弁護士費用が払えないときの選択肢|分割・法テラス・着手金の考え方

若井亮

若井亮

テーマ:一般

弁護士に相談したいけれど、費用を用意できそうにない。そう感じて連絡そのものをためらう方は少なくありません。実際、法律問題は「お金に余裕があるとき」に起きるとは限らず、むしろ収入が途絶えたり、支払いに追われていたりする時期に重なることのほうが多いものです。
 弁護士費用が用意できないときの選択肢は、大きく分けて「支払う時期をずらす」「負担する人を変える」「費目ごとに別の制度を使う」「依頼する範囲を絞る」の四つに整理できます。この記事では、分割払い、法テラスの立替制度、裁判所に納める費用の猶予制度、そして着手金をどう考えるかまでを、制度の根拠に沿って順に説明します。

「払えない」には二つの場面がある


これから依頼する段階で足りない

 一つ目は、まだ依頼していない段階で、着手金や実費をまとめて用意できないという場面です。多くの記事が扱っているのはこちらで、分割払いや法テラスの立替制度が主な選択肢になります。

依頼したあとに払えなくなった

 二つ目は、いったん依頼したあとで、分割の途中や追加費用の段階で支払いが続けられなくなる場面です。こちらは事件が進行中である分、対応を誤ると手続上の期限に直結します。取れる選択肢も一つ目とは異なるため、後半で別に扱います。
 自分がどちらの場面にいるのかを最初に決めておくと、読むべき情報の範囲がかなり絞られます。

「安くする」より「時期・負担者・範囲」を動かす

 弁護士費用は自由化されており、同じ事件でも事務所ごとに金額の設計が違います。ただ、費用が足りないときにまず考えるべきなのは、金額そのものを値切ることではありません。いつ払うか、誰が払うか、何を頼むかという三つの変数を動かすほうが、実際には現実的な解決につながります。次の表は、その整理です。

考え方具体的な手段向いている場面
支払う時期をずらす事務所との分割払い、支払時期の設計収入はあるが手元にまとまった資金がない
負担する人を変える法テラスの立替、弁護士費用特約、勤務先や所属団体の制度収入・資産が基準以下、保険に特約が付いている
費目ごとに別の制度を使う裁判所に納める費用は訴訟上の救助、弁護士報酬は立替や分割印紙代など裁判所への納付が重い
依頼する範囲を絞る書面の作成だけ、交渉段階だけなど範囲を区切って依頼する全部をまとめて頼むと総額が読めない


最初に切り分ける三つの問い


いくら足りないのか

 「払えない」と一口に言っても、まったく用意できないのか、半分は用意できるのかで打つ手が変わります。手元にある現金と預金、毎月の収入から生活費を引いて残る額を、おおまかでよいので先に把握しておきます。法テラスの利用を検討する場合、収入と資産の資料は結局提出することになるため、この作業は無駄になりません。

いつまでに必要なのか

 期限のある事件かどうかで、選べる制度が変わります。裁判所からの書類に答弁書の提出期限が書かれている、控訴の期間が迫っている、時効の完成が近いといった事情があるなら、審査に時間のかかる制度は間に合わない可能性があります。逆に、期限が差し迫っていないのであれば、腰を据えて制度を選ぶ余地があります。

どの費目が足りないのか

 弁護士費用は、弁護士に支払う報酬と、裁判所に納める印紙代や郵便料などの実費に分かれます。足りないのが弁護士報酬なのか、裁判所へ納める費用なのかで、使える制度が別になります。後述する訴訟上の救助は後者にしか効きませんし、法テラスの立替は原則として実費だけを対象にはしません。この区別は、あとの章で繰り返し出てきます。

分割払いを相談する


分割は値引きではない

 分割払いに応じている事務所は珍しくありません。ただし分割は、支払いの時期を分散させる取り決めであって、総額が下がるわけではありません。月々の負担が軽く見えても、支払う合計額は同じであることを前提に検討する必要があります。

委任契約書に書かれる「支払時期」の問題

 日本弁護士連合会の会規は、弁護士が事件を受任したときは委任契約書を作成しなければならないと定め、その記載事項として、受任する法律事務の表示および範囲、報酬の種類・金額・算定方法および支払時期、委任事務の終了に至るまで契約を解除できること、そして委任契約が中途で終了した場合の清算方法を挙げています。
 分割払いは、このうち「支払時期」の設計そのものです。口頭で「分割でも大丈夫ですよ」と言われた場合でも、契約書にどう書かれているかを確認しておくと、あとで認識のずれが起きにくくなります。

