起訴されてから判決まで|期間と手続の流れ

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

起訴状が届いたとき、多くの方がまず知りたくなるのは「これはいつ終わるのか」ということです。刑事手続の期間には、条文で上限が決まっている部分と、そうでない部分が混ざっていて、起訴された後は後者の割合が大きくなります。

 この記事では、風俗店の利用をきっかけに刑事事件となり、公判請求(正式起訴)された場合を想定して、起訴から第一審の判決までに何が行われ、その期間が何によって決まるのかを、条文と公表統計に沿って整理します。

 なお、以下は一般的な説明です。実際の進み方は事件ごとに異なり、具体的な見通しは記録を確認した弁護人でなければ立てられません。

この記事で扱う範囲

 次の範囲に絞って説明します。

  • 公判請求(正式起訴)された場面が中心です。略式命令請求には終盤で簡単に触れます。
  • 起訴された本人(被告人)の視点で書いています。
  • 認めているか争っているかは、期間を左右する要素として扱います。
  • 少年事件(家庭裁判所に送られる場合)は扱いません。


「起訴から判決まで」を直接定めた期限はない

 起訴前の手続には、逮捕から48時間、送致を受けてから24時間、勾留は原則10日と最長10日の延長といった、条文上の上限があります。これに対して、起訴後の第一審には「何か月以内に判決を言い渡さなければならない」と定めた条文はありません。

 もっとも、期限がないことと、進み方が決まっていないことは別です。起訴後の時間は、公判期日をいつ、いくつ入れるかでほぼ決まります。そして、その期日の入れ方には、いくつかの条文と規則が枠をはめています。

起訴状謄本の送達(刑事訴訟法271条)

 裁判所は、起訴があったときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならないとされています(271条1項)。身体を拘束されていれば収容先で受け取り、在宅であれば起訴状に記載された住所宛てに届きます。本人にとって、裁判の始まりが見える最初の時点です。

 同条2項は、起訴の日から2か月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起はさかのぼって効力を失う、と定めています。送達が放置されない仕組みになっている、ということです。

第1回公判期日は誰が決めるのか(273条・275条)

 公判期日を指定するのは裁判長です(273条1項)。実際には、裁判所書記官が検察官と弁護人の予定を確認したうえで、日程が組まれます。

 このとき、被告人を呼び出す召喚状の送達と第1回公判期日との間には、原則として5日(簡易裁判所では3日)以上の猶予期間を置かなければならないとされています(275条、刑事訴訟規則179条2項)。準備の時間を確保するための最低ラインです。

なぜ「起訴後1か月程度」が目安になるのか

 刑事訴訟規則178条の4は、期日の指定にあたって弁護人の準備等を考慮すべきことを定めています。司法研修所の教材でも、公判前整理手続に付されていない事件では、第1回公判期日は起訴後1か月程度とされるのが通例である、と説明されています。

 インターネット上の解説で見かける「1か月から2か月」という目安は、この運用を反映したものです。数字そのものよりも、その1か月が弁護人の準備期間として置かれているという点が重要です。検察官が取調べを請求する予定の証拠の開示を受け(299条1項)、認否を固め、提出する資料を集める作業が、この期間に入ります。

いったん決まった期日は簡単には動かない(276条)

 指定された公判期日を変更するには、やむを得ないと認められる事由が必要とされています(刑事訴訟規則179条の4第2項、182条1項)。不当な引き延ばしを防ぐためです。

 仕事の都合で日程を動かしたいという相談は少なくありませんが、予定が合わないという理由だけで期日が変わるとは限りません。期日が決まった後に頼むのではなく、日程調整の段階で弁護人に事情を伝えておくほうが現実的です。

【表1】起訴から判決までの主な節目


節目そこで起きること主な根拠
起訴(公判請求)検察官が起訴状を裁判所に提出する。被疑者から被告人になる256条1項
起訴状謄本の送達どの事実で起訴されたのかが本人に届く。2か月以内に送達されないと公訴提起は失効する271条1項2項
弁護人選任の照会弁護人がいない場合、選任するか、国選か私選かを回答する272条1項
第1回公判期日の指定裁判長が期日を決め、召喚状が送達される。送達から5日以上(簡裁は3日以上)の猶予273条1項、275条
証拠開示と打合せ検察官請求予定の証拠が弁護人に開示され、認否と証拠意見が固まる299条1項
第1回公判期日冒頭手続、証拠調べ、論告・弁論。争いのない事件はここで結審することがある291条〜293条
判決宣告期日主文と理由が言い渡される。上訴の期間と提出先も告知される342条、規則220条
確定判決の翌日から14日以内に控訴がなければ確定する373条


統計で見る「起訴から判決まで」

 最高裁判所事務総局「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」(令和7年7月公表)によると、地方裁判所の刑事通常第一審事件の平均審理期間は、令和6年で次のとおりです。

