相手に弁護士がついた|自分も弁護士を立てるべきかの判断
弁護士に相談しようと決めたあと、多くの方が最初につまずくのが「どうやって連絡すればよいのか」という一点です。事務所のサイトには電話番号、メールアドレス、問い合わせフォーム、メッセージアプリの窓口が並んでいて、どれを使えばよいのか、何をどこまで書けばよいのか、判断の材料がありません。
最初の問い合わせは、それ自体で法律問題が解決するものではありません。ただし、どの手段を選び、何を伝えるかによって、相談の日程が決まるまでの時間や、当日に扱える範囲は変わります。この記事では、電話・メール・フォームという三つの入口の性質の違いと、最初の連絡で伝えておきたいこと、返事が来ないときの考え方を整理します。
最初の問い合わせは「相談の申込み」であって「相談」ではない
最初の連絡でできることは、おおむね次の三つです。一つ目は、その事務所で受け付けてもらえる事案かどうかの確認です。取扱分野に合っているか、後述する利益相反の関係で受けられない事案でないか、日程が合うかといった、内容以前の条件がここで確かめられます。
二つ目は、相談の日時と方法を決めることです。来所か、オンラインか、電話か。所要時間はどれくらいか。費用は発生するのか。三つ目は、当日に何を扱うかの見当をつけることです。事案の概要と期限が先に伝わっていれば、弁護士は関係しそうな制度や必要な資料をあらかじめ想定した状態で相談に臨めます。
逆に言えば、最初の連絡の時点で法的な結論を求めても、返ってくるものは限られます。事実関係が固まっておらず、資料も見ていない段階では、慎重な言い方にならざるを得ないからです。「電話口で答えてもらえなかった」ことは、その事務所の姿勢を示すものとは限りません。
手段ごとに向いている場面が違う
三つの入口は優劣ではなく、性質の違いで選ぶものです。おおまかには次のように整理できます。
| 手段 | 向いている場面 | あとに残るもの | 注意しておく点 |
|---|---|---|---|
| 電話 | 期限が迫っている/条件をその場で確かめたい | 通話の記録は残らないことが多い | 受付時間の制約がある |
| メール | 経緯が長い/落ち着いて書きたい | 送信済みの文面が手元に残る | 届いたかどうかが分かりにくい |
| フォーム | 何を書けばよいか分からない | 送信控えが残らない場合がある | 文字数や項目に制限がある |
| メッセージ機能 | 短いやり取りで日程だけ決めたい | 履歴は残るが検索しにくい | 公式の窓口かどうかの確認が要る |
三つの入口の性質を具体的に見る
電話|その場で条件を確認できる
電話の利点は、往復にかかる時間がほぼゼロだという点に尽きます。取扱分野に合うか、いつ相談できるか、費用はどうなるかを一度で確かめられます。受付の方が対応する場合でも、氏名・連絡先・事案の概要・希望日時を聞き取ったうえで弁護士の予定を確認する、という流れが一般的です。
一方で、話した内容は記録として残りにくく、こちらの記憶も曖昧になりがちです。手元にメモを用意し、聞いたこと(相談の日時、場所、所要時間、費用、持参するもの、担当者の名前)をその場で書き留めておくと、後から確認する手間が減ります。移動中や騒がしい場所を避け、時間を確保してからかけたほうが、結果的に短く済みます。
メール|書いたものが残る
メールは、送った文面が手元に残ることが最大の利点です。経緯が長い事案、日付や金額が多い事案、口頭では説明しにくい事案では、書いて送ったほうが正確に伝わります。深夜や早朝でも送れるため、日中に電話をかけにくい方にも向いています。
弱点は、届いたかどうかが送信側から分かりにくいことと、返信までに時間がかかることです。入力したアドレスの誤りや迷惑メールフォルダへの振り分けなど、内容以前の理由で止まっていることもあります。
問い合わせフォーム|項目が決まっている
