【解決事例】交際相手との共同事業解消・競業トラブル|1,000万円超の債権を交渉材料に損害賠償請求を回避し事業の分離を実現した事例
「SNSのダイレクトメッセージから連絡を取り合うようになり、そのまま関係が続いていた。相手の配偶者から慰謝料を請求されて初めて、自分は相手の本名も家庭の状況も知らないままだったと気づいた」。こうしたお話は、請求を受けた側から寄せられます。一方で「配偶者のフォロー欄をたどってダイレクトメッセージのやり取りを見つけたが、相手が誰なのか分からない」というお話は、請求する側から寄せられます。
インターネット上には、SNSが不倫の証拠になるのか、どう保存すればよいのかを説明した記事が数多くあります。書かれていること自体が誤っているわけではありません。ただ、そこで扱われているのは主に、すでに関係がある二人のやり取りをどう集めるかという話です。SNSのダイレクトメッセージから関係が始まったという場合には、それとは別に、関係の始まり方そのものが後の争点の形を決めてしまうという事情があります。
この記事では、SNSのダイレクトメッセージをきっかけに始まった関係について、慰謝料をめぐる場面で何が問題になりやすいのかを、請求する側と請求を受けた側の双方から整理します。証拠の集め方や保存の方法、相手の氏名や住所を特定する手順、金額の考え方については、それぞれ別の記事で扱っているため、ここでは立ち入りません。離婚の手続についても扱いません。
「SNS不倫」という特別な類型があるわけではない
判断の枠組みは出会い方では変わらない
配偶者以外の相手と性的な関係を持った場合、その相手が負う責任は、民法709条・710条の不法行為として考えられます。ここで問われるのは、性的な関係があったのか、相手が既婚者だと知っていたか、あるいは知り得たか、そしてその時点で婚姻関係がどのような状態にあったか、といった事柄です。どこで知り合ったかという点は、それ自体が要件になっているわけではありません。
職場で知り合った関係も、共通の知人を介して知り合った関係も、SNSのダイレクトメッセージから始まった関係も、判断の枠組みは同じです。「SNS不倫」という呼び方は説明のための便宜的な言葉であって、法律上の分類ではありません。
それでも始まり方が結果に響く理由
枠組みが同じでも、争点の材料がどこに残るかは出会い方によって変わります。SNSのダイレクトメッセージから始まった関係には、相手について確かめられることに偏りが生じる、連絡を取り始めた時点が記録として残る、初期のやり取りが丸ごと文字で保存される、という三つの特徴があります。この三つが、後から問われる事柄と結びつきます。
| 後から争われやすいこと | SNSのDMから始まった場合の特徴 | 材料が残っている場所 |
|---|---|---|
| 既婚者だと知っていたか、知り得たか | 生活の断片は見えるが、身分に関する事柄は見えにくい | プロフィールの記載、投稿、共通のつながり |
| 関係がいつ始まったか | 連絡を取り始めた時点が記録として残る | フォローやメッセージの履歴 |
| どこまで関係が進んだか | やり取りは残るが、会ったかどうかは残りにくい | 移動、宿泊、支払いなど、SNSの外側の記録 |
相手について分かることと分からないことが偏っている
生活の断片は見えるのに、身分に関する事柄は見えにくい
SNSでは、相手が何を好み、どのあたりで過ごし、どのような人と交流しているのかが、投稿を通じて断片的に見えます。一方で、婚姻しているかどうか、同居している家族がいるかどうかといった事柄は、本人が書かない限り表に出てきません。見えやすい情報と、慰謝料の場面で問われる情報とが重なるとは限らないという点が、この出会い方の特徴です。
| SNS上で見えやすいこと | 慰謝料の場面で問われるのに見えにくいこと |
|---|---|
| 趣味、行動範囲、生活の雰囲気 | 婚姻しているかどうか |
| 交流している相手やつながり | 同居している家族がいるかどうか |
| 投稿の頻度や時間帯 | 夫婦関係が現にどうなっているか |
| 本人が名乗っている年齢や職業 | 本名、住所、勤務先 |
「確かめようがなかった」で終わるとは限らない
プロフィールに独身と書かれていた、家庭を思わせる投稿がなかったといった事情は、相手を独身だと受け取った理由にはなります。ただし請求する側からは、投稿の中に生活を共にしている人の存在をうかがわせるものがあった、共通のつながりに尋ねれば分かったはずだ、といった指摘が返ってくることがあります。見えていた情報のうち、どこまでを確かめるべきだったのかが争点になります。
