【解決事例】業務上横領の疑いをかけられ高額請求を受けた|弁護士の介入により800万円超の損害主張に対し150万円での示談・大幅減額を実現した事例
ご家族が勾留されたと聞いても、なぜ身体の拘束が続くのかは、外からは分かりにくいものです。勾留状には理由が書かれていますが、そこに並ぶのは短い文言だけで、なぜこの人にそれが当てはまるのかまでは読み取れません。そうしたときに、勾留の理由を公開の法廷で告げてもらう手続が用意されています。勾留理由開示請求です。
もっとも、この手続を使えば身柄が解放される、というものではありません。名前から受ける印象と、実際にできることの範囲には距離があります。この記事では、勾留理由開示請求がどのような制度で、どこまでのことができ、どこから先はできないのかを整理します。
勾留理由開示請求とはどのような手続か
勾留理由開示請求は、勾留されている理由を公開の法廷で明らかにするよう裁判所に求める手続です。憲法34条後段は、正当な理由がなければ拘禁されないこと、そして要求があれば、その理由は本人とその弁護人が出席する公開の法廷で示されなければならないことを定めています。これを受けて、刑事訴訟法82条以下に具体的な手続が置かれています。
条文は起訴された後の被告人を想定した書き方になっていますが、刑事訴訟法207条1項によって起訴前の被疑者にも準用されます。実際には、捜査段階で使われることのほうが多い手続です。
請求できる人
請求できるのは、勾留されている本人のほか、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹、その他の利害関係人です(法82条1項・2項)。家族が自分の名前で請求することもできます。
請求できる期間
勾留による拘束が続いている間であれば、いつでも請求できます。ただし、保釈、勾留の執行停止、勾留の取消しがあったとき、または勾留状の効力が消滅したときは、請求は効力を失います(法82条3項)。接見等禁止が付いている場合でも、請求そのものは妨げられません。
開示の期日は公開の法廷で開かれる
勾留の理由の開示は、公開の法廷で行われます(法83条1項)。法廷には裁判官と裁判所書記官が列席し(同条2項)、原則として本人と弁護人が出頭しなければ開廷できません(同条3項)。合議体で審理される事件では、その構成員に開示をさせることもできます(法85条)。
公開の法廷ですから、家族や知人は傍聴席から手続を見ることができます。起訴前の段階で、勾留されている本人の姿を家族が見られる場面は、この手続のほかにほとんどありません。
期日は、請求があった日との間に5日以上を置くことができないとされています(刑事訴訟規則84条)。やむを得ない事情がある場合の例外はありますが、原則として請求から数日のうちに開かれます。休日には期日が入らないため、日程は思ったより窮屈になることがあります。
当日はどのように進むのか
開示の期日は、おおむね次のような順序で進みます。
| 場面 | 行われること |
|---|---|
| 人定質問 | 裁判官が本人の氏名などを確認します |
| 理由の告知 | 裁判長が勾留の理由を告げます(法84条1項) |
| 求釈明 | 弁護人が、告げられた理由の内容について説明を求めます |
| 意見陳述 | 本人・弁護人・検察官・請求者が意見を述べます(法84条2項) |
| 調書の作成 | 当日のやり取りが公判調書に記載されます |
意見陳述の時間は、1人あたり10分以内とされています(刑事訴訟規則85条の3第1項)。求釈明については、時間を定めた規定はありません。また、同一の勾留について複数の請求があった場合、開示は最初の請求について行われ、その他の請求は開示が終わった後に却下されます(法86条)。家族が意見を述べたい場合は、誰が請求者になるのかを先に決めておく必要があります。
告げられる「理由」とは何を指すのか
ここでいう勾留の理由とは、刑事訴訟法60条1項が定める要件のことです。罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることを前提に、定まった住居がないこと、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること、逃亡し、または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があることのいずれかに当たることが求められます。
この理由は、勾留状にも記載されています(刑事訴訟規則70条)。そのため、開示の期日で告げられる内容が、勾留状に書かれていることと大きく変わらないという指摘は以前からあります。実務では、記録によれば罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある、といった形の説明にとどまることが少なくありません。
一方で、どの点について説明を求めるのかをあらかじめ具体的に示しておけば、それに応じた説明が得られることもあります。何を聞くのかを準備しないまま期日を迎えると、一般的な説明を聞いて終わりやすいという意味でもあります。
この手続でできないこと
制度の趣旨については、勾留の理由を公開することに意味があるとする理解と、不当な勾留からの救済を目的とするという理解があり、裁判実務は前者に近い運用をしているといわれます。使う前に押さえておきたい限界は、次の点です。
- 開示それ自体に、勾留を解く効力はありません。身柄の解放を求めるには、別に不服申立てや勾留の取消しの請求を行うことになります。
- 罪を犯していないという主張の当否を判断してもらう場ではありません。告げられるのは、勾留の要件に当たると判断した理由です。
