元交際相手のSNSを見ていた|のぞき見が罪になる場面

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

別れた相手のアカウントを、つい開いてしまう。新しい投稿を確認し、フォローが増えていないかを見て、更新を待つ。心当たりのある方は少なくないと思います。一方で、報道などで「元交際相手のSNSをのぞき見していた」という表現を目にすると、自分の行動も法に触れるのではないかと不安になることがあるかもしれません。この記事は、SNSを見ていた側の立場から、閲覧がどの段階で法的な問題に変わるのかを整理したものです。

先に押さえておきたい三つのこと

 結論から述べます。

  • 公開されているアカウントの投稿を見ること自体を直接処罰する規定は、現在のところ置かれていません。
  • 問われやすいのは、見える状態を作るために何をしたかという「手段」の面です。
  • もう一つは、見た後に何をしたかという「反応」の面で、ここでストーカー規制法や刑法上の罪に近づきます。


 つまり、「見ていた」という事実そのものより、その前後にある行動が評価の対象になります。以下では、この二つの分かれ目に沿って説明します。

閲覧そのものを罰する規定は置かれていない

「のぞき見」の条文はSNSの画面を想定していない

 のぞき見を処罰する規定としてよく挙げられるのは軽犯罪法一条二十三号です。もっともこれは、正当な理由がなく、住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為を対象としています。物理的な場所を前提にした規定であり、インターネット上に公開された投稿の画面を見る行為には及ばないと考えられています。

ストーカー規制法の「見張り」にも場所の要件がある

 ストーカー規制法二条一項一号は、つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがること、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所もしくは通常所在する場所(住居等)の付近における見張り、住居等への押し掛け、住居等の付近をみだりにうろつくことを規制しています。

 注目していただきたいのは、「見張り」に住居等の付近という場所の要件が付いている点です。条文の文言からすると、画面上で投稿を追い続ける行為は、この場所の要件を満たさないと整理されるのが一般的です。「毎日見ている」という事実だけを取り出しても、一号に当たるという結論には直ちには結び付きません。

 ただし、これは「SNSを見ている限り何をしても問題にならない」という意味ではありません。次に述べる二つの分かれ目のいずれかに触れると、評価は変わります。

分かれ目の一つめ どうやって見える状態にしたか

相手のIDとパスワードを入力してログインした

 最も明確に問題になるのがこの類型です。他人のIDやパスワードを、インターネットを通じて入力し、本来は制限されている利用ができる状態にする行為は、不正アクセス禁止法が禁じる不正アクセス行為に当たり得ます。同法三条に違反した場合の法定刑は、三年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金です。

 誤解されやすいのは、「中身を書き換えていない」「見ただけだ」という点は成立の妨げにならないとされていることです。また、交際中に相手が教えてくれたパスワードであっても、その時点の承諾が今も続いているとは限りません。別れた後にそのまま使い続けていた、という説明は通りにくいのが実情です。

相手の端末を直接操作して見た

 置いてあったスマートフォンのロックを解除し、端末の中に保存されている画面を見たにとどまる場合は、インターネットを通じて識別符号を入力したとはいえないため、不正アクセス行為には当たらないと考えられています。すでにログイン済みで入力を求められないアプリを開いた場合も同様に整理されることが多いところです。

 もっとも、これは不正アクセス禁止法の適用の話にすぎません。無断で私的な領域を見た点については、民事上のプライバシー侵害として損害賠償の対象になり得ますし、端末を持ち出した、部屋に立ち入ったといった事情があれば、別の罪が問題になります。

別のアカウントを作って見ていた

 ブロックされた後に、自分で新しいアカウントを作って公開範囲の投稿を見た、という行為は、他人の識別符号を入力したわけではないため、不正アクセス行為とは別の問題になります。この一点だけで犯罪が成立するとはいえません。

 ただし、その別アカウントからフォロー申請を繰り返す、コメントを送る、閲覧していることが相手に伝わる形で行動する、といった段階に進むと、後述する反応の面で評価されることになります。ブロックという明確な拒絶の後である事情は、行為者が拒絶を認識していたことを示す方向に働きます。

端末にアプリを入れて見ていた

 相手の端末に無断でアプリを入れ、通知やメッセージ、位置情報を取得していた場合は、性質がかなり変わります。相手の意図に反する動作をさせるプログラムを使ったと評価されれば、刑法百六十八条の二の不正指令電磁的記録供用罪(三年以下の拘禁刑または五十万円以下の罰金)が問題になり得ます。位置情報の取得については、ストーカー規制法二条三項が別に規定を設けており、令和七年十二月三十日からは紛失防止タグを用いた取得も対象に加えられました。

