未成年を連れ回した|未成年者略取誘拐と「同意があった」主張
保釈が認められても、保釈保証金を納めなければ釈放されません。手元に現金がないという事情だけで身柄の拘束が続くことを避けるため、保釈保証金の立替や保釈保証書の発行を行っている団体があります。
ただ、「保釈保証協会」という言葉でまとめて語られている支援には、性格の違うものがいくつか含まれています。何をどの順番で動かすのかが分からないまま保釈許可決定の日を迎えると、かえって手続が滞ることもあります。ここでは、保釈保証書の発行事業を中心に、制度の位置づけと実際の進め方を整理します。
「保釈保証協会」と呼ばれているもの
保釈保証協会という名称の団体が一つあるわけではありません。保釈保証金の準備を支える仕組みとして知られているのは、一般社団法人日本保釈支援協会と、全国弁護士協同組合連合会(全弁協)の二つです。
そして、支え方も一つではありません。大きく分けると、現金そのものを立て替える方法と、現金を納める代わりに保証書を差し出す方法があります。日本保釈支援協会は両方を扱い、全弁協は保証書の発行を行っています。
立替と保証書は仕組みが違う
立替は、団体が現金を用意し、担当弁護人を通じて裁判所に納付する方法です。裁判所には現金が納まりますので、判決の後に還付された保釈保証金を団体に返すところまでが一連の流れになります。
保証書は、現金の代わりに、万一のときは保証した金額を支払うという書面を裁判所に差し出す方法です。現金が動きませんので、還付という手続も生じません。
| 項目 | 立替 | 保証書 |
|---|---|---|
| 裁判所に納まるもの | 現金 | 保証書 |
| 手元から出ていくお金 | 手数料 | 保証料 |
| 事件が終わったとき | 還付金を団体に返す | 保証書が団体に返る |
保証書が保釈保証金の代わりになる根拠
刑事訴訟法94条1項は、保釈を許す決定は保証金の納付があった後でなければ執行することができないと定めています。もっとも、同条3項は、有価証券または裁判所の適当と認める被告人以外の者が差し出した保証書をもって保証金に代えることを許すことができると定めており、これが保釈保証書の根拠です。
条文の言葉づかいのとおり、保証書を使えるかどうかを決めるのは裁判所です。団体が保証を引き受けたというだけで、現金の納付が当然に不要になるわけではありません。
三つの判断は別々に行われる
ここは混同しやすいところです。保釈保証書を使おうとする場面では、次の三つがそれぞれ別に判断されます。
- 保釈そのものを許すかどうか(裁判所の判断)
- 保証書をもって保証金に代えることを許すかどうか(裁判所の判断)
- 保証を引き受けるかどうか(団体の審査)
このうち一つが通っても、残りが通らなければ釈放には至りません。逆に言えば、三つを同時に進めておくことが、保釈保証書を使うときの実質的な使い方になります。
二つの団体は何が違うのか
日本保釈支援協会
被告人の関係者が申込人となる仕組みで、被告人本人は申込人になれません。保釈保証金の立替と、保証書の発行の両方を扱っています。
立替は限度額が500万円、期間は2か月とされ、立替金額に応じた手数料のほかに事務手数料がかかります。保証書の発行は限度額が300万円で、保証料は保証書による納付が認められた金額の1.5%とされています。覚醒剤取締法違反の事件では、保証書で使える金額が保釈許可決定に示された金額の9割までとされ、残りは立替か自己資金で用意することになります。ほかの保証団体との併用は認められていません。
全国弁護士協同組合連合会(全弁協)
2013年に始まった事業で、担当弁護人が所属する単位弁護士協同組合を通じて申し込む形をとります。申込みの主体が弁護人になるという点が、日本保釈支援協会との大きな違いです。
保証料は、薬物以外の一般事案で保釈保証金額の2%、薬物事案で3%とされています。自己負担金は、2021年5月1日の申込受付分から一般事案では不要となり、薬物事案では保釈保証金額の20%を預ける取扱いです。預けた自己負担金は、事件が終わって保証書が返還された後に戻ります。なお、薬物事案については、保証書の発行額の上限が一般事案より低く設定されています。
