五輪観戦で睡眠障害!? 原因と対策を専門家が解説
「ギリギリ…」「カチカチ…」。夜中に家族から指摘されたり、朝起きた時に顎がだるかったりすることはありませんか? それはもしかしたら歯ぎしりかもしれません。決して珍しいことではないのですが、放置しておくとさまざまな影響が出てくる可能性があります。今回は、意外と知らない歯ぎしりの基礎知識から、自分でできる対策までを解説します。
◆種類:どんな歯ぎしりがあるの?
歯ぎしりは、大きく分けて3つの種類があります。
・グラインディング(研磨型):歯を左右にギリギリと擦り合わせるタイプです。最も一般的な歯ぎしりで、大きな音が出やすいのが特徴です。
・クレンチング(食いしばり型):歯を強く噛み締めるタイプです。音はあまりしませんが、顎の筋肉に大きな負担がかかります。日中のストレスなどが影響しやすいと言われています。
・タッピング(タッピング型):歯をカチカチと小刻みに打ち鳴らすタイプです。比較的頻度は少ないですが、他のタイプと併発することもあります。
ご自身がどのタイプかによって、対策も少し変わってくることがあります。
◆原因・メカニズム:なぜ歯ぎしりをしてしまうの?
歯ぎしりの原因は、残念ながらまだ完全に解明されていません。しかし、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。主な原因やメカニズムとしては、以下のようなものが挙げられます。
・ストレス:精神的な緊張や不安は、歯ぎしりの大きな原因の一つです。
・睡眠の質の低下:睡眠が浅い、途中で目が覚めやすいなども歯ぎしりを誘発することがあります。
・噛み合わせの異常:歯並びや噛み合わせの悪さが、歯ぎしりの原因になることもあります。
・飲酒・喫煙:アルコールやニコチンは、睡眠の質を低下させ、歯ぎしりを悪化させる可能性があります。
・特定の薬の副作用:抗うつ薬など、一部の薬の副作用として歯ぎしりが起こることがあります。
・遺伝的な要因:家族に歯ぎしりをする人がいる場合、体質的に歯ぎしりをしやすい可能性があります。
これらの要因が単独で、あるいは複合的に作用して、睡眠中の無意識な歯の動きを引き起こすと考えられています。
◆影響:歯ぎしりを放置するとどうなる?
歯ぎしりを放置すると、さまざまな悪影響が出てくる可能性があります。
・歯へのダメージ:歯がすり減ったり、欠けたり、ヒビが入ったりすることがあります。詰め物や被せ物が取れやすくなることもあります。
・顎関節症:顎の関節やその周りの筋肉に痛みが生じたり、口が開けにくくなったりする顎関節症のリスクが高まります。
・頭痛・肩こり:顎の筋肉の緊張が、頭痛や肩こりの原因になることがあります。
・睡眠の質の低下:歯ぎしりによって睡眠が妨げられ、日中の眠気や集中力の低下につながることがあります。
・歯周病の悪化:歯に過度な力が加わることで、歯周病が悪化する可能性があります。
このように、歯ぎしりは単に音の問題だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があるのです。
◆検査:どうすれば歯ぎしりだとわかるの?
歯ぎしりの診断は、睡眠専門医や歯科医師による問診や口腔内の診察が基本です。
・問診:睡眠時の状況や、朝起きた時の顎の状態、日中のストレスなどを詳しく聞かれます。
・口腔内診察:歯のすり減り具合や、顎の関節の状態などを確認します。
・睡眠ポリグラフ検査(PSG):より詳しく調べる必要がある場合は、睡眠中の脳波や呼吸、心拍などを記録する精密な検査をすることがあります。これにより、歯ぎしりの頻度や程度などを客観的に評価できます。
このほか、必要に応じていろいろな検査が行われることがあります。
◆治し方:どんな治療法があるの?
歯ぎしりの治療法は、原因や症状の程度によって異なります。
・マウスピース(ナイトガード):睡眠中に装着することで、歯や顎への負担を軽減します。最も一般的な治療法の一つです。
・噛み合わせの調整:歯並びや噛み合わせに問題がある場合は、矯正治療や補綴(ほてつ)治療を行うことがあります。
・薬物療法:睡眠導入剤や筋弛緩(きんしかん)剤などが用いられることがありますが、根本的な治療というよりは症状を緩和する目的で使用されます。
・ボツリヌス注射:顎の筋肉にボツリヌス毒素を注射することで、筋肉の過剰な動きを抑える治療法です。
・心理療法(カウンセリング):ストレスが原因と考えられる場合は、カウンセリングによってストレスマネジメントを学ぶことが有効な場合があります。
◆自分でできる対策:今日からできること
医療機関での治療と並行して、ご自身でできる対策もいくつかあります。
・眠る前のリラックス:入浴やストレッチ、アロマテラピーなどで心身をリラックスさせましょう。
・規則正しい生活:毎日同じ時刻に寝起きし、質の高い睡眠を心がけましょう。
・カフェイン・アルコールの制限:眠る前のカフェインやアルコールの摂取は控えましょう。
・日中の食いしばり軽減:日中、無意識に歯を食いしばっていることに気づいたら、意識的に力を抜くようにしましょう。
・枕の調整:自分に合った高さや硬さの枕を選ぶことも、睡眠の質を高める上で重要です。
・顎のマッサージ:眠る前に顎周りの筋肉を優しくマッサージすることで、緊張を和らげられます。
これらの対策を実践することで、歯ぎしりの軽減や予防につながることがあります。
◆まとめ
歯ぎしりは、多くの方が経験する可能性のある睡眠中の問題です。放置せずに、原因を知り、適切な対策を講じることで、お口の健康だけでなく、全身の健康を守ることにもつながります。もし気になる症状があれば、まずは専門の医療機関に相談してみることをお勧めします。
雨晴クリニックでは、 歯ぎしりの診療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。