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「先に相談した事務所の説明が、どうも腑に落ちない」「別の弁護士にも意見を聞いてみたい」。風俗店とのトラブルを抱えたとき、そう考えて二か所目を探す方は少なくありません。他の事務所にも相談してよいのか、という問い自体への答えは単純で、妨げられてはいません。ただ、風俗トラブルには他の分野にはあまりない事情が一つあります。相談しようとしている事務所が、相手方である店の側に立っている場合がある、という点です。
この記事では、性風俗の利用をめぐってトラブルになった方が二か所目以降の事務所に相談するときに、どこへ気をつければよいかを整理します。弁護士の選び方そのものや費用の見積りの見方、依頼中の弁護士との関係の整理といった一般的な論点は別の記事で扱っていますので、ここでは風俗特有の部分に絞ります。
他の事務所に相談すること自体は、妨げられていない
まず前提を確認します。弁護士の職務上の取決めでは、依頼者が他の弁護士に依頼しようとするときに、正当な理由なくこれを妨げてはならないとされています。依頼より前の相談の段階であればなおのことで、複数の事務所へ話を聞きに行くこと自体を禁じるしくみはありません。
相談は依頼の約束ではありませんし、一か所で話を聞いたからといって、そこへ頼まなければならない義理が生じるわけでもありません。この点は分野を問わず共通しますので、詳しくは別の記事にゆずります。
したがって、風俗トラブルで考えるべきことは「してよいか」ではなく、どこへ、何を伝えてから話すかという順序の問題になります。
風俗トラブルでは、相手方の側にも弁護士がいることがある
風俗店やナイトビジネスの事業者に向けて、顧問業務を掲げている法律事務所は実際に存在します。掲げている業務の中身は事務所によって幅がありますが、店の規約や誓約書の整備、従業員やキャストとのトラブル対応に加えて、客との金銭トラブルの交渉まで扱っていることがあります。
つまり、あなたが「この分野にくわしそうだ」と感じて選んだ事務所が、店の側の業務で経験を積んだ事務所である可能性があります。経験が豊富であることと、あなたの側で動けることは、別の話です。
「風俗にくわしい」という表示だけでは立場は読み取れない
サイトに書かれているのは多くの場合、扱っている分野の名前です。分野名は、店の側で扱っているのか、キャストの側で扱っているのか、客の側で扱っているのかまでは示しません。表示の読み方そのものは別の記事で詳しく扱っていますので、ここでは「分野名は立場を表さない」という一点だけ押さえておいてください。
店側の顧問をしている事務所に相談すると、何が起きるか
起こり方は、大きく三つに分かれます。
| 場面 | そこで起きること | こちらへの影響 |
|---|---|---|
| 予約の段階で分かる | 相手方の店名を伝えた時点で、相談を受けられない旨を伝えられる | 時間の損失にとどまり、内容は伝えていない |
| 相談の当日に分かる | 話の途中で相手方が確認され、そこで打ち切りになる | 移動と待ち時間が無駄になり、一部は話している |
| 気づかないまま話す | 受け付けてもらえたが、後日に事情が判明する | 事情を細かく話したうえで、進め方が止まる |
三つのうち、こちらの手間がいちばん小さいのは一つ目です。予約の段階で相手方が確認されるしくみは、断られるための関門のように見えるかもしれませんが、実際には早い段階で不都合を見つけるための手続きとして働いています。
注意しておきたいのは、店の側と何らかの関係がある事務所であっても、その場ですぐに「あなたの相手方の顧問です」と告げられるとはかぎらない点です。理由は次の章と、その次の章で説明します。
予約のときに店名や源氏名を聞かれる理由
法律事務所が相談の予約を受け付けるとき、相談者の氏名だけでなく、相手方の氏名や会社名をあわせて確認する運用は広く行われています。同じ事件について双方から話を聞くことができないため、その照合を先に済ませておく必要があるからです。
風俗トラブルでは、この確認の対象が少し独特になります。相手方が個人とはかぎらず、店、運営会社、グループ全体と、複数の層に分かれていることがあるためです。源氏名しか分からない、店の正式名称が分からない、という状態も珍しくありません。
匿名で相談したい気持ちとの折り合い
利用したこと自体を人に知られたくない、という気持ちから、店名や状況をぼかして相談したくなるのは自然なことです。ただ、店名を伏せたままだと、事務所の側は照合ができません。結果として、相手方の側にある事務所に事情を話してしまう可能性が残ります。
法律事務所には守秘義務があり、これは正式に依頼した後だけでなく、相談の段階から働きます。相談したという事実そのものについても同じです。伏せておくことで守られるものより、伝えることで避けられるもののほうが大きい場面が多い、と考えておくとよいでしょう。
なお、家族や勤務先に知られたくないという事情がある場合は、店名を伏せるのではなく、連絡方法の側を調整するのが実際的です。郵便の送り先や電話をかけてよい時間帯といった運用は、相談の入口で相談できます。
断られたとき、理由が説明されないことがある
相談を受けられないと言われたときに、その理由を教えてもらえないことがあります。理由を述べること自体が、他の誰かが相談に来たという事実を明かすことになってしまうためです。ここでも守秘義務が働いています。
| 断られ方 | 考えられる事情 | 次にすること |
|---|---|---|
