審判に保護者として出席する|聞かれることと意見の述べ方
少年事件では、警察や検察の段階で事件が終わることが原則としてありません。犯罪の疑いがあると判断された事件は、軽微なものも含めてすべて家庭裁判所に送られます。これを全件送致主義といいます。
成人の刑事事件であれば、微罪処分や起訴猶予によって裁判所に行かないまま終わることは珍しくありません。そのため「それほど大きな事件ではないのに、どうして裁判所まで行くのか」と戸惑うご家族は少なくありません。この違いは運用の厳しさではなく、手続の設計そのものに理由があります。
この記事では、全件送致主義の条文上の根拠、成人手続との構造上の違い、そして「全件送致であること」と「処分が重くなること」が別の問題であることを、条文と公的統計に沿って整理します。
全件送致主義とは何か
捜査機関に事件を終わらせる権限が置かれていない
全件送致主義の根拠は、少年法41条と42条にあります。
41条は、司法警察員が捜査を遂げた結果、罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌疑があると思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならないと定めています。42条1項は、検察官が捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があると思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならないと定めています。
いずれも「送致しなければならない」という書き方です。つまり、送るかどうかを捜査機関の側が選べる仕組みになっていません。さらに両条は、犯罪の嫌疑がない場合であっても、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは同様に送致する、と続けています。
家庭裁判所に届くまでの二つの経路
条文の書き分けから、家庭裁判所に届くまでの経路は二つに分かれます。
- 法定刑が罰金以下の罪は、警察から家庭裁判所へ直接送られます(41条)。
- それ以外の罪は、警察から検察官へ送られ、検察官から家庭裁判所へ送られます(42条1項)。
経路は違っても、行き着く先は家庭裁判所です。ご家族から「検察庁から連絡が来ないまま家庭裁判所から書類が届いた」というご相談を受けることがありますが、罰金以下の罪であれば警察から直接送られるため、手続として不自然なことではありません。
成人の手続と何が違うのか
成人の刑事手続は、捜査機関の段階で事件を絞り込んでいく構造になっています。警察限りで終える微罪処分があり、検察官には起訴・不起訴を決める権限があります。起訴猶予であれば、裁判所が関与しないまま事件は終わります。
これに対して少年の保護手続は、捜査機関に終局的な判断権を置かず、いったんすべてを家庭裁判所に集めたうえで判断する構造です。違いは処罰の厳しさではなく、誰が最終的な判断をするかという点にあります。
| 項目 | 成人の刑事手続 | 少年の保護手続 |
|---|---|---|
| 捜査段階での事件終了 | 微罪処分・起訴猶予などがある | 原則としてない(41条・42条) |
| 終局判断をする機関 | 検察官(起訴・不起訴) | 家庭裁判所(終局決定) |
| 判断の中心にあるもの | 行為の重さと訴追の必要性 | 行為に加えて生活環境や再非行のおそれ |
| 事情を調べる担い手 | 捜査機関 | 家庭裁判所調査官・少年鑑別所 |
| 手続の公開 | 公判は公開が原則 | 審判は公開しない(22条2項) |
この表で押さえておきたいのは、4段目です。成人手続では、捜査機関が集めた資料が判断の中心になります。少年手続では、それに加えて家庭裁判所調査官による調査が行われ、その結果が処分に大きく影響します。
なぜすべてを家庭裁判所に集めるのか
判断の材料が行為の重さだけではないため
少年法1条は、少年の健全な育成を期し、性格の矯正と環境の調整に関する保護処分を行うことを目的として掲げています。判断の対象は、起きた行為だけではなく、その少年に今後どのような働きかけが必要かという点にも及びます。実務ではこれを要保護性と呼びます。
行為の軽重と要保護性は必ずしも一致しません。金額の小さな万引きでも、生活の状況によっては継続的な支援が必要と判断されることがあります。逆に、外形的には重く見える事件でも、家庭や学校の受け皿が整っていれば、施設に入らない処分が選ばれることがあります。行為の重さだけで振り分けると見落としが生じるという考え方が、全件を集める設計の背景にあります。
調査の方法が刑事手続と異なるため
少年法8条は、送致を受けた家庭裁判所は事件について調査しなければならないと定めています。9条は、その調査について、少年や保護者の行状・経歴・素質・環境などを、医学、心理学、教育学、社会学などの専門的知識、特に少年鑑別所の鑑別結果を活用して行うよう努めなければならないと定めています。
