中国OEM工場との取引時の注意事項
プロシード国際特許商標事務所の鈴木康介です。
iPadの中国商標事件には、アップル側にも多少の問題点があります。
アップルは、「唯冠電子股份有限公司(Proview Electronics Co., Ltd.、以下「唯冠電子」若しくは「台北唯冠」と言います。)と中国の商標権を含めた世界中の商標権の譲渡契約を結んだと主張しています。
実は、中国の法令では、
「登録商標を譲渡するときは,譲渡人と譲受人は,譲渡契約を締結し,共同で商標局に申請しなければならない。譲受人は当該登録商標を使用する商品の品質を保証しなければならない。
登録商標の譲渡は,許可後,これを公告する。譲受人は公告日から商標使用の排他権を享有する。(中華人民共和国商標法 39条 JETRO訳 )」
や、
「登録商標を当事者間の協議により譲渡する場合には、譲渡人と譲受人は商標局に「登録商標譲渡申請書」を提出しなければならない。登録商標譲渡申請の手続きは譲受人により行う。商標局は認可した後、譲受人に相応の証明書を交付し、且つ公告する。(中華人民共和国商標法実施条例 25条 JETRO訳 )」
と定められております。
このように、中国では、商標権を移転する場合には、商標局に手続が必要です。
つまり、当事者間の間で譲渡契約が結ばれたとしても、商標局に手続きをしないと商標権の移転は認められません。
仮にアップルが言うように、「IP社」が「唯冠電子」と中国の商標権を含めて譲渡契約を結んだとすれば、iPadの中国商標権の移転手続きを行った後に、アップル社にiPadの中国商標権を譲渡していたはずです。
( iPad中国商標事件の経緯に書いたように、アップル社は、IP development application社(IP社)を通じてiPadの中国商標権を購入しています。)
現在、中国の商標出願件数や、中国商標の登録件数は、既に日本の商標出願件数や、商標登録件数を超えています。
このため、日本企業が中国企業などから中国の商標権を購入するケースが増えることが予想されます。
仮に、中国企業と中国商標権の譲渡契約を結んだとしても、商標局への移転手続きが終了するまでは気を許さないことが重要です。
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