不貞慰謝料を請求されたときにまず確認すべき6つのポイント

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

  ある日突然、交際相手の配偶者や、その代理人弁護士から「不貞行為の慰謝料を支払ってほしい」という通知が届く。手紙やメール、内容証明郵便でこうした請求を受け取ると、多くの方が強い動揺を覚えます。「すぐに払わなければいけないのか」「会社や家族に知られてしまうのか」と不安になり、冷静な判断が難しくなりがちです。

 しかし、請求を受けたからといって、書かれた金額をそのまま支払う義務が直ちに確定するわけではありません。請求内容が法的に妥当かどうかは、事実関係や個別の事情によって変わってきます。まずは落ち着いて、いくつかのポイントを確認することが大切です。

 ここでは、不貞(不倫)の慰謝料を請求されたときに、支払いや示談に応じる前に確認しておきたい6つのポイントを、男女どちらの立場の方にも当てはまる形で整理します。

そもそも「不貞慰謝料」とは

 不貞慰謝料とは、配偶者のある人と性的な関係を持ったことによって、その配偶者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償のことです。法律上は、民法709条・710条の不法行為に基づく損害賠償請求として位置づけられます。

 裁判で問題となる「不貞行為」は、一般に配偶者以外の相手と性的な関係を結ぶことを指します。食事やデートを重ねただけ、あるいは好意を持っていただけといった事情のみで、当然に不貞慰謝料の支払い義務が生じるわけではない、という点は押さえておきたいところです。

 なお、慰謝料を請求できる相手は「不貞をした配偶者」と「その交際相手」の両方ですが、同じ精神的苦痛に対して二重に受け取ることはできないと考えられています。この点も、後述する金額の妥当性を考えるうえで関わってきます。

ポイント1|誰から・何を・いつまでに請求されているのかを確認

 最初に確認したいのは、請求の「差出人」「内容」「期限」です。

  • 誰から届いたのか:交際相手の配偶者本人からなのか、その代理人である弁護士からなのか
  • 何を求められているのか:慰謝料の金額、支払方法、その他の要求(接触禁止など)の有無
  • いつまでに回答が必要か:回答期限が指定されているかどうか

 請求してきた相手が本人か弁護士かによって、その後の交渉の進み方は変わります。また、請求書に書かれた金額や期限は、あくまで相手側の主張である点に注意が必要です。

 一方で、通知を無視して放置することは避けたほうがよいでしょう。回答をしないまま期限が過ぎると、相手が訴訟を提起し、話し合いの余地がないまま手続きが進んでしまう可能性があります。すぐに金額へ回答する必要はありませんが、少なくとも内容を正確に把握し、対応の方針を立てることが第一歩になります。

ポイント2|「不貞行為」に該当する事実があるのかを確認する

 次に確認したいのは、請求の前提となっている事実そのものです。

 前述のとおり、法的に問題となる不貞行為は性的な関係を伴うものと理解されています。相手方が主張している事実が、実際にあったのか、あったとしてどの範囲なのかを、自分自身で冷静に整理しておくことが重要です。

 このとき注意したいのは、その場の勢いや動揺から、安易に事実を認めてしまわないことです。請求を受けた側が自ら不利な内容を書面やメッセージで認めてしまうと、それが後の交渉や裁判で相手方の証拠として使われることがあります。相手の言い分に全面的に反論する必要はありませんが、確認が済んでいない事実まで認める必要はありません。

 事実関係や、相手がどの程度の証拠を持っているのかによって、慰謝料を支払う義務の有無や金額は大きく変わります。まずは「何が事実で、何がまだ確認できていないのか」を切り分けておきましょう。

ポイント3|慰謝料が発生しない・減額される事情がないかを確認

 不貞慰謝料は、あらゆるケースで一律に発生するものではありません。以下のような事情がある場合、慰謝料が発生しない、あるいは減額される方向に働くことがあります。

  • 相手が既婚者だと知らず、知らないことに落ち度もなかった場合:独身だと偽られていたなど、故意も過失もないと評価される事情があれば、不法行為が成立しないと判断される余地があります。
  • 交際が始まった時点で、すでに夫婦関係が破綻していた場合:長期の別居など、婚姻関係が実質的に壊れていたと評価される事情があれば、「守られるべき夫婦関係」への侵害があったとは言いにくく、慰謝料が否定されたり減額されたりすることがあります。
  • 関係を強要された、対等な立場でなかった場合:自由な意思に基づく関係だったといえるかどうかも考慮されます。
  • 夫婦が離婚に至らず、婚姻関係が続いている場合:離婚や別居に至ったケースに比べ、金額は低めに評価される傾向があります。

