ハラスメントを減らすことは、「何も注意できない職場」をつくることではありません
丁寧に説明して、部下も『分かりました』と言ったのに、
締め切りになっても何も進んでいなかったんです」
管理職の方から、こんな相談を受けました。言った側からすると、
裏切られたような気持ちになりますよね。
でも、ここで知っておいていただきたいことがあります。
「分かりました」は、理解したという意味とは限らない、ということです。
部下が「分かりました」と言うとき、その裏には、いくつか違う気持ちが隠れていることがあります。
ひとつめは、「これ以上聞き返したら、怒られそうだから」。
分からないけど、分からないと言えない。そんな空気のときに、
「分かりました」は自分を守る言葉になります。
ふたつめは、「分かったつもりになっている」。
全体の流れは分かった。
でも、最初の一歩が何かはイメージできていない。
人は、具体的な一歩が見えないと、体が動きません。
みっつめは、「優先順位が決められない」。
今の仕事と、新しく頼まれた仕事。
どちらを先にやればいいのか分からなくて、結局どちらも止まってしまうんです。
つまり、「分かりました」と言って動かないのは、部下のやる気の問題とは限らない。
伝え方と、確かめ方の問題かもしれない、ということです。
では、どうすればいいか。私が大切にしている式があります。
伝える力 = 相手を想う力 × 届ける力 × 確かめる力。
最後の「確かめる力」が、ここで効いてきます。おすすめは、部下に言い返してもらうことです。
「分かりました」で終わらせずに、こう聞いてみてください。
「じゃあ、最初に何から手をつけますか?」
部下の言葉で最初の一歩が返ってきたら、それが伝わった証拠です。
もし曖昧な返事が返ってきたら、それは部下のせいではありません。
こちらの伝え方を、もう一段細かくする合図だと思ってください。
そして、ひとつだけお願いしたいことがあります。
聞き返せる空気は、聞き返す人の勇気ではなく、聞かれた側の受け止め方で決まります。
「そんなことも分からないの」と言われた経験が一度あると、人は二度と聞き返しません。
部下が「分かりません」と言える職場は、管理職の受け止め方が作るんです。
伝えたことと、伝わったことは違います。
相手の言葉で返ってきたものが、実際に伝わったことです。
何か頼んだあと、「分かりました」で終わらせず、「何から手をつけますか?」とひとこと聞いてみてください。
それだけで、締め切り当日の「何も進んでいない」が、ひとつ減るかもしれません。
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浪越あゆみ|ハラスメント防止・伝える力研修講師


