【不貞慰謝料】無断の録音は証拠になるのか|秘密録音の扱い

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

配偶者を問い詰めたときのやり取りをとっさに録音した、あるいはこれから録音しておこうと考えている。不貞をめぐるご相談では、こうしたお話をよく伺います。同時に、「相手に断らずに録ったものは、そもそも裁判で使えないのではないか」「録音したこと自体で、逆に自分が責められるのではないか」というご不安もよく耳にします。

 インターネット上には「無断録音でも証拠になる」という説明と、「盗聴は違法だから証拠にならない」という説明が並んでいます。どちらも一部は当たっていますが、同じ場面の話ではありません。録音は、誰が誰の会話を録ったのかによって、問われることが変わります。

 この記事では、無断の録音がどのように扱われるのかを録音した人の立場ごとに整理したうえで、録音の中身がどう読まれるのか、裁判に出す段階で何を求められるのかを順に見ていきます。請求を受けた側から見るとどうなるかにも触れます。

「無断で録音した」と言うとき、三つの場面が混ざっている

 まず整理しておきたいのは、日常語の「無断の録音」の中に、性質の異なる三つの場面が入り込んでいることです。同じ言葉で語られていても、法的に問題になる点は次のように分かれます。

録音の場面録音した人の位置主に問題になりやすいこと
自分と相手の会話を、相手に告げずに録る会話の当事者録られた相手の人格権やプライバシーとの調整
自分がいない場所に録音機を置き、その場の会話を録る会話の当事者ではない置いた行為の評価と、無関係な人の会話まで拾うこと
他人どうしの通話や通信を機器で聞き取る通信の外にいる第三者通信の秘密に関わる法律の規定


分かれ目は「自分がその会話に加わっているか」

 1つ目のように、自分が話し手の一方である会話を相手に告げずに録ることは、一般に秘密録音と呼ばれます。これに対して、自分が加わっていない他人どうしの会話を機器で聞き取ることは盗聴と呼ばれ、区別されるのが通常です。「隠して録る」という見た目は似ていますが、前者は自分が現に聞いている内容を記録に残しているのに対し、後者は本来知り得ない会話を取りに行っている点で、性質が異なります。

呼び名の違いにこだわる理由

 言葉の整理にこだわるのは、裁判での扱いがこの区別に沿って動くことが多いからです。ご相談の場面では、「盗聴と同じことをしてしまった」と思い込んで自分に有利な材料を出せないままの方もいれば、「無断録音は問題ないと書いてあった」という理解のまま相手の部屋に録音機を置いてしまう方もいます。どちらも、三つの場面を分けずに読んだことから生じています。

自分が加わった会話の録音は、証拠として取り調べられることが多い

 自分が当事者である会話を相手に告げずに録音した場合、その録音は民事の裁判で証拠として取り調べられることが多いといえます。理由は次のとおりです。

民事訴訟には、証拠能力を一般的に制限する規定がない

 刑事裁判では、違法な手続で集められた証拠を排除する考え方が確立しています。これに対して民事訴訟法には、ある資料を証拠として使う資格、いわゆる証拠能力を一般的に制限する規定が置かれていません。裁判所は口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をしんしゃくして自由な心証で事実を判断するものとされており、民事訴訟法247条がこれを定めています。そのため、集め方に問題があったとしても、そのことから直ちに証拠として使えなくなるわけではない、というのが出発点になります。

裁判例が示してきた線引き

 もっとも、どのような集め方でも構わないとされているわけではありません。東京高等裁判所昭和52年7月15日判決は、著しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束するなど、人格権侵害を伴う方法で採集された証拠は証拠能力を否定されてもやむを得ないとしたうえで、話者の同意なく録られた録音については、その手段方法が著しく反社会的と認められるかどうかを基準とすべきだと述べています。同判決は、酒席での発言を本人が知らないうちに録取したにとどまるとして、録音の証拠能力自体は認めました。

 近時の裁判例では、これに加えて、収集の方法や態様、侵害される権利利益がどの程度保護に値するか、その証拠が訴訟でどれだけ重要かなどを総合的に考慮し、証拠として採用することが訴訟上の信義則に反するといえる場合には例外的に証拠能力が否定される、という枠組みが用いられています。実際に否定された例としては、大学のハラスメント防止委員会の審議を無断で録音したものについて、非公開の運用が定められた場でその秘密性が特に高いことなどを理由に採用しなかった東京高等裁判所平成28年5月19日判決が知られています。

