執行猶予期間が満了したら資格制限は消えるのか
逮捕されたご家族に会うため警察署へ通っていたところ、ある日「本人はもう拘置所に移りました」と告げられて戸惑った、というご相談は少なくありません。
留置場と拘置所は、どちらも刑事裁判が確定していない人が身体を拘束される場所です。ただ、根拠となる法律の条文も、面会や手紙のルールも、日々の過ごし方も同じではありません。
この記事では、二つの施設が法律上どう位置づけられているのか、いつ拘置所へ移されるのか、移送の前後で生活のどこが変わるのかを、法令と公的な資料をもとに整理します。
この記事で扱うこと
・留置場と拘置所が、法律上どのように位置づけられているか
・起訴されたらいつ拘置所に移されるのか、移されないことがあるのはなぜか
・移送によって、面会・手紙・差し入れのルールがどう変わるか
・移送の前後に、ご本人やご家族ができること
以下では、法律上の名称である「留置施設」「刑事施設」という言葉も使います。日常語の「留置場(留置所)」は留置施設を、「拘置所」は刑事施設のうち主に未決の人を収容する施設を指しています。
法律上は、どちらが原則の場所なのか
留置場と拘置所の違いを「警察の施設か、法務省の施設か」と説明されることがあります。それ自体は誤りではありませんが、法律の条文は、もう一段手前から順序を決めています。
拘置所は「刑事施設」、留置場は「留置施設」
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」といいます)は、刑の執行のため拘置される人、逮捕されて留置される人、勾留される人などを収容する施設を「刑事施設」と定めています(同法3条)。具体的には、刑務所・少年刑務所・拘置所の三つです。
一方、同法14条1項は、都道府県警察に「留置施設」を設置すると定めています。これが警察署の中にある留置場です。同じ法律の中に、性格の異なる二つの施設が並んで規定されている、という構造になっています。
勾留の場所は令状に書かれている
刑事訴訟法64条1項は、勾留状の記載事項として「勾留すべき刑事施設」を挙げています。つまり、どこで身体を拘束するかは、裁判官が発する令状に書き込まれる事項です。捜査機関が自由に決められるものではない、という点はおさえておきたいところです。
留置場は「刑事施設に代えて」使える施設
それでも、逮捕・勾留された人の多くが警察署の留置場で過ごすのは、刑事収容施設法15条1項に、刑事施設に収容することに代えて留置施設に留置することができるという定めがあるためです。この規定から除かれているのは、次の人たちです。
・刑の執行のため拘置される人(逮捕や勾留による拘禁の地位を併せ持つ人を除く)
・死刑の言渡しを受けて拘置される人
・少年法などの規定により仮に収容される人
・逃亡犯罪人引渡法などの規定により拘禁される人
逮捕・勾留の段階にある人はこの除外に当たらないため、留置施設に留置することができます。この仕組みは「代用刑事施設」「代替収容」と呼ばれ、捜査を担う警察の施設に勾留することの当否については、以前から議論があります。ただ、実務としては、捜査段階では留置施設が用いられ、起訴を機に拘置所へ移されるという運用が広く行われています。
施設の数が、運用を大きく左右している
運用がこうなっている背景には、施設の数の差があります。
法務省の犯罪白書によれば、令和6年4月1日現在、刑事施設は本所が74庁で、その内訳は刑務所59庁、少年刑務所7庁、拘置所8庁です。支所は100庁で、そのうち拘置支所が92庁とされています。東京都内にある独立した拘置所は、東京拘置所(葛飾区小菅)と立川拘置所(立川市泉町)です。
これに対して、警察庁の警察白書によれば、令和5年4月1日現在、留置施設は全国で1,055施設、収容基準人員は2万1,167人とされています。数の桁が違うことが、そのまま「まず警察署の留置場に入る」という運用につながっています。
| 項目 | 留置場(留置施設) | 拘置所(刑事施設) |
|---|---|---|
| 設置・管理 | 都道府県警察 | 法務省(矯正施設) |
| 根拠となる規定 | 刑事収容施設法の留置施設に関する規定 | 同法の刑事施設に関する規定 |
| 主に収容される人 | 逮捕・勾留された被疑者 | 起訴された被告人などの未決拘禁者 |
| 数 | 全国で1,055施設(令和5年4月1日現在) | 拘置所8庁・拘置支所92庁(令和6年4月1日現在) |
| 居室 | 共同室が用いられることが多い | できる限り単独室とされている |
| 取調べとの距離 | 同じ警察署の中で行われる | 捜査機関の庁舎とは別の場所にある |
いつ拘置所に移されるのか
「起訴から何日で移送」という条文はない
まず前提として、起訴から何日以内に拘置所へ移すという期限を定めた条文はありません。「起訴されれば自動的に移送される」という説明を見かけることがありますが、正確ではありません。
