【解決事例】元交際相手からの恐喝・なりすまし被害|受任通知で嫌がらせを止めた解決事例
不貞慰謝料の請求を受けたとき、「悪いのはこちらだけではない」「請求してきた側にも問題があったはずだ」と感じる方は少なくありません。夫婦の間に以前から続いていた事情が関係の背景にあった、というお話は、ご相談の場でもよく伺います。
ただ、その感覚をそのまま「相手にも非がある」と伝えても、話が前に進まないことがあります。言葉としては通じても、法律上の主張としては、まだ形になっていないからです。同じ一言が、まったく違う二つのことを指している場合すらあります。
この記事では、請求する側の落ち度を主張として組み立てるために何を決めておく必要があるのか、そしてそれがどこまで届き、どこから先には届かないのかを整理します。金額が下がりやすい事情の一覧や、婚姻関係が破綻していたという主張については、それぞれ別の記事で扱っています。
「相手にも非がある」という言葉は、二人の人を指していることがある
請求を受けた方が「相手」と言うとき、その言葉は請求してきた配偶者を指していることもあれば、関係を持った相手方配偶者、つまり不貞をした側を指していることもあります。ご本人の中では地続きの不満でも、この二人は法律上まったく別の位置に立っています。
請求してきた配偶者は、損害を受けたとして支払いを求めている側です。その人の落ち度は、支払義務の有無や金額に関わる可能性があります。これに対して不貞をした配偶者は、請求してきた側ではなく、同じ側で責任を負っている立場です。その人がどれだけ主導的だったとしても、そのことは請求してきた配偶者に対する支払義務を当然に軽くするものではありません。
| 誰の落ち度を指しているか | よく挙げられる事情 | その主張が向かう先 |
|---|---|---|
| 請求してきた配偶者 | 家庭を顧みない生活が続いていた、暴言や暴力があった、関係を知りながら何も言わなかった | 支払義務の有無と金額。ただし支払義務そのものを左右する場面は限られる |
| 不貞をした配偶者 | 関係を主導した、既婚であることを隠していた、繰り返し誘っていた | 主に二人の間での負担の分け方。請求してきた配偶者との関係では効きにくい |
後者を述べたい場合は、請求への反論としてではなく、負担の分け方(求償)の問題として組み立てることになります。この点は求償権を扱った記事で詳しく述べています。
落ち度を持ち出す場所は、三つに分かれる
請求してきた配偶者の落ち度を述べるとき、その主張は次の三つのどこかに向かいます。どこに向けているのかを自分で決めておかないと、伝わり方が定まりません。
支払義務そのものを左右する場面は限られる
支払義務が生じないという結論に届くのは、不貞行為があったといえない場合、既婚であることについて故意も過失もなかった場合、婚姻関係が不貞の前から破綻していた場合、消滅時効が完成している場合などです。請求してきた配偶者に生活上の落ち度があったというだけでは、通常はここには届きません。
例外的にここに触れうるのが、次章以降で述べる「関係を了承していた」といえる場合です。
多くは金額の場面に向かう
夫婦の生活が実際にどのような状態だったかという事情は、責任があるかどうかではなく、どれだけの損害が生じたかという評価を通じて金額に反映されることが多いといえます。慰謝料は精神的な苦痛を金銭に置き換えるものですから、その夫婦がどのような関係にあったかは、苦痛の大きさを考える材料になり得るためです。
不貞とは別の問題として立つ場合がある
発覚した後の取り立て方などは、不貞の慰謝料を下げる事情というより、別個の請求として立てられるかどうかという問題になります。この点は後の章で改めて触れます。
「過失相殺」という言葉は、この場面には当てはめにくい
交通事故では、被害者側にも不注意があれば割合に応じて賠償額が減ります。民法722条2項が「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」と定めているためです。同じ発想で「こちらの落ち度は3割程度のはずだ」と考える方がいらっしゃいます。
ただ、不貞慰謝料でこの規定が交通事故のような形で働くことは、あまり期待できません。理由は三つあります。
- 条文が定めているのは「損害賠償の額を定める」場面であって、支払義務そのものの有無ではありません。落ち度をどれだけ述べても、責任が消えるという結論には直結しません。
- 過失相殺が想定しているのは、損害の発生や拡大にうっかり関わってしまったという意味での不注意です。夫婦関係が冷えていたことや家庭を顧みなかったことは、不貞という行為を招いた不注意とは性質が異なります。
