風俗・メンエスで盗撮がバレた|撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)の罰則と対応
「女性用風俗を利用したあと、店から電話がかかってきて金額を告げられた」「セラピスト本人から連絡が来て、示談金という言葉が出てきた」。お金を請求する側ではなく、請求される側に回ってしまったというご相談があります。
インターネット上には、女性用風俗のトラブルを扱った記事が増えました。その内容自体が誤っているわけではありません。ただ、法律家が書いた女性用風俗の解説は、そのほとんどが店を運営する側に向けたものです。業界向けに顧問弁護士サービスを提供している事務所のページには、お客様から返金や損害賠償を請求された場合に店の代理人として対応する、という趣旨の記載が置かれていることもあります。裏を返せば、請求される側に立った女性客のための説明が、ほとんど見当たらないということでもあります。
この記事では、女性客が金銭を請求される側になったときに、その請求が誰から、どういう根拠で来ているのかを見分ける手順に絞って説明します。刑事責任が問題になる場面そのものや、支払った料金の返還を求める側に回る場面については、別の記事に譲ります。
請求は「店から」と「セラピスト個人から」の二本立てで来る
最初に押さえておきたいのは、女性用風俗のトラブルでは、請求してくる相手が一つとは限らないということです。
契約の相手と、行為の相手は同じではない
予約や料金の支払いは店との間で行われますが、実際に部屋にいたのはセラピスト個人です。契約上の相手と、行為の相手が分かれているのが、この業態の特徴です。そのため、店は「規約に違反した」という言い方をし、セラピスト個人は「精神的な苦痛を受けた」という言い方をする、というように、同じ出来事について、根拠の異なる二つの請求が並行して出てくることがあります。
片方と解決しても、もう片方は残ることがある
店と話をつけたつもりでいたら、後日セラピスト本人から連絡が来た、という順序をたどることがあります。逆のこともあります。誰との間で、何について解決したのかが書面で特定されていなければ、残った側の請求はそのまま残ります。
| 比較の視点 | 店からの請求 | セラピスト個人からの請求 |
|---|---|---|
| 主に持ち出される根拠 | 利用規約や誓約書などの契約 | 不法行為(民法709条) |
| 告げられやすい名目 | 違約金、罰金、営業補償 | 慰謝料、治療費、休んだ分の補償 |
| 話し合いの相手 | 店長や責任者、その代理人 | 本人、または本人の代理人 |
| 解決の書面 | 店との合意書 | 本人との示談書 |
| 一方と解決した場合 | 他方の請求は残りうる | 他方の請求は残りうる |
店側に代理人がついている場面がある
女性用風俗の店舗を顧問先とする法律事務所は実際に存在し、客とのトラブル対応を業務として掲げています。話し合いの相手が店長個人ではなく、弁護士名の書面になることもあります。相手に代理人がついているかどうかで、こちらが取るべき手順も変わります。
請求される側になりやすい五つの場面
どういう出来事が金銭請求につながりやすいのかを、名目とあわせて整理します。
| 請求されやすい場面 | 告げられやすい名目 |
|---|---|
| サービスの範囲を超える行為を求めた、または行ったとされた | 慰謝料、示談金 |
| 店を通さず、セラピスト個人と直接会う約束をしたとされた | 違約金、罰金 |
| 撮影や録音をした、やり取りをSNSに投稿した | 損害賠償、削除と賠償 |
| 当日のキャンセル、延長分や追加分の代金が未払いになった | キャンセル料、未払代金 |
| 連絡や口コミをめぐって店から抗議を受けた | 営業妨害を理由とする賠償 |
名目ではなく、何をした結果として請求されているのかを見る
同じ「50万円」でも、規約違反に対する違約金として求められているのか、けがや精神的苦痛の賠償として求められているのかで、争える場所がまったく変わります。相手の言い分を、「誰が」「どの出来事について」「どの根拠で」求めているのかという三つに分けて書き出してみるところから始めてください。
「罰金」と呼ばれても、刑罰ではない
