判決言渡しの日に何が起きるのか|出廷から宣告後までの流れ

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

判決の言渡しの日が指定されると、「当日は何をするのか」「どのくらいで終わるのか」「その場で身柄はどうなるのか」といった疑問が出てきます。取調べや公判についての説明は受けていても、最後の1日の進み方だけは具体的に想像しにくい、という声は少なくありません。

 判決の日は、新しい主張や証拠を出す日ではありません。裁判所の中ですでに固まっている判断が、公開の法廷で告げられる日です。同時に、身柄の扱いがその場で切り替わり、控訴の期間などいくつかの期限がその日から数え始めます。当日にできることは限られている一方で、その日を境に動き出すものがある、という2つの性格を持った期日です。

 この記事では、出廷から宣告、宣告後の手続までを時系列で整理します。以下では、刑事訴訟法を「法」、刑事訴訟規則を「規則」と表記します。

この記事で扱う範囲

 判決期日の当日に法廷で行われることと、その日から動き出すものに絞って説明します。具体的には次の内容です。

  • 判決の宣告が手続としてどのような位置づけにあるか。
  • 出廷から閉廷までに法廷で行われることの順序。
  • 判決の内容によって身柄の扱いがどう切り替わるか。
  • 宣告の日から数え始める期限にどのようなものがあるか。


 一方で、起訴から判決までにかかる期間、判決文そのものの読み方、控訴するかどうかの判断材料、判決が確定した後の手続については、それぞれ別の記事で扱っています。ここでは当日の場面に絞ります。

判決の日は何をする日か

 判決は、公判廷で宣告によって告知されます(法342条)。公判廷における裁判の告知は宣告によって行うとされており(規則34条)、書面が郵送されて終わるという形は取られていません。

 この宣告という手続について、最高裁は、すでに内部的に成立している判決を告知して外部的にも成立させる手続であると述べています(最高裁昭和47年4月5日決定)。判断そのものは法廷に入る前の段階で固まっており、当日はそれが外に向かって告げられる場面だ、という理解です。

 そのため、当日に新たな証拠を出したり意見を述べたりする場面は、原則として設けられていません。事情が変わったときに終結した弁論を再開する制度はありますが(法313条1項)、判決期日でこれが行われるのは例外的な場面です。判決の内容に働きかけられるのは結審までの準備の段階だと考えておくのが現実的です。

公開の法廷で行われる

 判決の宣告は公開の法廷で行われます(憲法82条1項)。裁判所の開廷表には事件番号や開廷時刻が表示され、傍聴席は誰でも利用できます。家族や職場の関係者に立ち会ってもらうこともできますが、同時に、事件と関わりのない第三者が傍聴する可能性もあります。

判決当日の流れ

 当日の進み方は、おおむね次のとおりです。

場面行われること関係する条文
開廷まで出頭を確認され、法廷または待合場所で待つ法286条
開廷公開の法廷で、検察官と弁護人が在席して始まる法282条2項、憲法82条1項
宣告裁判長が主文と理由を告げる法342条、規則35条
告知上訴の期間と申立先が告げられる規則220条
説示・訓戒保護観察の説示や訓戒が行われることがある規則220条の2、規則221条
閉廷後判決の内容に応じて身柄の扱いが切り替わる法343条1項、法345条


 開廷から閉廷までが短い時間で終わる期日ですが、事案の内容や争点の有無によって幅があります。開廷時刻の前後には他の事件の期日が入っていることもあるため、時間には余裕を持って裁判所に着いておくと落ち着いて臨めます。

出廷する


出頭しないと開廷できない

 被告人が出頭しないときは、原則として開廷できません(法286条)。判決期日も同じで、出頭しなければ言渡しは行われず、期日が改めて指定されることになります。

 保釈中や勾留の執行停止中の被告人が、召喚を受けながら正当な理由なく公判期日に出頭しない場合については、令和5年の法改正で罰則が設けられました(法278条の2)。体調不良などやむを得ない事情が生じたときは、当日を待たずに弁護人や裁判所へ連絡し、診断書などの資料を用意する対応が取られます。

服装と持ち物

 服装についての決まりは置かれていません。落ち着いた色のスーツやジャケットで出廷する方が多く見られます。身体を拘束されている方は、施設のルールによって持ち込める衣類が限られる場合があるため、事前に弁護人を通じて確認しておくと当日の差し替えの手間が減ります。

 持ち物としては、身分証明書、印鑑、連絡先を控えたもののほか、保釈中であれば保釈に関する書類が挙げられます。実刑の言渡しを受ける可能性がある場合には、貴重品を持ち込まずに家族へ預けておくという選択もあります。

