【風俗トラブル】請求したい店が閉店・移転していた|相手方が消える場合の追い方

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

前払いした料金を返してもらおうと連絡したら、電話がつながらなくなっていた。サイトを開くとページごと消えていた。記載されていた住所を訪ねたら、別の看板が掛かっていた。こうした場面で、請求そのものを諦めてしまう方は少なくありません。

 ただ、外から見えている「店」と、法律上の請求の相手方は、同じものではありません。店名は屋号にすぎず、契約の相手方になるのは、その営業を営んでいる個人か法人です。屋号が見えなくなったことと、請求の相手方がいなくなったこととは、同じではありません。

 この記事では、風俗店に対して返金や損害賠償を求めたいと考えている方に向けて、店が閉店・移転していた場合に相手方をどう見極め、どこまで追えるのかを整理します。そもそも返金を求められる場面かどうかという入口の判断や、時効の期間については別のコラムで扱っていますので、ここでは相手方が見えなくなったときの追い方に絞ります。

「店が消えた」には三つの型がある


外から見えていること法律上の相手方の状況
屋号だけが消えたサイトや店名がなくなった営業者は変わらず、別の屋号で営業を続けていることがある
営業者が入れ替わった店名は残っているが運営の実態が変わった従前の営業者と現在の営業者が別の個人・法人になっている
営業そのものが終わった廃業、法人の解散、破産手続個人なら本人、法人なら清算人や破産管財人が窓口になる


 閉店の告知が出ていたとしても、そのどれに当たるのかは外からは見分けがつきません。追い方はこの三つで大きく変わりますので、いきなり「消えてしまった」と結論づけず、どの型なのかを確かめるところから始めることになります。

屋号だけが消えた場合

 同じ営業者が、別の屋号で営業を続けていることがあります。この場合、契約の相手方は変わっていませんので、請求の相手方も変わりません。以前と同じ電話番号が使われている、掲載されている写真や料金体系がほぼ同じ、事務所の所在地が同じといった点は、同一の営業者ではないかを疑う手がかりになります。

営業者が入れ替わった場合

 店名やサイトはそのまま残っているのに、運営している個人や法人が変わっていることがあります。原則として、後から営業を始めた側は、以前の営業者が負った債務をそのまま引き継ぐわけではありません。ただし、後述するとおり、例外的に責任が及ぶ場合があります。

営業そのものが終わった場合

 個人で営んでいたのであれば、廃業しても本人が消えるわけではなく、請求の相手方は本人のままです。法人であれば、解散や破産手続に入っていることがあり、その場合は誰を相手にするのかが手続によって変わります。

契約の相手方は「店名」ではなく営業者

 性風俗関連特殊営業は、公安委員会への届出を要する営業です。届出は営業を営もうとする個人または法人が行い、法人であれば定款や登記事項証明書、役員の住民票が、個人であれば本人の住民票が添付されます。制度の上では、営業の主体は特定の個人か法人として把握されている、ということになります。

 ここで押さえておきたいのは、一人の個人、あるいは一つの法人が、複数の屋号を使って営業できるという点です。屋号ごとに別のサイトを持ち、別の電話番号を用意している例も珍しくありません。逆に、営業を営む主体そのものが替わるときは、新たな営業者による届出と、従前の届出についての廃止の届出が行われることになります。

 つまり、屋号が消えたことは営業者がいなくなったことを意味しませんし、店名が残っていることも営業者が同じであることを意味しません。まずはこの二つを切り離して考えるところが出発点になります。

手元にある手がかりを洗い出す

 相手方を辿る作業は、記憶ではなく記録から始めます。次のようなものが残っていないかを確認してください。

  • クレジットカードの利用明細に記載された加盟店名と決済日。
  • 振込で支払った場合の、振込先の金融機関名・支店名・口座番号・口座名義。
  • 予約の際に使った電話番号やメールアドレス、自動返信メールの署名。
  • 店の公式サイトのURL、掲載されていた事業者名や表記、掲載されていた所在地。
  • 求人広告やポータルサイトに載っていた店舗情報のスクリーンショット。
  • 領収書やレシート、当日渡された紙類。


