弁護士・司法書士・行政書士・警察・行政窓口|どこに相談すべきかの使い分け
弁護士に相談しようとしたとき、「担当は女性の方にお願いしたい」「あの弁護士に見てもらいたい」と思うことがあります。一方で、そう言ってよいものか迷い、結局伝えないまま相談日を迎える方も少なくありません。
希望を伝えること自体は、特別なことではありません。ただし、いつ、どこに、どのように伝えるかによって、応じてもらえる確率は変わります。この記事では、担当者についての希望をどの段階で伝えるとよいのか、通らないときには何が起きているのか、依頼した後に担当を替えてほしいと思ったらどうするのかを、制度の裏づけとあわせて整理します。
まず全体像|希望は「予約するとき」に伝えるのが基本
担当者についての希望は、相談の予約を取る段階で伝えるのが最も通りやすいと考えられます。相談の日時と担当者は同時に決まることが多く、割り当てが済んだ後では動かしにくくなるためです。
| 希望の内容 | 主な伝え先 | 伝えるタイミング |
|---|---|---|
| 女性(または男性)の弁護士に担当してほしい | 予約の受付 | 予約するとき |
| 特定の弁護士を指名したい | 予約の受付 | 予約するとき |
| 相談を担当した弁護士にそのまま依頼したい | 相談担当の弁護士 | 相談の終わりごろ |
| 依頼した後に担当を替えてほしい | 担当弁護士または事務所 | そう感じた時点 |
以下では、この順番に沿って見ていきます。
そもそも弁護士の「担当」はどう決まるのか
自分で選ぶのが原則
弁護士に依頼するということは、依頼者と弁護士(または弁護士法人)との間で委任契約を結ぶということです。契約である以上、誰に頼むかを決めるのは依頼者の側です。国が弁護人を付ける国選弁護のような例外を除けば、依頼先を選ぶ自由が出発点にあります。
弁護士職務基本規程22条も、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとしています。担当者についての希望を口にすることは、この枠組みの中では自然なことといえます。
ただし弁護士の側に「受けなければならない義務」はない
一方で、弁護士には、持ち込まれた事件を必ず受けなければならないという義務はありません。同規程34条は、事件の依頼があったときは速やかにその諾否を依頼者に通知しなければならないと定めています。裏を返せば、断るという選択肢があることを前提にした規定です。
したがって、「指名すれば必ずその弁護士が担当する」という仕組みにはなっていません。希望を伝えたうえで、応じられるかどうかを事務所側が返答する、という流れになります。
弁護士法人に依頼する場合
依頼先が弁護士法人の場合、契約の相手方は法人になりますが、実際に担当する弁護士が誰かは別に決まります。弁護士法30条の14は、法人が特定の事件について業務を担当する社員を指定したときは、依頼者にその旨を書面で通知しなければならないと定めており、依頼者の側から指定の有無を明らかにするよう求めることもできるとしています。
また、事件を受任するにあたっては、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作成することが原則とされています(同規程30条1項)。担当者を確認するタイミングとして、契約書を取り交わす場面は使いやすい機会です。
女性弁護士はどのくらいいるのか
「女性弁護士に依頼したい」という希望がどの程度通りやすいかは、実際の人数にも左右されます。日本弁護士連合会が公表している弁護士会別の会員数(2026年7月1日現在)では、次のようになっています。
| 弁護士会 | 弁護士数 | うち女性 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 東京 | 9,688人 | 2,159人 | 22.3% |
| 第一東京 | 7,653人 | 1,792人 | 23.4% |
| 第二東京 | 7,077人 | 1,681人 | 23.8% |
