未成年を連れ回した|未成年者略取誘拐と「同意があった」主張

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

「未成年を連れ回した」という言い方で問題になる場面には、かなりの幅があります。SNSで知り合った相手と会って一日一緒に過ごした、家に帰りたくないと言われて自宅に泊めた、深夜まで一緒に行動していた、別居中の相手のもとにいる自分の子どもを連れ帰った。いずれも「連れ回し」と表現されることがあります。

こうした場面でご相談を受けるとき、多くの方が最初に口にするのが「相手も同意していた」という説明です。無理に連れて行ったわけではない、本人が会いたがっていた、という感覚は、その方にとっては実際の経過に近いことも少なくありません。

ただ、未成年者略取誘拐罪という犯罪は、その説明だけでは成否が決まらない仕組みになっています。この記事では、「連れ回し」がどの規定で問題になるのか、そして「同意があった」という事実が、どの段階で、どこまで意味を持つのかを整理します。

「連れ回した」という言葉に対応する罪名は一つではない


「連れ回し」は法律上の用語ではありません。そのため、同じ行為が、いくつかの異なる規定から同時に評価されることがあります。相談の場でも、ご本人が想定していた罪名と、実際に捜査機関が向けている容疑がずれていることは珍しくありません。

未成年者と一緒に行動したという事実から、次のような規定が問題になり得ます。

・刑法の未成年者略取及び誘拐罪
・各都道府県の青少年健全育成条例(深夜の連れ出し・同伴など)
・逮捕監禁罪
・住居侵入罪
・行為の内容によっては、性的な行為に関する各種の規定

どの規定で立件されるかによって、法定刑も、手続の進み方も、示談の意味合いも変わります。まずは、中心に置かれることが多い刑法の規定から見ていきます。

刑法224条はどのような罪か


未成年者を連れ出した場面で中心になるのが、刑法224条の未成年者略取及び誘拐罪です。

規定内容法定刑
刑法224条未成年者を略取し、又は誘拐すること3月以上7年以下の拘禁刑
刑法225条営利、わいせつ、結婚、生命身体への加害の目的で人を略取・誘拐すること1年以上10年以下の拘禁刑
刑法228条224条・225条などの未遂未遂として処罰の対象


ここでいう未成年者は、18歳未満の方を指します。民法の成年年齢が18歳に引き下げられた令和4年4月1日以降は、18歳・19歳の方はこの罪の対象からは外れています。

法定刑を見るうえで押さえておきたいのは、224条には罰金刑の定めがないことです。罰金や科料で処理する略式手続は、罰金以下の刑が定められている事件に限られます。そのため、この罪で起訴された場合には、法廷での裁判を経ることになります。ここは、罰金で終わることの多い条例違反との大きな違いです。

「略取」と「誘拐」はどこで分かれるのか


224条は「略取」と「誘拐」を並べて規定しています。両者は、結果として生じている状態は同じで、そこに至る手段が違うと整理されています。

略取は、暴行や脅迫を手段として、その方を従来の生活環境から離脱させ、自分または第三者の事実上の支配下に置くことをいいます。腕をつかんで車に乗せるような場面が典型です。

誘拐は、うそをついたり、誘い込んだりする方法、つまり欺罔や誘惑を手段として、同じ状態をつくることをいいます。「うちに来ればいい」「泊まる場所は用意する」といった働きかけによって、未成年者が自宅を離れて自分のもとへ来たという経過は、この誘拐の側で評価されることになります。

つまり、相手が自分の足で歩いて来ていたという事実は、この罪の成立を否定する方向には働きにくいということです。暴力を用いていないことは、誘拐ではないという結論ではなく、略取ではなく誘拐として評価されるという結論に結びつくのが通常の整理です。

本人が同意していても成立するとされる理由


未成年者本人が同意していたのに、なぜ犯罪が成立するのか。この点は、この罪が何を守ろうとしている規定なのかという問題と直結しています。

判例と通説は、この罪が守っているものを、連れ出された未成年者本人の自由だけではなく、保護者が子どもを監護する権利、いわゆる監護権も含むと理解しています。

そうすると、本人が同意していたとしても、それは本人の自由という部分について同意があったにとどまり、保護者の監護権が侵害されたという部分は残ることになります。保護者は、自分の子どもがどこにいるのか分からない状態に置かれるからです。この構造があるために、本人の同意だけでは成立を否定しきれない、と説明されます。

なお、この考え方は、未成年者を軽く扱うためのものではありません。判断や選択の材料をまだ十分に持たない年齢の方が、うまい言い方に応じてしまうことがあるという前提のもとで、保護者の手元に戻れる状態を確保しようとしているものです。

「同意があった」という説明は、どの段階で意味を持つのか


ここまでを読むと、本人の同意はまったく意味がないように思われるかもしれません。しかし実際には、同意という事実は段階ごとに扱われ方が変わります。この区別をしないまま「同意があった」と繰り返しても、話がかみ合わなくなりやすいところです。

