「未成年だった」と脅された|事実確認と恐喝への対応
「配偶者の不倫相手が話し合いに応じてくれません。裁判まで起こすつもりはないのですが、調停という方法は使えないのでしょうか」。慰謝料を請求する側の方から、こうしたご相談を受けることがあります。一方で、請求を受けた側の方からは「裁判所から調停の呼出状が届きました。訴えられたということでしょうか」というお問い合わせをいただきます。
調停は裁判所を使った話し合いの手続で、不貞相手への慰謝料請求にも使える。そう説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、この説明だけでは、実際に動き出す手続の姿までは見えてきません。どの裁判所に申し立てるのか、誰が間に入るのか、期日には誰が出るのか。そうした部分は、離婚調停から想像される姿とかなり違うことがあります。
この記事では、不貞相手への慰謝料請求に民事調停という手続がどう当てはまるのかを、申し立て先、担当する人、出す書面、期日の出頭、終わり方という順で整理します。交渉と調停と訴訟のどれを選ぶかという判断そのものや、示談書に置く条項の設計は、別の記事で扱っています。
この記事で扱うこと
次の点を順に説明します。
- 不貞相手への請求で使う調停が、どの裁判所のどの手続にあたるのか。
- 申し立てるとどこへ出向くことになり、誰が間に入るのか。
- 申立ての際に何を出し、期日には誰が出頭するのか。
- 自分の住所や氏名をどこまで伏せられるのか。
- どのような終わり方があり、それぞれ何が手元に残るのか。
どの手続を選ぶかという場の選び方、調停条項や示談書の中身の設計、相手が最後まで応じない場合の手当てについては、それぞれ別の記事に譲ります。
「調停」と呼ばれる手続は一つではない
同じ調停という言葉でも、話し合う相手によって申し立てる裁判所が変わります。
| 話し合う相手 | 申し立てる裁判所 | 手続の呼び方 |
|---|---|---|
| 不貞相手 | 簡易裁判所 | 民事調停 |
| 配偶者 | 家庭裁判所 | 夫婦関係調整調停など |
不貞相手への請求は簡易裁判所の民事調停
調停事件は、特別の定めがある場合を除き、相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所の管轄とされています(民事調停法3条)。当事者が合意で定めれば、地方裁判所や別の簡易裁判所を選ぶこともできます。
裁判所の案内にある「慰謝料請求調停」とは別のもの
裁判所のウェブサイトには慰謝料請求調停という手続の案内があります。ただしこれは離婚に伴う慰謝料について元夫婦の間で話し合う家庭裁判所の手続で、不貞相手を相手方とするものではありません。同じ言葉が指しているものが違うため、書式を取り違えたまま準備を進めてしまうことがあります。
調停を経なければ訴えを起こせないわけではない
家庭に関する事件については、訴えを起こす前にまず調停を申し立てることとされています(家事事件手続法257条1項、244条)。不貞相手に対する損害賠償の請求はこれにあたらないため、調停を経ずに訴えを起こすこともできます。どちらから始めるかの考え方は、別の記事で扱っています。
どこの裁判所に出向くことになるのか
申し立て先が決まるということは、期日のたびに出向く先が決まるということでもあります。
基準になるのは相手方の住まい
管轄の原則は相手方の住所地です。相手が遠方に住んでいれば、その地の簡易裁判所が舞台になります。調停を選んだ時点で、移動の負担は請求する側に乗りやすいという関係になります。
交通事故のような特則は置かれていない
民事調停法には、事件の種類によっては申立人の側にも管轄を認める特則があります。たとえば自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合の損害賠償の調停は、損害賠償を請求する者の住所または居所の所在地を管轄する簡易裁判所にも申し立てることができます(同法33条の2)。不貞に関する調停には、この種の特則は設けられていません。
訴えを起こす場合との違い
金銭の支払を求める訴えは、義務を履行すべき地を管轄する裁判所にも起こすことができ(民事訴訟法5条1号)、その場所は別段の意思表示がなければ債権者の現在の住所とされています(民法484条1項)。手続によって、出向く先が入れ替わることがあるわけです。
誰が間に入るのか
調停は、裁判官が一人で判断する手続とは組み立てが違います。
調停委員会という単位で進む
裁判所は調停委員会で調停を行い、相当であると認めるときは裁判官だけで行うこともできます。ただし当事者から申立てがあったときは、調停委員会で行わなければなりません(民事調停法5条1項、2項)。調停委員会は、調停主任1人と民事調停委員2人以上で組織されます(同法6条)。調停主任は裁判官のほか、弁護士のうちから任命される民事調停官が務めることもあります(同法7条1項、23条の2)。
