保護観察になった場合の生活|遵守事項と解除

若井亮

若井亮

テーマ:少年事件

審判で保護観察の決定を受けると、少年は施設に入ることなく、これまでどおり自宅から学校や職場に通う生活に戻ります。ただ、決定の場で告げられるのは処分の名前と大まかな説明までで、明日から何がどう変わるのかまでは伝えられないことが少なくありません。
 保護観察は、放っておかれる処分でもなければ、四六時中見張られる処分でもありません。生活のどこに、どういう種類の決まりがかかるのかがあらかじめ決まっており、それを守れなかったときの扱いにも段階が設けられています。ここでは、保護観察が始まる日から終わる日までに何が起きるのかを、決まりの中身と終わり方に分けて整理します。

保護観察が始まる日に何が起きるのか

 保護観察は決定が出た日から始まりますが、実際の手続は、少年が保護観察所に出向くところから動き出します。

保護観察所への出頭と最初の面接

 少年は保護者と一緒に、住んでいる地域を管轄する保護観察所へ出頭します。そこで保護観察官による面接が行われ、生活の実態が確かめられたうえで、住居の届出、その少年に必要な決まりの設定、面接の頻度や方法の決め方といったことが順に進みます。この最初の面接が、その後の保護観察の進み方を決める起点になります。
 守るべき事項は口頭で伝えられるだけでなく、内容を記載した書面が本人に交付されます。手元に残る書面ですので、家庭でも内容を読み合わせ、失くさずに保管しておくと後々の助けになります。

日常を担当する保護司が決まる

 保護観察は、保護観察所の職員である保護観察官と、地域に住む保護司が役割を分担して行います。保護観察官が実施の計画を立て、指名された保護司が日常的な面接を担当するという形が基本です。保護司は民間の立場でありながら公的な身分を持つ人で、少年の住まいの近くに住んでいることが多く、家庭の事情や地域の様子を踏まえた関わり方をします。

生活の枠を決めているのは三つの決まり

 保護観察中に求められることは、ひとまとまりの規則ではありません。性質の異なる三つの決まりが重なっています。

決まりの種類誰に向けたものか守れなかったときの扱い
一般遵守事項保護観察を受ける人すべてに共通する後で述べる措置を検討する際の材料になる
特別遵守事項その少年ごとに具体的に定められる同じく措置を検討する際の材料になる
生活行動指針その少年ごとに示される生活や行動の指針それだけで直ちに措置に結び付くものではない


一般遵守事項は全員に共通し、途中で変わらない

 一般遵守事項は、保護観察を受ける人すべてに共通する行為の決まりで、内容は法律に書かれています。途中で内容が書き換えられたり取り消されたりすることはありません

特別遵守事項は一人ずつ決められ、変更も取消しもある

 特別遵守事項は、その少年の抱えている事情に応じて具体的に定められるものです。保護観察処分を受けた少年については、決定をした家庭裁判所の意見を聴いたうえで、保護観察所の長が定めます。事情が変われば内容を変更できますし、必要がなくなったと認められたときは取り消されます。守れない決まりを抱え続ける仕組みにはなっていません。

生活行動指針は守る努力を求めるもの

 三つ目の生活行動指針は、遵守事項とは性質が違います。浪費をせず堅実な生活を心がける、といった生活上の指針であり、これに沿えなかったことが、そのまま施設への収容といった措置に直結するわけではありません。ただし、指針に即して生活し行動するよう努める義務はあり、守れているかどうかは日々の面接で話題になります。この三つ目の存在を知らないまま、すべてを同じ重さで受け止めてしまう家庭は少なくありません。

一般遵守事項は生活のどこにかかるのか

 全員に共通する決まりは、心構えのような抽象的なものだけではなく、日々の生活の具体的な場面に及びます。

  • 再び非行をすることがないよう、健全な生活態度を保つこと。
  • 保護観察官や保護司から呼出しや訪問を受けたときは、これに応じて面接を受けること。
  • 通学や仕事の状況、収入や支出の状況、家庭の様子、交友関係など、生活の実態を明らかにするよう求められたときは、申告し、または資料を示すこと。
  • 保護観察に付されたら速やかに住居を定め、その地を管轄する保護観察所に届け出ること。
  • 届け出た住居に居住し、転居または七日以上の旅行をするときは、あらかじめ保護観察所の長の許可を受けること。


住居と旅行の扱いは家庭でも共有しておく

 見落とされやすいのが、最後の項目です。引っ越しだけでなく、七日以上にわたる旅行にも事前の許可が要ります。修学旅行や部活動の遠征、長期の休みに親族の家へ滞在するといった予定は、日程が固まった段階で担当の保護司に伝えておくと、直前になって慌てずに済みます。

特別遵守事項として何が定められるのか

 特別遵守事項として定められる事柄の枠は、法律で決まっています。実際の書き方は少年ごとに具体的になり、おおむね次のような内容です。

定められる事柄具体的な書かれ方の例
非行に結び付くおそれのある特定の行動をしないこと共犯者との交際を絶ち、一切接触しないこと
健全な生活態度を保つために必要な行動を実行し、続けること仕事に就くこと、学校に通うこと
生活や身分の変化を事前に申告すること仕事をやめたり変えたりするときは、緊急の場合を除いてあらかじめ申告すること
専門的な知識に基づく体系だった処遇を受けること定められたプログラムを受けること
指定された場所に一定期間宿泊して指導を受けること指定された施設に宿泊して指導監督を受けること


