盗撮・性的画像で脅された場合の対処法|「撮影そのもの」が犯罪にあたることがあります
不貞をめぐる話し合いでは、早い段階で「認めるのか、認めないのか」を迫られる場面が訪れます。配偶者から問い詰められたとき、相手方の代理人から通知書が届いたとき、示談書への署名を求められたとき。いずれも、その場ですぐに答えを出さなければならないように感じられるものです。しかし「認める」という一つの言葉の中には、性質の異なるいくつもの行為が混ざっています。どの場面で、何について、どのような形で認めるのかによって、後から言い直せる余地も、相手方の立証の負担がどう変わるかも異なります。この記事では、認めるかどうかを判断する前に確かめておきたい点を整理します。
「認める」という言葉が指しているものは一つではない
不貞をめぐるやり取りで「認めるかどうか」が問われるとき、実際には次のように複数の内容が同時に問われていることが少なくありません。
- 特定の相手と会っていたこと。
- その相手と肉体関係があったこと。
- 相手が既婚者であると知っていた、または知り得たこと。
- 相手方に対して金銭を支払う責任があること。
- 提示された金額を支払うこと。
これらは互いに別の事柄です。会っていたことを認めても、肉体関係まで認めたことにはなりません。肉体関係を認めたとしても、相手が既婚者であるとは知らなかったという言い分がそれで消えるわけではありません。責任があることを認めることと、示された金額で支払うことに同意することも、やはり別です。
相手が聞いているのはどれなのかを見分ける
書面でも口頭でも、相手方は自分が確かめたい事柄から順に尋ねてくることが多いものです。返事をする前に、いま聞かれているのが右のどれに当たるのかを一度置き換えて考えると、答える範囲を自分で選びやすくなります。「認めます」「そのとおりです」といった短い言葉は、聞き手の側で問いの全体に対する答えとして受け取られることがあるためです。
謝ることと、認めることも同じではない
配偶者に対して申し訳ないという気持ちを伝えることと、法律上の責任の有無について答えることは、本来別の行為です。ただし、伝え方によっては謝罪の言葉が事実を認めた記録として残ることがあります。書面にして渡す場合の扱いについては、念書や謝罪文の証拠価値を扱った記事で詳しく述べています。
同じ「認める」でも、場面によって重さが違う
「認める」の効果を大きく左右するのが、それがどの場面でなされたかという点です。次の表は、不貞慰謝料の場面で「認める」ことが求められやすい状況を、生じる効果の違いによって並べたものです。
| 場面 | その場で生じること | 後から言い直せるか |
|---|---|---|
| 配偶者や相手方本人との会話 | やり取りの内容が記憶や記録として残る | 言い直す余地はあるが経緯の説明が求められる |
| 通知書に対する回答書やメール | 書かれた内容が資料として残る | 同じく説明が求められ、書面のほうが動かしにくい |
| 念書や謝罪文への署名 | 記載内容と署名が一体の資料になる | 記載を争うには理由を示す必要がある |
| 示談書や合意書への署名 | 合意そのものが成立する | 原則として合意に拘束される |
| 調停の席での発言 | 話し合いの経過として扱われる | 発言自体は言い直せるが調書の記載は別 |
| 訴訟の書面や期日での陳述 | 争いのない事実として扱われる | 取り消しが認められるのは限られた場合 |
上に行くほど言い直す余地が残り、下に行くほど後戻りが難しくなります。多くの方が不安に感じるのは表の上のほうの場面ですが、取り返しがつきにくいのは、むしろ下のほうの場面です。
話し合いの場での「認めた」と、裁判の場での「認めた」
この違いは、法律上もはっきり分かれています。
話し合いの場での発言は、資料の一つとして扱われる
配偶者との会話、相手方の代理人とのやり取り、メールや通知書への返答は、いずれも裁判の外でのやり取りです。そこで述べた内容は、後に訴訟になったときに、事実を推し量るための資料の一つとして考慮されるにとどまります。したがって、後になって「あのときは動揺していて、事実と違う言い方をした」と述べること自体は妨げられません。もっとも、なぜ説明が変わったのかを納得できる形で示せなければ、変更後の説明のほうが受け入れられにくくなります。
裁判の場での「認めます」は、証明の対象から外れる
これに対し、訴訟の期日や争点整理の手続で相手方の主張する事実を認める陳述をした場合は、扱いが変わります。民事訴訟法179条は、裁判所において当事者が自白した事実は証明することを要しないと定めています。相手方は、その点についてもう証拠を出す必要がなくなるということです。不貞慰謝料の訴訟では、資料が十分でないことを理由に請求が認められない場合もありますが、認める陳述をした部分についてはその可能性がなくなります。
