相談で弁護士に必ず確認したい10の質問

若井亮

若井亮

テーマ:一般

弁護士に相談する日が決まると、多くの人は「何を話すか」を考えます。一方で「何を聞くか」まで用意している人は、それほど多くありません。

 ところが、相談を終えて事務所を出たあとに「結局、自分はどうすればいいのか分からないままだった」と感じるとき、その原因は話し足りなかったことよりも、聞き足りなかったことにあることが少なくありません。相談の前半は弁護士からの聞き取りに答える時間になりやすく、こちらから確認する時間は後半のわずかな部分に集中するからです。

 法律相談は、弁護士が答えを配る場ではなく、相談した人が次の一手を決めるための場です。決めるためには、決めるのに要る材料を自分から取りに行く必要があります。この記事では、分野を問わず共通して確認しておきたい10の質問を、なぜ聞くのか、どのように尋ねるか、返ってきた答えをどう受け取るかまで含めて整理します。

質問は「聞き漏らさないため」ではなく「決めるため」にある


相談で決めることは、突き詰めると二つ


 法律相談で決めることは、大きく二つに整理できます。一つは、この問題について自分が次に何をするのかということ。もう一つは、その先の手続を弁護士に任せるのかどうかということです。

 この二つを決めるのに関係しない情報は、その日は聞けなくても差し支えありません。逆に、この二つに直結する情報が欠けたまま帰ると、相談したのに動けないという状態が生まれます。以下の10の質問は、いずれもこの二つのどちらかに結びつくように選んでいます。

10の質問の一覧


No確認したい質問何を決めるための質問か
1これは法律上、何の問題として扱われるのか以後のすべての判断の土台
2期限はあるか。いつまでに何をする必要があるか今日から動くかどうか
3取りうる手段はいくつあり、それぞれどう違うのかどの道を選ぶか
4見通しはどうか。そう考える理由は何か進めるか、いったん引くか
5自分の側の弱い点・不利な事情はどこか何を守り、何を準備するか
6依頼した場合、何をどこまでやってもらえるのか任せる範囲
7担当するのは誰で、自分は誰と連絡を取るのか任せる相手
8費用は何に対して、いつ発生し、どんなときに増えるのか費用を負担できるか
9進行中の報告と連絡はどうなるのか任せたあとの見え方
10次までに自分がすべきこと・してはいけないことは何か今日の帰り道からの行動


10問すべてを一度の相談で聞かなくてよい


 相談時間には限りがあります。10問を上から順に読み上げると、それだけで時間が尽きることもあります。その日の状況によって先に聞くべき質問は入れ替わりますので、順番の考え方は後半の章で整理します。

 また、6から9は依頼を検討する段階の質問です。今日は情報を得るだけと決めているなら、その日は1から5と10に絞っても構いません。

事案について確認する5つの質問


1 これは法律上、何の問題として扱われるのですか


 自分では「詐欺だ」「嫌がらせだ」と感じている出来事が、法律上は別の枠組みの問題として扱われることがあります。反対に、本人が大したことではないと考えていた一点が、中心の争点になることもあります。

 この質問は、残り9問の土台になります。問題の位置づけが定まらないと、期限も、取りうる手段も、費用の見当もつきません。「自分は◯◯だと思っているのですが、法律の枠組みではどう整理されますか」という尋ね方が伝わりやすいでしょう。

2 期限はありますか。いつまでに何をする必要がありますか


 期限には二種類あります。法律で定められた期限と、相手方や裁判所から示された期限です。前者は時効や申立ての期間など、後者は通知書の回答期限や書面の提出期限などが典型です。

 10問のうち、この質問だけはその日のうちに答えを得たい性質のものです。期限が近いと分かれば、その日の相談の残り時間の使い方も、帰ってからの行動も変わります。「今日から数えて、いちばん近い期限はいつですか」と尋ねると、輪郭がはっきりします。

3 取りうる手段はいくつあり、それぞれどう違うのですか


 手段が一つしか示されないときは、他の手段を検討したうえで外したのか、そもそも選択肢に上がっていないのかを聞き返してみてください。話し合い、書面での申し入れ、裁判所を使う手続、今は動かないという選択まで含めて並べてもらうと、比べる土台ができます。

 比べる観点は、かかる期間、費用の大きさ、相手方に与える影響、途中でやめられるか、結果に強制力があるかの五つです。どれを重く見るかは相談した人自身が決める部分ですから、ここは遠慮なく質問してよい場面です。

