観護措置決定に異議がある|取消し・抗告の手続

若井亮

若井亮

テーマ:少年事件

家庭裁判所に送致されたその日に観護措置の決定が出て、そのまま少年鑑別所に収容された。連絡を受けたご家族から、この状態をどう争えばよいのかというご相談をいただくことがあります。
 調べていくと「異議申立て」「取消し」「抗告」という三つの言葉が出てきますが、この三つは同じ場面で並べて選べるものではありません。使える順番と、それぞれが何を争う手続なのかが決まっています。ここでは、観護措置決定に納得できないときに何ができるのかを、条文の位置関係から順に整理します。

観護措置決定で何が決まったのか

 観護措置は、家庭裁判所が審判を行うために必要があるときにとる措置で、少年法17条1項に二種類が定められています。一つは家庭裁判所調査官の観護に付するもの、もう一つは少年鑑別所に送致するものです。実務で用いられるのはほとんどが後者で、「観護措置がとられた」というときは、通常は鑑別所への収容を指します。

 逮捕・勾留されている少年が家庭裁判所に送致された場合、観護措置をとるかどうかは、到着したときから24時間以内に判断されます(少年法17条2項)。決定が出なければその日に身柄は解かれ、在宅のまま手続が進みます。

 収容期間は2週間が原則です(同条3項)。ただし特に継続の必要があるときは決定で更新することができ、更新は1回までとされています(同条4項本文)。実務上は多くの事件で1回更新され、通算4週間になるのが通例です。限られた場合にはさらに2回まで更新できますが、通算した収容期間は8週間を超えられません(同条9項)。

勾留とは別の枠組みで決まっている

 成人の事件における勾留は、捜査のための身柄拘束です。これに対し観護措置は、家庭裁判所が調査と審判を行うための措置で、鑑別所では心身の鑑別や行動観察が行われ、その結果が処分を決める資料になります。目的が違うため、「捜査が終わったのだから出られるはずだ」という理屈がそのままでは通りにくいという特徴があります。

 争い方も別に用意されています。勾留に対する準抗告ではなく、少年法が定めた手続を使うことになります。

「抗告」という言葉が指しているもの

 少年事件で「抗告」というとき、通常は保護処分の決定に対する不服申立てを指します(少年法32条)。少年院送致や保護観察といった処分が決まった後に、決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認、処分の著しい不当を理由として、2週間以内に高等裁判所へ申し立てるものです。

 観護措置決定は保護処分ではないため、この抗告の対象にはなりません。観護措置決定について用意されているのは、同じ家庭裁判所に対する異議の申立てです(少年法17条の2)。「抗告」という名前が登場するのは、その異議について結論が出た後の特別抗告(少年法17条の3)の場面だけです。

 つまり、「抗告」という言葉で調べ始めた方が実際にまず使うことになるのは、異議申立てのほうだということになります。三つの手続の位置関係は次のとおりです。

手続の名前対象になる決定申立先と期間
異議申立て(少年法17条の2)少年鑑別所送致の観護措置決定と、その更新決定事件が係属している家庭裁判所。期間の定めはない
特別抗告(少年法17条の3)異議の申立てについて家庭裁判所がした決定最高裁判所。申立期間は5日
抗告(少年法32条)少年院送致・保護観察などの保護処分の決定高等裁判所。2週間以内


異議申立てはだれが何を争う手続か


申し立てられるのは少年・法定代理人・付添人

 異議を申し立てられるのは、少年本人、その法定代理人、そして付添人です(少年法17条の2第1項)。親権者である保護者は法定代理人として自分の名前で申し立てることができます。ただし付添人は、選任者である保護者が明示した意思に反して異議を申し立てることはできないとされています。

 同居していても、祖父母やきょうだいは条文に挙げられていません。誰の名前で申し立てるのかは、最初に確認しておく点の一つです。

対象は鑑別所送致の決定と更新決定

 条文は、異議の対象を17条1項2号の決定と3項ただし書の決定に限定しています。前者が鑑別所送致、後者が更新の決定です。調査官の観護に付する決定は対象に含まれません。

 更新決定にも異議を申し立てられるという点は、実務上の意味が大きいところです。当初の決定について争わなかった場合でも、2週間が経って更新されたときに、その時点の事情を前提として改めて申し立てる余地があります。