保証書の発行は与信にあたるため、保証委託者となる方の資力審査があります。審査の基準そのものは公表されていませんが、保釈保証金が没取されたときに支払えるだけの収入や資産があるかという観点から、収入額、勤続年数、負債の有無、住居費といった事情を見て個別に判断されると説明されています。第一審と上訴審では審査の考え方が異なるため、第一審で通った案件が上訴審でも同じように扱われるとは限りません。
| 項目 | 日本保釈支援協会 | 全弁協 |
|---|---|---|
| 申込みの主体 | 被告人の関係者 | 担当弁護人(単位協同組合を通じて) |
| 扱っている支援 | 立替と保証書 | 保証書 |
| 保証書の限度額 | 300万円 | 300万円(薬物事案は200万円) |
| 保証料 | 1.5% | 一般事案2%、薬物事案3% |
| 自己負担金 | 定めなし | 一般事案なし、薬物事案20% |
| 薬物事件の扱い | 覚醒剤取締法違反は9割まで | 保証料と自己負担金が別建て |
金額や料率は見直されることがあります。実際に利用する時点の条件は、各団体の案内と担当弁護人に確認してください。
申込みから釈放までの流れ
保証書を使う場合は、おおむね次のように進みます。
- 担当弁護人と、保証書を使うのか立替を使うのかを決める。
- 団体に事前の申込みをして、審査を受ける。
- 裁判所に保釈を請求し、あわせて保証書による代納の許可を求める。
- 保釈許可決定と代納の許可が出たら、保証委託の契約を結び、保証料などを払い込む。
- 保証書が発行され、担当弁護人が裁判所に提出する。
- 釈放される。
- 判決の後に保証書が団体に返され、自己負担金を預けていた場合は返還を受ける。
立替を使う場合は、四番目以降が、団体から担当弁護人の口座に立替金が振り込まれ、弁護人がそれを裁判所に納付する、という形に変わります。判決の後は、還付された保釈保証金を弁護人から団体に返して契約が終わります。
順番待ちではなく、並行して進める
この流れで見落とされやすいのは、団体の審査にも保証書の発行にも日数がかかるという点です。保釈許可決定が出てから申込みを始めると、書類のやり取りに要する分だけ釈放が後ろにずれます。
申込み自体は、保釈許可決定を待たずに行えます。起訴の前後を問わず受け付けている団体もあります。保釈請求の準備と並行して事前の申込みと審査を済ませておけば、許可が出た日に契約と払込みへ進むことができます。
もっとも、団体の審査に通ったことと、裁判所が保釈を認めることは別の話です。先に申し込んだからといって保釈の判断が有利になるわけではありません。あくまで、認められたときに滞りなく動けるようにしておくための準備だと考えてください。
全額を保証書でまかなえるとは限らない
裁判所が保証書による代納を認める場合でも、保釈保証金の全額について認めるとは限りません。一部については現金で納めるよう求められることもあります。
どの範囲まで保証書で認められるかは、事件の内容や、逃走や罪証隠滅のおそれの程度、保証を委託する方と被告人との関係などを踏まえて判断されます。全弁協は、これまでに発行した保証書のうち、現金の納付を併せずに保釈が許可されたものが半数を超えているとする集計を公表していますが、追加の納付を求められる例がないわけではありません。
そのため、保証書で足りない部分をどう埋めるかを、あらかじめ考えておくことになります。手元の資金で補う、立替を併用する、親族などに納めてもらう(刑事訴訟法94条2項は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができると定めています)といった方法があります。ただし、団体によってはほかの保証団体との併用を認めていませんので、組み合わせ方は担当弁護人を通じて確認しておくと行き違いが起きにくくなります。