フォームは、何を書けばよいか分からないときに使いやすい入口です。氏名・連絡先・相談分野・概要といった項目があらかじめ用意されているため、書くべきことの見当がつきます。事務所側でも受付の手順が決まっていることが多く、担当への振り分けが早い場合があります。
注意したいのは、送信した内容の控えが自分の手元に残らない場合があることです。長い文章を書いたのに送信できていなかった、という事態を避けるため、送信前に本文をメモアプリなどにコピーしておくと安全です。自動返信メールが届く設定になっている事務所も多いので、届いたかどうかの目安になります。
メッセージ機能|公式の窓口かどうかを先に確かめる
メッセージアプリやSNSの窓口を設けている事務所もあります。短いやり取りで日程だけ決めたい場合には便利です。ただし、その窓口が事務所の公式のものかどうかは、事務所のサイトに掲載されている案内から入って確かめるほうが安全です。
この点に関連して、日本弁護士連合会の業務広告に関する指針には、SNS上で「友達(友だち)」登録や「相互フォロー」をしていたとしても、業務広告の規程との関係では「面識のない者」に当たり、広告を送ることの承諾を得たことにはならない、という趣旨の記載があります。つながっていること自体は、相談の申込みでも、勧誘を受け入れたことでもない、という整理です。
期限が迫っているときは電話を選ぶ
手段の選択で唯一はっきりしているのは、時間の余裕がない場面では電話が向いている、ということです。次のような状況に当てはまるときは、書いて送るより先に、まず電話をかけることを検討してください。
- 裁判所から書類が届いていて、答弁書や異議の期限がある
- 警察や検察から連絡が来ている、または呼び出しを受けている
- 家族や自分が身体を拘束されている
- 相手方や相手方の代理人から、回答期限を切った通知書が届いている
- 差押えや強制執行の予告など、財産に関わる書面が届いている
これらの書面には、受け取った日から数えて期間が決まっているものがあります。期限の内容そのものは事案によって異なるため、届いた書面を手元に置いたまま電話をかけ、書面の表題と日付を読み上げるのが最も早い伝え方です。
最初に伝える六つのこと
電話でもメールでも、伝える中身は変わりません。次の六点が揃っていると、受付から日程確定までが短くなります。
| 伝えること | なぜ必要か |
|---|---|
| 氏名と連絡先 | 折り返しの手段を確保するため |
| 分野と事案の概要 | 取扱分野と担当者を判断するため |
| 相手方の氏名や会社名 | 利益相反の確認をするため |
| 期限のある書面の有無 | 優先順位を判断するため |
| 希望する結果 | 相談で扱う範囲を絞るため |
| 連絡してよい時間帯と方法 | 折り返しが行き違わないようにするため |
相手方の氏名を聞かれるのは審査ではない
予約の段階で相手方の氏名や会社名を尋ねられることがあります。これは相談者を値踏みしているのではなく、その相手方から先に相談や依頼を受けていないかを確かめるための手続きです。弁護士は、一方の当事者から相談を受けた事件について、その相手方の側に立つことができません。事務所全体で確認する運用になっているため、予約時点で聞かれます。分からなければ「分からない」と伝えれば足ります。この仕組みの詳細は、相談を断られる理由を扱った記事で整理しています。
匿名のままでは進みにくいこと
名前を出したくないという気持ちは自然なものです。ただし、氏名や相手方が分からないままだと、先に述べた利益相反の確認ができず、事務所として受けられるかどうかの判断が止まります。一般的な制度の説明であれば匿名でも答えられることはありますが、日程を決める段階では氏名と連絡先が必要になる、と考えておくとやり取りが短くなります。
連絡してよい時間帯と方法は最初に伝えてよい
折り返しの電話を受けられる時間帯、留守番電話にメッセージを残してよいか、事務所名を名乗ってよいか、郵便物の送付先はどこにするか。こうした希望は、最初の連絡で伝えて差し支えありません。事情を詳しく説明する必要もありません。家庭や職場に知られたくない事情がある場合の設計は、連絡方法と書面の送付先を扱った記事で詳しく整理しています。