法廷に入ってから宣告まで

 公判廷では、被告人の身体を拘束しないのが原則です(法287条1項)。身体を拘束されている方であっても、法廷内では手錠と腰縄を外した状態で着席します。もっとも、看守者を付けることはできるとされています(同条2項)。

 開廷中、被告人は裁判長の許可がなければ退廷できません(法288条1項)。裁判長は、在廷させ、法廷の秩序を維持するために相当な処分をすることもできるとされています(同条2項)。宣告の内容を聞いた直後に席を立ちたくなったとしても、閉廷が告げられるまでは在席することになります。

宣告では何が読み上げられるか

 裁判の宣告は裁判長が行います(規則35条1項)。宣告では、主文と理由を朗読するか、主文の朗読と同時に理由の要旨を告げるとされています(同条2項)。

 順序についての決まりは置かれていないため、主文を先に告げてから理由に進む場合もあれば、理由の説明が先で主文が後に回る場合もあります。理由から始まったからといって、そこから結論を推し量る手がかりになるとは限りません。

執行猶予は主文のどこに現れるか

 刑の全部の執行猶予は、刑を言い渡したうえで、その執行を猶予する旨が主文の中で続けて述べられます(刑法25条1項)。保護観察に付する場合には、その旨も主文で示されます(刑法25条の2)。未決勾留日数を刑に算入する裁定も、主文の中で述べられます(刑法21条)。

 言い渡された刑の年月だけを聞いて気持ちが止まってしまうと、その後に続く部分を聞き逃すことがあります。主文は最後まで聞き取るという意識を持っておくと、その場での受け止め方が変わります。

読み間違いと読み直し

 宣告の場面で言い間違いが生じ、その場で読み直されることがあります。最高裁は、主文の刑を読み違えた後、理由の要旨と上訴の告知まで進んだ段階で弁護人の指摘を受けて即座に読み直した事案について、読み直された内容で効力が生じると判断しました(最高裁昭和47年6月15日判決)。

 その前提として、判決の宣告は全体として1個の手続であり、宣告のための公判期日が終了するまでは完了しないとされています(最高裁昭和51年11月4日判決)。聞き取れなかった部分があったときは、閉廷までの間に弁護人へ伝えるという対応が考えられます。

宣告のあとに法廷で行われること

 有罪の判決を宣告するときは、上訴期間と、上訴申立書を差し出すべき裁判所が告げられます(規則220条)。「この判決に不服があるときは、14日以内に高等裁判所あての控訴申立書をこの裁判所へ提出してください」といった説明がこれにあたります。

 保護観察に付する旨の判決を宣告する場合には、裁判長が保護観察の趣旨その他必要と認める事項を説示することとされています(規則220条の2)。猶予期間中に守るべきことの説明が、この場面で行われます。

 また、判決の宣告後、被告人に対してその将来について適当な訓戒をすることができるとされています(規則221条)。これは判決の宣告に付随する処置の1つと位置づけられており(最高裁昭和47年4月5日決定)、行われる場合と行われない場合があります。

判決の内容で身柄の扱いが切り替わる

 閉廷後の扱いは、言い渡された内容によって分かれます。

判決の内容身柄の扱い関係する条文
全部執行猶予、無罪、刑の免除、罰金・科料など勾留状が効力を失う法345条
拘禁刑以上の実刑保釈や勾留の執行停止が効力を失う法343条1項
実刑の宣告を受け、収容されていない場合出頭の日時と場所を指定されることがある法343条の2
判決の宣告後に保釈を求める場合権利保釈の規定は適用されない法344条


実刑が言い渡された場合

 拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があったときは、保釈または勾留の執行停止は効力を失います(法343条1項)。新たな決定がないときは、身柄を収容する手続が進みます。保釈中に自宅から出廷していた方が、その日のうちに収容されることもあります。

 判決の宣告後に改めて保釈を求める場合、権利保釈の規定は適用されず(法344条)、裁判所の裁量による判断となります。控訴を検討している場合には、申立ての準備をあらかじめ整えておくという対応が取られます。

執行猶予・無罪などの場合

 無罪、免訴、刑の免除、刑の全部の執行猶予、罰金または科料の裁判などの告知があったときは、勾留状は効力を失います(法345条)。身体を拘束されていた方は、この日に釈放の手続に入ります。ただし、施設に残した私物の引き取りなどが必要になるため、法廷を出てそのまま帰宅できるとは限りません。

