風俗・メンエスで法外な料金を請求された|支払いを拒否できるケース

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 「表示は総額1万円だったのに、退店時に十数万円を請求された」「はっきり頼んだ覚えのないオプションや延長料金が次々に上乗せされた」「支払いを渋ったら奥から強面のスタッフが出てきて、財布やスマホを預けさせられた」——。風俗店やメンズエステでの料金トラブル、いわゆる「ぼったくり」の相談は少なくありません。

 その場の圧力に押されて払ってしまう方が多いのですが、**「請求された金額」と「あなたが法律上支払う義務のある金額」は同じではありません。**この記事では、性風俗を利用する男性の立場から、どのような場合に支払いを拒否・減額できる可能性があるのか、その場と後日でどう動けばよいのかを整理します。

なお、以下は一般的な考え方の解説であり、「払わなくてよい」と自己判断で決めつけることを勧めるものではありません。事案ごとに結論は変わるため、記録を残したうえで早めに専門家に相談することを前提にお読みください。

風俗・メンエスの「料金ぼったくり」でよくある手口

 料金をめぐるトラブルには、次のようなパターンがあります。

  • 店頭やサイトの表示料金と、退店時の請求総額が大きく違う
  • 明確に合意していないオプション料金・延長料金が後出しで次々に加算される
  • 適用されるはずの**クーポンや割引が「実際には使えない」**とされる
  • 前払いさせておきながらキャストが来ない・サービスが提供されない
  • 「本番があった」などとして、後から**「罰金」「違約金」名目で高額を上乗せ**される
  • 支払いを渋ると強面のスタッフが出てきて、帰さない・所持品を預けさせる

 これらは「言った・言わない」の水掛け論になりやすく、その場では反論しづらいのが実情です。だからこそ、後で述べるように記録を残すことが支払いを争ううえで重要になります。

 なお、「本番をした」などとお触りやサービスの事実そのものを捏造して金銭を要求されるケース(いわゆる美人局型)は、料金トラブルとは別の見極めが必要です。

「請求額=支払義務のある額」ではない

 料金の支払義務は、原則としてあなたと店との間で成立した契約の内容によって決まります。ポイントは、請求書に書かれた金額がそのまま義務になるわけではない、という点です。

 まず、合意していない後出しの料金(頼んでいないオプション、説明のなかった延長料金、突然の「罰金」など)は、そもそも契約内容に含まれていないと評価できる余地があります。契約になければ、支払義務の根拠は弱くなります。もっとも「事前に説明した」と店側が主張してくることが多いため、実際には表示や説明の内容を裏づける記録が争点になります。

 次に、料金体系を誤認させられた場合には、民法上の取消しを主張できる可能性があります。実際よりも著しく安いと思い込まされていたなら錯誤(民法95条)、うそで料金を隠されていたなら詐欺(民法96条)が問題になり得ます。

 いずれも、「畏怖して一度払った」ことが直ちに支払義務を確定させるわけではないという点が大切です。

支払いを拒否・減額できる可能性があるケース

 上記を踏まえると、支払いを争える余地があるのは、おおむね次のような場合です。

① 合意・表示にない料金を後から上乗せされた
 頼んでいないオプションや延長、事前に示されていなかった「罰金」などは、契約内容に含まれていないと主張できる余地があります。

② 料金を著しく安く誤認させられた
 「総額◯円」と説明・表示されて入店したのに、まったく異なる高額を請求された場合、誤認勧誘として取消しや減額を主張できる可能性があります。

③ 威圧・監禁・所持品の留置を伴う取立てだった
 「払うまで帰さない」と閉じ込める、財布やスマホを取り上げて返さない、大声で恫喝する——こうした方法での取立ては、後述のとおり犯罪にあたり得ます。畏怖して支払ってしまっても、その意思表示を後から争う余地があります。

④ 違法サービスそのものの対価だった
 本番行為など、法令に反するサービスの対価を求める契約は、公序良俗に反して無効となる余地があります(民法90条)。無効であれば、その対価の支払義務は生じません。ただし注意が必要で、**すでに払ってしまったお金の返還は、不法原因給付(民法708条)の考え方から制限される場合があります。**つまり「払う前」と「払った後」で見通しが変わりやすい領域です。

 これらはあくまで「争える余地がある」という話であり、事案の証拠状況によって結論は左右されます。自己判断で押し通すのではなく、記録を残したうえで専門家に確認するのが安全です。

風俗に固有の「ぼったくり防止条例」

 「ぼったくり」というとバーやキャバクラの話と思われがちですが、性風俗営業には別途、専用の条例があります。東京都の「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」です(令和7年6月1日施行の改正を含みます)。