 これらはいずれも、個別の事実によって評価が分かれる論点です。「自分のケースに当てはまるかもしれない」と感じる事情があれば、記録や経緯を整理しておくと、その後の交渉で役立ちます。

ポイント4|消滅時効が成立していないかを確認する

 慰謝料を請求する権利には、消滅時効があります。過去の出来事について請求を受けた場合には、すでに時効が完成している可能性もあるため、確認しておきたいポイントです。

 不法行為に基づく損害賠償請求権の時効について、民法724条は次のように定めています。

  • 損害および加害者を知った時から3年
  • 不法行為の時から20年

 このどちらか早いほうが到来すると、請求権は消滅します。ここでいう起算点は、交際相手の配偶者が「不貞の事実」と「あなたが誰であるか」の両方を知った時点と考えられています。そのため、相手が事実に気づいてから3年以上が経過している場合には、時効の完成を主張できる可能性があります。

 ただし、内容証明郵便による請求や訴訟の提起などによって、時効の進行が止まったり、リセットされたりすることがあります。時効に関わりそうな事案は、期間の数え方や中断の有無について専門的な判断が必要になるため、自己判断だけで結論を出さず、確認しておくことをおすすめします。

ポイント5|請求された金額が相場に照らして妥当かを確認する

 不貞慰謝料には明確な計算式があるわけではなく、精神的苦痛に対する損害賠償として、さまざまな事情を総合して金額が決まります。過去の裁判例などをもとにした一般的な目安としては、おおむね数十万円から300万円程度の範囲で語られることが多いとされています。金額が高くなりやすいのは、不貞が原因で相手夫婦が離婚に至ったようなケースです。

 一方で、内容証明郵便などでは、相場を大きく上回る金額が記載されていることも珍しくありません。請求書に書かれた金額が、そのまま支払うべき金額として確定しているわけではないという点は、あらためて意識しておきたいところです。相手の言い値に、そのまま応じなければならないわけではありません。

 また、慰謝料を一人で全額支払った場合に、もう一方の当事者(不貞をした配偶者)に対して、負担分の一部を求める「求償権」という仕組みが関係してくることもあります。金額の交渉では、こうした点も含めて全体像を把握しておくと、判断がしやすくなります。

 金額が妥当かどうかは、婚姻期間や離婚・別居の有無、子どもの有無など、個別の事情によって変わります。相場はあくまで目安として捉え、自分のケースに即して検討することが大切です。

ポイント6|示談書へのサインや支払いは、内容を確認してから

 最後に、もっとも慎重になりたいのが、示談書へのサインや支払いに応じるタイミングです。

 その場で示談書に署名したり、金銭を支払ったりすると、後から「やはり内容に納得できない」と思っても、覆すことは容易ではありません。示談は、当事者間の合意によって紛争を解決するものであり、いったん成立すると法的な効力を持つためです。

 示談に応じる場合でも、次のような点を確認しておくと安心です。

  • 支払う金額とその根拠に納得できているか
  • 求償権や、今後の請求の扱いがどう定められているか(清算条項の有無)
  • 秘密保持や、今後の接触に関する取り決めが盛り込まれているか
  • 一度の支払いで問題が完全に解決する内容になっているか

 これらの条項は、後々のトラブルを防ぐうえで重要ですが、内容が複雑になりやすい部分でもあります。相手方の用意した示談書をそのまま受け入れるのではなく、内容を一つずつ確認したうえで判断することをおすすめします。

一人で抱え込まず、早めに相談を

 不貞慰謝料の請求を受けると、精神的にも大きな負担がかかり、「早く終わらせたい」という思いから、相手の要求に流されてしまいがちです。しかし、ここまで見てきたように、請求された金額をそのまま支払うべきかどうかは、事実関係や個別の事情によって変わります。

 弁護士に相談・依頼すると、以下のような対応が期待できます。

  • 慰謝料の支払い義務の有無や、妥当な金額の見通しについて検討してもらえる
  • 相手方との連絡窓口を任せられ、直接やり取りをする精神的な負担を減らせる
  • 示談書の内容を確認し、不利な条項がないかをチェックしてもらえる

 とくに、相手方がすでに弁護士を立てている場合や、高額な請求を受けている場合、時効が関わりそうな場合には、早めに専門家へ相談することで、選べる選択肢が広がることもあります。

 当事務所では、男女間のトラブルに関するご相談をお受けしています。不貞慰謝料を請求されてお困りの方は、一人で抱え込まず、まずは状況を整理するところからご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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