「後払い」「積立」の意味を確かめる

 注意したいのは、分割・後払いと書かれていても、入金が終わるまで手続に着手しない運用になっている場合があることです。とくに申立て型の手続では、毎月積み立ててもらい、必要額がそろった段階で申し立てるという進め方が採られることがあります。
 この場合、積立の期間が長くなるほど着手が遅れます。その間に相手方から訴訟を起こされたり、給与を差し押さえられたりする可能性がある事件では、月々の負担を軽くしすぎることが、かえって不利に働くこともあります。分割の条件を相談するときは、金額だけでなく「いつから動いてもらえるのか」もあわせて確認しておくとよいでしょう。

分割を相談するときに確認したい項目

  1. 分割の回数と、月々の支払額
  2. 着手のタイミング(契約時か、入金完了後か)
  3. 支払いが遅れた場合にどう扱われるか
  4. 報酬金や実費が発生する時期と、その支払方法
  5. 途中で委任が終了した場合の清算方法
  6. 分割の合意が契約書のどこに書かれているか


法テラスの立替制度(民事法律扶助)


三つの条件

 法テラス(日本司法支援センター)は、収入や資産が一定基準以下の方を対象に、弁護士・司法書士に依頼した場合の費用を立て替え、あとから分割で返済してもらう制度を運営しています。法テラスが公表している利用条件は次の三つです。

  • 収入や資産が一定基準以下であること
  • 勝訴の見込みがないとはいえないこと
  • 民事法律扶助の趣旨に適すること

 二つ目の条件は見落とされがちです。無料法律相談の要件と立替の要件は別に設計されているため、無料相談は受けられても、立替は利用できないという結論があり得ます。相談の時点で立替まで確定しているわけではない、という前提で臨むほうが安全です。

立て替えられるのは着手金と実費が中心

 立替の対象は、調停や訴訟などの裁判手続、相手方との示談交渉、裁判所に提出する書類の作成を依頼した場合の着手金や実費です。報酬金は事件が終わった段階の話になるため、着手時点で全額が手当てされるという理解は正確ではありません。また、実費だけを立て替えてもらうことは原則としてできません

審査と、時間の見積り

 立替を利用するには審査があります。審査は申込みをした地方事務所で行われ、審査員は各地の弁護士や司法書士が担当します。審査では、援助を開始するかどうかのほか、弁護士や司法書士に支払う着手金・実費の金額、立替金の支払方法と月額が決められます。
 法テラスの案内によれば、申込みから決定まで通常2週間程度かかり、提出書類に不備がある場合や年末年始などはさらに時間を要することがあります。期限が迫っている事件では、この2週間をどこに置くかが実務上の分かれ目になります。

返済・猶予・免除

 立て替えられた費用は、事件の進行と並行して、無利息で分割返済していきます。月々の返済額は審査で決まりますが、毎月数千円程度からという水準になることが多いようです。
 生活保護を受給している間は返済が猶予されます。事件がすべて終了したあとも受給を続けている場合には、返済の免除を申請することができます。免除は自動ではなく、援助事件がすべて終結したあとに申請し、その時点の経済状況や事件で得た経済的利益を踏まえて判断されます。生活保護を受給していない方を対象とした免除の枠組みも用意されています。

立て替えられないもの・注意したい点

項目扱い
着手金・実費立替の対象。ただし実費だけの立替は原則できない
鑑定料などの高額な実費限度額の範囲内で立替、超える部分は原則として自己負担
自己破産事件の予納金生活保護を受給している場合を除き、立替の対象外
民事再生事件の予納金生活保護の受給にかかわらず、立替の対象外
相手方などから受け取った金銭原則として、その金銭から一括で精算する
生活保護受給中の返済猶予される。終了後も受給していれば免除の申請ができる


 表の5行目は、とくに誤解が生じやすいところです。事件の結果として相手方から金銭を受け取った場合、立替金は原則としてその金銭から一括で精算することになります。月々の返済が続く前提で受取額を計算していると、手元に残る金額の見込みが狂います。

管轄の裁判所が遠方のとき

 訴えられた側で、管轄の裁判所が住まいから遠いという事情がある場合、援助が認められれば、管轄裁判所の近くの弁護士に事件を依頼できる制度があります。ただし、受けてくれる弁護士が見つからない可能性もあるとされているため、まずは近くの弁護士に相談したうえで検討するのが順序です。