決済の記録が持つ意味

 支払いの記録は、単なる金額の証明にとどまりません。カード決済の加盟店名や、振込先の口座名義には、屋号ではなく営業主体の名称が現れていることがあります。振込先が法人名義であれば、そこから法人を特定できる可能性が出てきます。個人名義であれば、契約の相手方が個人事業として営まれていたことをうかがわせます。

 なお、こうした記録は、時間が経つと手元でも金融機関側でも失われていきます。追うかどうかを迷っている段階でも、明細やメールの保存だけは先に済ませておくことをおすすめします。

公の記録から分かること・分からないこと


調べたいこと手がかりになる記録限界
法人の所在地・代表者・解散の有無商業登記の登記事項証明書法人名が分からないと辿り着きにくい
個人で営んでいた場合の氏名・住所一般に公開された登記はない決済や契約の記録から辿ることになる
風営法上の届出の内容公安委員会への届出書類一般の方が閲覧できる仕組みではない
建物の所有者不動産登記の登記事項証明書所有者とテナントの営業者は別人であることが多い


 法人の登記事項証明書は、誰でも手数料を納めて交付を請求することができます(商業登記法10条1項)。オンラインでの請求もできますので、法人名さえ分かれば、本店の所在地、代表者、解散や清算の登記の有無を確認できます。閉店の告知が出ていても登記上は何も動いていない、という例もあります。

 一方、個人で営まれていた場合には、これに相当する公開された記録がありません。届出の書類も、行政が保有しているだけで、一般の方が見られるものではありません。ここから先は、弁護士が受任した事件について弁護士会を通じて照会をかける仕組みを使えるかどうかという話になります。制度の内容と限界については、別のコラムで詳しく扱っています。

同じ店名で別の運営者が続けている場合

 店名がそのまま残り、運営者だけが替わっているとき、後から営業を引き継いだ側に請求できるかが問題になります。

 事業が譲渡され、譲り受けた側が譲渡した側の商号を引き続き使っている場合には、譲り受けた側も、その事業によって生じた債務を弁済する責任を負うとされています(会社法22条1項、個人の商人については商法17条1項)。名前が同じままであることによって、取引の相手方が営業主体の変更に気づけないことを踏まえた規定です。

 さらに、商号そのものではなく、屋号やクラブの名称のような営業主体を表示する呼称が引き継がれた場合にも、この規定を類推して責任を認めた判断があります。最高裁平成16年2月20日判決は、ゴルフ場の営業譲渡において、譲受人が従前のクラブの名称を継続して使用していた事案について、特段の事情がない限り、譲受人が預託金の返還義務を負うとしました。

 もっとも、これは事業の譲渡が行われた事案についての判断です。実際の場面では、そもそも事業の譲渡があったのか、それとも無関係の第三者が似た名前で新しく始めただけなのかを、こちら側で示す必要があります。ここが実務上の壁になりやすいところです。法人の形式を借りているだけで実体は同一だという主張(法人格否認の法理)も考えられますが、認められる場面は限られています。

法人が解散・清算・破産していた場合

 法人は、解散してもその瞬間に消えるわけではありません。清算の目的の範囲内で、清算が結了するまではなお存続するものとして扱われます(会社法476条)。この段階の相手方は、代表取締役ではなく清算人になります。

 清算人になる者がいない、あるいは欠けている場合には、利害関係人の申立てによって裁判所が清算人を選任する仕組みがあります(会社法478条2項)。請求する側も利害関係人に当たり得ますので、相手方が不在で手続が進まないという状況を、そのままにしなければならないわけではありません。

 また、清算結了の登記がされていても、実際には債務が残っていて清算が終わっていないという場合があります。この登記は、清算が終わったことを報告する性質のものと理解されており、実際に清算が結了していないのであれば、その登記によって法人格が消えるわけではないと考えられています。登記簿が閉鎖されていたからといって、そこで諦める必要はありません。

 破産手続が始まっている場合は、個別に支払いを求めるのではなく、破産手続の中で債権を届け出ることになります。ただし、配当が行われないまま手続が終わることもあり、この場合に回収できる金額は限られます。

裁判まで進む場合に越える壁

 訴訟を起こすには、被告となる個人や法人の氏名・名称と住所を記載する必要があります。相手方の名前が分からないままでは、手続の入口に立てません。

 住所が判明しない場合には、公示送達という方法があります(民事訴訟法110条1項)。裁判所の掲示に加えて、インターネット上で閲覧できる措置が併せてとられる方法に改められており、一定の期間の経過によって送達があったものとして扱われます。ただし、送達すべき場所が分からないことを裁判所に示す必要があり、そのための調査が求められます。