学校に関わる事項が定められることがある

 在学中の少年には、正当な理由のない欠席、遅刻、早退をすることなく学校に通うこと学校をやめようとするときは、緊急の場合を除いてあらかじめ保護観察官または保護司に申告することといった内容が定められることがあります。学校に通い続けること自体が、守るべき決まりとして書き込まれるわけです。なお、保護司との面接は通学に支障のない日時が設定されるのが通例で、面接のために授業を欠くことは想定されていません。

社会貢献活動を求められる場合

 特別遵守事項の一つとして、地域の役に立つ活動に一定の時間参加することが義務づけられる場合があります。内容としては、公園や海岸といった公共の場所での環境美化、福祉施設での清掃、介護やレクリエーションの補助などが挙げられます。

平日の日中に行われることがある

 この活動は平日の日中に実施されることがあり、その場合は学校を休んで参加することになります。あらかじめ学校側と協議し、理解と協力を得たうえで実施されるのが通例です。中学校を欠席する形になるときは、本人が不利にならないよう、学校長の判断でその日を出席を要しない日として取り扱うことができるとされています。学校との関係で不安が残る点ですので、日程が示された段階で、誰がどのように学校へ伝えるかを整理しておくとよいでしょう。

面接の回数はどう決まるのか

 保護観察は接触に始まり接触に終わる、と言われます。面接が基本の方法で、電話や郵便などの通信手段は補う位置づけです。面接には、保護司や保護観察官が少年の自宅を訪ねる形と、少年が保護司の家や保護観察所に出向く形の両方があります。

接触の頻度は処遇の段階で変わる

 回数は一律に決まっているわけではありません。保護観察を受ける人は、処遇の難しさに応じて四つの段階のいずれかに編入され、段階ごとに接触の頻度と方法が設定されます。しかも段階は固定ではなく、生活が不安定になれば手厚い側へ、落ち着いてくれば緩やかな側へと、途中で変更されます。よく目にする「月に二回程度」という説明は標準的な形の一つを指したもので、動かない数字ではありません。

毎月の報告が保護観察官に上がる

 担当の保護司は、面接で把握した生活の状況を毎月報告書にまとめ、保護観察官に提出します。報告書のほかにも、日常的な電話連絡や保護観察所での協議を通じて状況が共有されます。少年と接する回数が多いのは保護司ですが、計画を立て直したり、後で述べる措置を検討したりするのは保護観察官の側だという分担を知っておくと、誰に何を伝えるべきかが見えやすくなります。

保護者に対しても働きかけが行われる

 保護観察の対象は少年本人ですが、保護者が蚊帳の外に置かれるわけではありません。法律は、保護観察所の長が、保護観察を受けている少年の保護者に対し、監護に関する責任を自覚させ、少年の立ち直りに役立てるため、指導や助言その他の適当な措置をとることができると定めています。面接の場に保護者が同席を求められたり、家庭訪問の際に接し方について助言を受けたりすることもあります。少年の生活を実際に組み立て直せるのは同居している人ですので、この働きかけは形式的なものではありません。

守れなかったときに何が起きるのか

 決まりを守れなかった場合の扱いには、段階が設けられています。

措置どのような場合にとられるか
警告決まりを守らなかったと認められるときに、保護観察所の長が本人に対して発する
施設への送致の申請警告を受けてもなお守らず、その程度が重いと認められるときに、家庭裁判所に対して行う
家庭裁判所への通告保護観察中に、新たに家庭裁判所の審判に付すべき事由があると認められるときに行う


 このほか、正当な理由がないのに届け出た住居に住んでいない場合や、決まりを守らなかったことを疑うに足りる十分な理由があるのに出頭の命令に応じない場合には、裁判官があらかじめ発する書面によって身柄を連れて行かれる手続もあります。

一度守れなかっただけで施設に入るわけではない

 指導監督には指示や命令が含まれますが、それに一度従わなかったからといって、直ちに身柄の拘束のような厳しい措置がとられるわけではありません。施設に収容することは大きな制約を伴うため、非行に及ぶ危険性が明らかで、社会の中での指導では限界に達しているといえる場面に至らなければ、そうした措置はとられないという考え方が示されています。

警告の後に置かれる三か月

 警告が発せられると、その日から三か月の間を特別な観察の期間として、保護観察の実施計画を見直す運用がとられています。この期間は、必要に応じて延長されることもあります。つまり、警告は終わりの合図ではなく、立て直しのための時間が設けられるという意味を持ちます。ここで生活を立て直せるかどうかが、その後の分かれ目になります。

終わり方は二つある

 保護観察の終わり方は一通りではありません。期間が満了して終わる場合と、期間の途中で終わる場合があります。

期間の満了

 保護観察の期間は、原則として少年が二十歳に達するまでです。決定の時点で二十歳までが二年に満たないときは、二年とされています。何事もなく期間が過ぎれば、その満了によって保護観察は終わります。

