保釈が却下された後にできること|再請求のタイミング

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

保釈を請求したのに、却下する決定が出た。ご本人にとってもご家族にとっても、いつまで拘束が続くのか見通しが立たなくなる場面です。ただ、却下の決定は、その時点で裁判所の手元にある材料と、そのときの手続の段階を前提にした判断です。判決の日まで拘束が続くことが決まった、という意味ではありません。

 却下の後に取れる道は、大きく二つに分かれます。一つは、その判断そのものを別の裁判官に見直してもらう不服申立て。もう一つは、時間を置いて改めて請求し直す再請求です。この記事では、二つの道の違い、却下の理由の読み方、そして再請求をどの時期に検討するのかを整理します。

却下の決定が意味していること

 保釈の判断は、被告人が罪を犯したかどうかを決める場ではありません。判決までの間、身体の拘束を続ける必要があるかどうかを、その時点の材料で判断するものです。事件についての見方が変わらなくても、手続が進んで材料が変われば、判断の前提そのものが変わり得ます。

 また、保釈を請求できる人は法律で定められていますが(刑事訴訟法第88条)、請求できる回数に制限は置かれていません。一度却下されても、その後は請求できなくなるという仕組みにはなっていません。ただし、前と同じ材料をそのまま出し直せば、同じ判断が繰り返されやすいのも事実です。次に何をするかは、却下の理由をどう読むかから始まります。

まず却下の理由を確かめる

 裁判には理由を附しなければならないと定められています(同法第44条第1項)。保釈の請求を却下する決定は不服を申し立てることができる裁判ですから、理由が示されます。もっとも、実務では記載が簡潔なことが多く、一読しただけでは何が問題とされたのか分かりにくいこともあります。それでも、次の一手を決める出発点はここです。

権利保釈が外れたのか、裁量として相当でないとされたのか

 保釈の判断には二つの層があります。一つは、法律の定める除外事由に当たらない限り保釈を許さなければならないという層(同法第89条)。もう一つは、除外事由に当たる場合でも、逃亡や罪証隠滅のおそれの程度と、拘束が続くことで被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上、防御の準備上の不利益の程度などを考えて、裁判所の裁量で保釈を許すことができるという層(同法第90条)です。却下の決定が第89条の号を挙げているのか、それとも裁量として相当でないと述べているのかで、次に動かすべきものが変わります。

却下の決定に書かれていること読み取れること次に動かすもの
第89条第4号に当たる罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとされた証拠の所在と、関係者に働きかける余地
第89条第5号に当たる被害者や事件の関係者への加害・畏怖行為のおそれがあるとされた被害者側との関係と、接触を断つ手立て
第89条第1号から第3号に当たる罪名・過去の裁判・常習性という、動かしにくい事情で外れた裁量による保釈(第90条)を求める材料
裁量によって保釈を許すのは相当でない除外事由の問題ではなく、拘束を解く相当性の判断拘束が続くことの不利益と、逃亡を防ぐ担保


 実務で問題になりやすいのは、罪証隠滅のおそれをめぐる判断です。隠滅するつもりはないという約束だけでは材料になりにくく、隠滅しようにも実効性がないと言える具体的な事情を示せるかどうかが問われます。

検察官がどう述べたかも確かめる

 保釈を許す決定をするときも、請求を却下する決定をするときも、裁判所は検察官の意見を聴かなければならないとされています(同法第92条第1項)。却下の背景に、検察官が挙げた反対の理由があることは少なくありません。弁護人を通じてその中身を確認しておくと、次に補うべき材料が見えやすくなります。

却下の後に取れる二つの道

 却下された後に検討できることは、性質の違う二つに整理できます。

  1. 同じ時点の判断を、別の裁判官に見直してもらう不服申立て。
  2. 時間が進んで前提が変わった後に、改めて判断を求める再請求。


 不服申立ては「その判断は相当だったか」を問うもので、原則としてそのときの資料が土台になります。再請求は「今の時点で判断してほしい」というもので、新しい材料や手続の進行そのものが土台になります。どちらか一方しか選べない関係ではなく、不服申立てを行いながら、次の請求に向けた材料を並行して整えるという進め方もあります。

不服申立ての名前は、いつ却下されたかで変わる

 公訴の提起があった後、第1回の公判期日までは、勾留に関する処分は裁判官が行うと定められています(同法第280条第1項)。事件を審理する裁判所が、公判の前に事件の記録に触れて予断を抱くことがないようにするための仕組みです。保釈の判断もこの枠組みの中にあり、第1回公判期日の前は、事件の審理を担当しない裁判官が判断します。