裁判所に納めるお金が足りないとき


訴訟上の救助という制度

 訴えを起こすときは、訴状に印紙を貼って裁判所に納める必要があります。この裁判所へ納める費用について、民事訴訟法82条は「訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者」に対し、申立てにより訴訟上の救助の決定をすることができると定めています。ただし、勝訴の見込みがないとはいえないときに限るという条件が付いています。
 この制度は、事務所のコラムではあまり取り上げられませんが、弁護士費用とは別の系統の制度であり、費目ごとに使い分けるという発想の代表例です。

免除ではなく猶予

 救助の決定を受けても、費用が消えるわけではありません。効力は支払いの猶予です。裁判が終わり、訴訟費用を相手方が負担するという結論になれば、結果として自分で納めずに済むこともありますが、自分が負担する結論になれば、その段階で納めることになります。
 また、救助の決定は審級ごとに行われるため、控訴審では改めて申立てが必要です。決定後の調査で支払える資力があると明らかになった場合には、救助が取り消されることもあります。要件は疎明する必要があり、裁判所によっては、法テラスの援助開始決定の証明書だけでは疎明として扱わないという運用が案内されています。郵便料については、救助を申し立てた場合でもあらかじめ納めるよう求められることがあります。

法テラスとの役割分担

 実務では、弁護士費用について法テラスの立替を使う場合、裁判所に納める印紙代は立替ではなく訴訟上の救助で対応するという整理が採られることが多いようです。救助が認められなかった場合に、法テラスが印紙代を追加で援助するという扱いもあるとされています。
 利用者側から見ると、弁護士へのお金は法テラス、裁判所へのお金は裁判所の制度という二本立てになる、と理解しておくと全体像がつかみやすくなります。

民事法律扶助の枠から外れる場面


日弁連の委託援助業務

 法テラスの民事法律扶助や国選弁護制度でカバーされない領域については、日本弁護士連合会が法テラスに委託する形で、別の援助の枠組みが用意されています。対象となるのは次の9分野です。

  • 刑事被疑者弁護援助
  • 少年保護事件付添援助
  • 犯罪被害者法律援助
  • 難民認定に関する法律援助
  • 外国人に関する法律援助
  • 子どもに対する法律援助
  • 精神障害者に対する法律援助
  • 心神喪失者等医療観察法法律援助
  • 高齢者・障害者・ホームレス等に対する法律援助


使える制度がある場合はそちらが先

 この枠組みは、あくまで既存の制度で拾えない部分を補うものとして設計されています。日弁連も、民事法律扶助や国選弁護制度が利用できる場合はそちらを利用するよう案内しており、刑事被疑者弁護援助は被疑者国選弁護を受けられるときには利用できないとされています。
 たとえば犯罪被害者法律援助は、生命・身体・自由・性的自由に対する犯罪や、配偶者暴力・ストーカー行為の被害を受けた方などが、刑事裁判や少年審判等の手続に関する活動を希望する場合が対象で、資産についての要件も定められています。利用の可否は、相談を受けた弁護士が要件を確認したうえで判断することになります。

刑事事件の場合


資力50万円という線

 刑事事件は民事法律扶助の対象外です。代わりに国選弁護の制度があります。国選弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出する必要があり、現金と預金などの合計が政令の定める基準額である50万円を下回っていれば、そのまま請求することができます。
 50万円以上の場合は、あらかじめ弁護士会に私選弁護人選任の申出をし、受任する弁護士がいなかったときに初めて国選の請求ができるという順序になります。不動産や自動車は流動資産に当たらないとされ、借金があることは、この判断では差し引かれないのが一般的な扱いです。

国選は「無料」と言い切れない

 国選弁護人が付いた場合、依頼の時点でお金を用意する必要はありません。ただし、刑事訴訟法181条1項は、刑の言渡しをしたときは被告人に訴訟費用の全部または一部を負担させなければならないと定めており、国選弁護人の報酬も訴訟費用に含まれます。同項ただし書きにより、貧困のため納付できないことが明らかなときには負担させないこととされているため、実際には負担を命じられない例も多いのですが、資力があると判断された場合や執行猶予付きの判決の場合などには、負担を命じられることがあります
 負担を命じられた場合でも、貧困のため完納できないときは、訴訟費用の執行免除を申し立てることができます。この申立てには、負担を命じる裁判が確定してから20日以内という期限があります。

保険や第三者の負担で賄えないか


弁護士費用特約

 自動車保険や火災保険、クレジットカードの付帯サービスなどに、弁護士費用を補償する特約が付いていることがあります。交通事故のみを対象とするものと、日常生活のトラブルまで含むものがあり、商品によっては人格権の侵害に関する類型を対象に加えているものもあります。
 補償には上限があり、利用にあたっては保険会社への事前連絡が必要とされているのが通常です。自分に特約が付いているかどうかは意外と把握されていないため、保険証券や契約内容を一度確認してみる価値があります。勤務先の福利厚生や、所属している共済・労働組合に相談窓口や費用補助が用意されている場合もあります。

