結婚をちらつかせて金銭・関係を得る|結婚詐欺と貞操権侵害の境界
「独身だと言われて交際していた相手が、実は既婚者だった」と気づいたとき、住所も電話番号も分からない状態から慰謝料請求まで進められるのか、不安に思う方は少なくありません。今回は、マッチングアプリで知り合った男性から交際中一貫して独身であると説明されていた依頼者が、車のナンバーから相手の身元と婚姻状況を特定し、慰謝料の支払いを受けて解決に至った事例をご紹介します。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご相談者 | Aさん(30代女性) |
| 相手方 | マッチングアプリで知り合った交際相手の男性 |
| ご相談のきっかけ | 交際を続ける中で相手が既婚者ではないかとの疑いを抱いたこと |
| 把握していた情報 | 氏名・勤務先・車のナンバーのみ(住所は不明) |
| ご依頼内容 | 既婚の事実を隠されていたことに対する慰謝料請求 |
| 解決結果 | 相手方から慰謝料の支払いを受ける内容で合意書を締結 |
ご相談までの経緯
Aさんは、マッチングアプリで知り合った男性と交際を始め、約8か月間、月1〜2回程度の宿泊を伴う交際を続けていました。ほぼ毎日LINEや電話で連絡を取り合う関係で、交際は一定の期間続いていました。
Aさんは交際を始めた当初から、相手が既婚者であれば交際を続けるつもりはないことを明確に伝えており、違和感を覚えるたびに、対面やLINEで既婚ではないかを確認していました。これに対して相手方は「結婚したことは一度もない」「子どももいない」とその都度否定し、独身であることを前提とした生活ぶりを装っていたといいます。
しかしある日、Aさんは相手方の母親と思われるSNSアカウントで、相手方が写った結婚式の写真や子どもとの家族写真を見つけました。既婚の疑いを強めたAさんが本人に直接確認したところ、相手方はなお既婚であることを否定しましたが、このやり取りは録音として残されていました。
Aさんは、既婚の事実を隠されたまま関係を続けさせられていたことについて精神的苦痛を感じ、慰謝料請求を希望されました。もっとも、相手方の住所は分からず、把握していたのは氏名・勤務先・車のナンバーといった限られた情報のみという状況でした。
弁護士の対応と交渉の経緯
当事務所ではまず、慰謝料請求の前提となる相手方の身元と婚姻状況の確認から着手しました。Aさんが把握していた車両ナンバーをもとに弁護士会照会を行い、運輸支局から車両の所有者情報を取得しました。そこから住民票・戸籍を順次取得したところ、相手方は数年前に婚姻しており、子どもが2人いること、離婚していないことが確認できました。Aさんが抱いていた疑いは、公的な資料によって裏付けられる形となりました。
身元を確定させた後、当事務所から相手方へ慰謝料請求の書面を送付しました。これを受けて相手方は弁護士を選任し、以後は代理人同士での交渉となりました。相手方代理人からの回答が遅れる場面では、当事務所から回答を促す連絡を重ね、交渉が停滞しないよう対応しました。
交渉では、Aさんが確認のたびに独身であると説明されていた経緯や、録音・LINEといった客観的な証拠の存在を踏まえて協議を進めました。その結果、相手方が慰謝料を支払う内容で合意書を締結し、事件は終結しました。
解決結果と対応のポイント
本件では、次のような対応を行いました。
・車両ナンバーを起点とした弁護士会照会により、住所が分からない相手方の身元・婚姻状況を特定した
・戸籍の確認により、相手方が既婚者(子ども2人)であることを裏付けた
・代理人同士の交渉を通じて、相手方から慰謝料の支払いを受ける内容の合意書を締結した
・Aさんが相手方と直接顔を合わせることなく解決に至った
既婚であることを隠して交際を続ける、いわゆる独身を装う交際のトラブルに関するご相談は珍しくありません。この種の相談で慰謝料請求を行うには、相手が既婚であることを説明しなかったというだけでなく、独身であると積極的に信じ込ませるような事情があったかどうかが重要になります。本件では、Aさんが交際中に繰り返し確認を行い、そのやり取りを録音やLINEとして残していたことが、交渉を進めるうえでの支えになりました。
また、本件は相手方の住所や電話番号が分からない状態からの依頼だったという点にも特徴があります。車のナンバーという断片的な情報であっても、弁護士会照会を活用することで、車両の所有者から住民票・戸籍へとたどり、身元や婚姻状況の確認につながる場合があります。
同種のご相談をお考えの方へ
・相手が既婚者かもしれないが、確かめる手段が分からない
・住所も電話番号も知らないため、請求は難しいと感じている
・相手に一貫して独身だと説明され続けていた
このような状況にある方も、手元に残っている情報や証拠から対応を検討できる場合があります。まずは分かっている範囲の情報をお持ちのうえ、ご相談ください。