判断するのは原決定に関与していない合議体

 異議の申立てについては、家庭裁判所は合議体で決定をしなければならず、その決定に原決定に関与した裁判官は関与できません(同条3項)。観護措置を決めた裁判官とは別の複数の裁判官が、改めて判断することになります。

 異議に理由があるときは、原決定が取り消されます(同条4項、少年法33条2項の読替え)。取り消されれば、少年の身柄拘束は解かれます。

「やっていない」は異議の理由にできない

 見落とされやすいのが、異議の申立ては審判に付すべき事由がないことを理由としてすることはできない、という定めです(同条2項)。非行事実そのものを否認していても、それを理由に異議を申し立てることはできません

 この手続で争えるのは、収容を続ける必要があるかどうかです。事実関係の争いは、調査と審判のなかで扱われます。納得できない気持ちと、この手続の入口とがずれていることは、あらかじめ知っておいたほうがよい点だと考えています。

異議で主張するのは「観護措置の必要性」

 条文は、観護措置の要件を「審判を行うため必要があるとき」としか定めていません。実務では、審判条件があること、少年が非行を犯したことを疑うに足りる相当な事情があること、審判を行う蓋然性があること、観護措置の必要性があること、という四つに分けて検討されると説明されています。

 このうち争点になるのは、多くの場合、最後の必要性です。必要性の中身は、調査・審判・決定の執行を滞りなく進めるために身柄を確保する必要、緊急に少年を保護する必要、収容して心身の鑑別をする必要、のいずれかがあることだと整理されています。

必要性を否定する方向に働きうる事情

 書面で示していくことになるのは、次のような具体的な事情です。

  • 非行の態様や結果が軽微で、常習性がうかがわれないこと。
  • 被害者や目撃者の供述がすでに録取され、働きかけの余地が乏しいこと。
  • 被害者や目撃者の連絡先を知らないこと。
  • 当初から事実を認め、説明が変わっていないこと。
  • 定まった住居があり、保護者と同居して日常的な監督を受けられること。
  • 学校や職場に通い続けており、生活の枠組みが崩れていないこと。
  • 収容が続くことで、退学や受験機会の喪失といった回復しにくい不利益が生じること。


 これらは、書面で述べるだけでなく、裏づけとなる資料を添えることが求められます。入試や定期試験の日程表、受験票、通知表、審判期日に少年を出頭させる旨の保護者の誓約書などが用いられます。抽象的に反省を述べるより、日程や役割が具体的に分かる資料のほうが、必要性の判断には結び付きやすいといえます。

もう一つの道は「取消しを求める」働きかけ

 少年法17条8項は、観護の措置は決定によって取り消し、または変更することができると定めています。さらに少年審判規則21条は、観護の措置はその必要がなくなったときは速やかに取り消さなければならない、としています。この職権の発動を促すために上申書を提出する、という方法があります。

申立権はないが、実務では柔軟に運用されている

 異議申立てが条文上の権利であるのに対し、取消しについては申し立てる権利が定められているわけではありません。あくまで裁判所が自ら判断するよう促す形になります。もっとも実務では、決定後の事情の変化を踏まえて、取消しが柔軟に運用されていると説明されています。

 判断するのは、原則として観護措置を決めた裁判官本人です。事件の内容を把握している裁判官に直接届けられる一方、いったん必要と判断した裁判官が判断し直すことになる、という両面があります。

決定の後に生まれた事情はこちらで示しやすい

 異議申立ては、原決定の当否を争う手続です。したがって、決定の時点でどう判断すべきだったかが議論の中心になります。

 これに対し、決定の後に受験日程が確定した、保護者の勤務体制が変わって監督できるようになった、通院や転校の段取りが整った、といった変化は、取消しを求める上申のほうが持ち込みやすい材料です。何を主張したいのかによって、二つの手続の向き不向きが分かれます

異議と取消しの上申はどう使い分けるか


比べる点異議申立て取消しを求める上申
条文上の位置づけ少年法17条の2が定める不服申立て少年法17条8項・少年審判規則21条に基づく職権の発動を促すもの
判断する裁判官原決定に関与していない裁判官による合議体原則として観護措置を決めた裁判官
中心になる主張決定の時点で必要性の要件を満たしていなかったことその後の事情によって必要性がなくなったこと
手続上の副作用記録と証拠物が異議を判断する裁判所に送られ、その間は付添人が記録を確認しにくくなる記録は担当裁判官の手元にとどまる
通らなかったとき最高裁判所への特別抗告が用意されている回数の定めはなく、事情が変われば改めて上申できる


