パパ活相手からストーカー・脅迫被害|身バレを防ぎながら止める方法
不貞慰謝料の請求は、いったん始めたら最後まで進めなければならないというものではありません。途中で気持ちが変わることもあれば、相手の事情が分かって方針を変えることもあります。
ただ、同じ「やめる」でも、その終わらせ方によって後に残るものは変わります。何も言わずに連絡を止めるのか、「請求しない」と伝えるのか、条件を決めて合意で終えるのか、裁判所に出した手続を取り下げるのか。見た目は同じ「やめる」でも、請求する権利が残るのか、後からやり直せるのかが違ってきます。
この記事では、途中で請求をやめる場合と、和解という形で終える場合について、それぞれ何が決まり、何が残るのかを整理します。請求を受けている側の方に向けて、相手が途中でやめようとしている場面についても触れます。
この記事で扱うこと、扱わないこと
- 扱うこと=請求を途中で終わらせる4つの方法と、それぞれの法律上の意味。
- 扱うこと=やめる時期によって選べる方法が変わること。
- 扱うこと=費用の後始末と、請求を受けた側から見た読み方。
- 扱わないこと=そもそも請求をするかどうかという、始める前の判断。
- 扱わないこと=示談書や和解条項の文言の作り方、清算条項の効き方。
- 扱わないこと=いつから何年で時効になるのかという数え方そのもの。
「やめる」には4つの終わり方がある
「やめたい」というご相談を伺うと、多くの場合、やめるかどうかという二択で悩まれています。しかし実際には、やめるかどうかよりも、どの終わり方を選ぶかで結果が変わります。まず全体を並べてみます。
| 終わり方 | その場で決まること | 請求する権利 | 後から同じ請求をすること |
|---|---|---|---|
| 何も言わずに連絡を止める | 何も決まらない | 残る | 時効の期間内であればできる |
| 「請求しない」と伝える | 請求しない意思が相手に伝わる | 放棄したと扱われることがある | 争いになりやすい |
| 条件を決めて合意で終える | 金額や条件が確定する | 合意した範囲では消える | できない |
| 裁判所に出した手続を取り下げる | 訴訟が終わる | 残る | 時期によって制限がある |
何も言わずに連絡を止める
この形では、法律上は何も決まりません。請求する権利は残り、相手の支払義務も残ったままです。ただ、権利が残っていることと、後で実際に請求できることは同じではありません。時間が経つほど記憶や資料は失われ、手元の材料から読み取れることも少なくなっていきます。相手の側からは終わったのかどうか分からない状態が続くため、こちらの意図とは違う受け取られ方をすることもあります。
「請求しない」と伝える
これは気持ちの表明のようでいて、法律上の意味を持ちうる行為です。民法519条は、債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は消滅すると定めています。はっきりと「もう請求しない」と伝えた場合、後になって同じ請求をしようとしても、そのときのやり取りを示されて、すでに放棄されていると反論されることがあります。
もっとも、どのような言葉がここでいう意思表示に当たるのかは、その場の状況やその後の経過も含めて判断されます。「今回は許す」といった発言が放棄に当たるのかどうかは、争いになりやすい部分です。やめると決める場合でも、伝え方によって後戻りできる幅が変わります。
条件を決めて合意で終える
いわゆる示談や和解です。民法695条は、和解を、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約する契約と定めています。条文そのものに「争いをやめる」という言葉が置かれているとおり、和解は終わらせるための仕組みでもあります。ただしここでの「やめる」は、一方的に手を引くことではなく、終わったという状態を双方の合意として固定することを指します。
裁判所に出した手続を取り下げる
訴訟を起こした後であれば、訴えの取下げという手続があります。民事訴訟法261条1項は、訴えは判決が確定するまで、その全部または一部を取り下げることができると定めています。取り下げれば訴訟は終わりますが、請求する権利そのものが消えるわけではありません。ただし取下げには条件と効果があり、時期によって扱いが変わります。
やめる時期によって、選べる終わり方が変わる
| 段階 | そこで選べる終わり方 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 通知を出す前 | 請求しないと決める | 相手には何も伝わっていない |
| 書面を出した後の交渉中 | 連絡を止める、合意で終える | 返事を待たせたままにしない |
| 調停を申し立てた後 | 取下げ、調停の成立、不成立 | 終了から6か月という区切りがある |
| 訴訟を起こした後 | 取下げ、和解、判決 | 取下げに相手の同意が要る場面がある |
