薬物事件の再逮捕|余罪が増える流れと身柄の長期化

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

薬物事件では、逮捕から20日ほどで区切りがつくと聞いていたのに、その満期が近づいた日に「別の件で逮捕する」と告げられることがあります。ご家族から見れば同じ事件が延々と続いているようにしか見えず、いつ終わるのか見当のつかない状態になります。

 もっとも、身柄の拘束が延びていく流れには一定の型があります。同じ事件の期間が延長され続けているのではなく、一つの出来事が複数の事件として数えられていく、というのが実際に起きていることです。この記事では、薬物事件で余罪が増えていく仕組みと、身柄が長引きやすい場面を、手続の側から整理します。

「再逮捕」という言葉が指しているもの


 報道や日常会話では、「再逮捕」という言葉が二つの意味で使われています。混ざったまま話が進むと、見通しの立て方を誤りやすい部分です。

 一つは、前に有罪判決を受けた人が、時間をおいて再び事件を起こして逮捕されたという意味です。いわゆる二回目の逮捕で、量刑や執行猶予の可否が問題になる場面にあたります。

 もう一つは、今まさに身柄を拘束されている人が、その拘束が終わるタイミングで別の犯罪事実によって改めて逮捕されるという意味です。この記事で扱うのは後者です。同じ犯罪事実について逮捕と勾留を繰り返すことは原則として認められないと解されており、報道でいう再逮捕は、前の逮捕とは別の事実によるものを指しています。

同じ事件の勾留は20日で区切られる


 身柄の拘束には、事件ごとに時間の枠が決められています。逮捕後は48時間以内に検察官へ送致され、そこから24時間以内に勾留が請求されます。勾留は請求の日から10日間で、やむを得ない事由があると認められたときにさらに10日まで延長されます(刑事訴訟法208条)。

20日をさらに延ばす制度は薬物事件には用意されていない


 勾留期間をこれ以上延長できる規定として刑事訴訟法208条の2がありますが、その対象は内乱・外患・国交に関する罪と騒乱の罪に限られています。薬物事件はここに含まれません。

 つまり、一つの事件について身柄が拘束される期間は、起訴前の段階では20日で頭打ちになります。20日を大きく超えて拘束が続いている場合、それは同じ事件の期間が延ばされているのではなく、別の事件が動き始めていると考えるのが自然です。ここが、薬物事件の身柄の長期化を理解するうえでの出発点になります。

一つの出来事が複数の事件に分かれる


 薬物事件では、本人の感覚では一続きの出来事でも、手続の上では複数の犯罪事実として数えられることがあります。数え方の単位を知っておくと、件数が増えていく理由が見えやすくなります。

行為の形数える単位増え方の例
所持所持していた機会ごと職務質問の場で一件、その後の自宅の捜索で別の一件
使用一回の使用ごと尿から判明した一回とは別に、それ以前の使用が問題になる
譲り渡し・譲り受け相手ごと、やり取りごと関わった相手が複数であれば、その数だけ事実が立つ
薬物の種類規制する法律ごと覚醒剤と大麻が同じ場所から出れば、別の法律の違反として扱われる


 なかでも影響が大きいのが、所持と使用が別個の罪として扱われるという点です。所持していた物を自分で使ったという一続きの経過であっても、罪としては二つ成立し、併合罪として処理されるのが一般的な整理です。所持で逮捕されて勾留中の尿検査から使用が判明する、あるいは使用で逮捕された後の捜索で薬物が見つかって所持が加わる、という順序はどちらも起こり得ます。

件数を決めているのは記憶ではなく資料の到着順


 「なぜ後から次々に出てくるのか」という疑問は、多くの方が最初に抱くところです。ここには、捜査側の事情があります。

逮捕の時点では捜査機関も全体像を持っていない


 薬物事件で件数の根拠になる資料は、それぞれ結果が出る時期が違います。現場での簡易検査は早く結果が出ますが、正式な鑑定はその後になります。押収された物に付着した成分の鑑定、押収された携帯端末の解析、関係者や譲り渡した側とされる人の供述、毛髪の分析なども、それぞれ別の時間をかけて進みます。

 そのため、逮捕された時点では、捜査機関の側も最終的な件数を把握していないことがあります。後から事実が増えていくように見えるのは、新しい出来事が起きているからではなく、先に届いていなかった資料が順に届いているからだと理解しておくと、経過を追いやすくなります。

先回りして話すことが有利に働くとは限らない


 取調べでは、いつからどのくらいの頻度で使っていたのか、どこから手に入れたのかを繰り返し聞かれます。長期化への不安から、記憶があいまいなまま踏み込んだ説明をしてしまう方がいますが、供述はそのまま処分の前提として扱われます。

 一方で、本人の説明だけで有罪とすることはできないという原則もあります。何をどこまで話すかは、押収された物や鑑定の進み具合と切り離して決められる問題ではありません。方針は弁護人と確認したうえで臨むのが安全です。

再逮捕されるとは限らない


 余罪があるからといって、その都度逮捕が繰り返されるわけではありません。実際には、次のような扱いに分かれます。

・同じ勾留期間の中で余罪の捜査も進め、所持と使用をまとめて起訴する
・逮捕はせずに、捜査資料だけを検察官に送る(追送致)
・勾留の満期に合わせて、別の事実で改めて逮捕する