いったん認めた事実を後から取り消すのは難しい
訴訟の場で認めた事実については、後からこれと矛盾する主張をすることが原則として認められないと解されています。相手方が、その点はもう証明しなくてよいと信頼して手続を進めているためです。取り消しが認められるのは、相手方が同意した場合、認めた内容が真実に反しておりかつ思い違いに基づくものであったと示せた場合など、限られた場面にとどまるとされています。訴訟に至った段階での認否は、それだけ慎重に決める必要があります。
調停の場合は少し性質が異なる
調停は話し合いの手続ですから、席上の発言がそのまま訴訟における自白として扱われるわけではありません。ただし、合意がまとまって調停調書に記載されると、その記載は裁判上の和解と同じ効力を持つとされています(民事調停法16条)。話し合いの延長のつもりでいると、成立の場面で意味合いが大きく変わる点には注意が必要です。
認めると、相手方が証明しなくてよくなる
「認めるかどうか」を考えるうえで見落とされやすいのが、相手方の負担がどう変わるかという視点です。慰謝料を請求する側は、いくつもの事柄を資料で示さなければなりません。認めた部分は、その作業から外れます。
| 請求する側が示す必要のあること | 認めた場合 | 認めないままの場合 |
|---|---|---|
| 配偶者との間に肉体関係があったこと | 争点から外れる | 写真や記録などの資料で示す必要が残る |
| 既婚者であると知っていた、または知り得たこと | 争点から外れる | 交際の経緯ややり取りから推し量られる |
| それによって夫婦の生活が損なわれたこと | 争点から外れる | 婚姻の状況を示す資料が必要になる |
| 金額を左右する個々の事情 | 認めた範囲が前提になる | 双方が事情を出し合うことになる |
この表からわかるのは、どこを認めるかによって、相手方に残る宿題の量が変わるということです。たとえば肉体関係を認めれば、その一点は動かなくなりますが、既婚者であると知っていたかどうかは別の問題として残ります。逆に、深く考えずに全体を認めてしまうと、本来は相手方が示さなければならなかった事柄まで、まとめて前提になってしまいます。
認める前に確かめておきたいこと
その場で答えを出す前に、次の点を確かめておくと判断がしやすくなります。
- 相手方が何を根拠にしているのか。どのような資料があると言っているのか、それは実際に示されたのか。
- 自分の記憶のうち、はっきりしていることと、あいまいなこと。時期や回数は思い違いが起こりやすい部分です。
- 返事をしなければならない期限が、法律で決まっているものか、相手方が設定した希望の期日か。
- その場で署名を求められる書面が出てくるのか。書面が出てくる場面かどうかで、答え方の重みが変わります。
- 誰に向かって述べるのか。配偶者本人か、相手方の代理人か、裁判所の手続の中か。
届いた書面の種類や期限の見分け方は、慰謝料請求の書面が届いたときの対応を扱った記事で詳しく述べています。
「認めない」という選択にも別の重さがある
ここまで慎重な面を述べてきましたが、認めないことが常に有利というわけでもありません。
事実に反する否認は、後で崩れたときの影響が大きい
資料によって事実が認定された場合、否認を続けていたこと自体が、対応の姿勢として評価の対象になることがあります。裁判例の傾向として、事実を認めて謝罪した場合と、最後まで否認を続けた場合とで、金額の判断に差が生じうると説明されることがあります。
説明が途中で変わると、ほかの主張も通りにくくなる
不貞の事実を争いながら、同時に夫婦関係がすでに壊れていたことや、既婚者であると知らなかったことを主張する場面は少なくありません。このとき、初期の説明と後の説明が食い違うと、争点ごとの当否とは別に、説明全体の受け止められ方が変わることがあります。
二つの助言が食い違って見える理由
「安易に認めてはいけない」という助言と、「認めるべきところは認めたほうがよい」という助言は、一見すると正反対に見えます。しかし前者は、内容を確かめないまま全体を認めてしまうことへの注意であり、後者は、資料から動かしがたい部分まで争い続けることへの注意です。どちらも、認める対象と場面を選ぶという同じことを別の側から述べていると考えると整理しやすくなります。
「全部認める」か「何も認めない」かの二択ではない
実際のやり取りでは、次のような形が取られることがあります。
- 会っていたことは事実だが、肉体関係はなかったと述べる。
- 関係があったことは争わないが、既婚者であるとは知らなかったと述べる。
- 事実関係は争わないが、請求されている金額については争うと述べる。
- 一部の期間についてのみ事実を認め、それ以外は覚えていないと述べる。