段階「同意があった」という事実の扱われ方
犯罪が成立するかどうか本人の同意だけでは成立は否定されにくい。同意に至る働きかけの内容によっては、誘拐の手段があったことを示す事情として受け取られることもある
違法性が認められないといえるかここで意味を持つのは保護者側の同意。保護者の委託や同意があったといえるかが検討される
処分や量刑をどう見るか経過や態様とあわせて、事情として考慮される余地がある


とくに注意したいのが一段目です。「本人が来たいと言ったので迎えに行った」「泊まる場所がないと言うので家に呼んだ」という説明は、ご本人としては善意を伝えるつもりでも、どのような働きかけによって未成年者が自宅を離れることになったのかを説明していることにもなります。同じ事実を、有利な方向に読むか不利な方向に読むかは、そこだけを取り出しても決まりません。

意味があるのは、同意の有無を主張することそのものではなく、どのような経過で会うことになり、保護者の状況をどう認識していたのか、その日どこまでの見通しがあったのか、といった事実関係を、順を追って正確に伝えることです。

保護者の同意があった場合はどう扱われるか


保護者から預かった、あるいは保護者が承知していたという場合には、監護権の侵害という部分が問題にならないため、この罪は成立しないという方向になります。友人の子どもを親から頼まれて預かる場面が犯罪にならないのは、この理由によります。

ただし、実際の事案では、同意があったかどうかではなく、同意の中身がどこまで及んでいたかが争点になることがあります。

・日帰りの外出について同意があったが、宿泊までは想定されていなかった場合
・同意を得た相手が、法律上の保護者にあたらなかった場合
・保護者の同意が、行き先や目的についての誤った説明を前提としていた場合
・後から事情を知った保護者が了承したにとどまる場合

このうち、誤った説明を前提とした同意については、形の上では同意があっても、その同意自体が働きかけによってつくられたものとして、誘拐の評価に傾くことがあります。保護者の同意を得ていたという説明をするのであれば、いつ、誰に、どこまでを伝えたのかを具体的に示せるかどうかが分かれ目になります。

親が自分の子を連れ戻した場合


別居や離婚をめぐる状況で、相手方のもとにいる自分の子どもを連れ帰った場合にも、この罪が問題になることがあります。

最高裁平成17年12月6日決定は、母の実家で監護されて生活していた2歳の子を、別居中の共同親権者である父が、保育園からの帰宅途中に有形力を用いて連れ去った事案について、未成年者略取罪の成立を認めました。決定は、親権者の一人であることは、違法性が例外的に否定されるかどうかの判断において考慮される事情だとしたうえで、監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められず、家族間の行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるとも評価できない、と述べています。同じ判断枠組みは、最高裁平成15年3月18日決定でも示されています。

裏を返せば、子どもの安全を確保するために連れ出す必要があった場合や、態様が穏当で、その後の生活の見通しも立っていた場合には、違法性が否定される余地が残されているということでもあります。この決定には反対意見も付されており、判断が分かれ得る領域であることがうかがえます。

深夜に一緒にいた場合|条例の二つの層


刑法とは別に、各都道府県の青少年健全育成条例が問題になる場面があります。東京都の条例を例にすると、規定は二つの層に分かれています。

まず、東京都青少年の健全な育成に関する条例15条の4第2項は、保護者の委託を受けたか同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、またはとどめることを禁じています。ここでいう深夜は午後11時から翌日午前4時まで、青少年は18歳未満の方を指します。

一方で、この違反に罰金を科す26条5号は、深夜に16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者を対象としており、30万円以下の罰金と定めています。

つまり、禁止そのものは18歳未満の方全体に及んでいるのに、罰則の対象は16歳未満に絞られている、という構造です。ここから読み取れることが二つあります。一つは、16歳以上の高校生と深夜に一緒にいた場合、この条例の罰則には結びつかないことがあるということ。もう一つは、条例の罰則に当たらないことは、その行為が問題にならないという意味ではないということです。刑法224条の成否は、この年齢の線引きとは別に判断されます。

「年齢を知らなかった」という説明の扱い


相手が18歳未満だと知らなかった、という説明も、よく出てくるものです。ここは、条例と刑法とで考え方が異なります。

東京都の条例28条は、いくつかの規定について、青少年の年齢を知らないことを理由に処罰を免れることはできないと定めています。深夜の連れ出しを禁じる15条の4第2項は、その列挙の中に入っています。ただし、同条にはただし書があり、過失がないときはこの限りでないとされています。年齢の確認をどのように行ったのかが、ここで問われることになります。

これに対して刑法224条は、故意を必要とする犯罪です。相手が18歳未満であることの認識が求められますが、確定的に知っていた場合だけでなく、そうかもしれないと思いながら行動していた場合も、故意があると評価され得ます。制服や在学の話題、SNSでのやり取りの内容など、そのときに得ていた情報が総合的に見られることになります。