見える状態にした手段主に問題となり得るもの
公開アカウントの投稿を見た直接に処罰する規定はない
他人のID・パスワードを入力してログインした不正アクセス禁止法違反
端末のロックを解除して画面を見た不正アクセスには当たらないと考えられるが、民事上の責任は残り得る
別のアカウントを作って見たそれ自体では罪にならないが、その後の行動が評価される
無断でアプリを入れて取得していた不正指令電磁的記録供用罪、位置情報の無承諾取得等


分かれ目の二つめ 見た後に何をしたか

見ていたことが相手に伝わる形にした

 ここが、閲覧が規制の対象へと転じる典型的な場面です。ストーカー規制法二条一項二号は、その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くことを規制しています。

 この号には、一号のような場所の要件がありません。警察の解説では、行動や服装を電子メールや電話で告げること、「いつも見ている」と伝えること、帰宅した直後に連絡を入れることのほか、相手がよくアクセスする掲示板に同様の内容を書き込むことも例として挙げられています。直接送っていなくても、相手が知り得る状態に置けば足りるという点が重要です。

 SNSに置き換えると、投稿からわかった行き先や交友関係を本人に伝える、自分の投稿で相手にしかわからない形でほのめかす、といった行動が該当し得ることになります。閲覧が閲覧にとどまっている間と、それを相手に伝えた後とでは、法的な位置づけが変わります。

連絡を送った

 同条一項五号は、無言電話のほか、拒まれたにもかかわらず連続して電話をかけ、文書を送付し、電子メールの送信等をすることを規制しています。ここでいう電子メールの送信等には、SNSのメッセージ機能による送信や、相手のページへの書き込み、コメントが含まれます。

 この号では「拒まれたにもかかわらず」と「連続して」が要件になっています。もっとも、拒絶ははっきり言葉にされたものに限られず、態度から示された場合も含まれ得ますし、ブロックや着信拒否の設定をされていても、送信の履歴などから送ったことが認められる場合には該当し得ると解されています。

投稿から場所を割り出して向かった

 投稿の背景や時間帯から生活圏を推測し、実際にその場所へ行って待った、付近をうろついた、という段階に至れば、これは画面の中の話ではなくなります。一号の待ち伏せや見張り、うろつきに正面から当たり得る行為です。SNSの閲覧が、現実の接触の準備として位置づけられる点で、評価は大きく重くなります。

見た内容を外に出した

 閲覧して得た内容を第三者に流した場合は、内容に応じて別の罪が問題になります。社会的評価を下げる事実を不特定または多数が知り得る形で示せば名誉毀損罪(三年以下の拘禁刑または五十万円以下の罰金)が、私的な画像を公表すれば私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律が問題になり得ます。ストーカー規制法にも、名誉を害する事項を告げる行為(七号)、性的羞恥心を害する事項や画像に関する行為(八号)が置かれています。

ストーカー規制法が問題になるときの三つの条件

 これまで挙げた各号は、どのような場合でも適用されるわけではありません。同法の対象になるには、次の条件が前提になります。

  1. 特定の相手に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的があること。
  2. 相手が、その特定の者本人またはその家族等であること。
  3. これらの行為を同一の相手に対して繰り返したこと(この場合に「ストーカー行為」となります)。


 加えて、一号から四号まで、および五号のうち電子メールの送信等に係る部分については、身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限られます。「そんなつもりはなかった」という説明が通るかどうかは、行為の態様や回数、拒絶の有無といった外形的な事情から判断されるため、内心の説明だけで結論が決まるわけではありません。

警告・禁止命令と刑罰の関係

 ストーカー規制法には、刑罰とは別に、警察署長等による警告と、公安委員会による禁止命令等の仕組みが置かれています。いずれも、法三条に違反する行為があり、さらに反復するおそれが認められることが要件で、警告を経ていなければ禁止命令を出せない、という関係にはありません。令和七年十二月三十日からは、申出がなくても職権で警告ができる仕組みも設けられました。

 警告や禁止命令それ自体は刑罰ではなく、これを受けたことで前科がつくわけではありません。他方で、命令に違反した場合には罰則が用意されています。

行為法定刑
ストーカー行為をした(十八条)一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金
禁止命令等に違反してストーカー行為をした(十九条)二年以下の拘禁刑または二百万円以下の罰金
禁止命令等に違反した(二十条)六月以下の拘禁刑または五十万円以下の罰金


 行政上の措置と刑事手続は目的が異なるため、並行して進むことがあります。警告を受けたからといって捜査が行われないわけではありませんし、逆に警告を受けていないから捜査されない、ということでもありません。

数字から見えること

 警察庁が令和八年三月に公表した資料によると、令和七年のストーカー事案の相談等は二万二千八百八十一件で、相談者と相手方の関係では交際相手(元交際相手を含む)が八千九百十件と最も多く、全体の約三十九パーセントを占めています。

