2章で、デジタル技術を活用したビジネス変革(DX)を実現するには、クロス・ファンクショナル・マネージャー(機能横断チームのマネージャー)の登場が必要になる、と書きました。

さて、このクロス・ファンクショナル・マネージャー(機能横断チームのマネージャー)は、どのくらい大変でチャレンジングなのかを説明します。

下図の左側は、ピラミッド型の中にサイロ化した部門が存在していることを模式的に表したものです。青色の組織(サイロ)と緑色の組織(サイロ)は今まで協働したことがない、と仮定します。あなたが所属する組織はどうですか?サイロ間の壁を取り除くことが必須です。そうしないと全社規模のビジネス変革は不可能です。今まで誰もやったことのないことをやらなくてはならないかもしれません。(画像のタップやクリックで拡大します)
ピラミッド型の中のサイロ組織&ピラミッドとサイロを無くしたネットワーク型

このコラムの冒頭で、「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。」とご紹介しました。

サイロ間の壁を取り払って、部門を超えて人と人とが協働し議論しながら合意形成しビジネス変革を進める。これがうまくいくように触媒のような働きをする人がファシリテーターです。

私は、クロス・ファンクショナル・マネージャー(機能横断チームのマネージャー)は、ファシリタティブなリーダーになる必要がある、と考えます。
ファシリタティブ (facilitative) は、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。ファシリタティブなリーダーは、ファシリテーションを中核に置きながら組織をリードできるリーダーと言えます。

クロス・ファンクショナル・マネージャー(機能横断チームのマネージャー)が持つべきファシリタティブなリーダーの役割は、各部署から集まった専門家から構成されるビジネス変革チームの活動が円滑に進むように促進する触媒のような役割です。
問題発生時には率先して、協働によって課題を洗い出し打ち手を考えることになります。


「ファシリテーター型リーダーの時代 (ISBN978-4833417419)」という書籍を書いたフラン・リース (Fran Rees) が、前書きで書いている文章を引用します。20年以上前に書かれた内容が、withコロナの今でも生きていると思います。

『ファシリテーターは、とてもやりがいのある仕事だ。なぜなら、成果を生み出す源泉ともいうべき信頼と協力の人間関係をつくる役割を担っているからだ。高度化し、専門化し、技術革新の目まぐるしい現代社会では、ファシリテーターはなくてはならない存在である。企業などの組織に属する人たちは、ファシリテーターの助けを得て、協力し合い、新たな改革をし、一致団結して、今という時代が突きつけてくる課題に立ち向かっている。
(中略)
組織に属している人たちが力を合わせて、問題を解決し、計画を立案し、決定を下し、資金や人材といった資源を手に入れようとするときに必要不可欠なのが、科学でありアートでもあるファシリテーションだ。ファシリテーションとはリーダーシップの一形態だといえる。実に有益なリーダーシップであり、絶対に必要なリーダーシップである。
協力関係というものは、能力のあるプロフェッショナルや従業員がただ寄り集まっただけで自然に生まれてくるものではない(たとえ当事者が心からそうしたいと願ったとしても)。何人かの人がグループという集団を形成して、一緒に計画し、決定し、改革し、実行し、責任を負おうとする場があれば、そこにはファシリテーターというリーダーが必要になる。それは、ファシリテーターが集団の士気を鼓舞し、その持てる力を引き出し、一人の力では不可能なことを達成させるからである。
(中略)
今、課題に立ち向かおうとする活力あふれる組織では、多種多様な分野の専門知識を持つ人たちがチームを組んで仕事をすることが求められている。つまり、プレゼンテーションや従来からのコミュニケーションのスキルだけでは、即決が求められ、目まぐるしく変化する企業や、たえず技術を革新しなければならない組織のニーズに応えられなくなったのである。


ファシリテーターには3つのレベルがあります。

  • レベル1:会議のファシリテーター
  • レベル2:チームのファシリテーター
  • レベル3:組織のファシリテーター

まずは、レベル1。次にレベル2。そしてレベル3。一気にレベル3になることはムリです。
まずは学ぶことから始まります。そして、リアルな場で研鑽することが必須です。これ以外にレベル3のファシリテーターになる術を私は知りません。

組織が大々的な変革をしようとする時には、レベル3のファシリテーターが必要不可欠です。クロス・ファンクショナル・マネージャー(機能横断チームのマネージャー)はレベル3のファシリテーターになる必要があるのです。

withコロナの今、多くをオンラインでやる必要があると思います。前出の『組織力強化:これから起こる変化を考える:今ファシリテーターになろう』 で、ファシリテーションはリモートワーク時代の新たな重要スキルとなる、と書きました。

そのコラムに書いた私の経験を再度書かせていただきます。

私は、大規模な全社的ビジネス変革のPMO(Project Management Office)の役割を担ったことがあります。変革後の姿はすでに提案されていました。そこで、専門家を集めAS IS(現状)とTO BE(変革後)の業務プロセスを見える化しながら、課題を洗い出しながら、対策を話し合うという活動を実施したことがあります。ITも関係するので、ITの専門家にも入ってもらいました。私はファシリタティブに対応しました。

最初はチームとして機能していませんでしたが、何回かワークショップを続けていく中で、チームとして機能するように変わっていきました。変化した理由は、変革の全貌と各自への影響度合いを鳥瞰することができ、さらに問題がありそうなところはズームインして細かく見れるので、参加者に「自分のためになる。価値がある。」と思ってもらえたことだと思います。専門家の人たちが、価値ある体験をできる場だ、と評価してくれれば、積極的かつ自律的な協働が実現します。単純な会議のファシリテーションでは立ち行かないでしょうが、フレームワークとソフトスキルを活用した組織のファシリテーションで対応できます。

また、ファシリタティブなリーダーは、チームの各メンバーを活性化する必要があります。依然として、自分の考えを持たない・言えない人や指示待ちの人がいるようです。こういう人たちは、デジタル技術を活用した全社的なビジネス変革(DX)プロジェクトでは、ネガティブな要素となります。変わっていただく必要があります。自分で自律的に考え、プロジェクトに貢献できる人が必要です。

ファシリタティブなリーダーは大変な役割だなぁ、とお感じの方がいらっしゃると思います。誰でもすぐにできるようなものではありません。フラン・リースが書いているように、人が集められチームを形成して、一緒に計画し、決定し、実行し、責任を負おうとする場をつくる。そして議論し合意したことを実施するという体験を通して、個々のチーム・メンバーの力を引き出す。こういったチームビルディング的なことをするのもファシリタティブなリーダーの役割です。いわゆるサーバント型のリーダーの要素を取り入れることも必要かもしれません。

『組織力強化:自分を育てる・組織を育てる:大切な3つのポイント』 というコラムを参考にしていただけるかもしれません。

また、組織間のサイロの壁を取り除き協働する、という初めてのことをやる場合、慎重かつ迅速に進めることが大切です。この観点で、『働き方:アジャイルな働き方とは?:今理解すべき3つの視点』 というコラムを参考にしていただけるかもしれません。

大変かもしれません。
しかし、それに見合った、やりがいのある役割だと私は考えます。


ファシリタティブなリーダーになりたい方、ファシリタティブなリーダーを育成したい方。
一人で自習するやり方は非効率です。ファシリテーターの支援を受けながら研鑽することが必要だ、と私は考えます。
私の提案するアプローチは、下記のコラムに書きました。ご関心をお持ちの方は、お読みいただけると幸いです。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 

この記事を書いたプロ

小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(BTFコンサルティング)

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