55.【超・実践編】「毎月ゼロからのスタート」を脱却!老舗BtoB企業がサブスクで経営を劇的に安定させた舞台裏

森和吉

森和吉

テーマ:デジタルマーケティング

はじめに、こんにちは。株式会社吉和の森の森和吉です。

前回(第54回)は、求人応募ゼロに苦しんでいた地方の建設会社が、スマホ動画を活用した「等身大のブランディング」と「理念への共感」によって、求人広告費ほぼゼロで熱量の高い若手人材を次々と採用できるようになった舞台裏をお話ししました。

さて今回は、中小企業の経営者様が抱える最も深い悩みの一つ、「売上の不安定さ」を根本から解決した実践事例をお届けします。

舞台は、創業40年の「オフィス向け専門清掃・メンテナンス会社」です。長年、実直な仕事で信頼されてきましたが、毎月の売上は「スポット(単発)の案件」が中心。「今月は良くても、来月はどうなるか分からない」「毎月1日になると売上がゼロにリセットされ、またイチから営業しなければならない」というプレッシャーに、社長は長年精神的にすり減っていました。

この老舗企業が、第21回でお話しした「LTV(顧客生涯価値)」の視点を取り入れ、どうやって「サブスクリプション(月額継続課金)モデル」の立ち上げに成功し、経営の絶対的な安心感を獲得したのか。その生々しい変革のプロセスを公開します。

間違いだらけの対策:「単なる値引きによる年間契約の縛り」


私が相談を受けた当初、社長は「サブスクなんて、うちのような地味な清掃業には関係ないですよ。一応、年間契約してくれたら10%引きにするというプランはありますが、全然選ばれません」と仰っていました。

ここに大きな誤解があります。中小企業におけるサブスクの本質とは、単なる「値引きを餌にした期間の縛り(契約の囲い込み)」ではありません。お客様にとって「毎月お金を払い続ける明確な理由(継続的な価値)」を提供することです。

単に「安くなるから」という理由だけでは、お客様は契約書に判を押すのをためらいますし、景気が悪くなれば真っ先に解約候補に挙がってしまいます。

ステップ1:「トラブル対応」から「トラブルを起こさない価値


まず私たちは、これまでお客様からいただいた過去のアンケート(第39回)やクレームの履歴を徹底的に分析し、お客様が本当に困っている「隠れた不満(ペイン)」を探しました。

そこで分かったのは、オフィス環境において「エアコンが壊れて水漏れした」「排水溝が詰まって異臭がした」という事後のトラブルが、企業の業務効率を最も大きく低下させているという事実でした。

ここに、独自のポジショニング(第40回)のヒントがありました。
従来の「汚れたから綺麗にする(事後清掃)」という売り方をやめ、「オフィスのインフラトラブルを未然に防ぎ、社員の生産性を最大化する『予防メンテナンス・サブスク』」へとサービスを再定義したのです。

ステップ2:デジタルを使った安心の可視化とマルチチャネル戦略


月額制のサービスとして安心して契約してもらうために、第46回でお話しした「信頼の可視化」と、第23回でお伝えした「解約阻止のマルチチャネル戦略」を導入しました。

毎月の清掃・点検が終わった後、スタッフは点検箇所(普段は見えない天井裏の配管など)の写真や動画をスマホで撮影し、お客様の「専用LINEグループ」へと直接送る仕組みを作りました(第38回第43回の技術の応用です)。

文字だけの報告書ではなく、「ここを今月も綺麗に点検しておきました!」というスタッフの顔と人肌感(第20回)が見える動画報告によって、お客様は「毎月しっかり守られている」という圧倒的な安心感を視覚的に実感できるようになりました。さらに、何かあればLINEで一言送るだけで、スタッフが先回りして助けに来てくれるアクティブサポート(第22回)の体制も整えました。

ステップ3:解約率わずか0.5%!ファンコミュニティの形成


このサブスクモデルを既存のお客様に提案したところ、「トラブルで業務が止まるリスクがなくなるなら安いものだ」と、次々にプランが切り替わっていきました。

さらに、この契約企業(オフィスの総務担当者や経営者)を対象に、第48回でご紹介した「コミュニティマーケティング(ファンの集い)」として、「他社のオフィス環境の効率化事例を学ぶオンライン勉強会」を定期開催したのです。

結果として、サービスの導入から1年で、全売上の約60%が毎月自動的に入ってくる「ストック型(サブスク)」へとシフトしました。毎月定額の売上が予測できるようになったことで、社長の精神的なストレスは激減。さらに、コミュニティを通じた顧客との強い絆により、2026年現在も解約率は驚異の「0.5%以下」という、大企業も驚くほどの安定基盤を築いています。

今回の実践ポイント


老舗BtoB企業がサブスク化に成功した理由は、特別なITシステムを作ったからではありません。

  1. 「事後の処理」から「事前の予防」へと、売る価値を変えた(第40回
  2. スマホ動画やLINEを使い、毎月の「安心と人肌感」を可視化した(第20回第38回
  3. 顧客をコミュニティで繋ぎ、他社が参入できない絆を作った(第48回


「毎月売上がリセットされる恐怖」から脱却する仕組みは、どんな業種であっても、お客様の「継続的な悩み」に寄り添うことで必ず作り出すことができます。自社のサービスをサブスク化するとしたら、どんな価値が提供できるか、ぜひ一度考えてみてください。

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