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生薬の話 当帰

谷津吉美

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テーマ:生薬の話


セリ科 トウキの根
夏になると無数の小さな白い花を咲かせる


肥えて髭根の沢山ついている馬の尾のような格好

 今回、当薬局で無農薬で栽培している生薬「当帰」について紹介したいと思います。毎年、スタッフが栽培、収穫、湯もみ、乾燥などの作業を行い、製品化しています。香りや甘みが強く、見た目も力強さを感じます。身体を温める働きも大きいように思います。
 当帰の外皮は褐紫色、内部は黄白色です。味は、ほのかに甘く後に少し辛く、良い香りと潤いのあるものです。当帰は、貧血,生理不順,不妊症,更年期障害など婦人科の要薬として用いられています。血を調え、補血、活血の効果がある為、血病の薬として数多く使われています。特に女性の方は、生理により毎月多くの血液を一気に消耗しますので、普段から血液を養っていかないと慢性的に血液が不足してしまい、血虚の状態になります。その状態が続くと、貧血症,生理痛,冷え性,不妊症などの症状へとつながってしまいます。当帰は この血虚の状態を補う働きがあります。また、一般的に当帰は血を治すだけのものと思われる事も多いですが、人体の不足を補うのに効を奏し、虚を補う薬として、産後の悪血上衝を治すのにも使われます。また、流産防止の薬である芎帰膠艾湯も使われています。
 ところで、「当帰」という名前の由来ですが、漢文で「当帰夫」というところから来ています。昔は、妻をめとるのは胤を嗣ぐためであるとされていました。 この生薬は血を調えて女性の要薬となるので、結局は夫の所へ当(まさ)に帰るものであり、 これには夫や帰るべき家を思いやる意味が含まれています。実際、不妊症の方では、夫の支え(特に精神的な部分の支え)がある人の方が妊娠しやすいようです。お互いを思いやる気持ちが大切なのだなと気付かされます。

当帰を使用する漢方薬は多数あり、温経湯,当帰建中湯,当帰芍薬散,芎帰膠艾湯,当帰四逆加呉茱萸生姜湯,加味逍遥散,帰者建中湯などが挙げられます。


次回は昨年の当帰の収穫の様子をお伝えします。

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谷津吉美
専門家

谷津吉美(薬剤師)

有限会社むつごろう薬局

漢方医学を専門に23年。不妊症をはじめ各種女性の悩み・アレルギー・皮膚病・自律神経失調症などの症状に、深い知識で丁寧に対応。また静岡県立高校の進路指導講演会や不妊専門雑誌などで漢方薬を広めています。

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