- 慰謝料の額は、そもそも一つの計算式で出るものではなく、さまざまな事情を総合して決められます。落ち度は、その総合判断のなかの一つの事情として溶け込む形になります。
結果として、「相手にも3割の非があるから3割引く」という形の答えは、この分野では基本的に出てきません。減額の主張が意味を持たないという意味ではなく、割合という形では返ってこない、ということです。交渉の場で割合を前提にした話し方をすると、かえってかみ合わなくなることがあります。
いつの落ち度なのかで、効き方が変わる
同じ「落ち度」でも、それが不貞の前のことなのか、関係が続いていた間のことなのか、発覚した後のことなのかで、届く先が変わります。
| 落ち度があったとされる時期 | よく挙げられる事情 | 効きうる場所 |
|---|---|---|
| 関係が始まる前 | 家庭を顧みない生活、暴言や暴力、長く続いていた不和 | 夫婦がどのような状態だったかという評価を通じて、金額の場面に向かいやすい |
| 関係が続いていた間 | 知りながら何も言わなかった、了承していたと受け取れる言動があった | 保護される利益が失われていたかという議論につながり、支払義務に触れる余地がある |
| 発覚した後 | 勤務先や家族への公表、繰り返しの連絡、応じられない条件の押しつけ | 不貞の慰謝料の額を動かすというより、別個の問題として立つことが多い |
三つのうち、手元に記録が残りやすいのは三段目だけです。前の二つは相手方夫婦の内側で起きたことなので、請求を受けた側の手元に資料がないのが通常です。この非対称は、主張の組み立て方に大きく影響します。
「知っていた」と「認めていた」は、同じではない
不貞慰謝料が認められるのは、夫婦としての共同生活の平穏という、法律上保護される利益が侵害されたと評価されるからです。裏を返せば、その利益を本人が自ら手放していたと評価できる場合には、そもそも不法行為が成立しないという議論の余地があります。関係を了承していた、容認していたという主張は、ここに位置づけられます。
認められにくいとされる理由
もっとも、この主張が通ることはそう多くありません。慰謝料を請求している時点で、その方は「認めていない」という立場を取っているわけですから、過去の言動については「本心ではなかった」という説明が伴うのが通常です。子どものため、生活のためにやむを得ず黙っていた、という説明も珍しくありません。
実際の裁判例でも、婚姻の際にあらかじめ「浮気をしても構わない」という趣旨の書面を作成させていた事案について、その書面は真意を反映したものとはいえず、あらかじめ貞操義務を免除させる内容として効力を認められないとして、支払いが命じられたものがあります。また、問い詰めの場で「そんな人でよければ差し上げます」といった発言があった事案でも、冷静な判断のもとでの発言とはいえないとして、容認とは認められませんでした。
認められた例はどこが違ったのか
他方で、関係を知りながら長期間にわたって解消を求めず、相手方に手紙で経済的な援助まで求めていたという事案では、保護される利益が侵害されたとはいえないとして請求が退けられた例もあります。ここで見られているのは一度の発言ではなく、長い期間にわたって積み重なった行動です。
つまり、この主張が意味を持つのは、了承の言葉があったかどうかではなく、了承した状態が続いていたと外から見て言えるかという点にかかっています。一言だけを取り出して提示しても、通常は「その場の言葉にすぎない」と評価されます。
発覚した後のことは、減額の主張とは別の枠に置く
請求を受けた方から、勤務先に電話をかけられた、家族に手紙を送られた、深夜に何度も連絡が来る、といったご相談を受けることがあります。こうした行為に納得がいかないのは当然のことです。
ただ、これらは不貞よりも後に起きたことです。不貞によって生じた精神的な苦痛の大きさを、後から起きた出来事が直接に小さくするわけではありません。そのため、これを「慰謝料が下がる事情」として述べても、期待したほどには働かないことがあります。
むしろ検討すべきは、その行為自体が別個に責任を問える性質のものかどうかです。取り立ての方法や公表の仕方によっては、独立した問題として扱えることがあります。この点は、勤務先への連絡や暴露を扱った記事で詳しく述べています。
交渉の場では、この二つを分けて伝えるほうが通じやすくなります。金額の話に混ぜてしまうと、単なる感情的な反発として受け取られてしまうためです。
落ち度を述べることに伴うもの
主張を組み立てる前に、その主張が何を前提にしているのかを確認しておく必要があります。
夫婦の状態を知っていたと述べることになる
