再逮捕が繰り返されるのはなぜか|余罪と追起訴の見通し
謝罪文の文例を探している方の多くは、「何をどう書けばよいのか見当がつかない」という段階にいます。インターネット上には罪名ごとの雛形が数多く公開されていて、参考にすること自体に問題はありません。ただ、公開されている文例のうち、どの場面でもそのまま使える部分は、実はそれほど多くありません。
謝罪文が読み手に届くかどうかを分けるのは、書き出しや結びの言い回しではなく、事件の中身に触れたわずか数行です。そこが一般的な表現のまま残っていると、体裁は整っていても、読み手には「どこかで見た文章」として受け取られます。
この記事では、痴漢・盗撮・暴行・窃盗の四つの場面を取り上げ、どの場面でも共通して使える骨格と、場面ごとに書き分けが必要になる部分を分けて整理します。あわせて、避けたい書き方と、その言い換えの方向も示します。なお、謝罪文の構成要素そのものや、書いてはいけない記載の理由については、別の記事で扱っています。
同じ文面が使える部分と、使えない部分
謝罪文には、法律で決められた書式がありません。もっとも、実務で用いられている謝罪文には、おおむね共通した骨格があります。宛名、謝罪の言葉、事件の事実と原因、今後についての記載、そして結びです。この骨格は、場面が変わってもほとんど変わりません。
一方で、場面によって書き分けが必要になるのは、次の四か所です。
- 被害の中身をどう言葉にするか。
- 何を再発防止策として挙げるか。
- どの事情には触れない方がよいか。
- 弁償の対象として何を想定しているか。
文例を写しただけの謝罪文が読み手に気づかれやすいのは、この四か所が一般的な言い回しのまま残っているからです。逆にいえば、ここを自分の事案に合わせて書くことができれば、残りは平易な言葉で足ります。文章のうまさが求められているわけではありません。
四つの場面で何が変わるのか
| 場面 | 被害の中身の書き方 | 再発防止策として挙げやすいもの | 触れない方がよい記載 |
|---|---|---|---|
| 痴漢 | 見知らぬ相手から突然触れられた恐怖と不快感 | 通勤の時間帯や経路の変更、車内での手の位置、通院 | 相手の服装や容姿、車内の混雑、酒量にまつわる説明 |
| 盗撮 | 自分の姿がどこに残っているのか分からない不安 | 撮影機器の処分、端末やデータの管理、通院 | 撮影枚数の少なさ、写り方の程度をめぐる説明 |
| 暴行・傷害 | けがの痛み、通院の負担、人と接することへの不安 | 飲酒する場面の見直し、家族や職場による見守り、通院 | 相手の言動、口論に至った経緯、記憶がないという説明 |
| 窃盗 | 財産の損害に加え、確認や警察対応に費やされた負担 | 金銭の管理方法の見直し、店舗に近づかないこと、通院 | 被害額の少なさ、出来心という表現 |
同じ「反省しております」という一文でも、その前後に置かれる事実が違えば、受け止め方は変わります。表に挙げたのは典型例で、実際の事件では当てはまらない場合もあります。
どの場面にも共通する骨格の文例
宛名
宛名は「被害者様」とするのが一般的です。捜査の過程で相手の氏名を知った場合でも、氏名を書かない方がよい場面があります。加害者側に自分の名前が知られていること自体が、相手の不安につながることがあるためです。相手が店舗や会社であれば、「○○店 店長様」「株式会社○○ 御中」といった宛名になります。
書き出し
書き出しは、前置きを置かずに謝罪から入る形が読みやすくなります。時候の挨拶や自己紹介から始める必要はありません。
「この度は、私が起こした事件により、被害者様に多大なご迷惑とご負担をおかけいたしました。心よりお詫び申し上げます。」
結び
結びでは、弁償の意思を伝えるところまでを書き、金額には触れないのが一般的です。金額は示談交渉の中で決まるもので、先に書面へ書いてしまうと、話し合いの前提が固まってしまうことがあります。
「せめてもの償いとして、被害の弁償をさせていただきたいと考えております。詳細につきましては、代理人の弁護士からご連絡させていただきます。略儀ではございますが、書面にてお詫び申し上げます。」
