情状証人の陳述書はどう作るのか|文例と想定質問

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

家族や勤務先の方が情状証人を引き受けると、弁護人から「陳述書を書いてください」と頼まれることがあります。決まった書式があるわけではないため、何をどこまで書けばよいのか迷う方は少なくありません。

 陳述書は、法廷で読み上げるための原稿ではありません。刑事事件では、書面がそのまま証拠になるとは限らず、どの場面に出すかによって扱われ方が変わります。そして、書いた内容は、法廷での質問が始まる出発点になります。

 この記事では、情状証人の陳述書がどのように扱われる書面なのかを手続の面から整理したうえで、記載の柱、文例、書いた内容から出てくる想定質問までを順に説明します。

この記事で扱うこと、扱わないこと

 この記事は、情状証人を引き受けることになった方が、陳述書をどう作るかという場面に絞って説明します。扱う範囲は次のとおりです。

  • 情状証人が書く陳述書の位置づけと、身元引受書や上申書との違い。
  • 提出する場面によって書面の扱われ方が変わる理由。
  • 陳述書に書く内容の柱と、形を写して使える文例。
  • 書いた内容から出てくる想定質問と、答え方の整理。


 一方で、証人尋問の順序や尋ねられる範囲、宣誓と偽証罪といった法廷での手続そのものは、別の記事で扱っています。以下は一般的な説明であり、実際の扱いは事件の内容や裁判所によって異なります。

情状証人の陳述書とはどのような書面か

 陳述書は、書いた人が自分の知っていることや考えていることを、自分の名前で書面にしたものです。刑事事件では、被告人本人のほか、家族、勤務先の関係者、被害者、目撃者など、立場を問わず用いられます。

 このうち情状証人の陳述書は、法廷で証言する予定の人が、証言することになる事柄をあらかじめ書面にしたものを指します。

名義は書いた人自身になる

 陳述書は、弁護人が代わりに意見を述べる書面ではありません。書いた人が自分の見聞きしたことを述べる書面ですから、名義も署名もその人のものになります。文章の組み立てについて弁護人が助言することはありますが、書ける内容は、その人が実際に知っていることに限られます。

「上申書」と呼ばれることもある

 実務では、同じ内容の書面が陳述書と呼ばれることもあれば、上申書と呼ばれることもあります。名称の使い分けに定まった決まりはありません。区別の手がかりになるのは呼び名ではなく、誰の名義で書くのか、どの場面に出すのか、法廷での証言と重なるのかという三つの点です。書面ごとの役割を整理すると、次のようになります。

書面の呼び名名義中心になる内容
陳述書書いた人自身自分が見聞きしてきた事実と、そこから考えていること
身元引受書引き受ける人これから監督としてすることの約束
上申書家族や勤務先など事情の説明と、処分についての意向
反省文・謝罪文本人事件の受け止めと、被害者に対する謝罪


 呼び名が違っても、読み手が知りたいことは変わりません。誰が、どこまでを直接知っていて、これから何ができるのか、という点です。

書面の扱われ方は提出する場面で変わる

 同じ陳述書でも、身柄についての判断を求める場面と、公判で量刑の資料にする場面とでは、扱われ方が異なります。ここを取り違えると、書いたのに使われないまま終わる、ということが起こり得ます。

身柄についての判断を求める場面

 勾留の判断に対する不服の申立てや、起訴後の保釈の請求では、裁判官や裁判所は提出された書面を読んで判断します。この場面では、法廷で証拠として取り調べるための要件は問題になりません。ご家族が書いた陳述書が、そのまま判断の材料として届く場面だといえます。

 なお、起訴前の段階に保釈という手続はありません(刑事訴訟法207条1項ただし書)。身柄についての書面が生きるのは、勾留の判断とその不服申立て、そして起訴後の保釈の場面です。

公判で量刑の資料にする場面

 公判は、証拠を取り調べる手続です。刑事訴訟法320条1項は、公判期日の供述に代えて書面を証拠とすることを、原則として認めていません。人の話は、法廷で直接尋ねられる形で確かめるのが原則だからです。