区分令和6年の平均審理期間
総数3.9か月
自白事件3.3か月
否認事件11.4か月


 これは起訴から第一審が終わるまでの期間の平均です。読むときは、次の3点に注意してください。

  1. 自白事件と否認事件では3倍以上の差がある。争点が増えれば期日の数が増え、期日と期日の間隔も空きます。
  2. 地方裁判所の数値であり、簡易裁判所で扱われる事件は含まれていない。
  3. 平均であって、自分の事件の予定ではない。


 もう一つ知っておくとよいのは、この平均審理期間は短くなっていないということです。同じ報告書では、総数の平均審理期間は平成27年の3.0か月から令和6年の3.9か月へと、この10年で緩やかに延びています。「昔より早く終わるはずだ」という前提で予定を立てないほうが安全です。

公判期日では何が行われるのか

 1回の期日の中身は、大きく3つの部分に分かれています。

冒頭手続

 最初に、裁判長が、出頭している人が起訴状に記載された被告人と同じ人かどうかを確かめます(人定質問。刑事訴訟規則196条)。実務では、氏名、生年月日、職業、住居、本籍を順に尋ねるのが通常です。

 続いて検察官が起訴状を朗読し(291条1項)、裁判長が黙秘権などを告げたうえで、起訴状の事実について言いたいことがあるかを尋ねます(291条4項)。慣用的に罪状認否と呼ばれる場面です。

証拠調べ

 検察官が、証拠によって何を証明するのかを述べ(冒頭陳述。296条)、証拠書類の取調べ、証人尋問、被告人質問などが行われます。事実を争っていない事件では、犯罪事実そのものの証拠調べは短く終わり、示談の状況、反省の状況、家族の監督といった情状に関する立証が中心になります。

 このとき、弁護人があらかじめ情状証人を第1回公判期日に在廷させておく運用が定着しています(刑事訴訟規則178条の13)。証人を後日あらためて呼ぶことになれば、それだけ期日が1回増えます。準備が間に合うかどうかが、そのまま期間に跳ね返ります。

論告・弁論・最終陳述

 証拠調べが終わると、検察官が事実と法律の適用について意見を述べ、あわせて求刑をします(293条1項)。次に弁護人が弁論を述べ、最後に被告人が話す機会を与えられます(293条2項)。ここで審理が終わることを結審といいます。

 司法研修所の教材では、犯罪事実を争っていない事件であれば、公判期日は1回、時間にして30分から60分で終わることもある、と説明されています。長い時間をかけて追及される場という印象とは、実際はかなり違います。

判決の日に何が起きるか

 判決の宣告は公開の法廷で行われ、裁判長が主文と理由を告げます(342条、刑事訴訟規則35条)。有罪判決のときは、上訴の期間と、申立書を提出する裁判所も告知されます(規則220条)。法廷では「明日から数えて14日以内」といった言い方で説明されます。

 控訴の提起期間は14日です(373条)。この期間内に被告人からも検察官からも控訴がなければ、判決が確定します。

身体拘束の扱いは判決の日に切り替わる

 勾留されたまま判決を迎えた場合、執行猶予付きの判決や無罪の判決が告知されると、勾留状は効力を失います(345条)。所定の手続を経て、その日のうちに外に出ることになります。

 逆に、拘禁刑の実刑判決が宣告されたときは、保釈はその効力を失うとされています(343条前段)。保釈されて自宅から通っていた人が、その日から収容される、ということです。判決の日は、結論が出る日であると同時に、身柄の扱いが変わる日でもあります。

勾留されているかどうかで「待つ時間」の重さが変わる

 起訴後の勾留の期間は、起訴があった日から2か月です。継続の必要があるときは、1か月ごとに更新できます(60条2項)。

 更新は原則として1回に制限されていますが、住居不定や罪証隠滅のおそれなど一定の場合、あるいは禁錮以上の刑に処する判決の宣告があった場合には、この制限を受けません(60条2項、344条)。争点が多い事件ほど身体拘束が長引きやすいのは、こうした仕組みによるところがあります。

 保釈を請求できるのは起訴された後です(207条1項ただし書)。保釈が認められれば、判決までは自宅で生活しながら期日に出頭することになります。保釈の要件や保証金の考え方は、それだけで一つの論点になるため、別の記事に譲ります。

 在宅のまま起訴された場合は、日常生活を続けながら期日を待つことになります。ただし、被告人が出頭しなければ開廷できないのが原則で(286条)、期日は平日の日中に指定されます。身体を拘束されていなくても、仕事の調整が必要になる点は変わりません。

【表2】期間が短くなる要素・長くなる要素


期間が短くなりやすい要素期間が長くなりやすい要素
事実を争っておらず、争点が量刑に絞られている事実関係や犯罪の成否を争っている
証拠に対する意見が期日前に固まっている証人尋問の予定が多い
情状に関する資料が第1回期日までにそろっている示談交渉や資料の準備が期日に間に合わない
即決裁判手続によることに同意している公判前整理手続に付されている
起訴された事実が1件にとどまる追起訴や訴因変更がある