この調査を担うのが家庭裁判所調査官です。少年本人や保護者との面接、学校や職場への照会などを通じて、非行に至った経緯と今後の見通しを検討し、処遇に関する意見をまとめます。捜査機関にはこの機能がないため、判断の前提となる調査を行える機関に事件を集める必要があるという説明が可能です。
「全件送致」は「全員が重い処分を受ける」という意味ではない
全件送致と聞くと、必ず審判が開かれて処分が下されるように受け取られがちですが、そうではありません。
少年法19条1項は、調査の結果、審判に付することができないか、審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければならないと定めています。これが審判不開始です。また23条2項は、審判の結果、保護処分に付することができないか、その必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければならないと定めています。これが不処分です。
統計上も、家庭裁判所に送られた事件のうち、審判を開かずに終わるものや、審判を開いても保護処分に至らないものが相当数を占めています。送致は手続の入口であり、入口を通ることと出口が重いことは別の問題です。
いわゆる原則逆送事件についても同様のことがいえます。法務省の令和6年版犯罪白書によれば、原則逆送の対象となる事件について、平成13年4月から令和5年末までの終局処理人員1,010人のうち、検察官送致決定を受けたのは598人(59.2%)でした。令和5年に限ると、終局処理人員160人のうち、検察官送致(刑事処分相当)が65人、保護処分が85人となっています。原則逆送という枠組みに入った事件でも、調査の結果として保護処分が選ばれている例が一定数あることが読み取れます。
例外のように見える場面を整理する
全件送致主義には、例外に見える場面がいくつかあります。ただし、性質はそれぞれ異なります。
簡易送致
犯罪捜査規範214条は、捜査した少年事件について、事実が極めて軽微であり、犯罪の原因及び動機、少年の性格、行状、家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがなく、刑事処分または保護処分を必要としないと明らかに認められ、かつ検察官または家庭裁判所からあらかじめ指定されたものについては、少年事件簡易送致書と捜査報告書によって処理することを定めています。
もっとも、これは書式と手続を簡略化する運用であって、送致しないという扱いではありません。書類は家庭裁判所まで届き、多くは審判不開始で終わることが想定されています。要件のうち「再犯のおそれ」の判断には生活環境が含まれるため、被害が小さくても環境面に不安があると通常の送致になることがあります。
不送致
実務では、ごく例外的に警察限りで手続が終わる扱いが語られることがあります。ただし、これを直接定めた条文はありません。制度として当てにできるものではなく、位置づけとしては運用上の例外にとどまります。
触法少年と14歳未満のぐ犯少年
14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年(触法少年)と、14歳未満のぐ犯少年については、少年法3条2項が、都道府県知事または児童相談所長から送致を受けたときに限り審判に付することができると定めています。児童福祉の手続が先に立つという意味で、児童福祉機関先議と呼ばれます。
また6条の6第1項は、警察官が触法事件の調査の結果、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪などに触れると思料するときや、家庭裁判所の審判に付することが適当と思料するときは、事件を児童相談所長に送致しなければならないと定めています。14歳未満の場合は、警察から家庭裁判所へ直接向かうのではなく、児童相談所を経由する点が異なります。
| 場面 | 主な根拠 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 簡易送致 | 犯罪捜査規範214条 | 送致自体は行われ、書式が簡略化される運用 |
| 不送致 | 明文の規定なし | 警察限りで終える例外的な運用 |
| 触法少年・14歳未満のぐ犯少年 | 少年法3条2項、6条の6 | 児童相談所などを経由する仕組み |
家庭裁判所に送られた後の流れ
調査と観護措置
送致を受けた家庭裁判所は、8条に基づき調査を行います。審判を行うため必要があるときは、17条1項により観護措置がとられ、少年鑑別所に送致されることがあります。収容期間は2週間を超えることができず、更新は原則として1回までとされているため、実務では4週間以内となることが多いといえます。ただし、非行事実の認定のために証人尋問等を行う一定の事件では、さらに更新が認められる場合があり、通算では8週間が上限とされています(17条3項・4項・9項)。
