【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序
本記事は、当事務所が実際にお受けした事案をもとに構成しています。ご依頼者のプライバシーに配慮し、年齢・居住地・経緯の細部などは、事案の本質を損なわない範囲で変更しています。
関係がこじれた相手から「勤務先に伝える」と告げられ、あわせて慰謝料の支払いを求められる。職場にも家庭にも知られたくないという思いから、言われた金額に応じるべきなのか、どこまで争えるのか、判断がつかなくなってしまう方がいらっしゃいます。
本記事では、職場の同僚から数十万円から100万円程度の支払いを求められた会社員の男性について、当事務所が交渉をお引き受けし、解決金20万円、口外禁止条項と清算条項を盛り込んだ合意書の締結に至った経過をご紹介します。電話がつながらない相手方との連絡の取り方や、合意書の条件で意見が分かれた場面での考え方もあわせて振り返ります。
事案の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご相談者 | 家庭を持つ会社員の男性 |
| 相手方 | 同じ職場に勤める女性 |
| ご相談のきっかけ | 関係がこじれた後、相手方から勤務先に伝えると告げられ、慰謝料の支払いを求められた |
| ご要望 | 交渉を弁護士に任せ、この件を書面で区切りたい。できれば今後の接触も断ちたい |
| 懸念事項 | 勤務先や家族に知られること。求められている金額に法的な根拠があるのか分からないこと |
| 解決金 | 20万円(当初の請求は数十万円から100万円程度) |
| 解決までの期間 | ご相談から合意書の締結まで約2か月半 |
ご相談に至った経緯
ご相談者は、家庭を持つ会社員の男性です。職場の同僚である女性と私的な交流を重ねるうちに、身体的な接触を伴う関係になっていました。
その後、二人の関係はうまくいかなくなります。相手方は、この関係を勤務先に伝えると告げたうえで、慰謝料の支払いを求めるようになりました。示された金額には、数十万円から100万円程度の幅がありました。
ご相談者にとっては、勤務先に話が伝わることも、家族に知られることも避けたい事態でした。一方で、求められている金額に法的な裏づけがあるのか、そもそも支払う義務があるのかは、ご自身では判断がつきません。当事者同士で話し合おうとしても感情的なやり取りになりやすく、話が前に進まない状態が続いていました。
個人で対応を続けるのは難しいと考えたご相談者は、当事務所の男女トラブルの相談窓口にご連絡くださり、ご相談の当日にご依頼いただきました。
当事務所の対応
電話がつながらない相手方へ、受任の連絡を確実に届ける
ご依頼を受けて、担当弁護士はまず相手方に電話で連絡を試みました。ところが、時間帯を変えて何度かけても応答がなく、留守番電話にも切り替わりません。
弁護士が代理人についたことを相手方が知らないままでは、ご相談者への直接の連絡や請求が続くおそれがあります。そこで、相手方が日常的に確認している経路を使うことにし、ご相談者のメッセージアプリのアカウントから受任通知を送っていただく方法を選びました。突然書面だけが届く形にならないよう、送信の前にはご相談者から一言添えていただいています。
相手方が内容を読んだこと(既読)を確認したうえで、ご相談者には相手方のアカウントをブロックしていただきました。これにより、以後はご相談者が相手方と直接やり取りをせずに済む状態になりました。
相手方からの直接の連絡を機に、交渉の窓口を開く
受任通知を送った後も、しばらくは相手方から当事務所への連絡はありませんでした。担当弁護士は、ご相談者と状況をこまめに共有しながら、相手方の出方を待つことにしました。
その後、相手方がご相談者に直接連絡を取り、職場の同僚に伝えるという趣旨のことを告げてきました。担当弁護士はこの連絡を受けてすぐに相手方へ電話をかけましたが、やはりつながりません。そこでショートメッセージを使い、当事務所が代理人として窓口になっていることを改めて伝え、あわせて先に送った受任通知の内容も届けました。
このメッセージに相手方から返信があり、話し合いによる解決を望んでいることが分かりました。相手方の生活上の事情から電話でのやり取りは難しかったため、その後の交渉はショートメッセージで進めています。連絡手段が限られていても、相手方が応じやすい方法に合わせることで、話し合いの場をつくれる場合があります。
譲れない条件と譲れる条件を分けて合意をまとめる
交渉の中で意見が分かれたのは、合意書にどのような条項を入れるかという点でした。