既婚者だと知らなかったという言い分がどのように扱われるのか、また、その言い分を何で裏づけるのかについては、別の記事で詳しく扱っています。
関係が始まった時点が記録として残っている
日付が動かせないという性質
対面で知り合った関係では、いつから親しくなったのかがはっきりしないことが少なくありません。これに対してSNSのダイレクトメッセージから始まった関係では、最初に連絡を取った日が記録として残ります。記憶に頼らずに時期を示せるという性質は、請求する側にとっても、請求を受けた側にとっても、同じように働きます。開始時期が早いことが有利になる場面もあれば、不利に働く場面もあります。
開始時期が結びつく三つの場面
| 場面 | 開始時期がどう使われるか | あわせて注意すること |
|---|---|---|
| 夫婦関係が破綻していたという主張 | 破綻したとされる時期と、関係が始まった時期の前後関係 | 破綻の判断は時期だけで決まるわけではない |
| 関係が続いた期間 | 期間の長さは金額を考える材料の一つになる | 途中で途切れている場合の数え方は別に問題となる |
| 既婚者だと知った時点 | 知る前と後とで責任の考え方が変わりうる | 知った後にどう行動したかもあわせて見られる |
消滅時効の数え方とは別の話
関係が始まった時期と、慰謝料を請求できる期間の数え方は別の問題です。民法724条は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年という期間を定めていますが、前者の起算点は請求する側が知った時点です。やり取りが始まった日が古いからといって、そのまま請求できなくなるわけではありません。時効の起算点については、別の記事で扱っています。
会うまでの過程が丸ごと文字で残っている
有利な部分と不利な部分が同じ場所にある
対面で始まった関係では、初期のやり取りは記憶の中にしか残らないことが多いといえます。これに対してSNSのダイレクトメッセージから始まった関係では、知り合った当初の会話がそのまま保存されています。そこには、既婚かどうかを尋ねたやり取りや相手の説明が含まれていることもあれば、自分にとって不利に読まれかねない文言が同じ流れの中に並んでいることもあります。
一部だけを取り出して示すと、前後の文脈が分からないという指摘を受けます。逆に、不利な部分を消そうとすると、自分の言い分を支える部分まで失われます。どの範囲を残すかは、消すかどうかという判断とは切り離して考える必要があります。
決め手になる材料はSNSの外に生まれる
やり取りの中で親密な言葉が交わされていても、それだけで性的な関係があったと判断されるとは限りません。実際に問題となる場面では、待ち合わせ、移動、宿泊、支払いといったSNSの外側で生じた記録が、やり取りと突き合わせて見られることになります。メッセージがどこまで証拠になるのか、写真や決済の記録がどう扱われるのかについては、それぞれ別の記事で扱っています。
やり取りだけで終わっている場合
「会っていない」という言い分の位置
一度も会っておらず、やり取りだけが続いていたという場合、性的な関係を前提とする請求とはかみ合いません。もっとも、慰謝料が問題になる場面がそれだけとは限らず、夫婦の生活の平穏を害したかどうかという別の枠組みで争われることもあります。この点は、肉体関係がない場合の責任を扱った別の記事で詳しく述べています。
会ったかどうかが争点になったとき
実際には、会ったかどうか自体が争われることも少なくありません。この場合、やり取りの中にある予定に関する言葉と、その日の行動を示す記録とが突き合わされます。会っていないと述べるのであれば、その日に別の場所にいたことを示せるかどうかが問われます。記憶だけで説明を組み立てると、後から出てきた記録と食い違うおそれがあります。
相手のことを知らないまま手続が始まる
請求する側から見た壁
配偶者のやり取りを見つけても、そこに残っているのはアカウント名だけということがあります。通知を出すにも、話し合いを求めるにも、相手が誰なのかが分からなければ進みません。ダイレクトメッセージのやり取りは、インターネット上の投稿について用意されている開示の仕組みの対象からは外れると考えられており、そこから相手をたどるという道筋は想定されていません。氏名や住所が分からない場合にできることは、別の記事で扱っています。