メール・フォームの書き方
件名と冒頭で用件が分かるようにする
件名は「法律相談の予約について(氏名)」のように、用件と名前が分かる形にします。本文の冒頭でも、何についての相談で、何を希望しているのかを先に書きます。経緯を時系列で最初から書き始めると、読み手が用件にたどり着くまでに時間がかかります。
事実と、評価や気持ちを分ける
「いつ、誰が、何をしたか」という事実と、「不当だと思う」「悪質だ」という評価は、分けて書くと伝わりやすくなります。評価を書いてはいけないということではなく、混ざっていると事実関係の確認に時間がかかるためです。日付や金額が曖昧なところは、無理に確定させず「時期は不明」と書いておけば足ります。
長さの目安と、資料の扱い
最初の連絡の分量は、A4一枚に収まる程度を目安にすると読みやすくなります。詳しい経緯や資料は、相談の場で扱ったほうが正確です。資料を先に送りたい場合は、容量の制限や受け取り方法があるため、送ってよいかを先に確認しておくほうが行き違いが起きません。フォームの場合は文字数の上限があることも多いので、収まらない分は相談当日に持参する前提で構いません。
書き出しの型
迷う場合は、次の順に並べるだけでも十分に伝わります。
- 氏名(ふりがな)と連絡先、連絡してよい時間帯
- 相談したい分野(例:貸したお金が返ってこない、退職後の未払い賃金)
- 何が起きているかを三行程度で
- 期限のある書面が届いているかどうかと、その日付
- 希望する相談の方法(来所・オンライン・電話)と候補日を二つか三つ
返事が来ないとき
返信の期限を定めたルールはない
弁護士職務基本規程には、事件の依頼があったときは速やかに諾否を依頼者に通知しなければならない、という定めがあります。ただしこれは「依頼」を受けた段階の規律であって、問い合わせに何日以内に返信しなければならない、という決まりがあるわけではありません。
実務上も、裁判所への出頭や出張で数日間連絡が取りにくい期間はあります。したがって「何日待つか」は、こちらの事情、とくに期限の有無で決めることになります。期限が迫っている事案では、返事を待つこと自体がリスクになります。
まず技術的な原因を確かめる
返事が来ない理由は、事務所側の判断とは限りません。次の点を先に確認すると、無駄な待ち時間を減らせます。
- 自動返信メールが届いているか(届いていれば送信は成功している可能性が高い)
- 迷惑メールフォルダに振り分けられていないか
- 入力したメールアドレスや電話番号に誤りがないか
- 携帯電話の設定で、パソコンからのメールや非通知の着信が拒否されていないか
それでも来ないときの順番
- 送信した日時と内容を控えたうえで、電話で「フォームから送ったが届いているか」を確認する
- それでも連絡が取れないなら、その事務所にこだわらず別の事務所に問い合わせる
- 期限がある事案では、返事を待たずに並行して動く
- 公的な窓口(法テラス、弁護士会の法律相談センター、自治体の相談)も選択肢に入れる
複数の事務所に同時に問い合わせることは、差し支えありません。断られた、あるいは返事がなかったという経過が、次の事務所での扱いに影響することもありません。
「24時間受付」などの表示をどう読むか
問い合わせ先を選ぶ段階では、サイトに並ぶ表示の意味を知っておくと判断しやすくなります。日弁連の業務広告に関する指針では、相談体制が整っていないにもかかわらず直接的な対応をしてもらえるとの誤解を与える表現の例として「24時間365日相談対応」が挙げられています。また、債務整理事件について受任体制が整っていないのに受任できるかのような誤解を与える表現として「全国対応」が挙げられています。
これは、こうした表示を掲げる事務所がすべて問題だという意味ではありません。「24時間受付」は、電話を受ける体制が24時間あるという意味のこともあれば、フォームの送信が24時間可能という意味のこともあります。表示の読み方として、次のように整理できます。