 その例外のひとつが、同法326条1項の同意です。検察官と被告人側の双方が証拠とすることに同意し、裁判所が相当と認めたときに、書面は証拠になります。弁護側が請求する情状関係の書面も、検察官が同意しなければ、そのままでは証拠にならないという点は、見落とされがちです。

 書面についての例外を定めた同法321条1項3号は、供述した人が死亡や所在不明などで法廷で供述できないこと、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないこと、特に信用すべき情況の下で作成されたことを、いずれも求めています。情状として述べる生活状況や監督の話は、犯罪事実の存否そのものに関わる事柄ではありませんので、この条文によって証拠になる場面は限られます。実際には、相手方の同意が入り口になると考えておくとよいでしょう。場面ごとの違いをまとめると、次のとおりです。

場面出す先書面の扱われ方
勾留の判断への不服申立て・保釈の請求裁判官・裁判所証拠として取り調べる手続を経ずに、判断の資料として読まれる
起訴前に処分を検討してもらう段階検察官法律上の手続として定められたものではなく、実務上の運用として受け取られる
公判で量刑の資料にする場合裁判所証拠調べの請求をしたうえで、相手方の同意を経て証拠になる


情状の証明について言われていること

 量刑の基礎になる事実のうち、犯行の動機や態様など犯罪事実そのものに関わる部分については、証拠能力のある証拠によって、法律の定める手続で調べる必要があるとされています。これに対して、生活の状況や周囲の監督といった、犯罪事実とは離れた事情については、そこまで厳格な手続を要しないという理解が一般的です。

 もっとも、実務では、こうした情状に関する書面も証拠調べの請求と意見の聴取という手続にのせて扱われることが多く、ご家族の側から見れば、同意が得られる形で出すという準備は変わりません。

陳述書を出せば法廷に立たなくてよいわけではない

 証人尋問が予定されている場合、陳述書はその代わりになる書面ではありません。むしろ、尋問を組み立てるための土台として使われます。

尋問事項書とは別の書面

 証人尋問を請求するときには、証人の氏名や住居を記載した書面を差し出します(刑事訴訟規則188条の2第1項)。尋問事項を記載した書面については、訴訟関係人が交互に尋ねていく通常の形の場合には差し出さないものとされています(同規則106条1項ただし書)。陳述書は、裁判所に対して質問の内容をあらかじめ示すための書面ではない、ということです。

打ち合わせの土台になる

 証人尋問を請求した弁護人は、証人その他の関係者に事実を確かめるなどの方法によって、適切な尋問ができるように準備しなければならないとされています(同規則191条の3)。陳述書は、この準備の中で作られることが多い書面です。書き出してみて初めて、日付があいまいだった、実際にしてきたことが伝わる形になっていなかった、といった点が見えてきます。

書いた文章の暗記は働きにくい

 主尋問では、答えを含んだ聞き方が原則として禁じられています(同規則199条の3第3項)。「はい」「いいえ」で終わる質問が並ぶわけではありませんので、陳述書の文章をそのまま覚えても、その場の答えにはなりません。覚えておくのは文章ではなく、日付と事実の順番だと考えるほうが実際的です。

陳述書に書く内容の柱

 書く順序に決まりはありませんが、次の5つの柱で組み立てると、読み手が知りたい順に並びます。

  1. 本人との関係と、これまでの生活の実際。
  2. 今回の件をいつ、どのように知ったか。
  3. その後、自分が実際にしてきたこと。
  4. これからの生活がどのような形になるか。
  5. 自分の立場でできる関わり方。


 このうち3つ目と4つ目が中心になります。気持ちを述べる部分は最後に短く置けば足り、分量の大半は、日付のついた事実に使うのが読みやすい形です。「支えていきます」という一文よりも、いつから何を続けているかを書いたほうが、読み手には伝わります。