| 理由を説明されずに断られた | 相手方または近い立場の人から先に話を聞いている | 理由を問い詰めず、別の事務所を探す |
| 同じグループの事務所でも断られた | 同じ事務所内の他の弁護士に及ぶ扱いになっている | 系列や支店の異なる事務所をあたる |
| 分野として扱っていないと言われた | 立場や種類の面で受けていない | 扱っている範囲を尋ねて次の候補を絞る |
断られたことは、あなたの言い分が弱いという評価ではありません。事務所の側の事情によるものですので、そこで気持ちを折らずに、次の候補へ移ってください。
話してしまった内容は、どう扱われるか
すでに事情を話したあとで、その事務所が店の側に立っていると分かった場合、話した内容が店へ流れてしまうのではないかと心配になると思います。この点については、弁護士は職務上知った秘密を守る義務を負っており、これは相談だけで終わった相手についても働く、というのが原則です。
さらに、こちらから相談を受けて具体的な進め方まで話が及んでいれば、その事務所は同じ件で相手方の側に立つことができなくなるのが原則です。相談した側が不利になる一方通行のしくみではない、ということです。
もっとも、これは事後の説明であって、狙って作れる状況ではありません。実際には、どこまで話が及んだのかの評価が分かれることもありますし、進め方が止まってしまう時間の損失は残ります。やはり、入口で確認しておくほうが、手間の少ない進め方です。
同じ事務所の別の弁護士でも、扱いは変わらないのが原則
「担当の弁護士を替えてもらえばよいのでは」と考える方がいますが、同じ事務所に所属する別の弁護士にも、同じ制限が及ぶのが原則です。事務所の規模が大きく、担当部門が分かれていても、この考え方は変わりません。
したがって、一つの事務所で断られた場合に、同じ事務所の別の窓口や別の支店へ申し込み直しても、同じ結果になることが多いと考えておいてください。次に当たるのは、資本や所属の異なる別の事務所です。
「先に相談して押さえておく」という使い方はしない
ここまで読むと、相手方が頼みそうな事務所を先回りして回っておけば、店が弁護士を立てにくくなるのではないか、と思う方がいるかもしれません。
しかし、そうした使い方は制度が想定しているものではありません。相談を受けた弁護士がその相手方の側に立てなくなるという扱いは、話をした人の秘密と信頼を守るために置かれているものであって、相手の手を封じるための道具として置かれているわけではないからです。形だけ回っても、話の中身が伴わなければ思ったようには働きませんし、費用と時間だけが積み上がります。
風俗トラブルは、相手方が店と個人に分かれていたり、刑事と民事の両方が同時に動いていたりと、そもそも整理に時間がかかる類型です。その時間を、封じ込めではなく、自分の事実関係の整理に使うほうが結果につながります。
二か所目以降で気をつけたいこと
風俗トラブルに固有の注意点を挙げます。
- 予約の申し込みの時点で、店名・運営会社名・分かる範囲でのグループ名を伝える。
- 相手方が店なのか、キャスト個人なのか、両方なのかを最初に整理して伝える。
- すでに他の事務所へ相談していることは、隠さずに先に伝える。
- 話す事実は一か所目と同じものにそろえる。伝える範囲を変えると、意見の違いが事実の違いから生じてしまう。
- 店から受け取った書面や、やり取りの記録は、そのままの形で見せる。
最後の点は、風俗トラブルでは特に効きます。請求書や誓約書、店からのメッセージは、要約すると読み取れる情報が大きく落ちるためです。同じ書面を見てもらえば、二か所目の意見も比べられる形になります。
相談先が弁護士かどうかも確かめる
この分野では、示談の代行や交渉の代理をうたう弁護士以外の業者を目にすることがあります。報酬を得て他人の法律事件の交渉を扱えるのは弁護士等に限られており、この点は別の記事で扱っていますが、二か所目を探すときにも、相手が弁護士本人かどうかは確認しておいてください。
すでに依頼していて、意見だけを聞きたい場合
すでにどこかへ依頼していて、方針に迷いがあるために別の意見を聞きたい、という場合も同じ手順が土台になります。そのうえで、風俗トラブルではもう一つ確認が加わります。二か所目の事務所が、相手方の店の側と関係していないかどうかです。
依頼中であることを伏せて相談すると、二か所目の側は状況を正しく置けません。依頼中である旨と、相手方が誰かは、最初に伝えてください。今の弁護士に事前に伝えるかどうか、聞いたあとにどう伝えるかといった点は、別の記事で詳しく扱っています。
なお、刑事事件で国選の弁護人がついている場合は、費用や手続の組み立て方が私選とは異なります。この点も別の記事にゆずります。
おわりに
他の事務所にも相談してよいか、という問いに戻ります。答えは、してよい、です。ただ風俗トラブルでは、その前に確かめておくことがあります。
- 相談先が店の側で業務を扱っている事務所かどうかは、表示だけでは分からない。
- 予約の時点で、店名・運営会社名・相手方が誰かを伝えておくと、早い段階で不都合が分かる。
- 理由を説明されずに断られることがあるが、それは言い分への評価ではない。
- 同じ事務所の別の弁護士や別の支店では、結果が変わらないことが多い。
- 相談で話した内容には守秘義務が働き、その事務所は同じ件で相手方の側に立てなくなるのが原則である。
- 先回りして押さえる目的で回るのは、制度が想定した使い方ではない。
当事務所では、性風俗の利用をめぐるトラブルについて、利用した側からのご相談をお受けしています。他の事務所で話をした後の段階でも、状況の整理からご相談いただけます。


