昼間の眠気、放っておいて大丈夫? 原因と対策を解説

皆さんは、寝入りばなや起きがけに突然、頭の中で「ドーン!」「バン!」といった大きな爆発音や衝撃音を聞いた経験はありませんか? それは夢ではなく、現実の音として耳に響くのに、実際には何の音もしていない。もしそうなら、それはもしかしたら 頭内爆音症候群 かもしれません。今回は、この不思議な現象について、睡眠障害の専門家として詳しく解説していきます。
◆頭内爆音症候群とは?
頭内爆音症候群(Exploding Head Syndrome:EHS)は、睡眠障害の一つで、入眠時や覚醒時に、頭の中で雷鳴や銃声、爆発音、破裂音などの非常に大きな音を聞いたように感じる現象です。音は非常に鮮明で、まるで実際に起こったかのように感じますが、周囲の人には全く聞こえておらず、身体的な痛みも伴いません。短時間で終わり、通常は数秒程度で消え去ります。
◆種類
頭内爆音症候群に厳密な種類分けはありませんが、症状の現れ方として以下のような違いがあります。
・音の種類:爆発音、銃声、雷鳴、ドアが閉まる音、破裂音など、個人によって聞こえる音の種類は様々です。
・頻度:毎日起こる人もいれば、数ヶ月に一度という人もいます。
・随伴症状:恐怖感や不安感、動悸などを伴うこともありますが、これらは音自体によるものではなく、突然の大きな音に対する驚きやストレス反応によるものです。
◆原因・メカニズム
残念ながら、頭内爆音症候群の明確な原因やメカニズムはまだ完全に解明されていません。しかし、いくつかの仮説が提唱されています。
・脳の活動の切り替わり:睡眠と覚醒の移行期に、脳の聴覚に関わる部分の神経細胞が過剰に興奮し、誤作動を起こすという説が有力です。脳が完全に眠りの状態に入る前に、覚醒時の情報処理システムが誤って作動してしまうのではないかと考えられています。
・ストレスや疲労:強いストレスや疲労が蓄積している時に起こりやすいとされています。
・薬剤の影響:特定の薬剤(抗うつ薬など)の服用中止時や、睡眠薬の離脱症状として現れることもあります。
◆検査
頭内爆音症候群は、特殊な検査で診断されるものではありません。医師が患者さんの詳細な問診を行い、症状の特徴や出現状況などを総合的に判断して診断します。多くの場合、睡眠ポリグラフ検査などの客観的な検査では異常が見られないことがほとんどです。そのため、ご自身の症状を詳しく医師に伝えることが非常に重要になります。
◆頭内爆音症候群と似た症状を示す病気や状態
頭内爆音症候群は、その特異な症状から他の病気と間違われやすいこともあります。
・耳鳴り:耳鳴りは、耳の中で持続的に「キーン」「ジー」といった音が聞こえるもので、頭内爆音症候群のような爆発音とは異なります。
・幻聴:統合失調症などの精神疾患で生じる幻聴は、多くの場合、意味のある言葉や音楽などが聞こえるもので、頭内爆音症候群のような単純な衝撃音とは異なります。
・てんかん:稀にてんかん発作の一症状として、音の幻覚を伴うことがありますが、頭内爆音症候群とは異なり、意識障害やけいれんなどを伴うことがあります。
・睡眠麻痺(金縛り):金縛りは意識があるのに体を動かせない状態で、多くの場合、幻覚や幻聴を伴いますが、頭内爆音症候群のように突然の爆発音で覚醒するとは限りません。
これらの病気との鑑別のためにも、必ず専門医の診察を受けることが大切です。
◆治し方
頭内爆音症候群に対する確立された特効薬はまだありません。しかし、症状を軽減したり、頻度を減らしたりするためのアプローチはいくつかあります。
・原因の特定と対処:ストレスや疲労が関与している場合は、それらを軽減するための生活習慣の改善が重要です。
・薬物療法:症状が重く、日常生活に支障をきたす場合は、抗不安薬や抗うつ薬、筋弛緩作用のある薬剤などが処方されることもあります。これらは症状の緩和を目的とした対症療法です。
・認知行動療法:症状に対する不安を軽減し、適切な対処法を学ぶことで、症状の頻度や重症度を改善できる可能性があります。
◆自分でできる対策
「もしかしたら頭内爆音症候群かも?」と感じたら、まずはご自身でできる対策を試してみましょう。
・規則正しい睡眠習慣:毎日同じ時刻に寝起きし、質の良い睡眠を心がけましょう。
・ストレスの管理:ストレスをため込まないよう、適度な運動やリラックスできる趣味、瞑想など、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
・カフェインやアルコールの摂取を控える:特に就寝前の摂取は控えましょう。
・寝室環境の整備:暗く静かで快適な寝室環境を整えましょう。
・不安の軽減:「またあの音がするかも」という不安が症状を悪化させることもあります。もし音が鳴っても「これは頭内爆音症候群だから大丈夫」と認識し、過度に恐れないようにしましょう。
・症状の記録:いつ、どんな音が、どのくらいの頻度で起こるのかを記録しておくと、医師に相談する際に役立ちます。
頭内爆音症候群は、生命に関わるような危険な病気ではありませんが、その症状に驚きや不安を感じる方が少なくありません。もしこのコラムを読んで「自分もそうかもしれない」と感じた方は、一人で悩まず、ぜひ睡眠障害の専門医にご相談ください。適切なアドバイスとサポートを受けることで、より安心して眠れるようになるでしょう。
雨晴クリニックでは、 頭内爆音症候群の診療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。