期間の途中での解除

 保護観察を続ける必要がなくなったと認められたときは、期間の途中でも解除されます。運用上は、保護観察が始まってからおおむね一年が経過していることに加え、家庭環境、交友関係、保護観察の実施状況などを踏まえて検討されます。交通事件を対象とする類型では、これより短い期間で検討されます。解除は、待っていれば自動的に訪れるものではなく、生活の積み重ねが評価されて初めて動き出す措置だと考えてください。
 このほかに、期間を定めて一時的に解除される扱いもあります。一時的に解除されている間は、面接や申告を求める部分の適用がなくなり、特別遵守事項も取り消されたものとして扱われます。再び保護観察を行う必要があると認められれば、元に戻されます。

短い期間の類型が勧告された場合

 審判で保護観察を決めるとき、家庭裁判所が、短い期間の保護観察で足りるという趣旨の勧告を付けることがあります。非行の進み具合がそれほど深くない、反社会的な集団に加わっていない、家庭の環境が著しく悪くはない、といった事情が考慮されます。
 この勧告が付いた場合は、通常とは進め方が変わります。特別遵守事項は定めず、段階に応じた処遇も行わない代わりに、少年本人が毎月、生活状況の報告書を提出するという形がとられます。あわせて、生活習慣、学校生活、就労、家族関係、友人関係といった領域の中から具体的な課題が設定され、その実行が求められます。期間の目安は、おおむね六か月から七か月です。

十八歳・十九歳の場合

 十八歳と十九歳の少年は特定少年と呼ばれ、保護観察の扱いが変わります。期間は六か月か二年のいずれかとされ、決定の際にどちらであるかが示されます。
 二年の保護観察になった場合には、決定と同時に、少年院に収容することができる期間もあわせて定められます。その範囲で、守るべき事項に従わず、その程度が重く、社会の中での処遇では立ち直りを図れないと認められたときは、家庭裁判所に収容を求める申請がされることがあります。この申請は、先に述べた警告を経ることが要件とはされていません。一方、六か月の保護観察では、この収容の仕組みは想定されていません。

少年院から仮退院した場合の保護観察

 少年院に送致された少年の多くは、収容の期間が終わる前に仮退院という形で社会に戻り、その後は保護観察を受けます。同じ保護観察でも、終わり方は異なります。保護観察を続ける必要がなくなったと認められたときは、保護観察所の長の申出を受けて、地方更生保護委員会が退院を決定することで終わります。逆に、守るべき事項を守らなかったと認められる場合には、少年院に戻して収容する旨の決定を求める申請がされることがあります。日々の面接や遵守事項の考え方そのものは、ここまで述べてきた内容と共通しています。

保護観察が始まる前後に家庭で確かめておきたいこと

 決定が出た直後は気持ちの整理がつきにくい時期ですが、最初に手を動かしておくと後が楽になることがあります。

  • 交付された書面に何がどう書かれているかを、家庭でも読み合わせておくこと。
  • 面接の日時と場所、担当する保護司への連絡方法を、少年本人だけでなく家族も把握しておくこと。
  • 引っ越し、長期の旅行、進学や転校の予定があるなら、日程が固まった段階で早めに相談しておくこと。
  • 学校や職場に対して、何をどこまで伝えるかを本人と話し合って決めておくこと。
  • 決まりを守れなかった日があったときに、隠さずに報告できる関係を家庭の中に作っておくこと。


保護観察をめぐって弁護士に相談できること

 弁護士法人若井綜合法律事務所は、池袋と新橋に事務所を構え、刑事事件や少年事件のご相談をお受けしています。保護観察の決定が出た後も、弁護士に相談できる場面は残されています。定められた特別遵守事項をどう受け止めればよいのか、学校や職場との関係をどう整理すべきか、決まりを守れない状態が続いているときにどう立て直すか、といった問題です。警告を受けた後の三か月は、生活の組み直しに使える時間でもあります。家庭だけで抱え込まず、早い段階でご相談ください。

まとめ


  1. 保護観察は決定の日から始まるが、実際の手続は保護観察所への出頭と保護観察官の面接から動き出す。
  2. 生活にかかる決まりは一般遵守事項、特別遵守事項、生活行動指針の三つで、性質も守れなかったときの扱いも異なる。
  3. 一般遵守事項には、住居の届出、届け出た住居に住むこと、転居や七日以上の旅行に事前の許可が要ることが含まれる。
  4. 在学中の少年には、学校に通うことや退学の申告が特別遵守事項として定められることがある。
  5. 社会貢献活動が義務づけられる場合があり、平日の日中に行われることもあるため学校との調整が要る。
  6. 面接の回数は固定ではなく、処遇の段階に応じて設定され、生活の状況に応じて変更される。
  7. 決まりを守れなかった場合は、警告、施設への送致の申請という段階があり、一度の違反で直ちに収容されるわけではない。
  8. 終わり方は期間の満了と期間途中の解除の二つで、解除はおおむね一年の経過と生活の状況を踏まえて検討される。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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