認め事件の第1回公判では何が行われるのか

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

起訴されて第1回公判期日が指定されると、その日に法廷で何が行われるのかが気になります。事実を争わない事件、いわゆる認め事件では、審理が第1回で終わり、次に開かれるのは判決の日だけということもあります。

 もっとも、法廷で進む手続そのものは、争いのある事件と同じ順序をたどります。何が短く済み、何が短く済まないのかは、被告人が「間違いありません」と述べたことだけで決まるわけではありません。

 この記事では、事実を争わない事件の第1回公判期日を開廷から結審まで順に追い、それぞれの場面が刑事訴訟法や刑事訴訟規則のどの規定に基づくのかを整理します。

この記事で扱うこと


  • 事実を争わない事件で、第1回公判期日に行われる手続の順序と、その根拠となる規定を扱います。
  • 罪状認否と証拠に対する意見が、それぞれ手続のどこに影響するのかを扱います。
  • 法廷で使われる言い回しが、条文上のどの手続を指しているのかを扱います。
  • 起訴から第1回公判期日までの期間、判決後の手続、量刑の決まり方は扱いません。


 進行は事件の内容や裁判所によって異なります。以下は一般的な説明であり、個別の事件の見通しを示すものではありません。

「認め事件」という区分が決まるのはどの場面か

 認め事件、自白事件と呼ばれるのは、被告人が起訴状に書かれた事実を争わない事件を指す実務上の呼び方で、いずれも法律上の用語ではありません。手続の上でその位置づけがはっきりするのは、冒頭手続の最後に置かれた被告事件に対する陳述、いわゆる罪状認否の場面です(刑事訴訟法291条4項)。

 捜査段階で認めていたかどうかと、法廷での陳述は別に扱われます。取調べで認めていた人が法廷で争うこともありますし、その逆もあります。第1回公判期日のこの場面で何を述べるかによって、その日の残りの進み方が変わります。

認めても証拠調べがなくなるわけではない

 被告人が事実を認めても、裁判所は自白だけを根拠に有罪の判断をすることはできません(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)。この決まりは、法廷でした自白にも及びます(同条3項)。

 そのため、認め事件でも検察官は証拠の取調べを請求し、裁判所はそれを取り調べます。第1回で審理が終わることがあるのは、手続が飛ばされるからではなく、一つひとつの手続が短く済むからです。

第1回公判期日の流れ

 裁判所が公表している第一審の公判手続の説明では、公判は冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続、判決の宣告の4つに分けられています。事実を争わない事件では、このうち冒頭手続から弁論手続までが第1回公判期日のうちに行われることがあります。

段階行われること主な根拠
人定質問裁判官が氏名などを尋ね、起訴された本人かどうかを確かめる規則196条
起訴状朗読検察官が起訴状を読み上げ、審理の対象を示す法291条1項
権利の告知裁判官が黙秘権などについて説明する法291条4項、規則197条1項
罪状認否被告人と弁護人が起訴状の内容について述べる法291条4項
冒頭陳述検察官が証拠で証明しようとする事実を述べる法296条
請求と意見検察官が証拠の取調べを請求し、弁護人が意見を述べる法298条1項、326条1項
証拠の取調べ書類は朗読または要旨の告知、物は展示、証人は尋問法305条1項、306条、規則203条の2
弁護側の立証弁護人が請求した証拠を取り調べる法298条1項
被告人質問被告人が答えるのであれば質問が行われる法311条2項3項
論告・求刑検察官が事実と法律の適用について意見を述べる法293条1項
弁論・最終陳述弁護人と被告人が意見を述べる法293条2項


 表中の「法」は刑事訴訟法、「規則」は刑事訴訟規則を指します。ここまでが終わると審理が終わり(結審)、日を改めて判決が言い渡されます。

冒頭手続で行われること

 冒頭手続は、その日の審理の入口にあたる部分です。裁判所の説明でも、人定質問、起訴状朗読、黙秘権の告知、被告事件に対する陳述の4つが挙げられています。

人定質問と起訴状朗読

 開廷すると、被告人は法廷の中央にある証言台の前に立ち、氏名、生年月日、本籍、住居、職業などを尋ねられます。起訴された人と目の前の人が同一かどうかを確かめる手続で、刑事訴訟規則196条に基づきます。