| 神奈川県 | 1,853人 | 380人 | 20.5% |
| 全国 | 48,124人 | 10,081人 | 20.9% |
この数字から言えること
全国では女性がおよそ5人に1人、東京の3つの弁護士会ではおおむね23%前後です。地域による差は小さくなく、同じ時点の集計で1割前後にとどまる県もあります。
つまり、東京では希望が通る余地が比較的あるものの、選択肢が無限にあるわけではないということです。実務的な結論は次の2点に落ち着きます。
- 早めに希望を伝える。相談日が迫ってからでは調整の余地が小さくなる
- 日程に幅を持たせる。担当者を優先するか、早さを優先するかを自分の中で決めておく
伝えるタイミングと、具体的な言い方
なぜ予約のときなのか
多くの事務所では、予約の受付時点で相談を担当する弁護士が決まります。相談の担当者がそのまま受任の担当になる運用の事務所も少なくないため、最初の一言が最後まで効く場面が多いのです。
なお、事務所によっては、夜間や土曜の相談枠を複数の弁護士が交替で担当しており、その枠では指名を受け付けていないことがあります。こうした運用は珍しくないので、予約の際に枠ごとの扱いを確認しておくと行き違いが減ります。
電話・問い合わせフォームでの伝え方
難しい言い回しは要りません。次のような形で十分に伝わります。
- 「差し支えなければ、女性の弁護士にお願いできますか。難しければそのままで構いません」
- 「相談内容の性質上、女性の担当者を希望しています。日程は調整できます」
- 「ホームページを拝見して、○○先生にご相談したいと思っています。ご都合が合わなければ他の先生でも構いません」
「難しければ構わない」という一言を添えておくと、受付の側も調整しやすくなります。希望を伝えることと、無理を通すことは別です。
相談当日になってしまったら
相談の場で初めて希望に気づくこともあります。その場合は、相談の終わりごろに「もし依頼するとなった場合、担当は先生になりますか」「事務所内で女性の弁護士が担当することは可能でしょうか」と尋ねておくとよいでしょう。相談と受任は別の段階なので、受任の前であれば調整できる余地が残っています。
何を伝えるか|性別以外の希望も言葉にする
希望として伝えてよいこと
担当者の性別だけが希望とは限りません。実際には、次のような点を伝えておいたほうが、その後のやり取りが楽になります。
- 担当者について(性別、おおよその年代、同じ担当が最後まで続くか)
- 連絡の手段(電話は避けたい、メールやチャットで受けたい、留守電を残さないでほしい)
- 連絡できる時間帯(日中は職場にいるので夕方以降、平日の昼休みだけ など)
- 書面の送付先(自宅以外にしてほしい、封筒の差出人の表示に配慮してほしい)
- 相談への同席(家族に同席してほしい、逆に一人で話したい)
- 面談の方法(対面が難しいのでオンラインや電話にしてほしい)
このうち、書面の送付先や連絡手段は、家庭や職場に事情を知られたくない場合に特に効いてきます。担当者の性別よりも、結果としてこちらのほうが重要だったという方も少なくありません。
理由は詳しく話さなくてよい
希望の理由を細かく説明する必要はありません。「話しにくい内容だから」「そのほうが落ち着いて話せるから」で足ります。受付の段階では、事件の詳しい中身まで話さなくても差し支えありません。
なお、予約の際に相手方の氏名を尋ねられることがありますが、これは事務所側が過去の相談や受任との重なり(利益相反)を確認するための手続きで、担当者の希望とは別の話です。
家族が代わりに予約するとき
家族が本人に代わって問い合わせをする場面もあります。このとき注意したいのは、希望の主体はあくまで本人だという点です。本人が望んでいない条件を家族の判断で固めてしまうと、後から調整が必要になります。本人の希望を確認したうえで伝えるか、本人が直接話せる機会を作るほうが確実です。
希望が通らないことがあるのはなぜか
希望に応じてもらえないことは実際にあります。ただ、その理由にはいくつか種類があり、断られた=軽く扱われた、ということではありません。