戻るお金と戻らないお金を分けて考える
保釈保証金そのものは、条件を守って裁判に出頭していれば、判決の内容にかかわらず還付されます。一方で、保証料や立替手数料、事務手数料は、支援を受けるための費用ですので、事件が終わっても戻りません。
これに対し、全弁協の自己負担金のように、いったん預けておいて後で返るものもあります。名前が似ていても性格が違いますので、最初に整理しておくと、後で説明が食い違うことを防げます。
立替には期間の定めがある
立替を使う場合は、あらかじめ期間が決まっている点にも注意が必要です。判決までの見通しがその期間を超えそうなときは、その先の扱いがどうなるかを申込みの前に確認しておくことになります。起訴されてから第一回の公判期日までに一定の期間があり、そこから判決に至るまでの日数も事件によって幅がありますので、期間の見積もりは担当弁護人と共有しておくとよいでしょう。
保釈が取り消された場合に残るもの
保証書も立替も、負担そのものが消える仕組みではありません。保釈が取り消されて保釈保証金が没取されたときは、保証書であれば団体が裁判所に支払い、その分を保証を委託した方が負担することになります。立替であれば、申込人が立替金に相当する額を団体に賠償することになります。
現金を用意しなくても保釈の手続を進められるという点に意味がある制度であって、万一のときの責任まで引き受けてもらえるわけではありません。裁判所が定めた条件を守り、期日に出頭することが、この仕組みを使ううえでの土台になります。
申込みの前に整えておくこと
- 申込人になる方を決める。被告人本人は申込人になれません。
- 本人確認書類と印鑑を用意する。スタンプ式の印は使えないとされています。
- 資力の審査に備えて、収入や資産が分かる資料の所在を確かめておく。
- 平日の日中に連絡がつく体制をつくっておく。
- 保釈許可決定が出た日に払込みができるよう、資金の置き場所を決めておく。
申込書に記入漏れがあると、団体への取次ぎに時間がかかります。書類は担当弁護人と一緒に確認しておくと、やり取りの往復が少なくて済みます。
どちらの仕組みも弁護人との連携が前提になる
保証書は担当弁護人が裁判所に提出しますし、立替金も担当弁護人の口座を経由します。全弁協の事業は、申込みそのものが弁護人を通じて行われます。ご家族だけで完結する手続ではありません。
弁護人が国選か私選かによって利用できないということはありませんが、書類のやり取りや裁判所との折衝が続きますので、連絡の取りやすさは実際の進み方に影響します。連絡が取りづらいと感じている場合や、まだ弁護人が決まっていない場合は、その点も含めて相談しておくとよいでしょう。
まとめ
- 「保釈保証協会」と呼ばれる支援には、日本保釈支援協会と全国弁護士協同組合連合会(全弁協)の二つがあります。
- 支え方には、現金を立て替える方法と、現金の代わりに保証書を差し出す方法があります。
- 保証書をもって保釈保証金に代えられるかどうかを決めるのは裁判所です(刑事訴訟法94条3項)。
- 保釈を認めるかどうか、保証書での代納を認めるかどうか、団体が保証を引き受けるかどうかは、それぞれ別に判断されます。
- 審査や発行に日数がかかるため、保釈請求の準備と並行して申し込んでおくことになります。
- 保釈保証金の全額が保証書で認められるとは限らず、一部の現金納付を求められることもあります。
- 保証料や手数料は戻らず、保釈が取り消されて没取された場合には負担が残ります。
保釈保証金の準備でお困りの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、池袋と新橋に事務所を構え、刑事事件のご相談を承っています。保釈の請求と並行して、保釈保証金をどのように用意するかを一緒に組み立てていくことができます。
ご家族が起訴され、示された保釈保証金の額を聞いて途方に暮れている、という段階でも、選べる方法が残っていることがあります。ご本人やご家族だけで抱え込まず、早い段階でご相談ください。