痴漢の場面|書き分けのポイントと文例
被害の中身は、いつ、どこで、何をしたのかを一文で特定したうえで、相手が受けた影響に触れる形になります。行為をぼかした表現にすると、何について謝っているのかが伝わりません。
「私は、○月○日午前○時ころ、○○線の車内において、被害者様の身体に手で触れました。見ず知らずの人間から突然そのようなことをされた恐怖と不快感は、私の想像の及ぶものではないと考えております。」
再発防止策は、実際に始めたことや、これから続けられることに絞ります。痴漢の場面では、電車に乗る時間帯や経路そのものを変える、車内での手の置き方を決めておく、といった行動レベルの内容が挙げやすくなります。
「今後は始業時刻を早め、混み合う時間帯を避けて通勤しております。車内では両手でつり革と鞄を持つようにし、座席が空いていない場合は次の電車を待つことにしました。あわせて、専門の医療機関で相談を始めております。」
触れない方がよい記載は、相手の服装や容姿、車内の混雑、飲酒による記憶のあいまいさです。いずれも事実として書いたつもりでも、責任を分散させる説明として読まれることがあります。事実関係そのものに争いがある場合は、書き方が変わりますので、書面を出す前に弁護士に相談してください。
盗撮の場面|書き分けのポイントと文例
被害の中身については、撮影したという事実に加えて、撮られた画像が今どこにあるのか分からないという不安に触れる点が、他の場面との違いになります。この不安は、事件が終わった後も続くものです。
「私は、○月○日、○○において、被害者様に無断でカメラを向け、撮影しました。撮影された画像がどこに残っているのか分からないという不安を与えてしまったことを、深くお詫び申し上げます。」
このとき注意したいのが、データの扱いをどこまで書くかです。「すべて削除しました」「誰にも見せていません」と書けるかどうかは、端末が押収されているか、外部に保存された記録が確認できているかによって変わります。確認できる範囲を超えて断定すると、後の捜査で明らかになった事実と食い違い、かえって信用されにくくなるおそれがあります。「機器は捜査機関にお渡ししており、私の手元にはありません」など、確かめられる事実にとどめる書き方が無難です。
再発防止策としては、撮影に使った機器の処分、端末の管理方法の変更、医療機関での相談などが挙げられます。
触れない方がよい記載は、撮影枚数の少なさや、顔が写っていないといった程度の説明です。被害の大きさを見積もるのは相手の側であって、書き手の側ではありません。
暴行・傷害の場面|書き分けのポイントと文例
この場面の特徴は、けがという目に見える結果があり、弁償の対象が広くなることです。治療費や通院にかかった交通費、仕事を休んだことによる損害などが、示談の話し合いに含まれることがあります。ただし、謝罪文の段階で項目や金額を並べる必要はありません。
「私は、○月○日、○○において、被害者様に暴力を振るい、けがを負わせました。痛みと通院のご負担に加え、人と接することへの不安を与えてしまったことを、深くお詫び申し上げます。」
再発防止策では、原因となった場面を避ける形が具体的です。飲酒が関係している場合には、飲む量や場面についての取り決め、家族や職場に協力してもらう体制などが挙がります。
「今回の件を受け、外で酒を飲むことをやめました。帰宅時間を家族に伝えることにし、職場の上司にも事情を説明したうえで、勤務後はまっすぐ帰宅しております。」
触れない方がよい記載は、相手の言動や、口論に至った経緯です。事実として先に手を出されていたとしても、謝罪文はその点を主張する書面ではありません。争う必要がある事情は、捜査の場や弁護人を通じて別に伝えることになります。
窃盗の場面|書き分けのポイントと文例
窃盗では、相手が個人ではなく店舗や会社である場合があります。その場合、宛名も文面も、個人に宛てたものとは変わります。また、被害品が返っているのか、代金相当額が未払いのままなのかによって、書ける内容も変わります。
「私は、○月○日、貴店において、商品を代金を支払わないまま持ち出しました。商品そのものの損害だけでなく、確認や警察へのご対応のために、従業員の皆様のお時間を奪ってしまいました。誠に申し訳ございません。」