| よく見る表示 | 確かめておきたいこと |
|---|---|
| 24時間受付 | 弁護士が対応するのか、受付のみか |
| 初回相談無料 | 時間・回数・分野の範囲がどこまでか |
| 全国対応 | 遠方の事案をどの範囲で扱うのか |
| 所属弁護士会の表示 | 表示があるか(責任の所在を示すもの) |
このうち所属弁護士会の表示は、広告に表示すべき事項とされています。指針では、その趣旨について、広告の内容に不適正または不審な点があるときに弁護士会へ問い合わせる手がかりとなることを期待したものだと説明されています。無料相談の範囲については、窓口ごとの違いを扱った記事で整理しています。
診断ツールに連絡先を入れることは、問い合わせとは別
近年、「借金減額診断」「慰謝料の自動計算」「被害金の返金可能性の無料診断」といった、いくつかの項目を入力すると結果が表示されるページが増えています。ここで注意しておきたいのは、連絡先を入力することと、法律事務所に相談を申し込むことは、別の行為だという点です。
日弁連の業務広告に関する指針は、こうしたページで閲覧者に電話番号やメールアドレスを入力させた場合であっても、その入力をもって事件の依頼または法律相談の申込みとなる旨がページの記載から明確であるなどの特段の事情がない限り、その閲覧者は依然として「面識のない者」に当たり、広告を送ることの承諾を得たことにもならない、としています。本人確認として運転免許証などの写真をアップロードさせた場合も同様だとされています。
業務広告の規程では、面識のない人に対する訪問や電話による広告は原則として禁止され、電子メール、ファクシミリ、ショートメッセージ、SNSのメッセージ機能による広告も、承諾がなければ禁止されています。つまり、診断ページに連絡先を入れただけの段階で電話やメッセージによる勧誘を受けることは、規程の上では問題になり得ます。
読者の側の実務的な結論は単純です。診断結果を見ただけでは、相談の申込みをしたことにはなりません。相談したいのであれば、あらためて自分から事務所に連絡する。逆に、入力後に連絡が続いて困る場合には、応じる義務はありません。なお、依頼を希望する人のほうから連絡を求めた場合は、事務所から電話がかかってくることに問題はありません。
会わずに手続が進む場合に確認しておくこと
電話やメールだけでやり取りが完結し、そのまま依頼まで進む形をとる事務所もあります。業務広告の規程では、こうした通信手段によって法律事務を受任する場合の広告について、受任する法律事務の表示と範囲、報酬の種類・金額・算定方法・支払時期、委任契約が委任事務の終了まで解除できる旨と、中途で終了した場合の清算方法を表示することが求められています。通信販売における表示義務の趣旨をふまえた規定だと説明されています。
問い合わせの段階では、この三つが分かる形で示されているかを見ておくと、後の食い違いを減らせます。
また、日弁連は「弁護士に相談・依頼をするみなさまへ」として、広告によって過度な期待や誤解を与えたうえで委任を誘引する例が見られるとして、注意を呼びかけています。そこでは、相談・依頼にあたっては実際に弁護士と面談して事情を伝えること、分からないことは弁護士に尋ねること、依頼後も進捗の報告が適切に行われているか確認することが挙げられています。とくに債務整理の事件については、受任予定の弁護士が自ら面談して事情を聴取する義務が別の規程で定められています。
おわりに
最初の問い合わせで問われているのは、上手な話し方でも、整った文章でもありません。誰が、何について、いつまでに困っているのか。この三つが伝わっていれば、手段が電話でもメールでもフォームでも、次の一歩は進みます。
迷ったときの目安は、期限があるかどうかです。期限が迫っているなら電話、経緯が長く落ち着いて書きたいならメールかフォーム。そう決めておけば、入口の選択で立ち止まる時間を減らせます。うまく書けないまま送ってしまっても構いません。足りない部分は、相談の場で補えます。