4 その見通しは、どのような理由でそう考えるのですか


 見通しそのものより、そう考える理由を聞くほうが得られるものが多い質問です。理由には、どの事実を重く見ているか、どの資料を根拠にしているか、どこが不確定なのかが含まれます。理由が分かれば、自分がこれから集めるべき資料も見えてきます。

 弁護士の職務上の取決めでは、依頼者に有利な結果になることを請け合ってはならないとされ、見込みが乏しいのにあるかのように装って事件を受けることも禁じられています。ですから見通しは「この点が認められれば、こうなりやすい」という条件つきの形で返ってくるのが通常です。言い切られないことは、不誠実の表れとは限りません

5 自分の側の弱い点・不利な事情はどこですか


 競合する情報の多くは「不利な事実を隠さずに話しましょう」と書いています。それは正しいのですが、方向が逆の質問もあります。話した内容を前提に、弁護士の目から見てどこが弱いのかを教えてもらうという質問です。

 弁護士には、依頼者にとって不利益な事項についても説明する取決めがあります。良い材料だけが並んだ説明は、判断材料としては足りません。挙げてもらった弱い点は、そのまま「これから守るべき点」「先に手当てしておく点」の一覧になります。

依頼と進め方について確認する5つの質問


6 依頼した場合、何をどこまでやってもらえるのですか


 依頼は「この問題を全部お任せする」という形では成立しません。相手方との交渉まで、裁判所の手続の一審まで、といったように、扱う事務の範囲を決めて契約します。

 確認したいのは、始まりと終わりです。どこまでいけばその依頼は終わりになるのか、その先に進む場合は改めて依頼し直すことになるのかを聞いておくと、後の費用の話も理解しやすくなります。あわせて、その範囲に含まれないものは何かも尋ねてみてください。

7 担当するのは誰で、自分は誰と連絡を取るのですか


 相談を担当した弁護士が、そのまま事件を担当するとは限りません。複数の弁護士が関わる場合もあれば、日々の連絡は事務職員が窓口になる場合もあります。どちらが良いという話ではなく、任せる相手と連絡の窓口を先に知っておくことに意味があります。

 「担当していただくのはどなたですか」「日常の連絡はどちらにすればよいですか」の二つを聞けば足ります。相談した弁護士に担当してほしいという希望があるなら、この場で伝えておくのが早道です。

8 費用は何に対して、いつ発生し、どんなときに増えますか


 総額がいくらかを尋ねたくなりますが、その場で総額が確定することは多くありません。代わりに次の三点を聞くと、比較にも判断にも使える情報になります。

  • それぞれの費用が何に対する対価なのか
  • いつ支払うことになるのか
  • どんな場面で追加が生じるのか


 弁護士の報酬に関する取決めでは、依頼しようとする人から申し出があったときは、その内容に応じた見積書の作成と交付に努めるものとされています。見積書は、こちらから申し出てよいものだと知っておくと、口頭の説明だけで判断せずに済みます。費用の内訳や見積書の読み方は、それだけで一つのテーマになりますので、別の記事にゆずります。

9 進行中は、どのくらいの頻度で、どんな方法で連絡が来ますか


 依頼したあとに不満が生じやすいのが、この点です。弁護士には、事件の経過や結果に影響する事項を依頼者に報告し、協議しながら進める取決めがあります。とはいえ、相手方の返答を待つ期間や、裁判所の期日と期日の間には、動きのない時間が生まれます。

 そこで、連絡がない期間がどのくらい生じ得るのか、その間にこちらから尋ねてよいのかを先に確認しておきます。自宅への郵便を避けたい、平日の日中は電話に出られないといった希望も、この場で伝えておくと後が楽になります。

10 次までに、自分がすべきこと・してはいけないことは何ですか


 持ち帰る価値がもっとも高い質問です。相手方への連絡をどうするか、投稿や書き込みをどう扱うか、資料やデータを消さずに残すこと、支払いや署名を求められたときにどうするか。ここが決まれば、その日の帰り道から行動が変わります。

 「今の段階では何もしないでください」という答えが返ってくることもあります。それも立派な答えの一つです。何もしないという方針であれば、その理由と、いつまで様子を見るのかを重ねて聞いておきましょう。

状況によって、先に聞く質問は入れ替わる


今日の状況で優先順位を決める


今日の状況先に聞く質問後に回してよい質問
期限のある書面が届いている2 → 1 → 106〜9
依頼するかどうかを決めかけている4 → 6 → 83・5
まだ迷っていて情報を集めている段階1 → 3 → 107・9
相手方にすでに弁護士がついている2 → 1 → 68・9