陳述書の文例

 配偶者が書く場合を例にすると、次のような形になります。○の部分は、それぞれの事情に置き換えてください。

陳述書

2026年○月○日

東京地方裁判所刑事第○部 御中

住所 東京都○○区○○一丁目2番3号
氏名 ○○ ○○  印
被告人との関係 配偶者

第1 私と被告人の関係

 私は、被告人○○の配偶者です。○年○月に婚姻し、現在まで同じ住居で生活してきました。私は○○の仕事をしており、平日は○時ごろに帰宅します。同居しているのは、私と被告人のほか、子ども1人です。

第2 今回の件を知ったときのこと

 私が今回の件を知ったのは、○年○月○日に警察署から連絡を受けたときです。それまで、私はこのようなことがあったことに気づいていませんでした。連絡を受けた日の夜、被告人と面会し、本人の口から事情を聞きました。

第3 その後にしてきたこと

 その後、私は被告人と、何が今回のことにつながったのかを繰り返し話し合ってきました。○年○月からは、給与の管理を私が行い、支出を毎月確認しています。また、○年○月○日から、被告人は○○に通っており、私も○回、同行しました。

第4 これからの生活について

 被告人が戻った場合、これまでと同じ住居で、私と子どもとの3人で生活します。勤務先については、○○の仕事を続けられる見込みだと聞いています。生活費の管理は引き続き私が行い、帰宅の時間についても毎日確認します。○○への通院は、今後も私が同行して続けるつもりです。

第5 裁判所に申し上げたいこと

 被告人がしたことについて、私は軽く考えてはおりません。同時に、同じことを繰り返さないよう、私にできる範囲で関わり続けたいと考えております。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。

以上

勤務先の方が書く場合に差し替える部分

 勤務先の上司や経営者が書く場合は、ご家族とは知っている範囲が異なります。次の点を入れ替えると、読み手が確かめたい事柄に届きます。

  • 関係の欄は、勤務先の名称と役職、本人の職種と勤続期間に置き換える。
  • 生活の様子ではなく、勤務の状況や職場での様子を書く。
  • 今回の件を知った経緯として、本人からの申告か、他からの連絡かを明らかにする。
  • 雇用を続けるかどうかについて、現時点で社内でどこまで決まっているかを書く。
  • 職場での関わり方として、勤務時間や担当業務をどう扱うかを書く。


 雇用の継続について社内の手続が済んでいない段階であれば、決まっていないことは決まっていないと書くほうが、後の質問に耐えます。

書いた内容から出てくる想定質問

 法廷での質問は、陳述書に書かれた事柄から組み立てられます。つまり、書いたことは聞かれると考えて差し支えありません。逆にいえば、想定質問は、自分の書いた文章から先に読み取ることができます。

陳述書に書いた事柄確かめられること食い違いが出やすいところ
本人との関係と同居の状況いつから、どのような生活を一緒にしてきたか離れて暮らしていた期間や、会う頻度の実際
今回の件を知った時期と経緯どこまでの事情を、いつ本人から聞いたか本人から聞いていなかった事実が出てきたときの受け止め
その後にしてきたこといつから、何を、どのくらいの間隔で続けているか始めた時期が今回の件の後になっている理由
これからの生活の形住む場所、仕事、生活費の管理をどうするか以前と何が変わるのか
自分にできる関わり方日々の関わりの中で何を確かめるか同じことが起きたときにどうするか


答えにくい質問が来たとき

 聞いていなかった事実を示されて答えに詰まる場面は、珍しくありません。知らなかったことは知らなかったと述べ、そのうえで、これから確かめる方法を続けて述べる形が、事実にも即しています。無理に取り繕った答えは、その後の質問で行き詰まりやすくなります。

先に書いておくという考え方

 不利にみえる事情でも、伏せたまま法廷に出るより、陳述書の段階で自分の言葉にしておくほうが、落ち着いて説明できます。あらかじめ弁護人に伝えておけば、主尋問の中で先に触れる組み立てにすることもできます。