即決裁判手続という例外

 事案が明白かつ軽微で、証拠調べが速やかに終わる見込みがあるといった事情があるとき、検察官は、本人の同意を得たうえで、起訴と同時に即決裁判手続の申立てをすることができます(350条の16)。第1回公判期日は、刑事訴訟規則により、できる限り起訴の日から14日以内の日を定めることとされています。

 この手続では、判決もできる限りその日のうちに言い渡すものとされ(350条の28)、拘禁刑を言い渡すときは執行猶予を付さなければならないとされています(350条の29)。一方で、事実誤認を理由とする控訴が制限されるなど(403条の2)、通常の手続と異なる点もあります。同意を求められたときは、内容を理解したうえで判断する場面です。

略式命令請求の場合

 罰金刑が定められている罪では、公判を開かずに書面で罰金を科す略式命令請求が選ばれることがあります。この場合は法廷が開かれないため、ここまで説明した期間の話とは別の流れになります。略式命令の内容に納得できないときは、告知を受けた日から14日以内に正式裁判を請求することができます(465条1項)。

風俗トラブルで起訴された場合に問題になりやすいこと


法廷は公開されている

 公判期日の審理と判決は、公開の法廷で行われます(憲法82条1項)。傍聴は誰でもでき、法廷の入口付近には、その日に開かれる事件の一覧が掲示されるのが一般的です(掲示の取扱いは裁判所によって異なることがあります)。冒頭手続では、氏名や住居を口頭で答える場面もあります。

 知られたくないという気持ちは自然なものですが、公開の法廷という枠組み自体を変えることはできません。だからこそ、公判に至る前の段階で選べる手段があるかどうかが、結果として大きな差になります。

被害者側の氏名が伏せられることはある

 一定の性犯罪などでは、被害者側からの申出により、被害者を特定させる事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定がされることがあります(290条の2)。この決定があると、起訴状の朗読も仮名を用いるなどの方法で行われます(291条2項)。

 これは被害者を保護するための制度であって、被告人の氏名が伏せられるものではありません。混同しやすいところなので、分けて理解しておいてください。

期日は平日の日中に入る

 前述のとおり、決まった期日を動かすにはやむを得ない事由が必要とされています。勤務先にどう説明するか、休暇をどう使うかは、期日が決まった後ではなく、日程を調整している段階で弁護人に相談しておくと選択肢が残ります。

この期間にしておきたいこと・避けたいこと

 起訴から判決までの期間は、ただ待つだけの時間ではありません。次のような準備が、期日の数にも判断材料にも影響します。

  • 弁護人からの連絡や質問には早めに答える。資料集めが期日に間に合うかどうかは、ここで決まります。
  • 示談や被害弁償を検討している場合は、進み具合を弁護人に共有する。判決までに間に合うかどうかで扱いが変わります。
  • 情状に関する資料(勤務先の状況、家族の協力、通院や相談の状況など)を早めに用意する。
  • 第1回公判期日で何を聞かれるのかを、事前に弁護人と確認しておく。
  • 住居や連絡先が変わるときは、弁護人と裁判所に伝わるようにしておく。


 一方、次のような行動は、期間の面でも内容の面でも不利に働きやすいものです。

  • 呼出しを受けた期日に出頭しない。
  • 関係者に連絡を取って、話を合わせようとする。
  • 起訴された事実についてSNSなどに書き込む。
  • 弁護人に不利な事実を伝えないまま公判に臨む。
  • 判決に不服がある場合に、14日という期間を過ぎてから相談する。


まとめ


  • 起訴から判決までの期間を直接定めた条文はなく、公判期日をいつ、いくつ入れるかで長さが決まります。
  • 第1回公判期日は起訴後1か月程度とされるのが通例で、これは弁護人の準備期間を確保するための運用です。
  • 令和6年の地方裁判所の平均審理期間は、総数3.9か月、自白事件3.3か月、否認事件11.4か月でした。
  • 争いのない事件では、第1回期日で審理を終え、次の期日で判決という進み方が多くみられます。
  • 判決の日は、身体拘束の扱いが切り替わる日でもあります。控訴の提起期間は14日です。
  • 法廷は公開されており、その枠組み自体は変えられません。手続の外側でできることは、段階が早いほど多く残っています。


 起訴された後でも、弁護人が関与することで結果が変わる場面はあります。ただし、早く動けば望んだ結論になるという意味ではありません。選べる手段が残っているうちに、記録を確認した弁護士に見通しを聞いておくことが、時間の使い方としては現実的です。

 当事務所では、刑事事件についてのご相談をお受けしています。手元に届いた書類の意味が分からないという段階でも構いませんので、一人で抱え込まずにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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