身辺調査で前科前歴はどこまで分かるのか
出張先で知り合った女性との交友をきっかけに、不同意わいせつ罪の疑いをかけられ、警察の捜査対象となった30代男性Aさんの事案です。身に覚えのない疑いをかけられたうえ、勤務先からも事実関係の確認を求められるなど、板挟みの状況で弊所にご相談をいただき、最終的には示談を経て不起訴処分となりました。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご依頼者 | Aさん(男性・30代・会社員) |
| 相手方 | Bさん(女性) |
| トラブルの内容 | 飲酒を伴う交友関係の中で、不同意わいせつ罪の疑いをかけられ警察の捜査を受けた |
| ご依頼内容 | 刑事事件としての対応、および勤務先への説明への協力 |
| 解決結果 | 示談成立を経て不起訴処分 |
ご依頼に至る経緯
Aさんは出張の多い仕事をしており、出張先での付き合いで飲食店を利用する機会が多くありました。
あるとき、出張先の飲み屋でBさんと知り合い、個人的に連絡を取り合うようになります。Bさんを通じて他の女性数名とも知り合い、皆で食事や飲みに出かける関係が続いていました。Aさんとしては、あくまで飲み仲間として付き合っている認識で、恋愛感情を持ったことはありませんでした。
ある日、Bさんらと食事や飲みを楽しんだ後、Aさんは少し飲み足りず、ホテルの部屋で飲むことを提案し、Bさんらもこれに応じました。しかし、時間が遅くなったこともあり、Bさんらは帰宅する意向を示しました。もう少し一緒に過ごしたかったAさんは、Bさんの携帯電話を一時的に取り上げるなど、帰宅を妨げるような行動を取りましたが、最終的には携帯電話を返し、Bさんらは帰宅しました。
Aさんとしては普段と変わらないやり取りだったという認識でしたが、後日、勤務先の上司から呼び出しを受けます。用件を確認すると、警察がAさんを探しているとのことでした。Aさんには身に覚えがなく事情を尋ねましたが、詳しい経緯は教えてもらえませんでした。その後、会社の役員からも事実関係の確認を受け、担当していた業務を外されるという事態になりました。
Aさんが警察署に問い合わせたところ、Bさんから相談を受けており、不同意わいせつ罪の疑いで事情を聞きたいとのことでした。Bさんがどのような主張をしているかについては教えてもらえず、捜査の進み方によっては話を聞くまでに時間がかかる可能性があるとの説明を受けました。
勤務先での立場に関わる不安を抱えながら、警察とのやり取りをどう進めればよいか判断がつかなかったAさんは、弊所にご相談にいらっしゃいました。
弁護士の対応と解決への流れ
Aさんから、Bさんと知り合ってから現在に至るまでの事実関係を時系列で伺ったところ、Aさんの認識している範囲では犯罪に該当する行為があったとは考えにくい状況でした。
もっとも、当日Aさんは飲酒をしていたため、本人が認識していない場面でBさんが不快に感じるような行為があった可能性も否定はできません。そこで、まずは警察を通じてBさんの主張の内容を確認することを提案しました。あわせて、仮に問題となる行為があった場合はもちろん、そうでなくてもBさんが不快に感じる出来事があった場合には、謝罪や一定の金銭の支払いによる話し合いでの解決を検討する余地があることも説明しました。
Aさんは勤務先での処分が下る前に事件を解決したいとの意向が強く、刑事事件への対応と勤務先への説明の両方を弊所で担当することになりました。
警察署の担当刑事にBさんの言い分を確認したところ、Aさんの認識とは異なり、Aさんから強引に抱きつかれたりキスをされたりして不快な思いをしたという内容でした。担当刑事の仲介により、Bさん本人とも話をしましたが、主張の内容は同様でした。Aさんに改めて事実を確認したものの、酒を飲んで酔っていたことは認めつつ、そのような行為をした事実はないとのことで、両者の認識は真っ向から食い違ったままでした。録画や録音といった客観的な証拠も存在しないようであることも分かってきました。
Aさんの認識を前提とすれば犯罪には該当せず、この段階で事実を否認しながら示談を持ちかけることも不自然であったため、当面は示談成立を目指さず捜査には協力する、方針や進捗は都度勤務先に報告する、という方針を確認しました。
その後、Bさんに代理人弁護士が就いたとの連絡が入りましたが、当初は刑事事件化のサポートにとどまるとのことで具体的なやり取りには至りませんでした。しばらくして、警察からBさんによる刑事告訴を受理したとの連絡があり、Aさんは起訴や勤務先でのより重い処分への不安を強め、話し合いによる解決を希望するようになりました。
Bさんの代理人弁護士と連絡を取り、Bさんに不快な思いをさせた可能性がある点について示談をしたい旨を申し入れ、示談の対象とする事実の範囲や示談金額について交渉を進めました。最終的に、Aさんが行っていないと一貫して説明している事実は対象から除外し、Bさんが誤解した可能性のある行為に限って示談の対象とすることで合意し、示談金は30万円としました。合意書を取り交わした後、検察官に示談成立を報告したところ、その後、不起訴処分となりました。
解決結果と弁護士のコメント
飲酒の影響が関係するトラブルは多く、弊所でも多くのご相談・ご依頼をいただいています。本件のように、飲酒後のやり取りをめぐって不同意わいせつ罪や不同意性交罪の疑いをかけられ、警察の捜査を受けるケースも少なくありません。
飲酒の影響を受けた状況で問題となる行為が疑われた場合、まずはどの程度記憶が残っているか、その記憶がどこまで正確かを確認していきます。記憶がほとんど無いという方もいれば、判断力が少し低下していたと感じる方もいらっしゃいます。客観的な証拠があれば、記憶との整合性を確認しながら、お話しいただいた内容の正確性を判断していきます。
本件では、Aさんは長時間の飲酒により酔っていた自覚はあったものの、記憶が途切れた部分はなく、他の参加者の話とも整合していたことから、事実関係を正確に記憶し話しているという印象を持ちました。一方でBさんも、酩酊はしていなかったとして正確な記憶を主張しており、双方の認識が対立する事案でした。
Aさんが早期解決を強く希望したことから示談による終結を目指しましたが、犯罪に該当する事実がないという認識を前提とすれば、争うという選択肢も十分にあり得たと考えています。
現在は多くの刑事事件で弁護人が選任されますが、本件のように、選任後すぐに具体的な助言ができるとは限らない場合もあります。弁護人が就く前の段階では、警察から強い働きかけを受けることも珍しくありません。本件は在宅事件(逮捕や勾留をされずに捜査が進む事件)であったため、ご自身の認識を落ち着いて振り返る時間がありましたが、身柄事件(逮捕や勾留をされた状態で捜査が進む事件)の場合には、ご本人に不利な内容の供述調書が作成されてしまうこともあります。
在宅事件であれば警察とやり取りをする前に、身柄事件の場合には警察署の担当者に弁護士との接見(面会)を希望する旨を伝えたうえで、早い段階からご相談いただくことをお勧めします。
同種のトラブルでお悩みの方へ
飲酒を伴う交友関係の中で意図せずトラブルに発展し、刑事事件として警察の捜査を受けるケースは、決して珍しいものではありません。ご自身の認識と相手の主張が食い違っている場合でも、対応の進め方次第で結果は大きく変わり得ます。身に覚えのない疑いをかけられてお困りの方、勤務先との対応にも不安をお持ちの方は、早めに弁護士へご相談ください。


