生薬の話 麻黄 〜 風邪に使う漢方薬 葛根湯
前向き駐車と書かれている駐車場があります。前向き駐車とは、前進して駐車をすることです。隣の家などに、排気ガスなどで迷惑をかけないための前向き駐車なのですが、かえって看板があることによって反対向きに駐車してしまう方が多いようです。どこに対して前向きなのかが文字だけだと伝わらないので、「通路や道路側に車の前面が向くように駐車することが前向き駐車だ」と思っている方が反対向きに駐車してしまうようです。そのため、最近イラストの看板も見かけるようになってきました。分かりやすくていいですね。
「右近の橘左近の桜」という言葉は聞いたことがありますか?神社などに橘と桜が植えてあることが多いですよね。平安宮内裏の紫宸殿(ししんでん)の前庭に植えられている橘と桜(昔は梅でした)から来ているのですが、左近(左近衛府)は紫宸殿の東方に陣をしいていて、その陣頭の辺に梅が植えてありました。紫宸殿の中で天皇が南を向いて座った時、左手側が左近です。静岡浅間神社の写真を撮るとしたら、桜があるのは左側ではなく右側です。分かりやすく言うと、私たちから見てではなく、神様からみて左側にあるのが左近の桜なのです。ヤマザクラの皮は「桜皮(オウヒ)」という生薬です。桜皮は十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」というお肌のトラブルに使われる漢方薬に含まれています。紫雲膏(しうんこう)を創った華岡青洲(はなおかせいしゅう)が創った漢方薬です。
左近の桜と右近の橘が描かれている風景印
https://mbp-japan.com/shizuoka/mutsugoro/column/5106769/
紫雲膏
https://mbp-japan.com/shizuoka/mutsugoro/gallery/2200258/
レファレンス協同データベース
生薬の話「橘皮(キッピ)」
簡単にいうとミカンの皮を乾燥させたものです。ミカン科の常緑小高木、オオベニミカン(大紅蜜柑、福橘)、コベニミカン(余橘、朱橘)、ウンシュウミカンなどの柑橘類の紅熟した果皮です。あまり寒くない地方であれば、ミカンの原種、白輪柑子(しらわこうじ)を植えると良いです。白輪柑子蜜柑は最高級と言われています。橘の字のつくりの矞(いつ)は、2色の縁起の良い雲で、矞雲(いつうん)と呼ばれる雲があり、その意味を持ちます。矞雲は外が赤く内が黄色で煙や霧のようなひろがりをみせ、郁々紛々としています。橘皮も外側が赤く内側が黄色で、これを割るとかぐわしく紛郁としていて、矞雲と似ています。味は辛で、気は温です。柑橘特有の芳香、苦味とわずかに刺激性があります。神農本草経の中では上品(上薬)に分類されます。橘皮と同様にミカンの皮を乾燥してつくられた生薬に「陳皮」があります。陳皮は橘皮とほぼ同じものでありますが、元々は、長く保存されたもので陳久品が良いとされたところから付けられて陳皮と呼ばれました。現在は大きな区別は無いように思われます。
橘皮は、健胃薬、胃の働きを整える働きがあります。また嘔吐、咳、痰に効果があります。そこから発展して、しゃっくりにも応用されます。心胸の気分を通じるようにし、滞りを破り、胸の痞えを散じます。橘皮を使用している漢方薬は、釣藤散、茯苓飲(原方)、鶏鳴散加茯苓などがあります。二味の薬徴として、橘皮・生姜の組み合わせは、横隔膜や上腹部の冷えによる緊張からくる吐き気やむかつきを改善する作用があります。心胸の気分を通じ、胃を温め、水の逆行をなくして、吐き気がしてムカムカする事や、吐き気はあるが何も吐けない症状、しゃっくり、気の滞りによる手足の冷えを改善します。