場所を決めているのは裁判官
前述のとおり、勾留の場所は勾留状の記載事項です。そして、勾留に関する処分を行う裁判官は、職権により勾留の場所を変更する命令(移監命令)を発することができる、とした最高裁の判断があります(最高裁平成7年4月12日決定)。弁護人が、この職権の発動を促す趣旨で申立てを行うこともあります。
起訴されると、被告人の勾留について判断するのは受訴裁判所になります。実務では、この段階で勾留場所が拘置所に変更されるのが通例ですが、法律上の建付けとしては「起訴という事実が移送を生じさせる」のではなく、「場所の判断が改めてされる」と理解しておくと、次の点も納得しやすくなります。
起訴後も留置場にとどまることがある
起訴された後も、しばらく警察署の留置場で過ごす方は珍しくありません。理由としては、次のような事情が挙げられます。
・移送先となる拘置所や拘置支所の収容状況に余裕がない
・起訴された事件とは別の余罪について、捜査が続いている
・保釈が近く見込まれており、移送しないまま判断を待つ
なお、移送は本人や家族の希望だけで動くものではありません。警察白書には、留置施設が一時的に過剰な収容状態となる場合があることから、警察において「拘置所等刑事施設への早期の移送を要請」するなどして収容力の確保を図っている、という記述があります。移送の時期には、受け入れる側と送り出す側の事情の両方が関わっているということです。
移送先は、家族が問い合わせても教えてもらえない
実務上、ご家族が困りやすいのがこの点です。法務省の案内には、法務省や矯正管区、施設に対して被収容者の在所の有無を問い合わせても答えられない旨が明記されています。面会に行こうとして「今どこにいるのか」を電話で確かめようとしても、施設側からは回答が得られません。
弁護人が選任されていれば、弁護人を通じて所在を把握できます。弁護人がいない段階では、ご本人からの手紙で知ることになる場合もあります。移送の可能性がある時期に差しかかったら、あらかじめ弁護人に確認しておくと、空振りの往復を避けられます。
移送で変わること(1)面会
どちらの施設でも、未決の人には面会が認められています。刑事収容施設法115条は、未決拘禁者に面会の申出があったときは、禁止される場合を除いてこれを許すものとする、と定めています。もっとも、細かなルールは施設の種類によって異なります。
| 項目 | 留置場 | 拘置所 |
|---|---|---|
| 面会できる人 | 接見等禁止がなければ家族・知人など | 刑事訴訟法上の制限がなければ広く認められる |
| 回数 | 1日1回を下回らない範囲で定められる | 1日1回以上で各施設が定める回数 |
| 1回の時間 | 15分(やむを得ない事由があるときは5分)を下回らない範囲 | 30分を下回らない範囲で各施設が定める |
| 人数 | 3人以内 | 3人を下回らない範囲で各施設が定める |
| 立会いなど | 職員が立ち会う | 職員の立会いのほか、録音・録画が行われる |
| 受付 | 平日の執務時間内 | 平日のおおむね午前8時30分から午後4時まで |
表の数字は、いずれも「これを下回らないように定める」という下限として置かれているものです。留置施設については国家公安委員会規則が、面会時間の上限を15分(やむを得ない事由があると認められる場合は5分)を下回らないものとすること、回数の上限を1日1回を下回らないものとすることなどを定めています。拘置所については、法務省の案内が、面会時間を30分を下回らない範囲で各施設が定めるとしたうえで、面会希望者が集中した場合には5分以上30分未満に短縮されることもあると説明しています。
立会いの扱いにも差があります。刑事収容施設法116条1項は、未決拘禁者と弁護人等以外の者との面会について、職員を立ち会わせ、または面会の状況を録音・録画させるものとする、と定めています。法務省の案内でも、未決拘禁者との面会では原則として立会いや録画・録音が行われるとされており、留置場より記録が残りやすい運用だといえます。
加えて、拘置所は所在地が限られているため、これまで近所の警察署に通えていたご家族にとっては、往復の負担が変わることがあります。
移送で変わること(2)手紙と差し入れ
手紙
留置施設では、発信する手紙の通数を制限する場合でも、1日につき1通を下回ってはならないとされています(刑事収容施設法225条2項)。拘置所でも、法務省の案内によれば、発信を申請できる回数は1日1通以上で各施設が定める回数とされ、受け取る手紙の回数に制限はありません。
いずれの施設でも、未決の人が発受する手紙は、あらかじめ内容の検査が行われます。暗号が用いられるなどして職員が理解できない内容や、罪証隠滅の結果を生ずるおそれがある内容が認められた場合には、抹消などの措置がとられたり、発受そのものが認められなかったりします。認められなかった手紙は施設が保管し、原則として釈放の際に本人へ交付される扱いです。