刑事の場面でも一律に違法とはされていない

 最高裁判所は、詐欺の被害を受けたと考えた人が後日の証拠とするために相手方との会話を録音した事案について、同意を得ないで行われたものであっても違法ではなく、証拠能力は否定されないという趣旨の判断を示しています。2000年7月に出されたものです。ただし、相応の理由があった事案についての判断であり、どのような録音でも当然に適法だと述べたものではありません。

同じ「認めた」でも、やり取りの形によって読まれ方が変わる

 実際のご相談で争いになりやすいのは、「録れているかどうか」ではなく、「その一言が何を認めたことになるのか」です。録音は会話の記録ですから、発言は前後のやり取りと切り離せません。典型的な形を並べると、次のようになります。

やり取りの形読み取られやすいこと返ってきやすい言い分
問いかけに「うん」「そう」とだけ答えている質問の中身を認めたようにも読める何を指して答えたのか特定できない、その場を早く終わらせたかった
自分から時期や経緯を具体的に話している説明の内容がそのまま受け取られやすい記憶違いだった、話を合わせただけだ
「ごめん」「悪かった」という謝罪だけが入っている何かについて非を認めている冷たい態度をとったことへの謝罪だった
強い言葉で問い詰めた末に認めている認める発言そのものは残るその場を収めるために言っただけだ
否定せずに黙っている認めたようにも見える黙っていたことは認めたことにならない


一言だけを切り出すと、意味が変わる

 録音の一部だけを取り出すと、その前にどのような問いかけがあったのかが見えなくなります。「認めた」と受け取れる発言も、直前の質問が「もう会っていないよね」なのか「関係があったんだよね」なのかで、意味する範囲がまったく違います。やり取りの前後を含めて残しておくほうが、結果として読み違えられにくくなります。

録音そのものには、いつ・どこで・誰の声かは書かれていない

 写真であれば背景から場所が分かることがありますが、音声にはその手がかりが乏しく、いつの会話なのか、どこで交わされたのか、誰の声なのかは、録音を聞いただけでは確定できないことがあります。相手が「自分の声ではない」「別の日の会話だ」と述べたときに、それを補う材料が手元にあるかどうかが問われます。証拠として何がどの段階に位置づけられるのかという全体像は、証拠力の順位を扱った記事で整理していますので、そちらもあわせてご覧ください。

問い詰め方そのものが、評価の対象になる

 録音が「取り調べられること」と、その内容が「そのまま事実として認められること」は別の話です。ここは見落とされやすい点です。

追及の経緯は、発言の受け取られ方に影響する

 先ほどの昭和52年の東京高裁判決は、録音の証拠能力自体は認めながら、会話を引き出した経緯や方法が誘導的であったことなどを理由に、録音されたとおりの事実は認定しませんでした。取り調べてもらえることと、重く受け止めてもらえることは同じではない、ということです。長時間にわたって責め続けた末の発言や、書面に署名させながら並行して録った音声は、真意に基づくものかどうかを疑う余地を相手に与えます。

録音した側が別の責任を問われることもある

 問い詰め方が度を越えた場合、その行為自体が問題になることがあります。相手を脅すような言葉で応じさせた、退去を許さずに追及を続けたといった事情があれば、録音の内容以前に、こちらの行為が争点として持ち出されます。感情が高ぶる場面ではありますが、事実関係を確かめる会話と、相手を追い込む会話は分けて考えたほうが安全です。

自分がいない場所に録音機を置く場合は、評価が変わりうる

 インターネット上の記事には、自宅のリビングや寝室、車内といった共有部分であれば録音機を置いてよい、という説明が見られます。ただ、この言い切りには注意が必要です。

置きっぱなしの録音は、無関係な会話まで拾う

 自分が加わった会話を録るのとは違い、録音機を置いて離れる方法では、その場に居合わせた人の会話が話し手を選ばずに記録されます。近時の地方裁判所の判断の中には、職場の休憩室に長期間にわたって繰り返し録音機を設置し、会話の有無や話し手を問わず録り続けていた事案について、違法性の程度が高いとして、証拠として採用することは訴訟上の信義則に反すると判断したものがあります。共有の場所かどうかという一点だけで結論が決まるわけではなく、どの範囲の会話を、どれだけの期間、どのような態様で拾ったのかが見られていることになります。

