不貞の期間・回数はどこまで金額に響くのか

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

不貞慰謝料の話し合いや裁判では、関係がどのくらいの期間続いていたのか、身体的な関係が何回あったのかが、早い段階で確認されます。「期間が長いほど高くなる」「回数が多いほど高くなる」と説明されることの多い項目ですが、実際の扱いはそれほど単純ではありません。そもそも数え方が定まらないことも多く、同じ年数でも、他の事情との組み合わせによって読み取られる中身が変わります。この記事では、期間と回数という数字が、どのように数えられ、何を読み取る材料として使われ、どの場面でどこまで効いてくるのかを、請求する側と請求を受けた側の双方の視点から整理します。金額の目安そのものや、離婚に伴う取り決めについては扱いません。

期間や回数に単価が決まっているわけではない

 不貞慰謝料は、民法709条・710条に基づく損害賠償です。この2つの条文には、期間が何年なら何円、回数が何回なら何円といった計算方法は書かれていません。金額は、当事者が主張し、証拠から認められた事情を総合的に見て判断されます。

 期間が長いこと、回数が多いことは、金額を高める方向に働きやすい事情として扱われています。ただし、期間と回数は、金額を計算するための数量ではなく、その関係がどのようなものだったのかを読み取るための手がかりとして使われます。年数や回数に単価を掛けて積み上げる仕組みではないため、「1年だからいくら」という形で金額が決まるわけではありません。

 金額の幅そのものや、金額を上下させる事情の全体像については、それぞれ別の記事で扱っています。

同じ「期間」でも、指しているものが違う

 ご相談の場面では、「期間」という言葉がいくつかの意味で使われており、話がかみ合わなくなることがあります。まず、自分が話している「期間」がどれなのかを分けておくと、整理しやすくなります。

言葉何を指すか主に問題になる場面
不貞行為の期間身体的な関係があった時期の、始まりから終わりまで金額の評価
交際期間連絡やデートを含めた関係の、始まりから終わりまで関係の深さの評価
婚姻期間夫婦が婚姻していた年数夫婦の側の事情の評価
請求できる期間請求する権利が時効で消えるまでの年数請求できるかどうか


 金額の評価で中心になるのは、このうち不貞行為の期間です。婚姻期間の意味合いや、時効の数え方については、それぞれ別の記事で扱っています。

起点と終点をどこに置くか

 不貞行為の期間は、身体的な関係が始まった時点から、最後にあった時点までで数えるのが基本です。連絡を取り合っていただけの時期や、二人で食事をしていただけの時期は、不貞行為の期間には含まれないのが原則です。1年にわたって親しく連絡を取り合い、最後の1か月に身体的な関係があったという経過であれば、不貞行為の期間としては1か月と整理されることになります。

 もっとも、それ以前の時期がまったく評価されないわけではありません。親密なやり取りが長く続いていたという事情は、関係の深さを示すものとして、期間とは別の形で考慮されることがあります。

途中で途切れている場合

 一度関係が終わり、しばらく間を置いてから再開したという経過も少なくありません。この場合、全体をひと続きの期間として見るのか、別の関係が2度あったと見るのかによって、評価も、時効の考え方も変わってきます。空白期間の長さ、その間も連絡が続いていたかどうか、再開に至った経緯などが、判断の材料になります。

「回数」は、数えられないことのほうが多い

 回数は、期間以上に確かめにくい事情です。日付を記録している方はほとんどおらず、実務では次のような形で扱われています。

  • 当事者が説明した回数を、そのまま前提として話し合いを進める。
  • やり取りの履歴や宿泊の記録から、おおよその頻度を推し量る。
  • 「およそ半年間、月に1回程度」というように、期間と頻度を組み合わせて示す。


 つまり、回数は正確な数字として確定するというより、期間と頻度からおおよその像として示されることが多い事情です。「何回以上なら多い」という一律の基準があるわけでもありません。

回数がはっきりしない場合の扱い

 請求する側は、不貞行為があったことを主張し、資料で裏づける立場にあります。回数が分からないからといって請求ができなくなるわけではありませんが、認められるのは、あくまで確認できた範囲にとどまります。おおよその時期と頻度を言える状態にしておくことが、実務上の出発点になります。

 請求を受けた側から見ると、自分のほうから細かい回数を申告しなければならない決まりはありません。ただし、いったん自分から述べた時期や回数は、その後の話し合いの前提として扱われます。この点は、金額の話を始める前に意識しておきたいところです。

期間と回数から読み取られている3つの中身

 期間や回数が重視されるのは、数字そのものに価値があるからではなく、そこから次のようなことが読み取られるためです。

読み取られること数字がどのように使われるか
苦痛が続いた長さ関係が続いていた間、夫婦としての生活が侵害された状態が続いていたと評価される
関係の深さと責任の重さ繰り返し関係を持ったことが、その都度の判断の積み重ねとして評価される
生活への入り込み方頻繁な外泊や同居に近い状態など、夫婦の生活そのものへの影響として評価される


 この3つは重なり合っています。同じ「3年」でも、数か月に一度会っていた場合と、ほぼ同居に近い状態が続いていた場合とでは、読み取られる中身が異なります。年数や回数を伝えるときは、数字だけでなく、その期間がどのような関係だったのかまで含めて示すほうが、実態に沿った評価につながります