| 判決の言渡し後 | 控訴しない、控訴審で和解する | 判決が確定すると取下げはできない |
同じ「やめたい」でも、通知を出す前と訴訟を起こした後とでは、こちらの一存で動かせる範囲がまったく違います。進むほど、相手と裁判所が関わる度合いが増えていくと考えると分かりやすいかもしれません。
手続を取り下げるとき、相手の同意が必要になる場面がある
民事訴訟法261条2項は、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、または口頭弁論をした後は、相手方の同意を得なければ取下げの効力を生じないと定めています。答弁書も準備書面の一つですから、相手が中身について反論を出した後は、こちらの一存だけでは手続を終えられません。
これは、訴えられた側にも裁判所の判断をもらって終わらせたいという利益があるためです。取り下げられて初めから何もなかったことにされると、また同じ訴えを起こされる可能性が残ってしまうからです。
取下げは書面でするのが原則で、口頭弁論などの期日ではその場で口頭ですることもできます(民事訴訟法261条3項、4項)。同意が必要な場面で相手が何も述べないときは、書面の送達を受けた日などから2週間以内に異議がなければ、同意したものとみなされます(民事訴訟法261条6項)。
判決の後に取り下げると、同じ訴えを起こせなくなる
取下げがあった部分について、訴訟は初めから係属していなかったものとみなされます(民事訴訟法262条1項)。ですので、原則としては同じ訴えをもう一度起こすことができます。
ただし例外があります。同条2項は、本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができないと定めています。判決の内容を見てから取り下げ、都合の悪い判断だけをなかったことにして裁判をやり直すことを防ぐための規定です。
不貞慰謝料の事件では判決を待たずに終わることも多く、この場面に行き当たることはそれほど多くありません。それでも、いつやめるかによって、後に残る選択肢の幅が変わることを示す例といえます。
取り下げた後、考え直せる時間には区切りがある
訴えを起こすと、その手続が終わるまでは時効が完成しないとされています(民法147条1項1号)。では取り下げた場合はどうなるのか。同項の柱書のかっこ書は、確定判決などによって権利が確定することなくその事由が終了した場合には、その終了の時から6か月を経過するまでは時効は完成しないと定めています。
つまり、取り下げたことで訴えを起こした意味がすべて失われるわけではないものの、そこから先に残る猶予は6か月ということになります。いったん引いて考え直すとしても、時間が無制限にあるわけではありません。調停の申立てについても、同じ枠組みの規定が置かれています(民法147条1項3号)。
なお、いつから数えて何年で時効になるのかという点は、これとは別の論点です。
和解で終えることは、途中でやめることとは違う
和解は「引く」ことではなく「決めて終える」こと
和解は、こちらが引き下がる手段のように受け取られることがあります。しかし実際には、金額、支払方法、これからのことについて内容を決めたうえで終わらせる方法です。取下げが「手続を畳む」だけであるのに対し、和解は「結論を残して畳む」点が違います。
裁判所の中で和解が成立した場合
裁判所は、訴訟がどの程度に進んでいるかを問わず、和解を試みることができるとされています(民事訴訟法89条1項)。第1回の期日の前後から判決の直前まで、話し合いの機会は何度か訪れます。
そして、和解の内容が裁判所の記録に残されると、その記録は確定判決と同一の効力を有するものとして扱われます(民事訴訟法267条1項)。約束どおりの支払いがされない場合に、改めて訴えを起こさなくても次の手続に進めるという意味で、書面の重さが交渉段階の合意とは異なります。
和解で終えると、やり直しはできなくなる
裏を返せば、いったん合意した後に、同じことについて改めて請求することは難しくなります。金額や条件をどう組み立てるか、どの範囲まで清算するのかは、署名の前に確かめておきたい部分です。この点は別の記事で詳しく扱っています。
費用の後始末は自動では終わらない
和解で終えた場合
民事訴訟法68条は、当事者が裁判所において和解をした場合に、和解の費用または訴訟費用の負担について特別の定めをしなかったときは、その費用は各自が負担すると定めています。何も決めなければ、それまでに支出した分はそれぞれの持ち出しで終わることになります。
取り下げて終えた場合
訴訟が裁判および和解によらないで完結したときは、申立てにより、第一審裁判所が決定で訴訟費用の負担を命じることとされています(民事訴訟法73条1項)。申立てをしなければ、誰が負担するのかについての判断はされません。
納めた手数料が一部戻る場合がある