 どれになるかは捜査機関の判断によりますが、本人が事実を認めているか、供述以外の客観的な資料がそろっているか、罪証を隠滅したり逃亡したりするおそれをどう評価するか、といった点が分かれ目になると説明されています。

 注意しておきたいのは、再逮捕が止まったことと、事件の処理が終わったことは別だという点です。追送致に切り替われば新たな逮捕は行われませんが、その事実は後から起訴の対象として加わり得ます。

起訴された後にも起こる


 起訴されればそこで終わりというわけではなく、起訴後の勾留中に別の事実で逮捕され、その分が追加で起訴される(追起訴)こともあります。

 この局面で問題になりやすいのが保釈です。保釈の請求は起訴の後にできますが、別の事件で勾留されている状態では、保釈が許可されても釈放されません。また、追起訴が予定されている段階では、その事情自体が判断に影響することがあります。納めた保証金は判決が確定するまで戻らないため、請求できる時期と請求したほうがよい時期は一致するとは限りません。新たな逮捕によって、いったん外れた接見等の禁止が改めて付されることもあります。

 保釈の要件や準備の進め方は、それだけで一つの論点になるため、ここでは触れる程度にとどめます。

薬物事件で身柄が長引きやすい事情


 薬物事件には、他の類型と違う事情がいくつかあります。

 第一に、被害者のいない類型であるため、被害者との示談によって処分の見通しが動く局面がありません。他の事件であれば示談の成立が身柄や処分の判断に反映されることがありますが、その道筋が最初からないぶん、捜査の進み具合がそのまま期間に表れやすくなります。

 第二に、入手先の解明が供述に頼りやすい構造があります。関係者への働きかけを警戒されやすく、罪証を隠滅するおそれがあるという評価につながりがちです。事件と関係のある人に自分から連絡を取ろうとすることは、この点で不利に働きます。

 第三に、同種の行為が繰り返されていると見られる場合には、権利として保釈を求められる場面から外れる事情に当たると判断されることがあります。前科の有無だけで決まるものではありません。

どこまで遡って問われるのか


 過去の使用や所持がいつまで対象になるのかは、公訴時効の問題です。時効の期間は法定刑によって決まり、覚醒剤の使用や所持は七年、麻薬及び向精神薬取締法が規制する薬物(大麻を含みます)の施用や所持は五年が目安になります。

 時効は罪ごと、行為ごとに別々に進みます。したがって、古い行為から順に対象外になっていくことになりますが、期間内であっても、それを裏づける資料がなければ立件には至りません。逆に、期間内で資料が残っていれば、かなり前の行為が対象になることもあります。

見通しを立てるために確認しておきたいこと


 同じ「長期化」でも、原因が違えば取れる手も変わります。次の点が整理できると、現在地がはっきりします。

・逮捕状や勾留状に書かれている日付と行為の形(所持なのか使用なのか、いつの分か)
・押収された物と、その鑑定がどこまで進んでいるか
・取調べで繰り返し聞かれている事項は何か
・追送致で処理される見込みか、改めて逮捕される見込みか
・仕事、住まい、家族の生活面で急いで手当てすべきことは何か

 このうち、鑑定の進み具合や今後の扱いについては、拘束されている本人が自分で確かめることはできません。弁護人が検察官や捜査機関に確認して初めて分かる部分です。

弁護士に相談する意味


 薬物事件の身柄の長期化は、見えないまま時間だけが過ぎることが、本人にもご家族にも重くのしかかります。弁護人が付けば、いま動いている事件がどれで、次に何が予定されているのかを確認し、勾留に対する不服の申立てや、起訴後の保釈に向けた準備を、時期を見ながら進めることができます。取調べへの対応方針を早い段階で整理できることも、供述が後の処分の前提になる薬物事件では意味を持ちます。

 当事務所では、初回のご相談を無料でお受けしています。ご相談の受付は24時間行っており、逮捕直後の段階でも即日の接見に対応しています。深夜や早朝であっても、状況により対応できる場合があります。出頭や自首に弁護士が同行する対応は全国で行っています(移動にかかる費用は別途申し受けます)。ご本人がすでに拘束されている場合、ご家族からのご相談で動き始めることができます。

まとめ


・報道でいう「再逮捕」は、前の逮捕とは別の犯罪事実による逮捕を指す
・一つの事件についての起訴前の身柄拘束は20日で区切られ、それをさらに延ばす制度は薬物事件には用意されていない
・20日を大きく超えて拘束が続くのは、期間の延長ではなく事件の数が増えているため
・所持と使用は別個の罪として扱われ、使用は一回ごと、薬物の種類ごとに規制する法律も分かれる
・件数を決めているのは本人の記憶ではなく、鑑定や解析の結果が届く順番である
・余罪があっても逮捕が繰り返されるとは限らず、追送致という扱いもある
・再逮捕が止まったことと、事件の処理が終わったことは別である
・起訴後も追起訴があり得るため、保釈は請求できる時期と請求したほうがよい時期が分かれる
・薬物事件には示談で処分が動く局面がなく、進み具合がそのまま期間に表れやすい

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