 期限が迫っている場面では、位置づけよりも先に期限を確認します。反対に、まだ何も動いていない場面では、期限より先に「これは何の問題か」を押さえたほうが、その後の話が早く進みます。

余力があれば聞いておきたい3つ


  1. 依頼しない場合、自分でできることはありますか
  2. 途中で方針が変わったときや、依頼をやめたいと思ったときはどうなりますか
  3. 別の弁護士にも相談してよいですか


 一つ目は、自分で申立てや請求ができる手続があるかどうかの確認です。二つ目について、委任した契約は依頼者の側からいつでも解除できるのが原則ですが、それまでに生じた費用の精算をどうするかは契約の内容によります。三つ目は、相談したからといって同じ弁護士に依頼する義務はなく、公的な相談制度でも別の弁護士に相談することが認められている、という前提を確かめる質問です。

返ってきた答えは「形」も見る


答えは四つの形で返ってくる


 同じ質問でも、返ってくる答えの形はいくつかに分かれます。形を見分けられると、追加で何を聞けばよいかが分かります。

  • 条件つきで返る……「◯◯が認められれば」という形。見通しに関する質問では、これがもっとも多い形です
  • その場では持ち帰りになる……資料を精査する必要がある、相手方の出方による、裁判所の判断による、のいずれかです。いつごろ分かるのかを重ねて聞きます
  • 質問の前提を直される……「そもそも、そこは争点になりません」という返し方。前提が違えば答えも変わるため、これは相談が機能している合図です
  • 言い切られる……期限の有無や手続の要件など、事実として定まっているものは言い切られます


 注意したいのは四つ目です。事実として定まっていることは言い切られてよいのですが、結果の見込みや金額の水準まで言い切られたときは、いったんその理由を聞き返すほうがよいでしょう。理由の説明が伴っていれば、それは根拠のある見立てです。

「分かりません」と返ってきたとき


 この返答には三通りの意味があります。判断するための材料がまだ足りない場合、その分野の手続を扱っていない場合、そして法律上まだ定まった答えがない場合です。どれに当たるのかを尋ねると、次にすべきことが変わります。材料が足りないのであれば何を追加すればよいのか、扱っていないのであればどこに相談すればよいのかを続けて聞いてみてください。

聞きにくいと感じる質問ほど、聞いてよい


説明する側にも取決めがある


 費用のこと、担当者のこと、見通しの悪さ、他の弁護士にも相談したいということ。この四つは、聞くと失礼になるのではないかと感じられやすい話題です。

 もっとも、弁護士の職務上の取決めには、事件を受けるにあたって見通しと処理の方法と費用について説明すること、依頼者に不利益な事項を説明すること、費用の援助制度について説明すること、進行中は報告して協議すること、依頼を受けるかどうかを通知することが定められています。この10問の多くは、本来説明される側にある事項を、こちらから先に引き出しているにすぎません

遠慮が生む損のほうが大きい


 費用を聞かずに依頼して後から驚く、担当者を確認せずに任せて話が食い違う、悪い見通しを聞かないまま進めて途中で引き返せなくなる。いずれも、質問しなかったことで生じる負担です。質問は相手を試す行為ではなく、任せる範囲を自分で決めるための作業だと考えてください。

尋ね方の小さな工夫


  • 一つの文に複数の問いを混ぜず、一問ずつ尋ねる
  • 「たとえば相手が応じなかった場合は」と場面を限定して尋ねる
  • 返ってきた答えを自分の言葉で言い直し、認識が合っているかを確かめる
  • その場で答えが出ない問いは、いつごろ分かるのかを聞いておく
  • 聞ききれなかった質問は、紙に書いて渡すか、後日の連絡方法を確認しておく


 メモを取ることは、多くの事務所で問題になりません。録音を希望する場合は、事前に断ってください。窓口によっては録音を認めていない運用もあります。

おわりに


 10の質問は、すべてを聞き切ることが目的ではありません。相談を終えたときに、何が決まって、何が決まらなかったのかを自分で言える状態になっていれば、その相談は役目を果たしています。

 そして、決まらなかった項目は、次の相談や、資料が揃った段階での再確認に持ち越せます。期限が迫っている場面では、質問を準備しきることよりも、まず相談の予約を取るほうが先です。準備が整うのを待つあいだに、選べたはずの手段が減ってしまうことがあるからです。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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