長い・多いというだけでは動きにくい場面もある

 期間と回数は、それだけで金額を決める事情ではありません。他の事情と結びついて、はじめて意味を持ちます。

期間が短くても評価が下がるとは限らない場合

 期間が短くても、それが夫婦関係の悪化や別居の直接のきっかけになった場合や、夫婦の一方に関係を知らせるような行動があった場合には、期間の短さが金額を押し下げる方向に強く働くとは限りません。短い期間であっても、生活に大きな変化が生じることはあります。

期間が長くても金額に反映されにくい場合

 期間が長くても、その大半について裏づけがなく、当事者の説明にも食い違いがある場合には、認められる期間は限られます。また、夫婦がすでに別居していた時期が含まれている場合には、その時期をどう評価するかが争われます。期間の長さが、そのまま金額の大きさに置き換わるわけではありません。

同じ数字が、金額以外の場面にも効いてくる

 期間と回数は、金額の話だけに使われるわけではありません。次の場面でも、同じ数字が前提になります。

  • 立証の場面。認められるのは、資料から確認できた期間・回数の範囲にとどまります。
  • 時効の場面。いつ関係が終わったのか、いつその事実を知ったのかが、請求できるかどうかに関わります。
  • 夫婦関係をめぐる主張の場面。関係がいつ始まったのかは、その時点で夫婦関係がどのような状態だったのかという主張と表裏の関係にあります。
  • 書面の場面。示談書で対象とする範囲を、いつからいつまでの関係として書くかによって、清算される範囲が変わります。
  • 当事者間の分担の場面。関係の中でどちらが主導的だったかという事情は、支払った後の負担の分け方にも関わります。


 話し合いの中で述べた期間や回数は、金額の材料になると同時に、これらの場面すべての前提として扱われます。金額だけを見て数字を出し入れすると、後の場面で整合しなくなることがあります。

請求する側が整理しておきたいこと

 次の順序で手元の情報を並べておくと、交渉の場でも説明しやすくなります。

  • 分かっている範囲で、いつ頃から、どのくらいの頻度で続いていたのかを時系列にする。
  • 配偶者の説明だけを前提にせず、やり取りの履歴など裏づけになる資料と突き合わせる。
  • 正確な回数が分からない場合は、おおよその時期と頻度という形にまとめる。
  • 期間の長さだけでなく、その間に生活へどのような変化が生じたのかを併せて示す。
  • 資料は早い段階で保存し、後から出てきたものと時期が食い違わないようにする。


請求を受けた側が整理しておきたいこと

 期間や回数を争うかどうかは、金額だけの問題ではないため、次の点を先に確かめておくことをおすすめします。

  • 相手の主張する期間・回数が、どの資料に基づくものかを確認する。
  • 自分の認識と食い違う部分と、争う必要のない部分を分けて考える。
  • その場で細かい時期や回数を述べる前に、それが何の前提として扱われるのかを確かめる。
  • 期間が短い、回数が少ないという主張だけで金額が決まるわけではないことを踏まえる。
  • 別居の時期など、期間の評価に関わる事情があれば併せて整理しておく。


よくあるご質問


期間が1年を超えると扱いが変わるのでしょうか

 年数の区切りによって扱いが切り替わるという決まりはありません。裁判例を紹介する記事では「1年以上なら長期」といった説明も見かけますが、これは過去の事案を整理した際の傾向であって、基準として定まっているものではありません。同じ年数でも、他の事情によって評価は変わります。

回数をはっきり思い出せない場合はどうなりますか

 思い出せる範囲で、時期と頻度を整理するところから始めます。日付を1つずつ挙げられなくても、いつ頃から始まり、どのくらいの間隔で会っていたのかが説明できれば、話し合いの土台にはなります。無理に数字を作らないことのほうが大切です。

相手が期間や回数を実際より短く説明している場合はどうなりますか

 その説明だけで期間が確定するわけではありません。やり取りの履歴や宿泊の記録など、時期を裏づける資料と突き合わせて判断されます。もっとも、資料がない部分については、認められる範囲が限られることもあります。

まとめ


  1. 民法709条・710条に算定方法の定めはなく、期間や回数に単価が決まっているわけではない。
  2. 「期間」には、不貞行為の期間、交際期間、婚姻期間、請求できる期間があり、指しているものを分けて考える必要がある。
  3. 不貞行為の期間は、身体的な関係の始まりから終わりまでで数えるのが基本で、連絡だけの時期は原則として含まれない。
  4. 回数は確定しにくく、期間と頻度からおおよその像として示されることが多い。
  5. 期間と回数からは、苦痛が続いた長さ、関係の深さ、生活への入り込み方が読み取られている。
  6. 同じ数字が、立証・時効・書面の範囲など、金額以外の場面の前提にもなる。


不貞慰謝料の請求・対応をご検討中の方へ

 期間や回数の整理は、慰謝料の金額だけでなく、その後の話し合い全体の前提になります。手元にある情報が断片的な段階でも、どこまでが確かめられていて、どこからが推測なのかを分けておくことで、進め方の見通しが立てやすくなります。

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、不貞慰謝料を請求する方、請求を受けた方の双方からご相談をお受けしています。期間や回数の整理の仕方、資料の見方、相手方への伝え方について、状況を伺ったうえでご説明いたします。お一人で判断に迷われている段階でも、お気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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