民事調停委員は事件ごとに指定される
民事調停委員は非常勤の裁判所職員で、原則として40歳以上70歳未満の人のうちから選ばれます。裁判所は、民事調停では事件の内容に応じた専門的な知識経験を持つ人を指定し、家事調停では男女1人ずつを指定するなどの配慮をしていると説明しています。不貞という私生活の話を、家庭の事件を専門に扱う場ではないところで説明することになるという点は、あらかじめ知っておいたほうがよい違いです。
申し立てるときに出すもの
調停の申立ては、申立書を裁判所に提出して行います(民事調停法4条の2第1項)。
書くのは「申立ての趣旨」と「紛争の要点」
申立書には、申立ての趣旨および紛争の要点などを記載し、紛争の要点に関する証拠書類があるときはその写しを添付するものとされています(民事調停規則3条)。訴状のように法律上の主張を組み立てて提出することまでは求められていません。もっとも、申立書の副本は相手方に届きますから、何を求めているのかと、どういういきさつだと考えているのかは、最初の書面の段階で相手に伝わります。
手数料は訴えのおおむね半額
調停の申立ての手数料は、同じ額について訴えを起こす場合のおおむね半額とされています(民事訴訟費用等に関する法律3条1項、別表第一の14の項)。このほか、書類を送るための郵便料を納めます。
相手の氏名と住所が分からないと申し立てられない
申立書には相手方を特定して記載します。名前しか分からない、勤務先しか分からないという段階では、申立ての前に相手方を特定する作業が必要になります。特定の方法は別の記事で扱っています。
期日に出るのは誰か
ここは、訴訟との違いがはっきり出るところです。
呼出しを受けた当事者は自ら出頭するのが原則
調停委員会の呼出しを受けた当事者は自ら出頭しなければならず、やむを得ない事由があるときに代理人を出頭させることができる、という定め方になっています(民事調停規則8条1項)。訴訟では代理人だけが期日に出ることも多いのに対し、調停は本人が出向くことを前提に組み立てられた手続です。弁護士に依頼すれば裁判所に行かずに済む、と考えていると、想定していなかった負担が生じることがあります。
代理人になれる人
弁護士と、一定の範囲の司法書士については、調停委員会の許可なく代理人になることができます。それ以外の人を代理人とするには、調停委員会の許可を受ける必要があります(同規則8条2項)。
呼出状に書かれていること
調停手続の期日の呼出状には、不出頭に対する法律上の制裁を記載しなければならないとされています(同規則7条)。呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由なく出頭しないときは過料の定めがありますが(民事調停法34条)、実際に適用される例は多くないとされています。書面の文面が強く感じられても、そこだけで判断せず、何を求められている手続なのかを確かめることが先になります。
自分の住所や氏名を相手に伏せられるのか
調停の手続は公開されません(民事調停法22条、非訟事件手続法30条)。ただし、公開されないことと、相手方に自分の情報が伝わらないことは別の話です。
伏せたまま進める仕組みはあるが要件がある
住所や氏名が相手方に知られることによって社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある場合に、これを伏せたまま手続を進める仕組みが設けられています(同法21条の2)。令和5年2月に始まった比較的新しい制度で、要件が定められている以上、知られたくないという希望があれば当然に使えるというものではありません。
記録を見ることができる人の範囲
調停事件の記録については、当事者または利害関係を疎明した第三者が、閲覧や謄写などを請求することができます(同法12条の6)。裁判の記録の扱いとは範囲が異なるため、誰の目に触れるかという心配の内容も、手続によって変わってきます。
終わり方によって、手元に残るものが変わる
調停は、成立か不成立かの二択で終わるとは限りません。
| 終わり方 | 手元に残るもの | 次に考えること |
|---|---|---|
| 調停の成立 | 調停調書 | 記載された内容にそって支払を求める |
| 調停に代わる決定 | 決定の告知を受けた書面 | 2週間以内の異議で効力を失う |
| 調停の不成立 | 不成立の通知 | 訴えを起こすかどうかを決める |
| 申立ての取下げ | 特に残らない | 請求そのものが消えるわけではない |
成立した場合の効力
当事者間に合意が成立し、その合意が調書に記載されると調停が成立し、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有します(民事調停法16条)。裁判上の和解は確定判決と同一の効力を有するとされていますので(民事訴訟法267条)、支払が止まったときに、あらためて訴えを起こすところからやり直す必要はありません。当事者どうしで作った合意書との違いは、この点に表れます。