現場では罰金という言葉がよく使われますが、刑罰としての罰金を私人が科すことはできません。実質は違約金や損害賠償です。名目を外して中身を読み替える考え方については、別のコラムで詳しく扱っています。
請求の根拠を三つに分けて確かめる
相手が持ち出してくる根拠は、おおむね次の三つに整理できます。
①契約に書いてあるという主張
利用規約や、その場で署名した誓約書に金額が書かれているという主張です。あらかじめ賠償額を決めておく約束自体は、民法420条1項が認めています。違約金という名前がついていても、賠償額の予定と推定されます(同条3項)。
ただし、書いてあれば金額がそのまま通る、というわけではありません。2020年4月1日に施行された改正で、「裁判所は、その額を増減することができない」という一文は民法420条1項から削除されました。さらに、著しく高額で不合理な条項については、公序良俗に反しないか(民法90条)という観点からの検討も残ります。事業者と個人との間の役務提供契約という形はとっているため、消費者契約法9条1項1号や10条を検討する余地があるかも論点になりますが、この種の契約に同法がそのまま及ぶかは争いになりうるところです。
②実際に損害が出たという主張
治療費がかかった、しばらく出勤できなかった、という主張です。この場合は、金額の内訳と、その裏づけとなる資料があるかどうかが中心になります。診断書はあるのか、休んだ期間はいつからいつまでか、その間の収入をどう計算したのか。内訳を示せない請求は、金額の根拠を欠いたままの請求です。書面で内訳の提示を求めることには意味があります。
③精神的な苦痛に対する慰謝料という主張
不法行為による慰謝料の請求です(民法709条、710条)。ここでは、そもそもどのような行為があったのかという事実関係そのものが争点になります。相手の言い分と自分の記憶が食い違う場合、その食い違いを早い段階で書き留めておくことが後の交渉を支えます。
その場で決めないという判断
女性用風俗は、自宅やホテルに来てもらう形態が中心で、時間帯も夜間や深夜になりがちです。相手が男性であることも多く、その場で落ち着いて判断しにくい条件がそろっています。
署名と現金は、その場では避ける
急かされている状況で署名した書面や、その場で渡した現金は、後から取り戻すのに手間がかかります。金額を告げられた時点で、内容を確認したいので後日連絡する、という返答にとどめる選択肢があります。持ち帰ること自体は、相手の権利を否定する行為ではありません。
書面と記録を残す
次の点を残しておくと、後の検討がしやすくなります。
- 予約から当日までのやり取りが分かるアプリの画面やメール。
- 店名、担当者の名前、連絡先、請求の書面。
- 金額を告げられた日時と、その場で言われた内容。
- 署名を求められた書面がある場合は、その写し。
請求のしかたが度を越える場合
請求する権利があるかどうかという問題と、その求め方が許されるかどうかという問題は、別々に判断されます。
家族や勤務先、SNSを持ち出された場合
「家族に伝える」「勤務先に連絡する」「SNSに書く」といった言葉を伴う金銭の要求は、脅迫や恐喝の問題として評価されることがあります(刑法222条、249条)。金銭以外の行為を強く求められた場合も同様です(同法223条)。権利の行使であっても、手段が社会的に相当な範囲を超えれば別の評価を受けうる、という考え方です。この境界については、別のコラムで詳しく扱っています。
帰らせてもらえない、その場から出られない
退去を申し出たのに応じてもらえない、部屋から出られないという状況であれば、その場で警察に連絡することを検討してください。金銭の当否を争うより前に、まず安全を確保する場面です。
すでに払った、署名してしまったあとにできること
支払いや署名が済んでいても、そこで検討が終わるわけではありません。
合意そのものを争える場合
強迫を受けて行った意思表示は取り消すことができます(民法96条1項)。内容が著しく不合理であれば、公序良俗違反として効力が争われる余地もあります(同法90条)。もっとも、これらはいずれも当時の状況を裏づける資料があってはじめて主張として組み立てられるものです。
一部だけ払う、分割にすると答えることの意味