「聞いていない」「教えてもらっていない」という説明だけでは足りず、そのときにどのような情報があり、それをどう受け止めていたのかまで示す必要があるのが実際です。

連れ回しに伴って別に問題になりうる行為


未成年者と一緒に行動した経過の中に、次のような事情が加わると、224条とは別の規定が重なってくることがあります。

事情問題になりうる規定法定刑
わいせつの目的で16歳未満の方に面会を要求し、実際に面会した刑法182条2項2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
18歳未満の方とみだらな性交等を行った東京都の条例18条の6・24条の32年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
対償を渡す、または渡す約束をして性交等を行った児童買春・児童ポルノ禁止法4条5年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
児童に淫行をさせた児童福祉法34条1項6号・60条1項10年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又は併科
車内や室内から出られない状態をつくった刑法220条3月以上7年以下の拘禁刑


このうち刑法182条は、令和5年に新設された比較的新しい規定です。わいせつの目的で、威迫・偽計・誘惑によって、あるいは拒まれたのに繰り返し、あるいは金銭その他の利益を示して16歳未満の方に面会を求める行為が対象で、実際に面会に至った場合は2項が適用されます。会う前のやり取りの段階が捉えられている点が、これまでの規定とは異なります。

親告罪であることの意味と、その限界


刑法229条は、224条の罪について、告訴がなければ公訴を提起することができないと定めています。この罪が親告罪とされているのは、処罰を求めるかどうかの判断を、被害を受けた側の意思に委ねる趣旨だと説明されています。告訴ができるのは、被害者本人と法定代理人です。

そのため実務では、保護者との間で話し合いを行い、告訴をしない、あるいは告訴を取り消すという結論に至るかどうかが、処分を左右する重要な要素になります。

ただし、ここには限界が二つあります。

一つは、告訴がない段階でも、捜査そのものは行われるということです。取調べを受けることも、身体の拘束を受けることもあり得ます。告訴がなければ何も起きないわけではありません。

もう一つは、告訴が取り消されても、それで全部が終わるとは限らないという点です。条例違反や児童買春の規定、刑法182条などは親告罪ではありません。同じ一連の行為から複数の容疑が向けられている場合、224条の部分だけが告訴の取消しによって起訴できなくなり、他の部分は残るという形になり得ます。示談の効果を見積もるときには、どの容疑が向けられているのかを先に確認しておく必要があります。

手続の見通しとして押さえておきたいこと


先に触れたとおり、224条には罰金刑の定めがありません。起訴されれば、公開の法廷での審理に進むことになります。これは、罰金で終わることの多い条例違反とは、事件としての重さが変わってくるところです。

未遂も処罰の対象です。刑法228条により、224条の未遂は罰せられます。連れ出そうとしたが実現しなかったという経過であっても、それだけで問題にならなくなるわけではありません。

なお、刑法228条の2には、公訴が提起される前に被害者を安全な場所に解放したときに刑を減軽するという規定があります。ただしこの規定が適用されるのは、身の代金目的の略取誘拐などに限られており、224条の罪には適用がありません。この点は誤解されていることがあります。もっとも、早く自宅に戻れる状態にしたという経過そのものは、処分を検討する際の事情として意味を持ち得ます。

公訴時効については、224条の法定刑の長期が7年であることから、5年とされています。

連絡が来たときに整理しておきたいこと


警察から連絡があった段階、あるいは保護者から連絡があった段階で、記憶が新しいうちに整理しておくと役立つのは、次のような点です。

・どのようなきっかけで知り合い、どのようなやり取りを経て会うことになったのか
・待ち合わせの場所と時間、交通手段は誰がどう手配したのか
・相手の年齢について、どの時点でどのような情報を得ていたのか
・保護者の状況について、どこまで聞いていたのか
・その日の行動の経過と、いつ、どのような形で別れたのか
・相手の帰宅について、何か働きかけをしたか

やり取りの履歴や移動の記録は、不利にも有利にも働き得るものです。都合の悪い部分を残さないようにするといった対応は、後になって説明の信用性そのものを損なう結果につながりやすいところです。あるものはそのままにしたうえで、どう説明するかを考えるのが、結局は近道になります。

まとめ


・「連れ回し」に対応する罪名は一つではなく、刑法と条例の双方が問題になり得る
・刑法224条の未成年者略取及び誘拐罪は、18歳未満の方が対象で、法定刑は3月以上7年以下の拘禁刑。罰金刑の定めはない
・この罪は、本人の自由に加えて保護者の監護権も守る規定と理解されているため、本人の同意だけでは成立を否定しにくい
・「同意があった」という事実は、成立の段階、違法性の段階、処分の段階で扱われ方が変わる
・保護者の同意については、あったかどうかだけでなく、どこまでの内容に及んでいたかが問われる
・東京都の条例は、深夜の連れ出しを18歳未満全体について禁じたうえで、罰則は16歳未満に限っている
・224条は親告罪だが、告訴がなくても捜査は行われ、告訴が取り消されても他の容疑は残り得る

未成年者とのやり取りが問題になっている場面では、ご本人の記憶と、捜査機関が見ている事実とが、少しずつずれていることがよくあります。何を説明すべきかは、向けられている容疑がどれなのかによって変わります。連絡を受けた段階で、事実関係の整理と見通しの確認を早めに行っておくことをお勧めします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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