【不貞慰謝料】配偶者がすでに支払っている場合|二重取りにならない仕組み
交際関係にあった相手と共同で経営していた事業について、関係解消をきっかけに対立が生じ、弁護士の関与によって清算に至った事案をご紹介します。個人的な関係の解消と事業の解消が重なる珍しいケースでしたが、交渉材料を丁寧に整理したことで早期の解決につながりました。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼者 | Aさん(女性・40代) |
| 相手方 | Bさん(元交際相手であり、共同で事業を経営していた人物) |
| トラブルの内容 | 交際関係の解消に伴い、共同経営していた事業の扱いを巡って対立が生じた |
| 解決の方法 | 弁護士が窓口となって交渉し、合意書を取り交わして終件 |
ご依頼に至るまでの経緯
共同経営していた事業を巡る対立
Aさんは、交際相手であったBさんと共同で、性風俗関連の店舗を経営していました。元々はAさんが始めた事業をBさんが手伝うようになり、やがてBさんが代表者として運営を担うようになっていました。
事業は順調に規模を拡大していましたが、あるときAさんとBさんの交際関係が悪化し、別れることになりました。
事業を始めたのはAさんであったことから、Aさんは Bさんに事業から外れるよう求めましたが、Bさんは自分が事業を大きくしたと主張し、応じませんでした。話し合いを重ねても状況は変わらず、Aさんは自身が採用してきたキャストとともに、新しい事業を立ち上げることを検討し始めました。
新事業立ち上げに伴うリスクと不安
新しい事業の商圏は、これまでBさんと展開してきた商圏と重なり、業態としても競合することが見込まれました。そのため、黙って準備を進めればBさんとの間でトラブルになる可能性が高い状況でした。
Bさんとは冷静に話し合うことが難しく、特定の関係先との付き合いがあるとされ、事業解消の話し合いの際にも穏やかとは言えない発言を繰り返していたため、Aさんが自ら交渉を進めることには不安がありました。また、BさんはAさんの動きを察知してか、所属キャストに退店をしないよう働きかけたうえ、退店して同じ商圏で同業種に従事した場合には高額の損害賠償責任を受け入れる旨の誓約書を作成させていました。
このままではBさんに事業を握られたまま身動きが取れないと考えたAさんは、弊所へ相談に来られました。
弁護士の対応と解決への流れ
交渉材料としての貸付金
弁護士がAさんから時系列で事情を伺ったところ、Aさんの一番の希望は今の事業を継続し、Bさんに外れてもらうことでした。しかし、Bさんが代表者としての地位を固めている状況では、法的な対処は難しいと考えられました。
一方、キャストを連れて新しい事業を立ち上げることにも、引き抜き行為や競業に該当するとして損害賠償を請求されるリスクがありました。誓約書についても、在籍を強要することはできないものの、退店してAさんの事業に移った場合に個別の損害賠償請求を受ける可能性が残っていました。
交渉材料を探るなかで、AさんがBさんに個人的に貸していたお金があることが分かりました。借用書こそありませんでしたが、金額やBさんが借主であることが分かるやり取りがLINEに残っていました。金額は1000万円を超えており、弁護士はこの貸付金を交渉材料に用いる方針をAさんに提案しました。具体的には、キャストの退店や新事業の開始について損害賠償請求をしない代わりに、AさんもBさんへの貸付金を請求しないという内容で合意を目指す方針です。
直接交渉の場と代理人就任
Aさんは概ねこの方針に同意しつつ、自身だけでなく所属キャスト全員について損害賠償請求をしないようにしてほしいとの希望を伝えました。弊所はこの方針で交渉を進めることになりました。
ただし、AさんはBさんの連絡先を店舗の事務所以外に把握しておらず、事務所を訪ねることにもリスクが伴うと考えられたため、別の方法を検討しました。所属キャストのCさんがBさんに呼び出される機会があったことから、弁護士がその場に同行し、店舗ではなく近くの喫茶店で話をしたいとBさんに申し入れてもらいました。
当日、Bさんのほかに同席者が1名おり、弁護士がAさんらの代理人である旨を伝えたところ、Bさん側は態度を硬化させ、自分たちも弁護士を立てると述べました。弁護士は、以後Aさんらへ直接連絡をしないよう伝えたうえで、弁護士からの連絡を待つよう告げ、その場を辞去しました。
合意に至るまで
その後、Bさんにも代理人弁護士が就き、双方の弁護士間でやり取りを行うことになりました。Bさんの代理人によれば、新しい事業を始めること自体は構わないが、キャストが退店してAさんの事業に加わることには難色を示しているとのことでした。
弊所からは、話し合いがまとまらなくても所属キャストは退店の意向であること、その一部がAさんの事業への参加を希望する可能性があること、Aさんはキャストを受け入れる意向であり、損害賠償請求があれば対応する意向であることを伝えました。あわせて、Bさんの事業への影響を踏まえ、Aさんが有する貸付金債権を放棄する提案も行いました。
最終的にBさんは、紛争を長引かせるよりも新しい体制を早期に始めた方がよいと判断し、Aさんの提案を受け入れました。その後、双方の関係を清算する内容の合意書を取り交わし、本件は終件となりました。
解決結果と弁護士のコメント
男女トラブルが生じる場面として多いのが、交際関係の解消時です。交際期間中に支出したお金や渡した物について、後から清算や返還を求めたいというご相談や、逆に請求を受けたというご相談を弊所でも多くお受けしています。
お金や物を贈与したものである場合には、原則として返還請求は認められません。一方、貸したお金や預けただけのお金であれば、返還を求めることができます。男女間のやり取りは曖昧になりやすく、証拠が十分に残っていないことも多いため、関係の清算が難航しやすい傾向にあります。お金や高価な物のやり取りをする際には、書面を作成するか、少なくともメッセージのやり取りで事実を残しておくなど、証拠を保全しておくことが望ましいといえます。
本件は、個人的な関係の解消に共同経営していた事業の解消が重なるという、比較的珍しいケースでした。厳密に法的な理屈だけで押し進めていた場合には、本件のようにスムーズな解決には至らなかった可能性があります。また、双方が感情的にならず、経済的な観点を中心に判断できたことも、早期の解決につながった要因といえます。
男女トラブルは、法的には整理しやすいケースであっても、当事者双方の感情が影響して複雑化・長期化することが少なくありません。紛争が長引くことで精神的に疲弊し、相手方の要求を受け入れてしまうケースもあります。当事者同士でのやり取りが難しいと感じた場合は、複雑化・長期化する前に弊所へご相談ください。
同種のトラブルでお悩みの方へ
- 交際関係の解消に伴い、共同で行っていた事業や金銭の扱いで対立している。
- 相手に貸したお金があるが、証拠が乏しく回収できるか不安である。
- 相手の交友関係や態度から、自分で直接交渉することに不安を感じている。
- 従業員や関係者を巻き込んだ形でトラブルが拡大しそうな状況にある。
- 合意書や誓約書の効力について確認しておきたい。