 もう一つ意識しておきたいのは、判決を得ることと、お金を回収することが別だという点です。判決を得た後には、相手方の財産を調べるための財産開示手続や、金融機関などから情報を取得する手続が用意されていますが、相手方に見つかる財産がなければ、手続を尽くしても回収に至らないことがあります。請求額が小さい場合には、費用と時間に見合わない結果になることも考えられます。追うかどうかは、この見通しを含めて判断することになります。

追い方を誤ると立場が入れ替わる

 相手が見えなくなると、自分で探しに行きたくなるものですが、次のような行動は、こちらが責任を問われる側に回るおそれがあります。

  • 移転先とみられる場所や関係者の自宅を訪ね、その場に居続けること。
  • 一日に何度も電話をかけ続ける、深夜に連絡を繰り返すこと。
  • SNSや口コミサイトに店名や個人名を挙げて、断定的な内容を書き込むこと。
  • 「口座を凍結させる」「通報する」と告げて支払いを迫ること。


 振込で支払った場合、犯罪に利用された口座について金融機関が取引を停止し、被害回復の分配を受けられる制度があります。ただし、この制度は詐欺などの犯罪行為に使われた口座を対象とするもので、支払った代金に見合うサービスを受けられなかったという事情だけで当然に使えるものではありません。相手を動かすための材料として持ち出すことは、避けたほうが安全です。

時間が経つと何が失われるか

 相手方を追う場面では、時間の経過が三つの意味を持ちます。

 一つ目は記録です。カードの利用明細や通信の記録には保存期間があり、後から取り寄せられなくなることがあります。二つ目は相手方の状態です。法人であれば清算が進み、財産が残らなくなっていくことがあります。三つ目は請求権そのものの期限で、これは時効の問題として別のコラムで整理しています。

 どれも、待っていて良い方向に向かう種類のものではありません。追うかどうかを決めきれない段階でも、記録を保存し、必要な情報を確認しておくことには意味があります。

よくあるご質問


店名しか分からない場合、請求は難しいでしょうか

 店名だけでは相手方を特定できませんが、店名しか手元にないという状況は多くありません。支払いの記録、予約に使った連絡先、サイトのURLなど、複数の手がかりを組み合わせることで、営業主体に辿り着ける場合があります。まずは残っている記録を集めることが先になります。

同じ系列とみられる別の店に請求できますか

 系列に見えることだけを理由に、別の店を営む個人や法人に請求することはできません。営業者が同一である、あるいは事業の譲渡と屋号の引継ぎがあるといった事情を示せるかどうかが分かれ目になります。

警察に届け出れば店を探してもらえますか

 警察は、犯罪の疑いがある事案について捜査を行う機関であり、民事の請求のために相手方を探してくれる窓口ではありません。詐欺に当たり得る事情があるかどうかは別途の判断になりますが、返金を目的とするのであれば、民事の手続を軸に考えることになります。

まとめ


  1. 請求の相手方は店名ではなく、営業を営む個人または法人である。
  2. 「店が消えた」は、屋号だけが消えた、営業者が入れ替わった、営業そのものが終わった、の三つに分かれる。
  3. 一人または一社が複数の屋号で営業できるため、店名が消えても営業者が残っていることがある。
  4. 決済の記録、連絡先、サイトの表記は、営業主体に辿り着くための手がかりになる。
  5. 法人の登記事項証明書は誰でも取得でき、解散や清算の状況を確認できる。
  6. 屋号が引き継がれた場合に責任が及ぶ余地はあるが、事業の譲渡があったことを示す必要がある。
  7. 解散や清算結了の登記があっても、そこで請求を諦めることになるとは限らない。
  8. 判決を得ることと回収することは別であり、費用と見通しを含めて判断する。


 相手方が見えなくなった事案では、どこまで辿れるのかを早い段階で見立てておくことが、時間と費用の無駄を減らすことにつながります。手元にある記録を持って一度ご相談いただければ、追える見込みがあるのか、どの手続が現実的なのかを一緒に整理いたします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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