 もう一つ押さえておきたいのは、検挙の内訳です。ストーカー規制法違反での検挙が千五百四十六件であるのに対し、住居侵入や脅迫など刑法犯その他の特別法犯での検挙は二千百七十一件と、これを上回っています。「ストーカー規制法の要件には当たらないから問題にならない」とはいえない、ということを示す数字です。

心当たりがあるときに、先にしない方がよいこと

 不安を感じている段階で、かえって状況を悪くしやすい行動があります。

  • 閲覧履歴やメッセージを削除すること。証拠を消したと受け取られるおそれがあります。
  • 相手に直接、謝罪や事情説明の連絡を入れること。新たな連絡として数えられる可能性があります。
  • 別のアカウントを作り直して閲覧を続けること。拒絶を認識した後の行為として評価されます。
  • 共通の知人に、相手の様子を聞いて回ること。第三者を介した接触と見られることがあります。
  • 端末を初期化すること。後から説明する材料まで失うことになりかねません。


整理しておきたいこと

 弁護士に相談する場合も、警察から連絡を受けた場合も、事実関係を時系列で整理しておくと話が早く進みます。

  • 交際の期間と、別れた時期、その後の連絡の有無。
  • 閲覧していた方法(公開アカウントか、ログインしたか、端末を操作したか)。
  • 相手から拒絶の意思を示されたことがあるか、それはいつか。
  • 相手に連絡した回数と時期、その内容。
  • 警察から連絡があった場合は、その日時と、告げられた罪名や担当部署。


弁護士に相談する意味

 この種の事案では、「どこまでが閲覧で、どこからが接触なのか」の線引きが、本人の感覚と法的な評価とでずれていることが少なくありません。弁護士に相談することで、自分の行為がどの号の問題になり得るのか、逆にどの部分は評価の対象になりにくいのかを、条文に沿って整理することができます。

 また、本人が直接連絡を取ると新たな行為として数えられかねない場面でも、代理人を窓口にすれば、連絡の回数を増やさずに意向を伝えることができます。相手方が対応を望む場合には、示談や再発防止の取り決めを検討することもあります。当事務所では二十四時間体制で相談を受け付けており、初回の相談は無料です。

よくある質問

公開されているアカウントを毎日見ているだけでも罪になりますか

 公開された投稿を見る行為自体を直接処罰する規定はありません。ストーカー規制法の「見張り」にも住居等の付近という場所の要件があり、画面の閲覧はこれを満たさないと整理されるのが一般的です。ただし、見ていることが相手に伝わる形にした場合や、連絡を送った場合は別の評価になります。

ブロックされたので別のアカウントを作って見ていました。不正アクセスになりますか

 他人のIDやパスワードを入力したわけではないため、その行為だけを取り上げて不正アクセス行為に当たるとはいえません。もっとも、ブロックは明確な拒絶に当たりますので、その後にフォロー申請やメッセージを繰り返せば、拒絶を認識したうえでの行為として評価される可能性があります。

交際中に本人から教わったパスワードでログインしました。同意があったといえますか

 その当時に承諾があったとしても、現在も承諾があることにはなりません。関係が終わった後に使い続けていた場合、承諾があったという説明は通りにくいと考えられます。ログインの日時が記録として残っている点も踏まえて対応を検討する必要があります。

「いいね」や閲覧履歴が相手に見えただけでも、監視を告げたことになりますか

 一度きりであれば、直ちに監視していると思わせる事項を告げたと評価されるとは限りません。ただし、二号は「知り得る状態に置く」ことも含んでいますので、拒絶された後に繰り返し反応が残る、内容から監視をうかがわせる、といった事情が重なると、評価が変わる余地があります。個別の判断になるため、心当たりがあれば早めにご相談ください。

まとめ

  • 公開されている投稿を見る行為自体を直接処罰する規定はなく、ストーカー規制法の「見張り」にも場所の要件があります。
  • 問われるのは、見える状態を作るためにした行為で、他人のIDやパスワードを入力してのログインは不正アクセス禁止法の問題になります。
  • もう一つは見た後の行為で、監視をうかがわせる事項を告げること、拒絶後に連絡を続けること、実際に会いに行くことが規制の対象です。
  • ストーカー規制法には目的と対象、繰り返しという条件があり、当たらない場合でも別の罪で立件されることがあります。
  • 削除や直接連絡はかえって不利に働きやすいため、事実関係を整理したうえで、早い段階で相談することをおすすめします。


元交際相手のSNSをめぐるご不安がある方へ

 「自分のしていたことが罪になるのか」という不安は、一人で抱えていても輪郭がはっきりしません。実際には、閲覧にとどまるのか、手段や反応の面で線を越えているのかによって、取るべき対応はまったく異なります。警察から連絡が来る前の段階であっても、整理しておくことで選べる方法は広がります。気になることがある場合は、早めにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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