21.LTVを科学する~育毛剤が店舗販売よりサブスクで6倍稼げる理由

森和吉

森和吉

テーマ:デジタルマーケティング

前回は、最後の1押しで顧客の背中を押す「スタッフブログ」と、中の人の体温を伝える「人肌感」の重要性についてお話ししました。

今回からは、獲得した一回限りの取引を一生の付き合いに変え、会社の売上を何倍にも引き上げる、デジタルマーケティングの真髄である「LTV(顧客生涯価値)」の最大化についてお話しします。

「今月の売上は良かったけれど、来月はどうなるか分からない」
「毎月、新規のお客様を必死に追いかけ続けていて、経営が落ち着かない」

もし、このような悩みを抱えているのであれば、今回ご紹介する「LTV」の考え方が、あなたの会社の経営体質をガラリと変える特効薬になります。

1.なぜ「新規獲得」ばかりに命をかけると疲弊するのか?


マーケティングの世界には、顧客が生涯を通じて自社にもたらしてくれる合計利益を示す「LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)」という重要な指標があります。

多くの経営者は「今月は何人新しいお客様が増えたか」という新規獲得ばかりに目を奪われがちです。しかし、実は新規顧客を1人獲得するためのコストは、既存顧客にリピートしてもらうコストの「5倍」かかると言われています(1:5の法則)。

どれだけ広告費をかけて新規のお客様を集めても、1回きりで離脱されてしまっては、広告費すら回収できずに赤字になってしまいます。経営を安定させ、売上を最大化する鍵は、入り口を広げることではなく、「一度繋がったお客様とどれだけ長く付き合い続けられるか(LTVを高められるか)」にあるのです。

2.【数字で見る】育毛剤の販売モデルに見るLTVの劇的な差


具体的な事例として、1本3,000円の「育毛剤(発毛剤)」を売るビジネスモデルで、LTVにどれほどの差が生まれるのかを数字で比較してみましょう。

【パターンA】ドラッグストアなどの「店舗で1回限り」の販売


お客様は店舗で育毛剤を1本(3,000円)購入します。しかし、育毛剤は1日や2日では効果が出ません。塗るのが面倒になったり、3日坊主で使い切らないまま放置されたりして、2度と購入しないケースが多々あります。
この場合、顧客はすぐに離脱し、別の選択肢(AGA専門クリニックなど)へと流れてしまいます。

  • 獲得できるLTV:3,000円


【パターンB】「サブスクリプション(定期購入)」での販売


一方、同じ3,000円の育毛剤を「毎月自動で届く定期購入(サブスク)」として販売した場合はどうでしょうか。
お客様は「髪が生えるまで数ヶ月かかるから、サブスクリプション形式なんだ」と納得して、まずは3ヶ月継続して購入します。使い続ける中で、少しずつ発毛効果を実感し始めると、「もっと毛が生えてくるだろう」と考え、さらに3ヶ月継続して購入します。

  • 獲得できるLTV:3,000円×6ヶ月=18,000円(店舗販売の6倍!)


さらに効果を実感して会社への信頼が高まった段階で、メールマガジンを通じて「1本6,000円の高級ライン」を案内(アップセル)したとします。その高級ラインをさらに3ヶ月利用してくれれば、売上は一気に跳ね上がります。

  • 獲得できるLTV:18,000円+(6,000円×3ヶ月)=36,000円(店舗販売の12倍!)


全く同じ商品を扱っているにもかかわらず、提供する仕組み(売り方)と顧客との繋がり方を変えるだけで、1人のお客様がもたらしてくれる売上に「6倍から12倍」もの劇的な差が生まれるのです。

3.「売り切る」から「繋がり続ける」への転換


このLTVの最大化において、最も重要なのは「商品を納品して終わりにしない」というマインドセットです。

サブスクリプションモデルは、単に「毎月自動で決済する」というシステムだけの話ではありません。
定期購入をしてくれているお客様に対し、メールマガジンやLINE公式アカウントを通じて、「正しい毛髪ケアの方法」を動画で届けたり、「よくある疑問」に先回りして回答したりする。こうした地道な情報提供(ギブ・ストーキング)を続けることで、お客様は「この会社は売って終わりではなく、本当に私の悩みを解決しようとしてくれている」と確信し、ファンになっていくのです。

この強固な信頼関係(ロイヤリティ)が構築されれば、他社がどれだけ安い新商品を出してきても、お客様が目移りすることはなくなります。それどころか、薄毛に悩む友人を紹介してくれたり、口コミサイトに自発的に高評価を書き込んでくれたりする、心強い応援団になってくれるのです。

新規顧客を毎月ゼロから追いかける自転車操業の経営から、既存顧客に愛されながら売上が積み上がっていくストック型の経営へ。

あなたの会社の商品やサービスも、ただ1回売って終わりになっていませんか?
「どうすればお客様と持続的に繋がり、LTVを高められるか」という視点で、自社のサービス設計を見直してみてください。そこに、来月の売上予測が立ち、経営が劇的に安定する最大の突破口があります。

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