再発防止策としては、金銭の管理方法を変えること、当該店舗やその周辺に立ち入らないこと、繰り返しがある場合には医療機関に相談することなどが挙げられます。繰り返してしまう背景に依存的な問題がうかがえる場合、通院を始めていること自体が、再発防止の材料として説明しやすくなります。
触れない方がよい記載は、被害額の少なさと、「出来心」「魔が差した」という表現です。金額の多寡は書き手が評価することではありませんし、後者は原因の説明になっていないため、読み手には反省の言葉として届きにくくなります。
避けたい書き方と、言い換えの方向
| 避けたい書き方 | 読み手にどう伝わるか | 言い換えの方向 |
|---|---|---|
| 魔が差しました | 原因の説明になっていない | 何が引き金だったのかを一文で書く |
| 酔っていて覚えていません | 責任から距離を置いていると読まれる | 覚えている範囲を書く。争いがある場合は書かない |
| 軽い気持ちでした | 被害を小さく見せようとしていると読まれる | 自分の行為が相手に与えた影響から書く |
| 相手の方も○○でした | 落ち度の指摘と受け取られる | 記載しない |
| 二度としません | 確かめようがない決意にとどまる | すでに始めたことを具体的に書く |
| 示談に応じていただけると助かります | 見返りを求めていると読まれる | 弁償の意思を伝えるところまでにとどめる |
| 前科がつくと困ります | 自分の不利益が主題になっている | 記載しない |
| ○○万円をお支払いします | 話し合いの前に金額が独り歩きする | 金額には触れず、弁償の意思のみを書く |
いずれも、書いた本人には誠実な説明のつもりであることが多い表現です。だからこそ、書き上げた後に第三者の目を通す意味があります。
文例を使うときに確認したい三つのこと
渡せる状況かどうかを先に確かめる
謝罪文は、書けば渡せるというものではありません。受け取ること自体を負担に感じる方もいますし、捜査機関が加害者側に相手の連絡先を伝えることも通常はありません。渡してよいかどうかの確認は、弁護人を通じて行うのが一般的です。書き上げる前に、その確認から始める方が順序として自然です。
文例をそのまま写さない
公開されている文例は、特定の事件を前提に作られたものではありません。そのまま用いると、事件の中身に触れた部分が空白のままの文章になります。検索すれば同じ文面が出てくることもあり、写したことが分かった場合、その後の話し合いに影響するおそれがあります。文例は、構成を確かめるための参考として使うのが適した位置づけです。
日付を入れ、控えを残す
作成した日付を記載し、渡す前に写しを取っておきます。相手が受け取らなかった場合でも、作成した事実と時期が残ります。なお、いったん渡した書面は返してもらうことができず、内容の一部が手続の中で記録として扱われる場面もあります。この点は別の記事で詳しく扱っています。
まとめ
- 謝罪文には決まった書式がなく、宛名・謝罪・事実と原因・今後・結びという骨格は場面を問わず共通する。
- 場面ごとに書き分けが必要なのは、被害の中身、再発防止策、触れない方がよい記載、弁償の対象の四か所である。
- 痴漢では相手の服装や車内の状況、暴行では口論の経緯、窃盗では被害額の少なさに触れない書き方が求められる。
- 盗撮では、画像やデータの所在について、確認できる範囲を超えて断定しないよう注意する。
- 弁償の意思は書いてよいが、金額は示談交渉の中で決まるため、謝罪文には書かないのが一般的である。
- 渡してよいかどうかの確認、内容の確認、日付と控えの管理は、書き上げる前後にあわせて行う。
謝罪文は、書き方そのものよりも、どの段階で、誰を通じて、何を書くかによって受け止められ方が変わります。事件の内容や捜査の進み方によって適切な書き方は異なりますので、書面を出す前の段階で弁護士にご相談ください。当事務所では、示談交渉とあわせて、謝罪文の内容の確認や受け渡しの調整にも対応しております。