ご相談者は、今後一切連絡や接触をしないという条項(接触禁止条項)を入れることを望んでいました。しかし相手方はこれに強く反対し、接触禁止条項には応じられないという姿勢を変えませんでした。
担当弁護士は、ここでご相談者と改めて優先順位を話し合いました。金銭の請求を含め、この件をめぐる法的な問題を書面で区切ることを最優先にするのか、それとも今後の接触を断つことを最優先にするのか。それぞれを選んだ場合に何が残るのかをご説明したうえで、ご相談者は前者を優先するという判断をされました。
この判断を踏まえ、担当弁護士は接触禁止条項を見送る代わりに、解決金の額を抑えること、本件を第三者に口外しないこと(口外禁止条項)、本件について双方の間にほかの債権債務がないことを確認すること(清算条項)の3点を確保する方向で交渉を進めました。その結果、解決金20万円を支払う内容で合意に至りました。
合意書の取り交わしと解決金の支払い
合意書は2通作成し、返信用の封筒を同封して相手方に郵送しました。相手方が署名押印した合意書が返送されたことを確認してから、当事務所の預り金口座を通じて解決金を送金し、支払いを終えています。
合意書の返送を確認してから送金するという順序にしたのは、支払いだけが先に済み、書面が手元に残らない事態を避けるためです。ご相談から合意書の締結までは、約2か月半でした。
解決結果と対応のポイント
- 数十万円から100万円程度とされていた請求について、解決金20万円で合意しました。
- 口外禁止条項を設け、勤務先や第三者に伝えられることへの手当てをしました。
- 清算条項により、本件に関する債権債務がほかにないことを双方で確認しました。
- 受任通知の送付後は、ご相談者が相手方と直接やり取りする必要がなくなりました。
- 接触禁止条項は見送りましたが、優先順位を整理したことで、交渉が長引かずにまとまりました。
- ご相談から合意書の締結までは約2か月半でした。
担当弁護士からのコメント
関係がこじれた相手から「勤務先や家族に伝える」と言われたうえで金銭を求められるというご相談は、当事務所にも寄せられています。
最初にお伝えしたいのは、相手から示された金額を、そのまま支払わなければならないとは限らないということです。慰謝料を支払う義務があるのか、あるとすればどの程度が相当なのかは、当事者の関係や経緯、それぞれの言動などによって判断が変わります。相手が示した金額が、そのまま法的に認められる金額になるわけではありません。
また、「払わなければ勤務先に伝える」と告げて金銭を求める行為は、その態様によっては恐喝罪などの問題となることがあります。ただし、相手に損害賠償を求める正当な理由がある場合には、権利の行使との区別が難しくなる場面もあり、事案ごとに慎重な検討が必要です。相手の言動が違法かどうかだけで結論を急がず、請求の中身と伝え方の両方を見ていくことが大切です。
この種の事案で重要な意味を持つのは、話し合いの結果を書面に残すことです。不安や焦りから求められるままに支払っても、合意書がなければ、後になって別の名目で請求が繰り返されるおそれがあります。清算条項を含む合意書を取り交わしておくことは、同じ問題の蒸し返しを防ぐための大切な手当てになります。
本件では、条件の優先順位を整理したことが解決につながりました。ご相談者は当初、今後の接触を断つ条項を強く望まれていましたが、相手方はこれに応じませんでした。すべての希望を通そうとすれば交渉がまとまらず、落ち着かない状態が長く続いた可能性があります。何を最も守りたいのかをご相談者と確認し、その点を確保する方針に切り替えたことで、約2か月半で合意に至っています。
交渉で何を優先するかは、最終的にはご本人が決めることです。弁護士の役割は、それぞれの条項が持つ意味や、譲った場合に残るリスクをお伝えし、ご本人が納得して判断できるよう材料をそろえることだと考えています。
相手方と連絡が取れないというご相談も珍しくありません。本件でも電話はつながりませんでしたが、ご本人のアカウントからの通知やショートメッセージを組み合わせることで、相手方に連絡を届け、交渉を進めることができました。連絡がつかない状況でも、取れる方法が残っていることがあります。
関係のもつれから慰謝料を求められている方、勤務先や家族に伝えると言われてお困りの方、どこまで応じるべきか迷っている方は、支払いや署名をする前に、一度ご相談いただくことをおすすめします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