 続いて検察官が起訴状を読み上げます(法291条1項)。ここで読まれた事実が、その裁判で判断される対象になります。被害者の氏名などを公開の法廷で明らかにしない旨の決定がされている事件では、仮の呼称を用いるなど、その事項を明らかにしない方法で朗読されます(法290条の2、291条2項)。

権利の告知と罪状認否

 起訴状が読まれた後、裁判官から、終始沈黙していてもよいこと、個々の質問に答えないこともできること、法廷で述べたことは有利にも不利にも証拠になり得ることが説明されます(法291条4項、規則197条1項)。

 そのうえで、被告人と弁護人に、起訴状の内容について述べる機会が与えられます(法291条4項)。事実を争わない場合は「間違いありません」といった短い答えになり、弁護人も同じ趣旨を述べることが多い場面です。ここでの陳述は、その後の証拠調べの進め方を左右します。

第1回で終わるかどうかを分けているのは証拠に対する意見

 罪状認否の次に置かれているのが証拠調べ手続です。検察官が冒頭陳述で立証の見取り図を示し(法296条)、続いて証拠の取調べを請求します(法298条1項)。

 ここで裁判長は、弁護人に対して証拠に対する意見を尋ねます。捜査段階で作成された供述調書などは、本来そのままでは証拠にできない書面ですが、検察官と被告人の双方が証拠とすることに同意した書面は、相当と認められる限りで証拠にすることができます(法326条1項)。認め事件で審理が短く済む大きな理由は、この同意によって、供述した人を法廷に呼んで尋問する必要がなくなる点にあります。

 つまり、その日のうちに審理が終わるかどうかを実際に左右しているのは、罪状認否の一言そのものではなく、続く証拠意見の中身だということになります。

不同意とした場合に起きること

 弁護人が書面の一部に同意しない場合、その書面はそのままでは証拠になりません。請求した側は請求を取り下げるか、書面に代えて、供述した人を証人として尋問するよう請求することになります。証人尋問が入れば、その分の期日が必要になり、第1回で審理が終わらないことがあります。

「要旨の告知」は本来の方法ではない

 証拠書類の取調べは、朗読して行うのが条文上の原則です(法305条1項)。もっとも、裁判長が意見を聴いて相当と認めたときは、要旨を告げる方法によることができるとされています(規則203条の2第1項)。法廷で検察官が調書を要約して読み上げているのは、この例外にあたります。

 書面の中身が全文そのまま読み上げられるとは限らない、という点は、傍聴する家族が戸惑いやすいところです。読み上げられなかった部分も、証拠として取り調べられている扱いになります。

被告人の供述調書は後の方で取り調べられる

 被告人が自白している内容の調書は、犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後でなければ、取調べを請求することができません(法301条)。自白から先に見ることで判断が引きずられることを避けるための決まりで、法廷で証拠が読まれる順番にも表れています。

認め事件の証拠調べは情状に関する部分が長くなる

 事実に争いがない以上、その日の証拠調べの中心は、量刑にかかわる事情の方に移ります。刑事訴訟規則198条の3は、犯罪事実に関しないことが明らかな情状に関する証拠の取調べは、できる限り犯罪事実に関する証拠の取調べと区別して行うよう努めなければならないと定めています。

 弁護側の立証もこの部分で行われます。示談書や被害弁償の資料、身元引受書、勤務先の書面などが請求され、検察官の意見を経て取り調べられます。家族などが情状証人として証言する場合もこの流れの中です。第1回公判期日で取り調べる見込みの証人については、その期日に出頭させるよう努めることとされており(規則178条の13)、証人になる家族が当日から傍聴席で待っているのはこのためです。

被告人質問

 弁護側の立証の後、被告人に対する質問が行われることが多くなっています。裁判所の説明でも、被告人には黙秘権があるものの、自ら答えるのであれば質問することができる、とされています。

 被告人が任意に供述する場合、裁判長はいつでも必要な事項について供述を求めることができ、検察官や弁護人も裁判長に告げて質問することができます(法311条2項3項)。一方で、終始沈黙し、または個々の質問に対して供述を拒むことができるという定めは、事実を認めた後も変わりません(同条1項)。答えられない質問がある場合に、その場で無理に答えを作る必要はありません。