請求を受けた側から見た戸惑い
請求を受けた側にも、似た事情があります。相手が名乗っていた年齢や職業が実際とは違っていた、家庭の状況について聞いていた説明と届いた書面の内容が食い違う、といったことが起こります。書面が届いた時点では、相手について自分が知っていることのほうが少ないという状態から始まります。まず確かめたいのは、誰が誰の代理として、何を根拠に、いくらを、いつまでにと述べているのかという点です。書面が届いた場合の初期対応については、別の記事で扱っています。
請求を受けた側が最初に迷うこと
アカウントを消すという選択
やり取りを消したい、アカウントごと退会したいと考える方は少なくありません。ただ、消したという事実自体について説明を求められる場面があり、自分の言い分を支える材料まで取り出せなくなることがあります。削除と証拠の関係については、別の記事で詳しく扱っています。
同じ場所で返信を続けるかどうか
ダイレクトメッセージで請求が届いた場合、そのまま同じ場所で返信を続けることになりがちです。しかし、返信の一つひとつが後に引かれる可能性があり、その場のやり取りで金額や条件に触れると、認めたものとして扱われるおそれがあります。急いで結論を出す前に、どの範囲まで答えるのかを決めておくほうが安全です。
公開の場に広がることへの不安
SNSでの関係では、投稿や交流の履歴が第三者の目に触れる形で残っていることがあります。そのため、名前や勤務先が公開の場に書き込まれるのではないかという不安を持たれる方がいます。請求する側から見ても、そうした働きかけは別の責任を生じさせるおそれがある行為です。この点は、暴露や勤務先への連絡を扱った記事に譲ります。
よくあるご質問
ダイレクトメッセージのやり取りだけで慰謝料を請求されることはありますか
請求を受けること自体はあり得ます。請求ができるかどうかと、それが認められるかどうかは別の段階の問題です。やり取りの内容が性的な関係を前提としている場合には、他の材料とあわせて判断の土台になることがあります。親密ではあっても関係の有無まで示していない場合には、別の枠組みで主張されることもあります。
相手のプロフィールに独身と書かれていました。それだけで責任を免れますか
プロフィールの記載は、相手を独身だと受け取った理由の一つにはなります。ただ、それだけで判断が決まるわけではなく、やり取りの内容や投稿から読み取れた事情とあわせて見られます。自分の側でどのような事情を示せるかが問われます。
SNSで知り合ったこと自体が金額を高くする事情になりますか
知り合った経路そのものが金額を左右する事情として扱われるわけではありません。金額を考える際に見られるのは、関係が続いた期間、夫婦関係にどのような影響が生じたか、発覚した後にどう対応したかといった事柄です。金額の考え方については、別の記事で扱っています。
まとめ
- どこで知り合ったかは慰謝料の要件そのものではなく、「SNS不倫」という法律上の類型があるわけでもありません(民法709条・710条)。
- それでも始まり方は、後から争われる事柄の材料がどこに残るかを左右します。
- SNSでは相手の生活の断片は見えても婚姻の有無は表に出にくく、どこまで確かめるべきだったのかが争点になります。
- 関係が始まった時点が記録として残るため、破綻の時期との前後、関係の期間、既婚者だと知った時点の判断に結びつきます。
- 消滅時効の起算点は請求する側が知った時点であり、やり取りが始まった日とは別に考えます(民法724条)。
- 初期のやり取りには有利な部分と不利な部分が同じ流れで残っているため、消すかどうかは慎重に判断する必要があります。
- 請求する側は相手が分からないという壁に、請求を受けた側は相手を知らないまま書面に向き合うという状態に置かれます。
SNSをきっかけとした関係のご相談をお考えの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。SNSのダイレクトメッセージから始まった関係については、相手について分かっていることが限られている段階でのご相談が多く、まず何を確かめるべきかを整理するところから始まることが少なくありません。
慰謝料を請求したいとお考えの方も、請求を受けて対応に迷っている方も、ご自身で判断を進める前にご相談いただければ、いま手元にある材料で何が言えるのか、次に何を確かめるべきかをお伝えできます。やり取りを消す、その場で返信をするといった行動をとる前にご連絡いただくことをおすすめします。