 そのため、却下された時期によって不服申立ての種類が変わります。第1回公判期日の前に裁判官が却下した場合は準抗告(同法第429条第1項第2号)、第1回公判期日の後に裁判所が却下した場合は抗告(同法第420条第2項)です。名前だけでなく、申立先も判断する主体も異なります。

準抗告は複数の裁判官で判断される

 準抗告の申立てを受けた裁判所は、合議体で決定をしなければならないと定められています。最初の判断が一人の裁判官によるものだったのに対し、見直しは複数の裁判官で行われるということです。同じ資料でも評価が分かれることはあり、そこに不服申立ての意味があります。

期限の定めはないが、早く出す理由はある

 保釈に関する準抗告や抗告には、何日以内という期限は置かれていません。抗告は、即時抗告を除いてはいつでもすることができるとされています(同法第421条)。ただし同じ条文には、原決定を取り消しても実益がなくなったときはこの限りでないとも定められています。手続は止まらずに進みますから、時期を逃せば申立て自体の意味が薄れていきます。

申立てが認められなかったとき

 準抗告や抗告の結論に対して、同じ不服申立てを重ねることはできません。残るのは、憲法違反や判例違反を理由とする場合に限って最高裁判所に申し立てる特別抗告で、提起期間は5日と定められています(同法第433条)。理由が限られているため、実務では、これと並行して次の請求に向けた準備を進めることになります。なお、勾留については、犯罪の嫌疑がないことを理由として不服を申し立てることはできないとされています(同法第420条第3項、第429条第2項)。無実であるという主張は公判で争うべきことという建て付けです。

再請求に回数の制限はない

 保釈の請求は、判決が言い渡されるまでの間であれば、何度でもすることができます。請求は原則として書面で行われ、弁護人が資料を添えて裁判所に提出するのが通例です。

 ただし、回数に制限がないことと、何度出しても同じように審理されることは別です。再請求が意味を持つのは、前の判断の前提が変わったときです。

再請求で動かせるものは二つ

 前提を変える要素は、突き詰めると二種類しかありません。手続が進むことで自然に変わるものと、こちらで用意して変えるものです。

手続が進むことで変わるもの

 罪証隠滅のおそれは、証拠がまだ法廷に出ていない段階でこそ重く見られます。検察官が請求した証拠の取調べが終わり、関係者の証人尋問が済めば、供述や書類に働きかける余地はその分だけ小さくなります。第1回公判期日の前に却下されていても、証拠調べが進んだ後であれば、同じ事件でも前提が変わっているということです。

こちらで用意して変えるもの

 もう一方は、時間の経過を待つのではなく、こちら側で積み上げるものです。次のような事情は、前回の請求時になかったのであれば、新しい材料になり得ます。

  • 被害者との間で示談や被害弁償が成立したこと。
  • 釈放された後に生活する場所が具体的に決まったこと。
  • 日々の様子を見守り、期日への出頭を確かめる立場の方が見つかったこと。
  • 勤務先や学校との関係で、拘束が続くことによる不利益がはっきりしたこと。
  • 体調の問題や、通院・治療の必要が生じたこと。


 これらは、第89条の除外事由の判断に効くものと、第90条の裁量の判断に効くものとに分かれます。却下の理由がどちらの層にあったのかを踏まえ、そこに届く材料から先に整えるのが順序です。

手続の節目ごとに何が変わるか

 再請求の時期を考えるときは、事件の進み方を節目で区切って眺めると整理しやすくなります。

手続の節目そこで変わること請求との関係
起訴された直後事件の審理に関与しない裁判官が判断する最初の請求ができる時期
第1回公判期日の後事件を審理する裁判所が判断する不服申立ての種類が抗告に変わる
検察官が請求した証拠の取調べが終わったとき書類や物の証拠が法廷に出た後になる罪証隠滅のおそれの中身が変わる
関係者の証人尋問が終わったとき供述に働きかける余地が小さくなる再請求を検討しやすい節目
審理が終わり判決を待つ間取り調べる証拠が残っていない判決の前まで請求はできる
判決が言い渡された後実刑の判決であれば保釈は効力を失う改めての請求という形になる


 どの節目で請求するかに決まった正解はありません。示談の見通しや体調、勤務先との関係など、待てない事情があれば節目を待たずに請求することもあります。逆に、次の期日で重要な証人尋問が予定されているのであれば、その後に照準を合わせるという判断もあり得ます。