論告・求刑、弁論、最終陳述

 証拠調べが終わると、検察官が事実と法律の適用について意見を述べます(法293条1項)。この中で科すべき刑についての意見が述べられ、これが求刑と呼ばれています。求刑は検察官の意見であって、裁判所の判断を縛るものではありません。

 次に弁護人が意見を述べ、最後に被告人が述べる機会があります(法293条2項)。被告人の最終陳述は、その日の審理で本人が最後に話す場面になります。話す内容を書いた紙を見ながら述べることもできます。

結審と判決の言渡し

 弁論が終わると審理が終結し、その場で次回の判決期日が調整されることが一般的です。判決は公判廷で宣告され(法342条)、主文と理由を朗読するか、主文を朗読して理由の要旨を告げる方法で行われます(規則35条2項)。

 判決の日に何が読まれ、どこを確認すればよいかは、判決の内容によって異なります。判決文の読み方や、その後の手続については別の記事で扱います。

「認めた場合の簡略な手続」も条文上は用意されている

 被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官、被告人および弁護人の意見を聴いたうえで、簡易公判手続によって審判する旨の決定をすることができます(法291条の2、規則197条の2)。死刑または無期もしくは短期1年以上の拘禁刑にあたる事件は対象から外れます。

 この決定があると、証拠調べは公判期日において適当と認める方法で行うことができるようになり(法307条の2)、当事者が異議を述べたものを除いて伝聞法則が適用されないという扱いになります(法320条2項)。もっとも、実務でこの手続が用いられる場面は限られているとされています。認めたからといって、当然に手続の形が変わるわけではない、と考えておくのが安全です。

当日の法廷について知っておきたいこと


出頭と公開

 被告人が出頭しないときは、原則として開廷することができません(法286条)。公判期日の審理は公開の法廷で行われるため(憲法82条1項)、傍聴席には事件と関係のない人が入ってくることもあります。

身体を拘束されている場合

 勾留されたまま裁判を受ける場合でも、公判廷では被告人の身体を拘束しないのが原則です(法287条1項)。被告人が暴力を振るったり逃亡を企てたりした場合は例外とされていますが、通常の審理では、拘束具が外された状態で手続が進みます。

第1回公判期日までに確かめておきたいこと


  1. 検察官が請求する予定の証拠について、弁護人がどのような意見を述べる方針かを聞いておく。
  2. 弁護側から請求する書面がそろっているか、期日に間に合う状態かを確認する。
  3. 情状証人を予定している場合、当日その人が法廷に来られるかを確認する。
  4. 被告人質問でどのような点を尋ねられる見込みかを、弁護人と事前に共有しておく。
  5. 出頭する時刻、法廷の場所、当日の服装など、実務的な点を確認しておく。


誤解されやすい点


  • 認めれば証拠調べが省略される、というものではありません。自白だけで有罪とすることはできない決まりがあります。
  • 罪状認否で認めたから第1回で終わる、というより、証拠に対する意見のまとまり方で決まります。
  • 求刑がそのまま刑になるわけではありません。求刑は検察官の意見にとどまります。
  • 事実を認めても、被告人質問で答えたくないことを述べない選択はできます。
  • 第1回で結審しても、その日に判決が言い渡されるとは限りません。


まとめ


  • 認め事件の第1回公判期日は、冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続の順に進みます。
  • 冒頭手続は人定質問、起訴状朗読、権利の告知、罪状認否の4つで構成されます。
  • 審理が第1回で終わるかどうかは、証拠に対する同意・不同意の内容に左右されます。
  • 証拠書類の取調べは朗読が原則で、要旨の告知は裁判長が相当と認めた場合の方法です。
  • 被告人の供述調書は、他の証拠が取り調べられた後に取り調べられます。
  • 事実に争いのない事件では、情状に関する証拠と被告人質問が審理の中心になります。
  • 論告・求刑、弁論、最終陳述を経て結審し、日を改めて判決が言い渡されます。


 第1回公判期日は、証拠に対する意見をどう組み立てるか、弁護側から何を出すかによって、当日の中身が変わってきます。起訴されて期日の連絡を受けた段階で、手続の見通しと準備の内容を確認しておくと、当日に落ち着いて臨みやすくなります。

 当事務所では、刑事事件についてのご相談をお受けしています。ご本人からのご相談のほか、ご家族からのご相談にも対応しています。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