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鈴木康介

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鈴木康介(すずきこうすけ) / 弁理士

プロシード国際特許商標事務所

コラム

応用美術の著作物性

2020年1月19日

テーマ:著作権

コラムカテゴリ:ビジネス

プロシード国際特許商標事務所の鈴木康介です。

1月18日に著作権法の研修を受けました。そこで、TRIPP TRAPP事件が取り上げられていました。

TRIPP TRAPP事件は、工業製品に対して、応用美術による保護が認められる可能性を示した有名な判決です。

著作権で、保護される著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものです(著作権法2条1項1号)。

今までは、いわゆる工業製品は、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属さないため、著作権法の保護ではなく、意匠法による保護を受けると考えられていました。

この考え方の判決としては、例えば、ファービー事件(平成13年(う)第177号 ファービー事件)が知られています。

しかし、平成27年にTRIPP TRAPP事件の判決が出てから傾向が変わってきています。

TRIPP TRAPP
(図面は判決文から)

この判決では、「著作権法が,「文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的と」していること(同法1条)に鑑みると,表現物につき,実用に供されること又は産業上の利用を目的とすることをもって,直ちに著作物性を一律に否定することは,相当ではない」としています。

そして、応用美術も「個別具体的に,作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべきである。」と判示しました。

平成26年(ネ)10063 TRIPP TRAPP事件

その後、平成28年(ネ)第10018号 スティック型加湿器事件でも、「応用美術は,「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)に属するものであるか否かが問題となる以上,著作物性を肯定するためには,それ自体が美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えなければならないとしても,高度の美的鑑賞性の保有などの高い創作性の有無の判断基準を一律に設定することは相当とはいえず,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,著作物として保護されるものと解すべきである。」と判示されました。

このように、工業製品についても著作権法による保護が受けられる可能性が高まってきました。

その一方で、平成28年(ネ)第10018号 スティック型加湿器事件では、「応用美術の表現については,このような制約が課されることから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は,通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が,上記制約を課されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても,その著作権保護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。」とも判示されています。

実は、TRIPP TRAPP事件では、著作物性が認められましたが、侵害は認められませんでしたし、スティック型加湿器事件では、著作物性は認められていませんでした。

著作権法による保護の可能性が高まったからといって、著作権法だけに頼るのではなく、意匠法による保護をきちんとすることも重要です。

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お読み頂きありがとうございました。
弁理士 鈴木康介(特定侵害訴訟代理権付記)
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