限定したつもりが伝わらないことがある
口頭のやり取りでは、限定を付けたつもりの返答が、限定の部分だけ落ちて伝わることがあります。また、「その日は会っていない」と述べたことが、ほかの日については会っていたと述べたのと同じ意味に受け取られることもあります。範囲を区切って答えるのであれば、どこまでを認め、どこからを争うのかが文字として残る形にしておくほうが、後の食い違いは起こりにくくなります。
認めた内容は、どこまで伝わるのか
誰に述べたかによって、その内容が届く範囲も変わります。配偶者本人に述べた内容は、その配偶者を通じて不貞相手側に伝わることがあります。相手方の代理人に述べた内容は、通常、依頼者である相手方に報告されます。訴訟の書面に書いたことは記録として残ります。
また、認めたことをきっかけに、勤務先や家族へ話が広がることを心配される方もいます。相手方が第三者に事実を伝えることには法律上の限界がありますが、この点は別の記事で扱っています。
認めた後に効いてくること
認めたことは、その場かぎりで終わらず、その後の手続にも影響します。
- 交渉の出発点が動き、以後は金額や支払い方法が中心の話になりやすい。
- 支払う意思を示したことが、消滅時効との関係で意味を持つ場合がある。
- 示談書を交わす段階になると、認めた範囲が条項の前提として書き込まれる。
- やり取りの記録が残り、後の説明との整合性が問われる材料になる。
消滅時効との関係や、示談書の条項の作り方については、それぞれ個別の記事で詳しく述べています。
請求する側から見た「認めさせる」ことの限界
請求する側にとって、相手に事実を認めさせることは有力な材料になりますが、それだけで話が終わるわけではありません。
- 事実を認めさせても、金額について合意ができたわけではない。
- 問い詰めた末の発言は、そのやり取りの経緯とあわせて評価されることがある。
- 口頭でのやり取りは、後になって内容を争われることがある。
- 迫り方によっては、こちらの側の責任が問われる場合がある。
そのため、事実を認めてもらうことを目指す場合でも、どのような形で残すか、どこまでを合意の対象にするかを先に考えておくほうが、結果として話が早く進むことがあります。
よくあるご質問
その場で「認めます」と言ってしまいました。取り消せますか
話し合いの場での発言であれば、後から説明を訂正すること自体は妨げられません。ただし、なぜ説明が変わったのかを示せるかどうかで、受け止められ方が変わります。訴訟の期日での陳述の場合は、取り消しが認められる場面が限られます。どの場面での発言だったのかを確かめたうえで、次のやり取りをどうするかを考えることになります。
「認めれば金額を下げる」と言われました
条件を示して合意を促すこと自体は、交渉ではよくある進め方です。ただし、その提案に応じる前に、下げた後の金額が自分にとって受け入れられる水準か、支払い方法や附帯する条項がどうなるかを確かめておく必要があります。金額の考え方については、請求額と支払うべき額の関係を扱った記事で詳しく述べています。
弁護士に依頼した場合、認めるかどうかは誰が決めるのですか
方針を決めるのはご本人です。代理人は、資料や見通しを踏まえて選択肢と影響を説明し、決まった方針に沿って主張を組み立てます。どの事実をどこまで認めるかは、交渉や訴訟の進め方に直結するため、早い段階で話し合っておくことが多い事項です。
まとめ
- 「認める」には、会っていたこと、肉体関係、既婚者であるとの認識、責任、金額など複数の対象が含まれる。
- 同じ「認める」でも、会話、書面、示談書、訴訟のどの場面でなされたかで重さが変わる。
- 訴訟の場で認めた事実は証明の対象から外れ、後から取り消せる場面は限られる(民事訴訟法179条)。
- 調停で成立した合意が調書に記載されると、裁判上の和解と同じ効力を持つとされている(民事調停法16条)。
- 認めた部分は、請求する側が資料で示す必要のある事柄から外れる。
- 事実に反する否認を続けることにも、別の負担が伴う。
- 全部か無かではなく、どこまでを認めるかを選び、文字として残る形にしておくことが後の食い違いを防ぐ。
ご相談について
不貞をめぐる請求では、最初のやり取りで述べた一言が、その後の交渉や手続の前提として残ることがあります。何をどこまで述べるかを決めかねている段階でも、いま自分が置かれている場面と、返事に伴う影響を整理しておくことには意味があります。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、慰謝料を請求する方、請求を受けた方の双方からのご相談をお受けしています。池袋と新橋に事務所があり、書面が届いた段階でも、すでにやり取りが始まっている段階でも対応が可能です。お一人で判断される前に、一度ご相談ください。