差し入れ
差し入れは、どちらの施設でも原則として誰でも行えます。ただ、拘置所では手続がやや細かくなります。法務省の案内によれば、差し入れができる品目や規格、1回に差し入れできる数量、差入物品取扱業者が施設によって指定されている場合が多く、指定外の店で購入した物を送っても引取りを求められることがあります。本人が保管できる物品の量にも施設ごとの上限があり、食料品の差し入れはできないとされています。
面会室で本人に直接現金や物品を手渡すことはできず、差入窓口での手続が必要です。郵送もできますが、差入人の氏名が明らかでない場合は受け付けられません。こうした事情から、迷ったときは現金を差し入れておくほうが使いやすい場面が多くなります。施設内で日用品や書籍を購入できるためです。
移送で変わること(3)日々の過ごし方
居室
生活面でご本人が戸惑いやすいのが、部屋の使い方です。刑事収容施設法35条1項は、刑事施設に収容されている未決拘禁者の処遇は、運動・入浴・面会などの場合を除き、昼夜、居室において行うと定めています。さらに同条2項は、罪証隠滅の防止上支障を生ずるおそれがある場合には単独室とし、それ以外の場合でも、できる限り単独室とするとしています。
留置場では共同室で他の人と過ごすことが多いのに対し、拘置所では一人で過ごす時間が長くなります。落ち着いて裁判の準備ができるという面がある一方、人によっては孤立感が強まることもあり、手紙や面会の意味がそれまでより大きくなります。
運動・入浴・健康診断
刑事施設では、日曜日その他法務省令で定める日を除き、できる限り戸外で、健康を保持するために適切な運動を行う機会を与えなければならないとされています(同法57条)。入浴についても定めが置かれています(同法59条)。
健康面で差が出やすいのが健康診断です。刑事施設では、収容開始後速やかに、および毎年1回以上定期的に行うものとされています(同法61条1項)。これに対して、警察白書によれば、留置施設では月に2回の健康診断が実施されています。回数だけを見れば、留置施設のほうが多いことになります。持病がある方については、移送の前後で受診の段取りが変わることがありますので、弁護人に伝えておくとよいでしょう。
取調べとの距離
刑事収容施設法16条3項は、留置担当官はその留置施設の被留置者に係る犯罪の捜査に従事してはならないと定めており、捜査と留置は組織として分けられています。とはいえ、留置場は警察署の中にありますから、取調べのための移動は建物内で完結します。
拘置所に移ると、捜査機関が取り調べるためには呼出しや護送が必要になります。起訴後は取調べが行われないのが通常ですが、余罪の捜査が続いている場合には、拘置所から呼び出されることもあります。
移送で変わらないこと
施設が変わっても、法律上の地位が変わるわけではありません。刑事収容施設法31条は、未決拘禁者の処遇に当たっては、未決の者としての地位を考慮し、逃走および罪証隠滅の防止と、防御権の尊重に特に留意しなければならないと定めています。判決が確定した人と同じ扱いを受けるわけではない、ということです。
弁護人または弁護人になろうとする者との接見が、立会人なしで、日時や回数の制限を受けずに行える点も、両施設に共通します(刑事訴訟法39条1項)。ご家族が面会できない時間帯や曜日でも、弁護人であれば本人と話せる場面があります。
なお、起訴後の勾留は、公訴提起の日から2か月とされ、必要があるときは1か月ごとに更新されます(同法60条2項)。保釈を請求できるのは起訴された後です。移送の有無にかかわらず、この枠組みは変わりません。
移送の前後にできること
・面会に行く前に、本人が今どこにいるのかを弁護人に確認しておく
・拘置所は所在地が限られるため、面会に必要な移動時間を見込んでおく
・現金を差し入れておき、本人が施設内で日用品や書籍を購入できるようにしておく
・手紙は検査が行われる前提で書き、事件の内容に立ち入る指示は書かない
・保釈を検討している場合は、身元引受人や帰る場所の準備を早めに進めておく
まとめ
・法律上の原則は刑事施設(拘置所)で、留置場はこれに代えて用いることが認められた施設
・勾留の場所は令状に記載される事項であり、変更するかどうかは裁判官の判断による
・起訴された後も、収容状況や余罪の捜査などの事情から留置場にとどまることがある
・面会は1日1回という下限が共通する一方、時間や立会いの扱いには違いがある
・拘置所では単独室で過ごす時間が長くなり、差し入れは業者の指定など手続が細かい
・未決の人としての地位や、弁護人と自由に会える点は、どちらの施設でも変わらない
どちらの施設にいるかによって、ご家族ができることも、弁護人が動くべき順序も変わります。身体を拘束されている段階のご相談は、早い時期ほど選べる手段が多く残りますので、対応に迷われたときは弁護士にご相談ください。