同じ形で出し直さないという発想

 再請求は、前回と同じ請求を繰り返すことではありません。裁判所が心配している点に、こちらから手当てを提案する形に組み替えることができます。

 保証金の額は、犯罪の性質や情状、証拠の証明力、被告人の性格や資産を考えて、出頭を保証するに足りる金額とされています(同法第93条第2項)。前回より高い額を用意できるのであれば、その旨を示すことが一つの材料になります。また、保釈を許す場合には住居を制限し、その他の条件を付すことができるとされていますから(同条第3項)、こちらから住まいや行動について具体的な条件を提案し、心配されている点をふさぐという進め方もあります。2024年5月からは、裁判所が同意を得た人を監督者として選任する制度も設けられました(同法第98条の4以下)。請求の設計そのものを見直すという視点が役に立ちます。

見落とされやすい二つの点

別の事件で身柄が続いているとき

 起訴された事件について保釈が認められても、別の事実で逮捕・勾留が続いていれば、その拘束によって身体は留め置かれたままになります。同じ時期に複数の事実が問題になっている事件では、この点を踏まえずに請求しても、結果として外に出られないということが起こり得ます。捜査機関が次の動きを事前に明らかにしないこともあり、弁護人が担当検察官とやり取りしながら見通しを立てることになります。

拘束が長引いているとき

 勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、請求または職権で、勾留を取り消すか保釈を許さなければならないと定められています(同法第91条)。第89条や第90条とは別の入口で、審理の期間が延びている事件では検討の余地があります。公判の回数や期日の間隔を踏まえ、拘束の長さそのものを正面から取り上げる形です。

判決が言い渡された後

 拘禁刑以上の刑に処する判決(全部の執行猶予が付くものを除きます)が宣告されると、それまでの保釈は効力を失います(同法第343条)。判決の日にそのまま収容されるのはこのためです。その後も保釈を求めることはできますが、除外事由の規定は適用されず、裁量による判断に一本化されます(同法第344条)。また、控訴の申立期間内でまだ控訴がされていない事件などについては、原裁判所が決定をすることとされていますので(同法第97条)、書類の流れがどこまで進んでいるかによって請求先が変わります。

ご家族の側からできること

 保釈を請求できるのは弁護人だけではなく、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹も請求権者として法律に挙げられています(同法第88条)。実際には弁護人が請求書を作成しますが、却下された後に何を補うかという場面では、ご家族が用意できる材料の比重が大きくなります。住む場所の確保、同居して様子を見守る体制、勤務先や学校とのやり取り、保証金の準備。いずれも、裁判所が心配している点に直接答える材料です。一方で、事件の関係者や被害者の方に直接連絡を取ることは、罪証隠滅や加害のおそれという判断に響きかねません。連絡の窓口は弁護人に一本化しておくのが安全です。

まとめ


  • 保釈の却下は、その時点の材料と手続の段階を前提にした判断で、請求できる回数に制限はない。
  • 次の一手を決める出発点は、却下の理由が第89条の除外事由の層にあるのか、第90条の裁量の層にあるのかを読み分けること。
  • 却下の後に取れる道は、同じ判断を見直してもらう不服申立てと、前提が変わった後に改めて求める再請求の二つ。
  • 不服申立ては、第1回公判期日の前なら準抗告、後なら抗告となり、期限の定めはないが手続の進行に合わせた早さが要る。
  • 再請求で前提を変える要素は、手続が進むことで変わるものと、こちらで用意して変えるものの二種類。
  • 証拠調べや証人尋問が終わった時点は、罪証隠滅のおそれの中身が変わるため、再請求を検討しやすい節目になる。
  • 保証金の額や住まいの条件、見守る立場の人など、請求の設計そのものを組み替えるという発想も役に立つ。


保釈についてお困りの方へ

 保釈が認められるかどうかは、書面の枚数ではなく、裁判所が心配している点にどれだけ具体的に答えられるかで変わってきます。不服申立てと再請求のどちらを先に進めるか、材料をどの順で整えるかを決めるには、事件の記録と手続の進行を踏まえた検討が要ります。

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、池袋と新橋に事務所を構え、刑事事件のご相談を承っています。ご本人が拘束されている状況では、ご家族からのご相談も多く寄せられます。保釈の請求が却下された後の進め方についても、状況をうかがったうえで、取り得る選択肢を整理してご説明いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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