収容されていない場合の出頭命令

 実刑の宣告によって保釈などが効力を失ったものの、その場では収容されていない被告人に対して、裁判所が日時と場所を指定して出頭を命じることができるという規定があります(法343条の2)。令和5年の改正で設けられたもので、この出頭命令に正当な理由なく従わない場合の罰則も定められています(法343条の3)。

宣告の日から数え始める期限


控訴の期間

 控訴の申立期間は14日です(法373条)。この期間は裁判の告知があった日から進行し(法358条)、初日は算入しません(法55条1項)。宣告の日の翌日から数える、という形になります。

 この日数は、控訴するかどうかを考えるための時間でもあります。判断の材料や手続の内容は別の記事で扱いますが、期限の起点が宣告の日にあるという点は、当日のうちに押さえておきたい部分です。

判決書の謄本を求めるかどうか

 地方裁判所や簡易裁判所では、上訴の申立てがない場合に、判決の主文、罪となるべき事実の要旨、適用した罰条を公判調書の末尾に記載させ、これをもって判決書に代えることができるとされています(規則219条1項本文)。いわゆる調書判決です。

 ただし、判決の宣告をした日から14日以内で、かつ判決が確定する前に判決書の謄本の請求があったときは、この扱いをすることはできません(同項ただし書)。謄本の交付は自己の費用で請求できます(法46条)。

 なお、宣告の時点で判決書のすべてが作成されているとは限りません。最高裁も、判決の宣告の当時、少なくとも主文だけは書面に作成されている必要があるが、理由は書面である必要はないとしています(最高裁昭和45年4月20日決定)。当日にその場で判決文を受け取れるとは考えず、必要であれば手続を取るという整理になります。

宣告の時点から及ぶもの

 拘禁刑以上の刑に処する判決(刑の全部の執行猶予が付くものを除きます)の宣告を受けた人は、裁判所の許可を受けなければ日本から出国することができないとされています(法342条の2)。令和5年の改正で設けられ、2025年に施行された規定です。判決が確定した後ではなく、宣告の時点から関わってくる点が特徴です。仕事や家庭の事情で出国の予定がある場合は、弁護人に相談しておくことになります。

当日までに確かめておきたいこと

 準備の大半は結審までに終わっていますが、当日に向けて確認しておくと落ち着いて臨める事項があります。

  1. 開廷の時刻と法廷の場所、集合場所と待ち合わせの方法。
  2. 実刑が言い渡された場合に、貴重品や携帯電話を誰に預けるか。
  3. 家族や勤務先への連絡を、誰がどのタイミングで行うか。
  4. 控訴を検討する可能性があるときの連絡手段と、期限の起点。
  5. 判決書の謄本が必要かどうかと、その手続を誰が行うか。


誤解されやすい点


  • 判決の日に主張や証拠を追加して結論を動かす場面は、原則として設けられていません。
  • 理由から読み上げられたか主文が先だったかで、結論を推し量ることはできません。
  • 執行猶予が付くかどうかは、刑の年月に続く部分まで聞き取らないと分かりません。
  • 判決文がその場で手渡されるとは限らず、必要な場合には謄本を請求する手続があります。
  • 執行猶予や無罪の言渡しを受けても、私物の引き取りなどで手続の時間がかかることがあります。


まとめ


  • 判決は公判廷で宣告により告知され(法342条)、すでに成立している判断が外部に示される手続と位置づけられています。
  • 被告人が出頭しなければ開廷できず(法286条)、正当な理由のない不出頭には罰則が設けられています(法278条の2)。
  • 宣告では主文と理由が告げられ、その順序についての決まりは置かれていません(規則35条2項)。
  • 宣告の後には上訴期間と申立先の告知が行われ(規則220条)、保護観察の説示や訓戒が続くことがあります(規則220条の2、規則221条)。
  • 実刑の宣告により保釈などは効力を失い(法343条1項)、執行猶予や無罪などでは勾留状が効力を失います(法345条)。
  • 控訴の期間は宣告の日の翌日から14日で(法373条、法358条、法55条1項)、判決書の謄本の請求にも宣告の日から14日という区切りがあります(規則219条1項ただし書)。
  • 当日にできることは限られているため、結審までの準備と、当日以降の段取りを整えておくことが現実的な備えになります。


 判決の日は、短い時間の中で結論と身柄の扱いが同時に動く場面です。何が行われ、その日から何が始まるのかを知っておくだけでも、当日の受け止め方と、その後の判断のしやすさは変わってきます。

 当事務所では、刑事事件について、判決期日を控えた段階でのご相談もお受けしています。ご本人やご家族が置かれている状況を伺ったうえで、当日の流れと、その後に取り得る手続をご説明します。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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