 実際には、どちらか一方を選ぶというより、収容の日数と手元の材料をみて順序を決めることになります。決定直後で材料がそろっているなら異議申立て、時間が経って事情が動いたなら取消しの上申、という組み立てが基本形です。

示談ができても、それだけで取り消されるとは限らない

 成人の刑事事件では、被害者との示談が不起訴の方向に働くことがあります。少年事件でも同じだろうと考えて相談に来られる方は少なくありません。

 ただし、少年審判で判断されるのは要保護性、つまり将来再び非行に至る危険の有無や程度、どの処遇が適切かという点です。示談が成立したからといって、それが直ちに観護措置の取消事由になるわけではありません

 もっとも、謝罪や被害弁償の準備が進んでいること自体は、少年の内省が深まっていることや、保護者が監督者として機能していることを示す事情になり得ます。示談を切り札としてではなく、必要性を否定する材料の一つとして位置づけて組み立てることになります。

異議が認められなかった場合

 異議の申立てについて家庭裁判所がした決定に対しては、最高裁判所への特別抗告が用意されています(少年法17条の3)。ただし理由は、憲法違反、憲法の解釈の誤り、最高裁判所または控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと、に限られ、申立期間も5日と短く設定されています。

 収容の必要性そのものをもう一度検討してもらう道ではない、という点は押さえておく必要があります。実際には、取消しを求める上申に切り替える、更新の決定が出た段階で改めて異議を申し立てる、審判に向けた環境の調整に重心を移す、といった選択になります。

 なお、異議を申し立てただけで収容が止まるわけではありません。申立て中も期間は進んでいきますので、申立てをするかどうかの判断そのものを早めに行う必要があります

動き出す前に確かめておきたいこと

 まず、時間の勘定です。原則は2週間、更新されれば4週間になります。決定が出た日から数えて、定期試験、入試、就職の面接といった予定がどこに重なるのかを確認すると、どの手続をどの順番で使うかが見えてきます。

 次に、記録の所在です。付添人は、審判開始の決定があった後であれば保護事件の記録を閲覧することができます(少年審判規則7条2項)。一方、異議を申し立てると、記録と証拠物が異議を判断する裁判所に送られることがあり、その間は記録を確認しにくくなります。記録を読んでから申し立てるのか、日数を優先して先に申し立てるのかは、事案によって判断が分かれるところです。

 もう一つは面会です。鑑別所の一般面会は、近親者など限られた範囲の人に許可され、職員の立会いのもとで短時間行われるのが一般的です。付添人としての面会にはこうした制限がなく、少年から直接、事件のことや生活の状況を詳しく確認できます。異議申立書や上申書に書き込む材料は、この面会から集まってくることが多いといえます。

観護措置の期間中に相談できること

 観護措置は、決まった時点で日数の上限が見えている手続です。そのなかで何をどの順序で行うかによって、収容が続く期間も、その後の審判に向けた準備の進み方も変わってきます。ご家族だけで書面を整えるのは負担が大きく、記録を読める立場にあるかどうかでも組み立て方が変わります。

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、池袋と新橋に事務所を置き、少年事件についてのご相談をお受けしています。観護措置の決定が出た直後の段階でも、更新の時期が近づいている段階でも、いま取り得る手続と、そのために必要な資料をご説明することができます。お子さまの状況やこれまでの経緯を伺ったうえで、進め方を一緒に検討します。

まとめ


  1. 観護措置は少年鑑別所への収容が中心で、原則2週間、更新されて通算4週間になるのが実務上の通例です。
  2. 観護措置決定に対する不服申立ては「異議申立て」で、保護処分に対する「抗告」とは別の手続です。
  3. 異議を申し立てられるのは少年・法定代理人・付添人で、対象は鑑別所送致の決定とその更新決定です。
  4. 異議は原決定に関与していない裁判官の合議体が判断しますが、非行事実がないことを理由にはできません。
  5. 争点になるのは主に観護措置の必要性で、日程や監督体制が分かる具体的な資料が材料になります。
  6. 決定後に事情が変わった場合は、少年法17条8項・少年審判規則21条に基づく取消しの上申が向いています。
  7. 異議が認められなかった場合の特別抗告は理由が限られ、申立期間も5日と短く設定されています。
  8. 収容期間は申立て中も進むため、どの手続をいつ使うかを早い段階で決めておくことが大切です。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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