本番の逮捕事例をどう読むか|報道から分かること・分からないこと

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

「風俗 本番 逮捕事例」と検索すると、実際の逮捕ニュースを引用して並べた記事がいくつも出てきます。読み終えたあと、多くの方は「自分も同じことになるのではないか」と不安に傾くか、逆に「自分の場合はここまでひどくない」と安心するかの、どちらかに寄ります。
 ただ、そのどちらの読み方も、逮捕報道という文章がもともと何を伝えるために書かれているのかを踏まえていないと、実際とずれてしまいます。逮捕記事は、事件のすべてを記録したものではないからです。
 この記事では、本番トラブルの逮捕事例を読むときに、そこから何が分かり、何が分からないのかを整理します。

この記事の前提


  • 性風俗を利用する客側の立場を想定しています
  • 特定の事件や特定の記事の内容を評価するものではありません
  • 相手が十八歳未満である疑いがある場合、すでに逮捕されている場合、警察から呼び出しを受けている場合は、事例を読み比べるより先に個別にご相談ください
  • 本番行為を勧める趣旨の記事ではありません


逮捕事例の記事は「事件の記録」ではなく「発表の記録」


 新聞やテレビの逮捕ニュースは、記者がその場に居合わせて書いたものではありません。多くは、警察が報道機関向けに行う発表がもとになっています。つまり記事に書かれているのは、捜査機関がその時点で外部に説明した範囲の内容です。
 捜査機関の側には、説明する範囲を絞る理由があります。刑事訴訟法百九十六条は、捜査に関係する者は被疑者その他の者の名誉を害しないように注意し、かつ捜査の妨げとならないように注意しなければならないと定めています。また同法四十七条は、訴訟に関する書類は公判の開廷前には公にしてはならないと定めています(公益上の必要その他の事由があって相当と認められる場合は例外です)。
 その結果、逮捕記事に載るのは、逮捕状に記載される「罪名」と「被疑事実の要旨」(刑事訴訟法二百条一項)の骨格に近い情報にとどまります。記事のなかに「捜査に支障がある」として認否を明らかにしていない、という説明が出てくることがありますが、これも同じ構造から来ています。

逮捕記事から分かること・分からないこと


 整理すると、次のようになります。

逮捕記事から分かること逮捕記事からは分からないこと
逮捕された人がいるという事実逮捕の判断に使われた証拠の中身
逮捕の時点で警察が挙げた罪名最終的に認定された罪名
日時・場所・行為のおおまかな枠当事者双方の説明の全体
発表された範囲での認否同意の有無をどう見たのかという判断過程
発表を行った警察署示談や被害弁償があったかどうか
記事によっては通報の経路起訴・不起訴といった最終的な処分


 右側に並ぶ項目は、どれも「自分の場合はどうなるのか」を考えるときに一番効いてくる情報です。逮捕事例をいくつ読み比べても、この部分は埋まりません。

事例一覧が実像とずれる、三段階の絞り込み


 事例をまとめた記事の多くは「ニュースになったものだけを拾っている」と断っています。これは誠実な記載ですが、絞り込みは一度だけではありません。

  1. 事件になったもののうち、逮捕に至ったものだけ(在宅のまま捜査が進む事件は表に出にくい傾向があります)
  2. 逮捕されたもののうち、警察が発表したものだけ(発表の基準を定めた法律はなく、運用は各都道府県警察に委ねられています)
  3. 発表されたもののうち、報道各社が記事にしたものだけ


 この三つを通過したものだけが「逮捕事例」として並びます。ですから、挙がっている事例が数件しかないことは「めったに起きない」ことを意味しませんし、事例が並んでいることが「よく起きる」ことを示すわけでもありません。件数の多い少ないを読み取る材料には、そもそもなっていません。

一覧表にまとめられるとき、さらに落ちるもの


 事例を「発生年月・地域・罪名」といった形で一覧表に整理した記事もよく見かけます。並べて見比べられるので便利ですが、表という形式は、列に入らない情報を落とします。落ちやすいのは、当事者が何をどう説明していたのか、通報から逮捕までに何があったのか、そして事件がどう終わったのか、といった部分です。
 もともと記事に書かれていない情報が、表になる段階でさらに削られます。一覧表は「どんな罪名で逮捕された例があるか」を知るには使えますが、「自分の場合どうなるか」を推し量る道具としては、情報が足りていないと考えておいたほうが安全です。