終局処分と逆送
調査を経て、家庭裁判所は審判不開始(19条1項)、不処分(23条2項)、保護処分(24条1項)などの判断をします。保護処分は、保護観察、児童自立支援施設等への送致、少年院送致の3種類です。処分を決める前に、調査官の観察に付す試験観察(25条)が選ばれることもあります。
一方、20条1項は、死刑または拘禁刑に当たる罪の事件について、調査の結果、罪質および情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、事件を検察官に送致しなければならないと定めています。これがいわゆる逆送です。20条2項は、犯行時16歳以上の少年による故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪の事件について、原則としてこの決定をしなければならないとしています。
逆送された後の扱いも、成人の事件とは異なります。45条5号本文は、家庭裁判所から送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは公訴を提起しなければならないと定めています。裏を返せば、検察官の段階で起訴猶予として終える扱いが原則として想定されていないということです。また55条は、事実審理の結果、少年の被告人を保護処分に付するのが相当と認めるときは、事件を家庭裁判所に移送しなければならないと定めており、刑事裁判に移った後で家庭裁判所に戻る道も残されています。
18歳・19歳(特定少年)の扱い
2022年4月1日に施行された改正少年法により、18歳・19歳は特定少年として、17歳以下とは異なる特例が設けられました。もっとも、法務省の少年法改正Q&Aでも説明されているとおり、すべての事件を家庭裁判所に送るという基本的な枠組みは維持されています。特定少年であっても、調査や鑑別を経て処分が決められる点は変わりません。
特例として整理されているのは、主に次の点です。
- 原則逆送の対象が拡大され、死刑または無期もしくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件が加えられました(62条2項2号)。
- ぐ犯を理由とする保護手続の対象から外れました(65条1項)。
- 刑に処せられた場合の資格制限の緩和(60条)が適用されません(67条)。
- 検察官送致後に公訴を提起されたときは、氏名等による推知報道の禁止が適用されません(68条)。
なお、懲役と禁錮は2025年6月1日に拘禁刑へ一本化されており、現在の条文は拘禁刑の表記になっています。改正前の解説記事では懲役・禁錮と書かれている場合がありますが、対象となる罪の範囲が変わったわけではありません。
20歳の誕生日が持つ意味
少年法19条2項は、調査の結果、本人が20歳以上であることが判明したときは、事件を検察官に送致しなければならないと定めています。23条3項は、審判の結果として判明した場合にも同様の扱いを準用しています。年齢超過による検察官送致と呼ばれるものです。
これは処分の重さを理由とするものではなく、年齢によって手続の枠組みそのものが変わるという趣旨です。20歳の誕生日が近い時期に事件が起きた場合、調査や審判の進み方によって、保護手続で終わるか成人の刑事手続に移るかが分かれることがあります。時期の見通しを早めに確認しておく意味は、この点にあります。
送致を前提に、早い段階で準備できること
全件送致主義のもとでは、「捜査段階で穏便に終わらせる」という発想がそのままは当てはまりません。事件が家庭裁判所に送られることを前提として、調査で何が見られるかを見据えた準備に軸足を置くことになります。
具体的には、被害者の方への対応、本人の生活状況や学校・職場との関係の整理、保護者がどのように関わるかといった環境面が、調査官の調査や審判で検討される事情に含まれます。これらは短期間では整いにくいため、着手の時期が結果に影響することがあります。
弁護士の関わり方も成人事件とは異なります。42条2項により、家庭裁判所への送致によって被疑者段階の弁護人の選任は効力を失い、以後は10条に基づく付添人として関与することになります。10条ただし書により、弁護士を付添人に選任する場合に家庭裁判所の許可は不要です。
なお、逮捕・勾留されているかどうかで、動ける時間の幅は大きく変わります。43条3項と48条1項は、少年についてはやむを得ない場合でなければ勾留を請求・発付できない旨を定めていますが、実際には身体拘束が続く事件もあります。
少年事件は、成人の刑事事件と同じ感覚で見通しを立てにくい手続です。ご家族だけで判断が難しいと感じられた段階で、早めにご相談いただくことをおすすめします。当事務所では、池袋・新橋の各事務所で少年事件のご相談を承っています。