- 同一の勾留について、開示は一度だけです(法86条)。勾留が延長された後に、改めて請求することはできません。
- 求釈明への回答を裁判官に義務づける規定はありません。捜査の状況を理由に、具体的な回答が得られないこともあります。
- 請求から期日まで数日かかります。その間も勾留の期間は進みますので、他の手続との順序を考える必要があります。
それでも使う意味はどこにあるのか
実際に意味があるのは、告げられる理由の中身そのものよりも、公開の法廷が開かれることに伴う効果のほうです。
本人の言葉が調書として残る
期日でのやり取りは、公判調書に記載されます。裁判所の面前で作られる記録ですから、弁護人が作成して提出する書面とは性質が異なります。取調べがどのように行われているか、事実関係について本人がどう説明しているかを、この時点で記録に残しておくことができます。取調べがほとんど行われていない状況であれば、その点を述べておくことが、後に勾留の延長を争う際の材料にもなります。
接見等禁止が付いていても家族が姿を見られる
接見等禁止が付くと、弁護人以外は面会できません。開示の期日は公開されるため、家族は傍聴席から本人の様子を確認できます。会話はできませんが、体調や表情を確かめられること自体に意味がある場面はあります。家族が請求者になっていれば、傍聴席ではなく法廷で意見を述べることもできます。
その日は取調べが行われにくい
期日の当日、本人は裁判所へ移されます。その分、取調べに充てられる時間は減ります。取調べの負担が重い時期にあえて期日を入れるという使い方も、実務では検討されます。
次の手続の材料になる
求釈明のやり取りから、裁判所がどの点を懸念しているのかが読み取れることがあります。懸念されている点が分かれば、不服申立てや勾留の取消しの請求で何を示せばよいのかを絞り込めます。開示は身柄の解放そのものの手続ではありませんが、解放を求める手続の準備には結び付きます。
請求の前に決めておきたいこと
請求書には、対象となる勾留について理由の開示を求める旨を記載すれば足ります。ただ、それだけでは抽象的な説明で終わりやすいため、実務では次のような準備を併せて行います。
- どの点について説明を求めるのかを整理した求釈明書を、請求書と一緒に提出します。
- 本人が何をどこまで述べるのかを、期日の前に打ち合わせておきます。
- 家族が意見を述べる場合は、誰が請求者になるのかを決めておきます。
- 期日の日程と、勾留の満期や他の手続の予定との関係を確認しておきます。
使わないという判断もある
公開の法廷である以上、被疑事実の内容が法廷で読み上げられ、傍聴した人に伝わります。事件を周囲に知られたくない事情が強い場合、この点は負担になります。また、本人の陳述は記録として残りますから、内容によっては後の手続で不利に働くこともあります。実際、請求しないという判断をする弁護人も少なくありません。
| 検討しやすい場面 | 慎重に考えたい場面 |
|---|---|
| 勾留の理由に納得がいかず、争点を絞り込みたいとき | 事件の内容を周囲に知られたくない事情が強いとき |
| 接見等禁止が続き、家族が本人の様子を確認できないとき | 本人の説明が固まっておらず、陳述の内容を決めきれないとき |
| 取調べの状況を記録として残しておきたいとき | 勾留の満期が近く、他の手続を先に進めたほうがよいとき |
どちらに傾くかは事件ごとに異なります。何のために使うのかをはっきりさせたうえで、弁護人と相談して判断することになります。
起訴された後に請求する場合
起訴された後は、被告人としての請求になります。この場合は事件を担当する裁判所が手続を扱い、公判期日に開示が行われる場合についての定めも置かれています(刑事訴訟規則83条)。
捜査段階との違いは、証拠の開示が進むにつれて、何を説明してほしいのかを具体的に組み立てやすくなる点です。もっとも、起訴後は保釈の請求という別の道があり、そちらを先に進めたほうがよい場面もあります。開示は一度しか使えませんので、保釈の見通しと合わせて時期を考えることになります。
家族ができること
家族は、自分の名前で開示を請求することができます。請求者になれば、法廷で意見を述べる機会があります。帰る場所があること、監督できる家族がいること、就労や通学の予定など、拘束が続くことで失われるものを、日付や具体的な事情とともに伝えることができます。
期日の日程は請求の後に裁判所と調整されますので、弁護人を通じて確認すると把握しやすくなります。傍聴の際に本人と会話をすることはできませんが、その場にいること自体が本人にとって支えになることもあります。
まとめ
- 勾留理由開示請求は、勾留の理由を公開の法廷で告げてもらう手続で、憲法34条後段と刑事訴訟法82条以下に根拠があります。
- 請求できるのは本人と弁護人のほか、配偶者や直系の親族、兄弟姉妹などで、家族が請求者になることもできます。
- 期日は請求があった日との間に5日以上を置かずに開かれ、意見陳述は1人10分以内とされています。
- 開示それ自体に勾留を解く効力はなく、同一の勾留について一度しか使えません。
- 公判調書が残ること、接見等禁止の下でも家族が姿を見られること、次の手続の材料が得られることに、実際上の意味があります。
- 公開の法廷で行われる以上、事件が周囲に伝わる負担もあるため、目的を定めてから判断することになります。
当事務所では、刑事事件のご相談を24時間受け付けており、初回のご相談は無料です。ご家族が逮捕・勾留された場合の接見も、状況により即日で対応できることがあります。身体の拘束が続いている段階では、どの手続をどの順序で使うかによって見通しが変わりますので、早い段階でご相談ください。