家族が払う場合の整理

 費用を家族が負担すること自体は差し支えありません。ただし、費用を出す人と依頼する人が別であっても、弁護士が代理するのは依頼した本人であり、方針を決めるのも報告を受けるのも本人です。誰が依頼者なのかを最初に明確にしておかないと、進行中に説明の相手や意思決定の主体があいまいになり、かえって話が進みにくくなることがあります。

依頼したあとに払えなくなったとき


連絡を絶たない

 もっとも避けたいのは、支払えないことを言い出しにくくなり、連絡そのものを止めてしまうことです。弁護士の側からすると、連絡が取れない状態は方針の確認ができない状態でもあり、信頼関係が失われたとして辞任に向かう要因にもなります。支払いが難しくなった時点で早めに伝えるほうが、支払時期の組み替えや、依頼の範囲を絞り直すといった調整の余地が残ります。

中途で終了した場合の清算

 委任契約は、当事者のどちらからでも解除することができます。中途で終了した場合、すでに行われた事務の割合に応じて報酬を清算するという考え方が民法に定められており、委任契約書にも中途終了時の清算方法を記載することが求められています。
 したがって、「払った着手金は一切戻らない」と決めつける必要はなく、どの段階まで進んでいたかによって清算の内容は変わり得ます。もっとも、清算の考え方は契約書の定めに左右されるため、まずは契約書の該当条項を読み返すことが出発点になります。

期限は待ってくれない

 費用の話が止まっている間も、答弁書の提出期限や控訴期間、時効の期間は進みます。弁護士が辞任した場合、その後の手続は自分で対応するか、新たに依頼先を探すことになりますが、いずれにしても時間が必要です。費用の相談は、期限から逆算して早めに切り出すほうが選択肢が残ります。

「払えない」と「割に合わない」は別の問題


回収の見込みという視点

 費用を工面する方法を探す前に、そもそもその事件に費用をかける価値があるかを検討したほうがよい場合があります。相手方に支払う資力がなければ、判決を得ても回収できないことがあります。この場合、問題は「費用が払えない」ことではなく、「かけた費用に見合う結果が見込みにくい」ことです。
 なお、相手方に弁護士費用を負担させられる場面は限られています。原則として弁護士費用は各自の負担であり、不法行為に基づく損害賠償請求で一部が損害として認められる扱いがある、という程度に理解しておくのが実際に近いところです。

手続の選び方で総額が変わる

 同じ争いでも、話し合いで解決するのか、調停を使うのか、訴訟まで進むのかで、弁護士報酬も裁判所に納める費用も変わります。裁判所へ納める手数料は手続の種類によって差があり、訴訟以外の手続のほうが低く設定されているものもあります。
 「訴訟をしなければ解決しない」と決めてかかる前に、どの手続を選ぶと総額がどう変わるのかを相談の場で聞いておくと、費用の見通しが立てやすくなります。

相談のときに伝えること・確認すること

 費用が不安であることは、隠すより先に伝えたほうが話が早く進みます。相談の場では、次の点を整理しておくと具体的な提案を受けやすくなります。

  1. 用意できる金額と、いつまでに用意できるか
  2. 毎月の収入と支出のおおよその状況
  3. 期限のある書類が届いているか(届いていれば期限の日付)
  4. 分割払いに応じてもらえるか、応じてもらえる場合の条件
  5. その事務所が法テラスの立替制度に対応しているか
  6. 法テラスを利用する場合、審査にかかる期間と間に合うかどうか
  7. 裁判所に納める費用がいくらになる見込みか
  8. 依頼の範囲を絞った場合、費用がどう変わるか


おわりに

 弁護士費用が払えないという状況に対して、万能の制度はありません。分割払いは支払いの時期を動かすだけですし、法テラスの立替には要件と審査があり、返済も伴います。訴訟上の救助は裁判所に納める費用にしか及びません。それぞれに射程と限界があります。
 それでも、費目を分け、時期を分け、負担者を分けて考えていけば、選べる組み合わせは一つではありません。費用を理由に相談を先送りしているうちに期限が過ぎてしまうことのほうが、結果として失うものは大きくなりがちです。どこまでなら用意できるのかという情報を持って、まずは相談の場でそのまま伝えてみてください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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