06.返報性の魔法 ストーカー並みの「ギブ」が顧客の心を動かす
前回は、顧客が生涯を通じて自社にもたらしてくれる合計利益「LTV(顧客生涯価値)」の重要性と、サブスクリプションがもたらす経営の安定についてお話ししました。
既存のお客様との関係を長く保ち、解約を防ぐために、非常に有効なデジタル上の接客技術があります。それが、今回ご紹介する「アクティブサポート(能動的なサポート)」です。
「自社の商品について、ネット上で悪口を書かれたらどうしよう」と、SNS運用を恐れる経営者の方は多いです。しかし、SNS上の顧客の不満は、決して恐れるべきものではありません。むしろ、こちらから先回りしてアプローチし、強固な信頼関係に変えるための「最大のチャンス」なのです。
1.待つだけのサポートから、攻めるサポートへ
一般的なカスタマーサポートは、お客様からの電話やメールでの問い合わせを「待つ」スタイルです。これを「パッシブサポート(受動的なサポート)」と呼びます。
一方、「アクティブサポート」は、企業側から能動的に動くサポートです。
具体的には、X(旧Twitter)などのSNS上で、自社の商品名やサービス名、あるいは業界の悩みについて検索(エゴサーチ)し、困っているユーザーに対して「お困りですか? よろしければサポートいたします」と声をかけていく手法です。
なぜ、これが重要なのでしょうか。
実は、商品やサービスに不満を感じた顧客のうち、実際に企業へ直接クレームや問い合わせを入れる人は、全体のわずか4%程度だと言われています。残りの96%は、何も言わずに他社へ乗り換えるか、あるいはSNS上で「〇〇を買ったけれど使いづらい」「〇〇の対応がイマイチだった」とつぶやいて離脱してしまいます。
この、放置された96%の「声なき声」をいち早く拾い上げ、自発的に解決に導くのがアクティブサポートなのです。
2.【体験談】Amazonから届いた突然のリプライ
私自身、このアクティブサポートを受けて、深く感動した経験があります。
ある日、Amazonで購入した商品が自宅に届いたときのことです。玄関に置かれていたのが、私の想像を超えるような大箱(段ボール箱)でした。
「一体、自分は何を間違えて買ってしまったのだろう……」と一瞬、焦った私は、スマホを開いてX(旧Twitter)に次のように何気なくつぶやきました。
「基本amazonからの荷物は玄関に置いてもらうようにしています。想像を超える大箱が玄関に置かれていると、何を買ってしまったのだろうと思わず考えてしまいます。。」
ただの日常の一コマであり、Amazonに不満を訴える意図もありませんでした。
しかしその日のうちに、その私の何気ない投稿に対して、Amazonの公式サポートアカウント(@AmazonHelp)から、次のリプライ(返信)が届いたのです。
「失礼します、Amazonです。商品お届け時の梱包について、ご心配をおかけし申し訳ございません。梱包に関するご意見やご要望などについて、もしよろしければ、こちらのヘルプページをご参照いただけますと幸いです」
突然の返信に非常に驚きました。しかし同時に、「こんな些細なつぶやきまでしっかり見て、すぐに手を差し伸べてくれるのか」と、ユーザーの悩みをいち早く解決しようとするAmazonの姿勢に、小さな感動と強い安心感を覚えました。
この体験は私の心に残り、その後もAmazonを利用し続ける大きな理由の一つになっています。
3.不満を強烈な「信頼」に変える火消し技術
中小企業こそ、このアクティブサポートを導入するメリットは極めて大きいです。
SNS上で自社に対するネガティブな書き込みを見つけたとき、多くの企業は「関わらないようにしよう」と見て見ぬ振りをします。しかし、放置された悪評は、ネット上を漂い続け、将来の見込み顧客の信頼を奪い去っていきます。
もしそこで、企業側から「ご不便をおかけして大変申し訳ございません。DM等で状況をお知らせいただければ、すぐに返金・交換等の対応をさせていただきます」と誠実に対応したらどうでしょうか。
不満を抱いていた顧客は、一転して「これほど誠実に対応してくれる会社なら、安心して使い続けられる」と確信し、かえってファンになってくれるケースが非常に多いのです。
4.アクティブサポートを成功させる4つのルール
SNSでの攻めのサポートを行う際は、以下の4つのルールを徹底してください。
①セールス(売り込み)は絶対にしない
悩みを解決することだけに徹してください。「今ならこちらの新商品がおすすめです!」などと宣伝を挟むと、下心が見透かされ、逆に炎上するリスクが高まります。
②とにかく素早く対応する
つぶやきから時間が経ちすぎると効果が薄れます。できれば当日中、遅くとも24時間以内に声をかけるのが鉄則です。
③「定型文」を避け、対話を意識する
機械的なコピペ文章は冷たい印象を与えます。相手のつぶやいた内容に合わせた、血の通った丁寧な言葉遣い(人肌感)を意識してください。
④運用ポリシーをあらかじめ作っておく
どこまでのクレームに対応するのか、どのような言葉遣いにするのかを社内でルール化しておき、担当者が迷わず動けるようにしておきます。
デジタルだからこそ「先回りのおもてなし」が際立つ
ネットでの悪評を恐れてSNSから逃げるのではなく、あえてその声の中に飛び込み、誠実な対話で信頼に変えていくこと。
これこそが、大企業には真似できない、中小企業の「人肌感」を活かした最強の接客術です。
あなたの会社の商品やサービスについて、ネットの向こうで誰かが困っていませんか?
まずは自社名で検索をしてみてください。そこに、未来のファンを作るための最初の一歩が待っています。