 この条例は、歌舞伎町など公安委員会が指定する区域内の指定性風俗営業等について、次のような規制を設けています。

  • 料金等の表示義務(第3条):営業所内に、料金や違約金等を客に見やすいように表示しなければならない
  • 不当な勧誘の禁止(第4条1項):料金を実際よりも著しく安いと誤認させる勧誘・広告や、違約金等についてうその説明をすることの禁止
  • 不当な取立ての禁止(第4条2項):粗野・乱暴な言動を交えたり、預かった所持品を隠すなど迷惑を覚えさせる方法で、料金や違約金を取り立てることの禁止

 第4条に違反した場合は、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます(第11条2項)。公安委員会による営業停止などの行政処分がなされることもあり、営業停止命令に違反すれば1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され得ます(第11条1項)。

 つまり、あなたが受けている取立てが、そもそも条例違反にあたる可能性があるということです。これは、警察に相談したり弁護士に依頼したりする際の法的な足がかりになります。なお、この条例は東京都のものであり、地域によって規制の内容や有無は異なります。

取立てが「犯罪」になっている場合

 料金トラブルは、店側の言動によっては刑事事件の領域に入ります。目安として、次のような罪が問題になり得ます。

  • 恐喝罪(刑法249条):害悪を告げて畏怖させ、金銭を交付させる行為。10年以下の拘禁刑
  • 強要罪(刑法223条):脅して義務のないことをさせる行為。3年以下の拘禁刑
  • 逮捕・監禁罪(刑法220条):「払うまで帰さない」と閉じ込める行為など。3月以上7年以下の拘禁刑
  • 詐欺罪(刑法246条):うそで錯誤に陥れて金銭を交付させる行為。10年以下の拘禁刑(未遂も処罰/250条)

 「払わないとどこまでも追いかける」といった言動や、退店を妨げる行為は、これらの罪にあたり得ます。そうした取立てで畏怖して支払ってしまった場合でも、支払いの効力を後から争う余地があります。

その場でやるべきこと・避けたいこと

 現場での対応は、後の争いの見通しを大きく左右します。

やっておきたいこと

  • 身の安全を最優先にする。暴力を振るわれそうな状況では、無理に抵抗しない
  • その場で警察を呼ぶ(110番)。帰さない・所持品を返さない・恫喝するといった状況は、それ自体が相談の理由になる
  • やり取りを録音し、料金表示や請求明細を撮影しておく(自分が当事者である会話の録音は、原則として証拠に使える)
  • 退店できたら、その事実と時刻を記録する。支払いを済ませていない状態で退店できていれば、後日の請求を拒みやすい立場になる
  • 相談した事実を残す。警察に取り合ってもらえなくても、相談した記録自体が後の証拠になり得る

できれば避けたいこと

  • その場の勢いで現金を払う・書面にサインする・カードの暗証番号を押すこと。いったん支払うと、後から取り戻すのは容易ではなくなります
  • 一人で長時間交渉を続けること。相手が複数で威圧してくる状況では、窓口を専門家に一本化するほうが安全です

 支払いを済ませずに退店できた場合、立場は比較的強くなります。後日改めて請求が来ても、根拠のない部分は毅然と拒否しつつ、やり取りは記録に残しておきましょう。

もう払ってしまった場合

 すでに支払ってしまった場合でも、支払い方法によって取り得る手が変わります。

 クレジットカード払いの場合は、まずカード会社にぼったくり被害に遭った事実を申告し、支払いの猶予や利用明細・店舗情報の開示を求めます。不正・不当な決済としてチャージバックを主張できる余地がある一方、暗証番号を入力して決済していると争いのハードルは上がります。消費生活センターへの相談も並行して行うとよいでしょう。

 現金払いで領収書もない場合は、率直に言って被害回復は容易ではありません。それでも、被害後すぐに警察へ相談し、店舗の特定を進めておくことで、選択肢が残る場合があります。

まとめ

 風俗・メンエスでの高額請求に直面したとき、覚えておきたいのは次の点です。

  • 請求された金額が、そのまま支払義務のある金額とは限らない
  • 合意・表示にない後出し料金、誤認させられた料金、威圧的な取立てを伴う請求は、拒否・減額を争える余地がある
  • 東京都には性風俗営業を対象にした「ぼったくり防止条例」があり、不当な取立て自体が違反になり得る
  • その場では、安全を優先しつつ「払わない・サインしない・記録する・警察を呼ぶ」
  • 支払ってしまった後でも、クレジットカードなら争う手が残ることがある

 料金トラブルは、その場の判断と初動で見通しが大きく変わります。当事務所は風俗トラブルについて、一貫して利用者(客)側の立場でご相談をお受けしています。不当な請求に一人で対応する前に、まずはご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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