他方で、一律に排除されているわけでもない

 もっとも、自分が加わっていない会話の録音がつねに使えないわけではありません。不貞をめぐる裁判例の中には、配偶者と交際相手の会話を録音したものについて、プライバシーの侵害の程度は高いとしつつ、事案の内容、録音するに至った経緯、その録音を証拠として出さざるを得なくなった事情などを考慮して、証拠能力を認めたものもあります。結論は事案ごとに分かれており、「共有部分だから大丈夫」「盗聴だから使えない」といった単純な線引きにはなっていません。

別居中の住まい、相手の私物、第三者への依頼

 別居後に相手が一人で住む住まいへ立ち入って機器を置く行為は、住居への侵入という別の問題を生みます。相手の私物やかばんの中に入れる行為も同様です。家族や知人に頼んで録ってもらう場合も、その人は会話の当事者ではありませんから、自分で録るのとは位置づけが異なります。位置情報の記録については別記事で扱っています。

電話やアプリの通話を録音する場合

 通話の録音についても、自分がその通話をしているかどうかが分かれ目になります。

自分の通話を録ることと、他人の通信を取りに行くことの違い

 自分が話している通話を録音することは、対面の会話を録音するのと同じ位置づけになります。これに対して、他人の通話を機器を用いて聞き取る行為は、通信の秘密を守るための法律の規定が関わってきます。電気通信事業法や有線電気通信法、電波法には、通信の秘密を侵してはならない旨の規定と、これに違反した場合の罰則が置かれています。手元の機器で自分の会話を残すこととは、まったく別の話だとお考えください。

相手の端末に無断でアプリを入れる場合

 相手のスマートフォンに、会話や通話を継続的に記録するアプリを無断で入れる行為は、それ自体が別の法律に触れうるものです。相手の端末をどこまで見てよいのか、そこで得た資料はどう扱われるのかについては、配偶者のスマートフォンの閲覧を扱った記事で整理しています。

録音を裁判に出す段階で求められること

 手元に録音があることと、裁判で使える形に整っていることは同じではありません。提出の段階では、次のような手当てが必要になります。

  • 録音を記録した媒体は、文書に準ずるものとして書証に準じた扱いを受けます。民事訴訟法231条がこれを定めています。
  • 裁判所または相手方から求められたときは、録音の内容を説明した書面を提出することになります。反訳、いわゆる文字起こしをした書面もこれに含まれます。民事訴訟規則149条1項が定めています。
  • 証拠説明書には、録音の対象、日時、場所を明らかにする必要があります。民事訴訟規則148条が定めています。
  • 反訳を業者に依頼する場合には費用がかかりますので、どの部分を反訳するかを含めて、あらかじめ見通しを立てておくことになります。


 実務では、求められる前に媒体と反訳書面をあわせて出すことも少なくありません。また、自分に不利な部分を除いて提出すると、編集の有無そのものが争点になります。相手方は元の録音の複製の交付を求めて確認できますので、都合のよい部分だけを切り出す扱いは、かえって信用性を損なう方向に働きます。録り方や保存の手順は、証拠の集め方を扱った記事で述べています。

請求を受けた側から見た録音

 ここまでとは反対に、相手が録音を持っていると告げてきた場合、あるいは録音を示されて請求を受けた場合についても触れておきます。

「無断で録られたものだ」という主張だけでは動きにくい

 最初に申し上げたとおり、民事では、集め方に問題があるというだけで証拠から外れるとはかぎりません。「勝手に録られたものだから無効だ」という反論だけを繰り返しても、話が前に進まないことが多いといえます。争うのであれば、その録音がどのような状況で録られ、何を述べたものなのかという中身に踏み込む必要があります。

切り取られた形で示されたとき

 示されたのが一部分であれば、その前後にどのようなやり取りがあったのかを確認することが出発点になります。全体を通して聞けば意味が変わる場面は少なくありません。ご自身の側にも同じ会話の記録が残っていないか、日記や連絡のやり取りなど時期を裏づける資料がないかを、早い段階で整理しておくとよいでしょう。