まとまらなかった場合
合意の見込みがない場合には、裁判所が職権で解決のために必要な決定をすることがあり、告知を受けた日から2週間以内に異議の申立てがあれば、その決定は効力を失います(民事調停法17条、18条)。不成立で終わった旨の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起したときは、調停を申し立てた時に訴えの提起があったものとみなされます(同法19条)。時効との関係は、別の記事で扱っています。
調停の場で決められること、止められないこと
話し合いによる手続であることは、内容の自由度と、実現力の限界の両方に表れます。
金銭以外の約束も条項に置ける
支払の時期や分け方のほか、今後の連絡や接触に関する約束、他に話さないという約束なども、双方が合意すれば調停条項に置くことができます。どの条件をどう組み立てるかは、示談書の条項設計と共通する部分が多いため、別の記事に譲ります。
手続の途中で相手の行動を止める仕組みには限界がある
調停委員会は、調停のために特に必要があると認めるときは、当事者の申立てにより、現状の変更や物の処分の禁止などの措置を命ずることができます(民事調停法12条1項)。もっとも、この措置に執行力はなく(同条2項)、正当な事由なく従わない場合に過料の定めがあるにとどまります(同法35条)。措置をする際には、違反に対する法律上の制裁も同時に告知されます(民事調停規則6条)。
配偶者を手続に加えられるか
調停の結果について利害関係を有する者は、調停委員会の許可を受けて調停手続に参加することができます(民事調停法11条1項)。支払った側から不貞相手への求償まで含めて整理したい場合に検討の余地がありますが、三者で解決する場合の組み立ては別の記事で扱っています。
調停を申し立てられた側から見ると
届いた書面が調停の呼出状だった場合、次の点が出発点になります。
- 呼出状が届いたことは、訴えを起こされたこととは異なる。
- 出頭しなければ話し合いは進まないが、そのまま終わった後に訴えを起こされることはある。
- 出席したうえで、支払義務そのものを争うこともできる。
- 期日で述べたことが調書に記載される場合があるため、事実関係を確かめないまま答えることは避けたい。
出るか出ないかを決める前に、届いた書面から相手が何をどこまで求めているのかを読み取っておくことが、その後の選択肢を狭めないことにつながります。
よくあるご質問
相手が話し合いに応じていなくても申し立てられますか
申立て自体は相手方の同意なくできます。ただし、調停は合意を目指す手続ですので、相手方が期日に出てこなければ話し合いは進みません。応じる見込みがどの程度あるかは、申し立てる前に考えておきたい点です。
弁護士に依頼すれば、自分は裁判所に行かなくてよいのでしょうか
調停では、呼出しを受けた当事者が自ら出頭することが原則とされています(民事調停規則8条1項)。代理人を出頭させられるのはやむを得ない事由があるときですので、依頼すればすべて任せられるとは限りません。
申し立てたことが勤務先や家族に知られることはありますか
手続は公開されず、記録を見ることができる人の範囲も限られています。もっとも、書類は当事者の住所に届きます。同居のご家族に知られたくない事情がある場合は、書類の受け取り方も含めて早めにご相談ください。
まとめ
- 不貞相手への慰謝料請求で使うのは、簡易裁判所の民事調停です(民事調停法3条)。
- 管轄の原則は相手方の住所地で、交通事故のような申立人側の特則は置かれていません(同法33条の2)。
- 調停委員会は調停主任1人と民事調停委員2人以上で組織されます(同法5条、6条)。
- 申立書には申立ての趣旨と紛争の要点を記載し、証拠書類があるときは写しを添付します(民事調停規則3条)。
- 期日には、呼出しを受けた当事者が自ら出頭することが原則です(同規則8条1項)。
- 住所や氏名を伏せたまま進める仕組みはありますが、要件が定められています(民事調停法21条の2)。
- 調停が成立して調書に記載されると、裁判上の和解と同一の効力を持ちます(同法16条、民事訴訟法267条)。
不貞慰謝料についてのご相談をお考えの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。調停を申し立てるべきか、それとも別の進め方がよいのかは、証拠の状況や相手方との距離、ご自身が動ける範囲によって変わります。
慰謝料を請求したいとお考えの方も、調停の呼出状や請求の書面を受け取ってお困りの方も、次に何を決めるべきかを一緒に整理するところからお手伝いします。お一人で判断される前に、まずはご相談ください。