書き方で迷いやすいところ

 体裁について、ご相談の多い点をまとめます。

分量と体裁

 枚数の決まりはありません。読み手は多くの事件を扱っていますので、A4で1枚から2枚程度に収め、見出しを付けて区切ると読みやすくなります。手書きとパソコンのどちらでも構いませんが、日付、住所、氏名、本人との関係は、冒頭で分かる形にしておきます。

署名と押印

 署名は、名義人本人が自分で行います。ご家族が代わりに書いてしまうと、書いた人が誰なのかがあいまいになります。押印は認印で構いません。

提出の時期

 身柄についての判断を求める場面では、判断がされる前に届いていることに意味があります。公判で使う場合は、証拠調べの請求が第1回の公判期日より前にはできないものとされている点にも注意が要ります(刑事訴訟規則188条)。ご家族が裁判所へ直接送っても、そのまま量刑の資料として扱われるとは限りませんので、弁護人に渡す形をとるほうが行き違いを避けられます。

書かないほうがよいこと

 次のような書き方は、後の質問で説明が続かなくなりやすい部分です。

  1. 罪になるかどうかといった、法律上の評価に踏み込む記載。
  2. 被害を受けた方の側にも事情があった、という趣旨の記載。
  3. 自分が見ていない出来事を、見てきたかのように書くこと。
  4. 人から聞いた話を、自分が確かめた事実として書くこと。
  5. 「二度と起こさせません」といった、言い切りの形の約束。
  6. 判決の内容について、具体的な処分を求める書き方。


 言い切りの形は、書いた時点では気持ちが伝わるように見えても、法廷で「どうやって」と尋ねられたときに答えが続きません。できることの範囲で書いておくほうが、結果として説明が通ります。

よくある質問


陳述書を出せば、法廷に行かなくてもよいのですか

 証人尋問が予定されている場合、陳述書はその代わりにはなりません。病気や遠方などの事情で出頭が難しいときに書面で伝える方法を検討することはありますが、その場合も、書面がそのまま証拠になるかどうかは相手方の意見によります。まずは弁護人に事情を伝えてください。

文章が苦手でも構いませんか

 うまい文章である必要はありません。一文を短く区切り、いつ、何があったのかを順番に並べるだけで、書面としての役割は果たします。読みにくさは、弁護人と一緒に整えることができます。

複数の人が書いても構いませんか

 人数の決まりはありません。ただし、同じ内容の書面が並ぶよりも、家族と勤務先というように、知っている範囲が違う人が書いたほうが、伝わる事柄は増えます。誰に書いてもらうかは、弁護人と相談して決める場面です。

まとめ


  • 情状証人の陳述書は、法廷で証言する予定の人が、証言する事柄をあらかじめ書面にしたものである。
  • 名義と署名は、書いた人自身のものになる。
  • 同じ内容の書面が上申書と呼ばれることもあり、名称に定まった決まりはない。
  • 身柄についての判断を求める場面では、書面がそのまま判断の資料として読まれる。
  • 公判で量刑の資料にするには、証拠調べの請求と、相手方の同意という手続を経ることになる。
  • 陳述書を出しても証人尋問の代わりにはならず、尋問を組み立てるための土台として使われる。
  • 分量の大半は、日付のついた事実に使うと読みやすい。
  • 書いたことは法廷で尋ねられるため、想定質問は自分の書いた文章から読み取れる。


情状証人を引き受けた方へ

 陳述書は、書式や言い回しの巧拙で決まる書面ではありません。いつ、何を、どこまで知っているのか。これから、自分の立場で何ができるのか。その2つが具体的に書かれていれば、書面としての役割は果たします。

 もっとも、どの場面に出すのか、誰の名義で書くのか、いつまでに用意するのかという判断は、事件の進み方によって変わります。書き始めてから方向を変えると、書き直しの負担も大きくなります。

 当事務所は刑事事件に注力しており、初回のご相談は無料でお受けしています。ご本人だけでなく、ご家族や勤務先の方からのご相談もお受けしていますので、陳述書を書き始める前の段階で、まずはご事情をお聞かせください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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