「夫婦の仲は冷え切っていた」「家庭は形だけだった」と述べることは、その夫婦の存在を認識していたと述べることでもあります。既婚であることを知らなかったという主張と、夫婦の状態が悪かったという主張は、同時には成り立ちにくい関係にあります。どちらを軸に置くのかは、はじめに決めておく必要があります。
裏づけを求められたときに出せるものが限られる
相手方夫婦の内情について、請求を受けた側が持っている材料は、多くの場合、不貞をした配偶者から聞いた話に限られます。その配偶者は請求してきた側と生活を共にしていることも多く、こちらの説明を裏づける側に立ってくれるとは限りません。主張の中身よりも、それを支える材料の所在のほうが問題になりやすい場面です。
相手方の生活に踏み込む主張になる
夫婦関係の実態を争点にすることは、相手方の家庭の事情を書面に書き出していく作業でもあります。話し合いでの解決を望んでいる場合、その進め方が相手の態度を硬くすることもあります。述べるかどうかだけでなく、どの段階でどこまで述べるかも判断の対象になります。
請求する側から見た「相手にも非がある」
請求した側が、相手方からこうした主張を受け取ることもあります。受け止め方として、次の点を押さえておくと整理しやすくなります。
- 事実として身に覚えのある部分と、その事実に法律上の意味があるかどうかは、別の問題です。心当たりがあるからといって、請求ができなくなるわけではありません。
- 生活上の不満を並べられただけでは、通常、支払義務そのものを否定する主張にはなりません。どの争点に向けた主張なのかを確かめると、応じるべき範囲が見えてきます。
- 過去に発した言葉を「容認していた」として持ち出されることがあります。その言葉がどのような場面で出たものかを、時系列とともに整理しておくことが役に立ちます。
- 感情的な応酬になると、本来の争点から離れていきます。反論の必要がある部分と、受け流してよい部分を分けることが実際には重要です。
よくあるご質問
相手にも非があるなら、その分を差し引いて支払えばよいのでしょうか
差し引く割合を自分で決めて、その額だけを支払うという進め方はおすすめできません。一部の支払いが債務を認めたものと受け取られ、その後の話し合いの前提になってしまうことがあります。金額に反映させたい事情があるのであれば、支払いを先行させるのではなく、条件を決める段階で示すことになります。
請求してきた配偶者自身にも別の相手がいたようです
その場合、それはこちらへの請求を打ち消すものではなく、別の請求権が並び立つという形になります。差し引きでゼロになるという理解は、法律上は正確ではありません。実務では相互に請求しないという合意で処理することもありますが、それは相手が同意して初めて成り立つものです。この点はダブル不倫を扱った記事で述べています。
「夫婦関係はもう終わっていると聞いていた」というのは落ち度の主張になりますか
これは請求する側の落ち度の問題ではなく、婚姻関係が破綻していたかどうか、あるいはご自身に故意や過失があったかどうかという別の争点です。組み立て方も求められる材料も異なりますので、破綻の主張と故意・過失を扱った各記事をご覧ください。
まとめ
- 「相手にも非がある」という言葉は、請求してきた配偶者を指す場合と、不貞をした配偶者を指す場合があります。まずどちらなのかを分けます。
- 不貞をした配偶者の落ち度は、請求への反論ではなく、二人の間の負担の分け方の問題として組み立てます。
- 請求してきた配偶者の落ち度は、多くの場合、支払義務の有無ではなく金額の場面に向かいます。
- 交通事故のような割合による差し引きは、この分野では基本的に用いられません。
- 関係を了承していたという主張は支払義務に触れる余地がありますが、一度の発言ではなく、続いていた状態として示せるかが問われます。
- 発覚した後の取り立て方は、減額の事情としてではなく、別個の問題として立てるほうが通じやすくなります。
- 夫婦の状態を知っていたと述べることは、既婚であることを知っていたと述べることでもあります。主張の軸は最初に決めておきます。
ご相談について
請求する側の落ち度をどう扱うかは、事情の中身そのものよりも、どの争点に向けて、どの順序で、どこまで述べるかによって結果が変わります。手元にある材料と、相手方から届いている書面の内容を合わせて確認することで、述べるべきことと、あえて触れないほうがよいことが見えてきます。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、池袋と新橋の事務所で、不貞慰謝料を請求する立場の方と請求を受けた立場の方の双方からご相談をお受けしています。すでに書面が届いている場合は、記載されている期限を確認したうえで、早めにご連絡ください。