①利益相反にあたる場合
相手方から先に相談を受けている、相手方の事件を受任しているなど、弁護士法25条や弁護士職務基本規程が定める類型にあたるときは、その弁護士は職務を行うことができません。共同事務所では、他の所属弁護士が扱えない事件を同じ事務所の弁護士が扱えない場合もあります。指名した弁護士だけが担当できない、ということも起こり得ます。
②分野や経験の問題
同じ事務所でも、弁護士ごとに主に扱っている分野は異なります。事務所として「その分野を扱える別の弁護士のほうが適している」と判断することがあり、この場合は理由を聞いてみる価値があります。
③日程と稼働の問題
裁判期日や既存の案件の都合で、直近の相談枠が取れないことがあります。数週間待てば希望どおりになるのか、それとも当面難しいのかを確認すると、判断しやすくなります。
④交替制で担当が決まる枠
弁護士会や自治体が実施する相談会、事務所の夜間・休日相談などは、複数の弁護士が交替で担当する形式が一般的です。この枠では指名を受け付けていないことがあります。
⑤そもそも在籍していない
弁護士1人の事務所や、少人数の事務所では、希望する属性の弁護士が在籍していないこともあります。この場合、その事務所で調整することはできません。別の事務所を探すか、希望の優先順位を考え直すことになります。
指名が原則できない場面と、それでも希望を伝えられる場面
| 場面 | 担当者の指名 | 希望の伝え方 |
|---|---|---|
| 法律事務所に直接依頼する場合 | 依頼者が選べる | 予約時に受付へ伝える |
| 弁護士会の法律相談センター | 窓口による | 予約時に各センターへ確認 |
| 自治体の無料法律相談 | できない運用が多い | 事前に運用を確認 |
| 国選弁護人(被疑者・被告人) | できない | 私選への切り替えを検討 |
| 国選の被害者参加弁護士 | 候補は法テラスが指名 | 「選定に関する意見書」に記載 |
| 法テラスの民事法律扶助 | 契約事務所なら選べる | 自分で選んだ事務所に相談 |
国選弁護人は選べない
逮捕・勾留された方や被告人に付く国選弁護人については、法テラスが候補となる弁護士を指名して裁判所に通知し、裁判所が選任します。知り合いの弁護士や、特定の弁護士を国選弁護人として指名することはできません。自分で選びたい場合は、私選弁護人として依頼することになります。
被害者参加弁護士には「選定に関する意見書」がある
一方、犯罪の被害者が刑事裁判に参加する被害者参加制度では、資力の要件を満たせば国が費用を負担する国選の被害者参加弁護士を選定するよう請求できます。この請求に必要な書類のなかに、「選定に関する意見書」という、弁護士の選定にあたっての要望を書く書式があります。法テラスは被害者参加人の意見を聴いたうえで候補を指名し、裁判所に通知するという流れです。
法テラスの案内には、要望に添えない場合もある旨が明記されています。それでも、公費で付く弁護士についても、希望を書面で伝える窓口が制度として用意されていることは知っておいてよい点です。
弁護士会には女性弁護士の相談枠がある
東京弁護士会には「女性のための法律相談」という枠があり、女性弁護士との面接相談を希望する場合は各法律相談センターに直接問い合わせる案内になっています。2026年8月時点では、池袋法律相談センターで毎週土曜10時から12時、錦糸町法律相談センターで毎週火曜10時から12時に実施され、相談料は30分2,200円(税込)、延長15分ごとに1,100円(税込)とされています。原則予約制です。
他の弁護士会でも、女性弁護士による相談の枠や、女性の職員が予約を受け付ける専用回線を設けている例があります。窓口によって時間帯・料金・予約方法が異なるため、利用の際は最新の案内を確認してください。
法テラスを使いたい場合
収入と資産が基準以下の方が対象となる民事法律扶助は、法テラスの事務所だけでなく、法テラスと契約している弁護士の事務所でも利用できます。自分で探した事務所が法テラスと契約していれば、そこに相談したうえで扶助を申し込むという進め方が可能です。「法テラスを使うと弁護士を選べない」と考えて選択肢を狭める必要はありません。