請求を認めたつもりがなくても、一部の支払いや分割の申し出は、債務を承認したものと受け取られることがあります(民法152条1項)。とりあえず少しだけ、という対応が、後に金額を争う際の足かせになる場合があります。
清算条項の有無を確かめる
署名した書面に、これ以外に何らの債権債務がないことを確認する、という趣旨の条項が入っているかどうかを確認してください。入っていなければ、同じ出来事について後から追加の請求を受ける余地が残ります。逆に、その条項の範囲が広すぎないかという確認も必要です。
自分の側の事情が絡んでくる場合
女性客の立場では、店やセラピスト以外からの請求が絡むことがあります。
配偶者に知られた場合
利用の事実が配偶者に知られ、そこから慰謝料の話が出ることがあります。これは店との紛争とは別の枠組みの問題で、性的な関係があったといえるかどうかなど、判断の材料も異なります。この点は男女トラブルの記事に譲ります。
セラピスト側の配偶者や交際相手から連絡が来た場合
サービスの範囲を超えて私的な関係になっていた場合、相手の配偶者などから請求が届くことがあります。この場合、店の規約とはまったく別の根拠に基づく請求ですので、店との話し合いに含めて処理することはできません。
相談先をどう選ぶか
どこに相談するかによって、できることが変わります。
店側の顧問をしている事務所には依頼できないことがある
女性用風俗の店舗を顧問先としている法律事務所は複数あります。相手方の店舗と関係がある事務所には、利益相反の問題から依頼できない場合があります。相談の前に、その事務所が店側の業務を扱っていないかを確認しておくと安心です。
消費生活センターと警察の使い分け
当日その場で高額な追加契約をさせられた、という料金面の問題であれば、消費生活センターに相談する意味があります。なお、自ら呼んで自宅で契約した場合には、特定商取引法26条6項1号により訪問販売の規定が適用されない場合があり、クーリング・オフを当てにできるとは限りません。一方、脅迫や恐喝の疑いがある状況であれば、警察への相談が先になります。
よくあるご質問
弁護士に相談すると金額を上げると言われました
代理人を立てたことを理由に請求額を引き上げる、という言い分に法的な裏づけはありません。むしろ、そうした言い方が出てくること自体が、請求の内容を書面で確認しておく必要性を示しています。
セラピスト本人と示談すれば、店からの請求も終わりますか
終わるとは限りません。店の請求は契約を根拠とし、本人の請求は不法行為を根拠とするのが通常で、法律上は別の請求だからです。両方を終わらせたいのであれば、書面の当事者と清算条項の範囲を意識して作る必要があります。
家族に知られずに進められますか
弁護士が代理人として窓口に入れば、相手からの連絡先を事務所に一本化する対応が可能です。ただし、事案の内容や進み方によっては、ご希望どおりにいかない場面もあります。相談の段階で、連絡方法の希望を具体的に伝えておいてください。
まとめ
- 請求は店とセラピスト個人の二本立てで来ることがあり、一方と解決しても他方が残る場合がある。
- 名目ではなく、「誰が」「どの出来事について」「どの根拠で」求めているのかに分けて確認する。
- 罰金と呼ばれても刑罰ではなく、実質は違約金や損害賠償である。
- 契約に金額が書いてあっても争えないわけではない(民法420条1項・3項、90条)。
- 損害を理由とする請求は、内訳と裏づけの提示を書面で求める。
- 求め方が度を越える場合は、請求の当否とは別に評価されうる(刑法222条、223条、249条)。
- 一部の支払いや分割の申し出は債務の承認と受け取られることがある(民法152条1項)。
- 相手方の店舗と関係のある事務所には依頼できない場合があるため、相談先は事前に確認する。
女性用風俗のトラブルでお困りの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。女性用風俗をめぐる相談は、これまで店側の視点から語られることが多く、利用した側が何をどう確認すればよいのかを説明した情報が限られていました。
金額を告げられて迷っている方も、すでに書面に署名してしまった方も、まずは請求の中身を整理するところからご相談ください。早く相談すれば必ず良い結果になるというものではありませんが、選べる対応の幅は、時間が経つほど狭くなりやすいものです。