結末が書かれていないのは偶然ではない


 逮捕事例の記事を読むと、ほぼ例外なく「その人がその後どうなったか」が書かれていません。書き手が省いているというより、外から知る手立てが用意されていない、というのが実情です。
 不起訴になったことは、被疑者本人が請求すれば検察官から告げられます(刑事訴訟法二百五十九条)。告訴人や告発人には通知の仕組みがあり(同二百六十条)、請求があれば理由も告げられます(同二百六十一条)。もっとも、ここで告げるべき理由は「起訴猶予」「嫌疑不十分」といった裁定の主文で足りると解されています。いずれも当事者に向けた制度であって、社会に向けて公表するための制度ではありません。不起訴になった事件の記録そのものも、先ほどの刑事訴訟法四十七条の趣旨から、原則として公にされない扱いです。
 つまり、「逮捕されました」という情報は発表されて記事になり、「不起訴になりました」という情報は原則として発表されない、という非対称があります。ネット上に逮捕記事ばかりが残るのは、ここから来ています。逮捕の記事が今も読める状態にあることと、その人が最終的にどう扱われたかは、別の話です。

見出しに出ている罪名は、途中で変わることがある


 逮捕は、逮捕状に記載された罪名と被疑事実の要旨に基づいて行われます(刑事訴訟法二百条一項)。これに対して起訴は、起訴状に公訴事実と罪名を記載して行われ、公訴事実は訴因を明示して書かなければなりません(同二百五十六条二項・三項)。さらに起訴された後も、公訴事実の同一性を害しない範囲で、訴因や罰条の追加・撤回・変更がありえます(同三百十二条一項)。
 段階ごとに判断する人も、手元にある資料も変わります。ですから、逮捕の時点の罪名が、そのまま起訴の罪名になるとは限りませんし、判決で認定された罪名になるとも限りません。見出しに大きく出ている罪名は、逮捕の時点で警察が示した見立てだと受け取るのが正確です。

古い事例が混ざっていないか


 性犯罪に関する刑法の規定は、二〇二三年七月十三日に施行された改正で大きく変わりました。強制性交等罪は不同意性交等罪になり、けがを負わせた場合の類型も名称が変わっています。さらに二〇二五年六月一日には、懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されました。
 事例の一覧には、改正前に起きた事件と改正後に起きた事件が並んでいることがあります。どの規定が適用されるかは、行為があったとされる時点で決まります。事例を読むときは、逮捕された日ではなく行為があったとされる日を見て、法改正の施行日と突き合わせてください。解説の本文で改正の時期そのものが誤って書かれている記事も、実際に存在します。

事例に添えられた数字の読み方


 事例記事には「何パーセントが実刑」といった数字が添えられることがあります。数字そのものを疑う必要はありませんが、確かめたいのは数字より分母です。何年のデータなのか、どの罪名についての集計なのか、どの段階(起訴された事件なのか、判決に至った事件なのか)の数字なのか。罪名が一つ違えば、母集団はまったく別のものになります。
 法律事務所が公表している解決件数や解決率も同じで、その事務所に相談した人のなかでの集計です。数字の見方については別の記事で扱っていますので、ここでは深入りしません。

それでも事例から読み取れること


 読み方を誤らなければ、事例にも役に立つ部分はあります。

  • 通報は本人以外からも入る。店、送迎の担当者、あるいは客自身がかけた百十番が発端になった事例が報じられています
  • 行為があったとされる時点から相当な時間が経ってから逮捕された事例もある。時間が経ったことは、手続が終わったことを意味しません
  • 「同意があると思っていた」という説明が、争点として繰り返し現れる


 ただし、これらは複数の事例に共通して現れる傾向であって、あなたの事件の見通しではありません。同意をめぐる判断が条文のどの部分に関わるのかは、事例からではなく条文から確認したほうが正確です。この点は別の記事で扱っています。

自分の事件と事例を並べるときの注意


  • 似ているのは表面だけかもしれない。記事には、証拠も、やり取りの経緯も、示談の有無も書かれていません
  • 事例に合わせて記憶を作らない。読んだ内容に引きずられて「たしかこうだった」と話がずれると、あとから訂正するのが難しくなります
  • 事例を根拠に結論を出さない。「この事例では逮捕されていないから大丈夫」も「この事例と同じだから終わりだ」も、判断の材料が足りていません
  • 事例を探す時間を、手元の記録を整える時間に振り向ける。日時、やり取り、支払いの経路、受け取った書面は、事例よりはるかに確実な材料になります


まとめ


  • 逮捕事例の記事は、警察の発表をもとにした「発表の記録」であって、事件の全体像ではありません
  • 記事から分かるのは逮捕の事実と、逮捕の時点で挙げられた罪名まで。証拠・示談・最終的な処分は分かりません
  • 事例の一覧は三段階の絞り込みを通ったもので、件数の多い少ないを読み取る材料にはなりません
  • 不起訴になったことを社会に公表する仕組みは原則としてなく、逮捕の記事だけが残りやすい構造があります
  • 逮捕時の罪名は最終的な罪名とは限らず、行為があったとされる日と法改正の施行日を突き合わせて読む必要があります
  • 添えられた数字は、値そのものより分母を確認する
  • 事例を読むことと、自分の事件の見通しを立てることは、別の作業です


 早く動けば必ず良い結果になる、といったことは申し上げられません。ただ、事例を読み比べることに時間を使うよりも、手元にある事実を整理したうえで個別にご相談いただいたほうが、判断のための材料はそろいます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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