なお、刑事事件に関する相談は民事法律扶助の対象外とされています。
「女性弁護士だから安心」とは限らない
性別は判断材料のひとつ
同性のほうが話しやすいという感覚は、それ自体、尊重されるべきものです。実際、話しにくさを抱えたまま相談すると、必要な事実が出てこず、方針の組み立てに影響することもあります。
もっとも、弁護士としての職務の内容や役割が性別によって変わるわけではありません。性別が合っていれば相性も合う、という関係にもありません。担当者の希望は、次のような点とは別に確認しておくのが安全です。
- その分野をどの程度扱ってきたか、似た立場の依頼者の経験があるか
- 見通しについて、良い面と悪い面の両方を説明してくれるか
- 費用の内訳(相談料・着手金・報酬金・実費)と、それぞれの発生時点が明確か
- 連絡の頻度と手段、返答までの目安が示されるか
- 最後まで同じ担当者が続くのか、途中で替わる可能性があるのか
なお、弁護士職務基本規程29条2項は、有利な結果になることを請け合ったり保証したりしてはならないと定めています。結果を約束するような説明があった場合は、性別にかかわらず慎重に受け止めたほうがよいでしょう。
依頼した後に担当を替えてほしいと思ったら
いきなり契約解除ではなく、順番がある
依頼した後で「話しづらい」「連絡が来ない」と感じることがあります。この場合、次の順番で考えると選択肢を減らさずに済みます。
- まず状況の説明を求める。同規程36条は、必要に応じて依頼者に事件処理の状況を報告し協議することを求めている
- 何が不満なのかを具体化する。連絡の頻度なのか、方針なのか、態度なのかで、取るべき対応が変わる
- 事務所内での担当変更や、担当者の追加を申し入れる。複数の弁護士がいる事務所であれば現実的な選択肢になる
- 信頼関係が回復しがたいときは、その旨を伝える。同規程43条は、信頼関係が失われ回復が困難なときは弁護士の側から辞任その他の適切な措置を採るべきことを定めている
- 他の弁護士に意見を聞く。同規程40条は、依頼者が他の弁護士に依頼をしようとするときに正当な理由なくこれを妨げてはならないと定めている
契約はいつでも解除できるが、清算は別の話
委任契約は、民法651条1項により各当事者がいつでも解除できます。依頼者の側から契約を終わらせること自体は可能です。
ただし、解除できることと、費用の精算が問題にならないことは別です。すでに支払った着手金の扱いや、そこまでの活動に対する報酬の清算は、委任契約書の定めに沿って処理されます。また、期日や交渉が差し迫った時期の交代は、手続きの進行に影響することがあります。解除を検討する場合は、次に依頼する弁護士の見通しを立ててから動くほうが安全です。
費用などで折り合わないとき
弁護士との間で費用や事件処理をめぐる紛争が生じたときは、所属弁護士会の紛議調停という手続きがあります。弁護士法41条に基づく制度で、弁護士会が双方の話を聴いて調停を行うものです。弁護士職務基本規程26条も、紛議が生じたときは所属弁護士会の紛議調停で解決するよう努めるとしています。
このほか、各弁護士会には活動に関する苦情を受け付ける「市民窓口」が設けられています。
おわりに
担当者についての希望は、予約の時点で、断られてもよいという前提で伝えるのが最も現実的です。伝えるべきことは性別だけではなく、連絡の手段や時間帯、書面の送付先といった点まで含めて言葉にしておくと、その後のやり取りが安定します。
希望が通らなかったときは、利益相反なのか、分野なのか、日程なのかを尋ねてみてください。理由の種類が分かれば、待つのか、別の事務所を探すのか、優先順位を組み替えるのかを判断できます。
そして、依頼した後に違和感が生じた場合も、いきなり契約を終わらせる必要はありません。説明を求める、担当の変更を申し入れる、他の弁護士に意見を聞くという段階を踏むことができます。相談の入口で希望を口にすることは、その後の進め方を自分で決めていくための、最初の一歩でもあります。


