43.「自分がやった方が早い」の罠~社長が現場を離れても回り続ける仕組みの作り方

森和吉

森和吉

テーマ:デジタルマーケティング

はじめに、こんにちは。株式会社吉和の森の森和吉です。

前回(第42回)は、組織のベクトルを1つにする「インナーブランディング(理念共有)」についてお話ししました。社長自身の生々しい体験談をストーリーとして語り、理念をスタッフの判断基準にまで落とし込むことが大切だという内容でしたね。

スタッフとの理念共有が進んでくると、次に経営者がぶつかるのが「業務の属人化」という壁です。

「自分が現場に出ないと売上が落ちる」「スタッフに任せるより、自分がやった方が早くて確実だ」──。このように考えて、いつまでもプレイングマネージャーとして現場を離れられない経営者様は非常に多いです。しかし、この状態が続くと、会社の成長は「社長の労働時間の限界」でストップしてしまいます。今回は、社長が現場を離れても自然と回り続ける「仕組み化」のコツをお伝えします。

「自分がやった方が早い」は、組織の成長を止める毒薬


確かに、長年ビジネスを引っ張ってきた社長が動いた方が、成果が出るのは早いですし、お客様の満足度も高いかもしれません。

しかし、社長がすべての案件に首を突っ込んでいる限り、スタッフは「最後は社長が何とかしてくれる」と依存し、いつまでも自立できません。また、社長が体調を崩したり、他の重要業務に時間を割かなければならなくなったりした瞬間、会社の機能が停止してしまうという大きなリスクを抱えることになります。

仕組み化とは、社長が楽をするためのものではありません。「社長がいなくても、昨日と同じ品質のサービスがお客様に届く状態」を作り、会社のリスクを減らし、次の成長へ舵を切るための必須戦略なのです。

分厚いマニュアルは不要!今すぐできる動画マニュアルのすすめ


仕組み化と聞くと、「膨大な業務マニュアルを一から作らなければいけないのか」と気が重くなるかもしれません。安心してください、その必要はありません。今の時代、文字だらけの分厚いマニュアルを作っても、誰も読んでくれません。

そこで活用していただきたいのが、ここ数回のコラム(第37回第42回)でも登場している「動画」の技術です。

例えば、パソコンで行う事務作業やツールの操作方法であれば、スマートフォンのカメラで手元を撮影したり、パソコンの画面録画(スクリーンの収録)機能を使って、社長やベテランスタッフが実際に作業している様子を「解説しながら1〜2本の短い動画」に収めるだけです。

「百聞は一見に如かず」の言葉通り、文字で10ページにわたって説明するよりも、1分の動画を見せる方が、スタッフへの引き継ぎは10倍早く、正確に完了します。これなら、今日からでも始められますよね。

定型業務を仕組み化し、「人肌感」にリソースを集中させる


「すべてを仕組み化してマニュアル通りに動かしたら、冷たいロボットのような会社になってしまいませんか?」というご質問をいただくことがあります。

私の答えは、真逆です。
仕組み化の本当の目的は、誰がやっても同じ結果になる「定型業務(事務作業、定型的な手続きなど)」を徹底的に効率化することです(第26回でお話しした『生成AIを事務員にする』という考え方に近いです)。

ルーティンワークにかかる時間を仕組みによって最小化することで、スタッフの心と時間に「余白」が生まれます。その浮いた時間を使って、第20回や第38回でお話しした、人間だからこそできる「お客様への人肌感のある対応」や「きめ細やかなおもてなし」に全員のリソースを集中させるのです。これこそが、中小企業が目指すべき理想の仕組み化です。

さいごに


仕組み化の第一歩は、社長が現場の仕事をスタッフに「任せる勇気」を持つことです。

最初は、スタッフのやることに物足りなさを感じるかもしれません。しかし、第42回で共有した「理念」という軸さえブレていなければ、多少のやり方の違いは目をつぶり、信頼して任せてみてください。失敗を乗り越えてスタッフが育ったとき、あなたの会社は社長個人の商店から、強固な「組織」へと生まれ変わります。

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