話す前に整理しておきたいこと

 録音されているかどうかにかかわらず、いったん口にした説明を後から訂正するのは簡単ではありません。事実と異なる部分や認識の食い違いがある場合には、その場で結論を出さず、内容を確かめたうえで回答すると伝えることも一つの選択です。請求を受けた側の初期対応は、別の記事でも取り上げています。

録音の前後で気をつけたいこと

 最後に、録音を手元に置く前後でご相談の多い点をまとめます。

  1. 録音の全体を残す。必要そうな部分だけを切り出して保存すると、元の記録がなくなり、編集を疑われる余地を残します。
  2. 第三者の会話が入り込んでいないか確認する。子どもや無関係の人の声が長く含まれている場合は、扱いに配慮が必要です。
  3. 外部に出さない。交際相手の勤務先やインターネット上に音声を流す行為は、名誉やプライバシーに関わる別の問題を生みます。
  4. 相手に聞かせるかどうかは慎重に判断する。手の内を明かすことで、記録や連絡先が整理されてしまうことがあります。
  5. 録音だけで足りるとは考えず、時期や相手方を裏づける資料もあわせて確かめる。
  6. 期限を意識する。慰謝料の請求には消滅時効の定めがあり、資料を集めているうちに期間が経過することがあります。


よくあるご質問

 録音に関して、実際にお受けすることの多いご質問をまとめます。

録音していることを相手に伝えないと違法になりますか

 自分が加わっている会話を録音する場合、告げていないというだけで直ちに違法になるわけではないと考えられています。ただし、録り方や使い方によっては、相手から責任を問われる場面もあります。伝えたうえで録るという選択も、話し合いの記録を残す目的であれば十分に成り立ちます。

相手から「録音を消してほしい」と言われました

 求められたからといって、当然に消す義務が生じるわけではありません。もっとも、示談や合意の際に記録の取扱いを条項として定めることはあり、含めるかどうかは他の条項との兼ね合いで判断することになります。

家族や知人に録ってもらった録音は使えますか

 その人が会話に加わっていたかどうかで位置づけが変わります。加わっていない場合は、この記事の2つ目の場面に近い扱いになりますので、どのような経緯で録られたのかを含めて確認したほうがよいでしょう。

録音だけで慰謝料は認められますか

 内容によります。時期や相手方、関係の内容が具体的に語られているものは、それだけでも意味を持つことがあります。他方で、抽象的な謝罪や短い応答にとどまるものは、他の資料と組み合わせて評価されるのが通常です。手元の録音が、どの程度まで示せるものなのかを一度整理してみることをおすすめします。

まとめ

  1. 「無断の録音」には、自分が加わった会話を録る場合、その場にいない会話を録る場合、他人の通信を取りに行く場合の三つが混ざっており、問われることが異なります。
  2. 民事訴訟には証拠能力を一般的に制限する規定がなく、自分が加わった会話の録音は、証拠として取り調べられることが多いといえます。
  3. ただし、著しく反社会的な手段による場合や、諸事情を総合して訴訟上の信義則に反するといえる場合には、例外的に証拠から外れることがあります。
  4. 取り調べられることと、内容がそのまま事実として認められることは別で、誘導や強い追及があった経緯は評価に影響します。
  5. 録音機を置いて離れる方法は、無関係な会話まで拾う点で別の評価を受けることがあり、共有部分かどうかだけで結論は決まりません。
  6. 裁判に出す段階では、内容を説明した書面や、録音の対象・日時・場所の明示が求められます。
  7. 請求を受けた側にとっては、「無断で録られた」という主張だけでは動きにくく、録音の中身と経緯に踏み込んだ検討が必要になります。


不貞をめぐる録音の扱いでお悩みの方へ

 手元にある録音が、どこまでを示せるものなのか。相手から示された録音に、どう向き合えばよいのか。いずれも、録音の中身と、それが録られた経緯を具体的に見なければ判断できません。当事務所では、請求をお考えの方からも、請求を受けた方からも、男女間のトラブルに関するご相談をお受けしています。ご自身の状況に照らして整理したいという段階でも構いませんので、お早めにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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