民事訴訟費用等に関する法律9条3項1号は、最初にすべき口頭弁論の期日が終了する前に訴えを取り下げた場合について、申立てにより手数料の一部を還付すると定めています。戻る額は、納めた額から、本来納めるべき額の2分の1(その額が4000円に満たないときは4000円)を差し引いた金額です。早い段階で取り下げるかどうかで、費用の残り方が変わる場面があるということです。
やめるかどうかを判断する材料の並べ方
迷いが続くときは、気持ちの整理から入るよりも、次の順で書き出してみると輪郭がはっきりすることがあります。
- このまま進めた場合に、これから何が必要になるのかを書き出す。
- いま止めた場合に、相手との間に何が残るのかを書き出す。
- 求めていたものが金銭なのか、関係の整理なのかを分けて考える。
- やめたい理由が一時的な事情なのか、動きにくい事情なのかを見分ける。
- やめるとして、4つの終わり方のどれを選ぶのかを決める。
- 決めた内容を口頭で終わらせるのか、書面に残すのかを選ぶ。
特に4番目は見落とされがちです。相手が支払えない、進め方が分からない、書面のやり取りに疲れたといった理由は、方法を変えれば動く事情であることがあります。一方で、夫婦として今後どうするかという判断は、時間をかけても変わらないこともあります。
請求を受けている側から見ると
相手が急に連絡をしてこなくなった
連絡が途絶えても、それだけでは何も決まっていません。時効の期間内であれば、時間が空いた後に改めて請求が届くこともあります。この状態を終わらせたいのであれば、こちらから合意という形にしないと確定しないという点は押さえておいてよいでしょう。
取下げに同意しないという選択もある
訴訟で答弁書などを出した後は、相手が取り下げようとしても、こちらの同意が求められる立場になります(民事訴訟法261条2項)。裁判所の判断をもらって終わらせたいと考えるのであれば、同意しないという選択もあり得ます。ただし審理が続けば、その分の時間と費用も続きます。何も述べないまま2週間が過ぎると同意したものとみなされますので(民事訴訟法261条6項)、判断は早めに固めておく必要があります。
「請求しない」と言われた後に、また請求された
やり取りが書面やメッセージとして残っていれば、すでに請求しないという意思が示されていたという主張の材料になり得ます(民法519条)。もっとも、口頭のやり取りだけでは、そのような趣旨だったのかどうかが争いになりやすい部分です。残っている記録を確かめたうえで対応を考えることになります。
よくあるご質問
途中でやめたら、相手から費用を請求されますか
訴訟費用については、和解で何も定めなければ各自の負担となり、取下げで終わった場合は申立てがなければ負担の判断がされません。弁護士に依頼していた場合の費用は、これとは別に、依頼した弁護士との契約に従って精算することになります。
一度やめた後、また請求することはできますか
終わらせ方によります。連絡を止めただけであれば権利は残っています。取り下げた場合も原則として改めて訴えを起こせますが、判決の後に取り下げた場合には制限があります。合意で終えた場合は、その範囲について改めて請求することは難しくなります。
相手から和解を持ちかけられました。断ると不利になりますか
和解に応じる義務はありません。民事訴訟法89条1項は、裁判所が和解を試みることができると定めているだけで、当事者に応諾を求める規定ではありません。応じなかったこと自体が判決の内容を左右する仕組みにはなっていません。ただし、示された条件がこちらにとって不利ではない場合もありますので、内容を確かめたうえで判断されることをおすすめします。
まとめ
- 「やめる」には、連絡を止める、請求しないと伝える、合意で終える、手続を取り下げる、という4つの形がある。
- どの形を選ぶかで、請求する権利が残るのか、後からやり直せるのかが変わる。
- 「請求しない」と伝えることは、法律上の意味を持つ場合がある(民法519条)。
- 訴訟では、相手が反論を出した後の取下げに相手の同意が要る(民事訴訟法261条2項)。
- 判決の後に取り下げると、同じ訴えを起こせなくなる(民事訴訟法262条2項)。
- 取り下げた後の猶予は6か月という区切りがある(民法147条1項)。
- 和解は引き下がることではなく、内容を決めて終える方法である。
- 費用の後始末は自動では終わらず、定めや申立てによって結論が変わる。
請求を続けるか終えるかで迷ったときは
途中でやめたいという気持ちは、その時点での状況から自然に生まれるものです。ただ、どの終わり方を選ぶかによって、数か月後、数年後に手元に残るものが変わってきます。判断の前に、いまどの段階にいて、どの選択肢が残っているのかを確かめておくと、後から振り返ったときに納得しやすくなります。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、不貞慰謝料の請求について、請求する側の方からも、請求を受けている側の方からもご相談をお受けしています。進めるべきかやめるべきか迷っている段階でも構いませんので、池袋または新橋の事務所までお気軽にお問い合わせください。


